水木浩生さん
山好きが高じて山岳映画の特集上映を企画。
古くは「氷壁」、最近なら「剱岳 点の記」。山をテーマにした映画に影響を受けて、山登りにのめり込んだ人も多いのではないだろうか。
今週は、それがさらに高じて、山岳映画の特集上映を企画された水木浩生さんをご紹介。4月19日から5月2日まで、東京目黒区恵比寿の東京都写真美術館ホールで、黎明期のドイツ映画から日本映画の名作までを集めた特集上映が行われる。
週刊ヤマケイ(以下Y):それにしても、すごいラインナップですね。K2登山の記録映画を見て山の虜となった私としては、毎日、通って全作品を拝見したいぐらいです。
水木(以下、M):そうですね。「人は何故、山に登るのか? 永遠の問いに挑む二週間」と銘打っていますが、20世紀初頭から現在に至る山岳映画の系譜を俯瞰し回顧する、大規模な特集上映イベントです。
日本でのパイオニア・ワークとなった大正期の記録映画や、山岳映画というジャンルを形成したドイツの先駆者、アーノルド・ファンクの主要作品。そして戦後初の山岳映画である「銀嶺の果て」をはじめ、「氷壁」「八甲田山」「植村直己物語」といった名作、16作品を上映します。
Y:これだけの作品を一挙に集めるには、大変なご苦労もあったことと思いますが、水木さん自身が山好きだからこそ、できるのでしょうね。
M:そうですね。仕事というよりも趣味が大きいかも知れません。同じ会場で山の写真展も開かれているので「この機会にぜひ」と。
じつは私が映画の世界に入ったのは、40歳を過ぎてからなんです。20代から造園業に従事して、いわゆる植木屋さんの仕事をしていたのですが、縁あって映画配給の仕事に移りました。そうしたら、自然と触れ合う機会が激減してしまったんです。山に登るようになったのはそれからで、一時は毎週末のように奥多摩に出かけていました。
Y:上映時間は日中が中心ですね。残念ながら、やはり私の場合、全作品を見るのは難しそうです、水木さんの特にお勧めの作品、見どころを教えてくれませんか。
M:はい。私も映画はノージャンルでいろいろ見て来ましたし、仕事でもいろんな作品を手がけましたが、例えば黎明期の1926年にドイツで公開された「聖山」と、2008年の「アイガー北壁」の関係なども興味深いですよ。パートナーが宙吊りになってしまったときの、ザイルを切る、切らないのシーンなど、時代を隔てても、同じモチーフ、類似のストーリーが脈々と受け継がれています
1937年にアーノルド・ファンクが日本に来て作った「新しき土」なども、原節子さんが振袖姿で焼岳に登るクライマックスが印象的です。「八甲田山」も77年の公開時にはカットされたシーンも復元した完全版です。本格的登山シーズンを前に、劇場スクリーンで一挙にお楽しみください。
(聞き手=久保田賢次・『週刊ヤマケイ』編集長)