いつも『週刊ヤマケイ』をご愛顧いただきまして、ありがとうございます。
この夏のご予定はお決まりでしょうか。8月下旬、ご都合の許す方には、ぜひお越しいただきたい催しがございます。
「ヤマケイ涸沢フェスティバル2014」(8月28日~30日、徳沢会場は31日まで開催)。
2008年に始まったこの催しは、今回で5回目となります。豊かな自然を次世代につなげるために、世代を超えて自然の素晴らしさを体験、共有していただきたいという願いのもと、徳沢、横尾も含めた各会場に、山を感じ、山を知り、山を学び、山を味わうさまざまなプログラムが用意されています。
数多の催しのなかでも、私自身がこれまで運営に関わらせてもらいながら、毎回しみじみと「いいなあ」と感じているのが、キャンドルナイトです。
山の一日が終わり、山小屋のテラスに並べられた沢山の蝋燭に火が燈されます。小屋の灯火も消していただき、ガラス瓶のなかで揺れる炎に魅了された後、皆で蝋燭を吹き消した瞬間、涸沢カール全体が原始の闇に包まれるのです。と同時に、空に広がる満天の星空。時に雲に遮られたりもしますが、「宇宙にはこんなに沢山の星があったんだ」ということを、あらためて実感させてくれます。
天然のプラネタリウム。闇に目が慣れてくると、稜線の鋭い岩峰の、ひとつひとつの尖がりが視認できるようになります。恐竜の背のように競り上がる前穂高北尾根も。そんな時、私の脳裏に蘇ってくるのは、山登りを始めて間もないころ、古書店で出会った大島亮吉さんの遺稿集『山-随想-』に収められた「涸沢の岩小屋のある夜のこと」の中の、山で失った仲間を思う一節です。
「とにかく、人間が死ぬっていうことを考えのうちに入れてやっていることには、すくなくともじょうだんごとはあんまりはいっていないからね。…………」
夜空を見上げながら、私の心は時空を超えて、その後、自らも昭和3年3月25日、30歳にして穂高の岩稜で亡くなられた敬愛する先人と、ひとつになれたような錯覚すら感じるのです。
山を想い、山を考え、自然に抱かれ、人と出会い、友と語らう。この夏、涸沢フェスティバルに、ぜひお出でください。
(『週刊ヤマケイ』編集長 久保田賢次)
追伸
現在、この『週刊ヤマケイ』は3万8000人の方々にご愛顧いただいておりますが、私たち編集部のスタッフも、現地でみなさまをお迎えする予定ですので、ぜひお声がけください。
また、交通手段も含めて、涸沢までのアプローチがご心配な人や、新しいお仲間と一緒に山の時間を過ごされたい方々に向けた、ツアーリーダー同行の参加プランもございますので、ぜひご利用ください。
ヤマケイ涸沢フェスティバル2014
http://special.yamakei.co.jp/karasawa/
ヤマケイ涸沢フェスティバル2014特別ツアー