足立寛一さん
富士山で携帯トイレを無料配布。
この夏から富士山の登山シーズン中の7月初旬と9月中旬に、5合目で携帯トイレが登山者に配布される。山頂トイレが使えない期間は、携帯トイレ持参が呼びかけられているが、5合目での無料配布と、使用済みのものの回収も行なわれる。これに協力しているのが、(株)エクセルシアの足立寛一さんだ。
週刊ヤマケイ(以下、Y):足立さんも山開きの日に配布に立ち会われたとのことですが、みなさんどんなご様子でしたか。
足立(以下、A):入山料の本格徴収と合わせてのトイレ配布になり、みなさん興味深く、喜んで受け取っていたように見えました。実際に使用した方もいて、「思ったより使いやすく、我慢をしなくても良いので携帯トイレ(ほっ!トイレ)があって良かった」とのご意見をお聞きできました。
また、今回は使用しなかった方からも、「ポンチョ付きでどこでも使用できるので、ひとつ持っていると、とても安心」とのお声を多数お聞きすることができました。
Y:今回は、足立さんご自身も山頂まで登られたそうですね。初めての富士登山とのことですが、登ってみていかがでしたか。
A:私は昨シーズンからデビューの登山初心者で、涸沢に続いて2度目でした。今回は、雨天の中を山頂まで6時間ほどかかりました。とにかく富士山は高い!
全般的に呼吸が苦しく、休みながら着々と登りました。山頂に着くと、安心してか、やはりトイレをしたくなり、さっそく、私も「ほっ!トイレ」を使用し、糞便を入れたビニール袋とごみを巾着にまとめ、腰あたりに結んで下山しました。下山ルートも、公衆のトイレに到着するまでしばらく時間がかかるので、使っておいてよかったと実感しました。
Y:足立さんの会社は、トイレ問題の総合ソリューション企業として、幅広く環境問題などにも取り組んでいらっしゃいますね。私ども日本山岳遺産基金の賛助会員としてもお力添えいただきまして、ほんとうにありがとうございます。ほかには、どのような取り組みをなさっていますか。
A:これまでの当社の製品は、災害用備蓄品としてのニーズが高く、多くの企業様に採用頂いています。当社製品は5年間の備蓄期限なのですが、幸いに災害が起こらなかった場合は、廃棄されてしまうことが多いのです。せっかく使用しやすいようにと開発したトイレが捨てられてしまうのは、作り手としても「もったいない」と思いました。
他方、途上国などで衛生的なトイレが必要なユーザーは、金銭的に厳しい。このマッチングを真剣に考え、再利用プロジェクトに取り組んでいます。昨年8月に一般社団法人Earth Friendly Circulationを設立し、ここを受け皿にして、当社の顧客企業が払うはずであったトイレの廃棄費用相当分を協賛いただき、これを送料の原資として、ユーザーの山小屋さんや自治体、途上国に基本は「無償」でトイレを提供する。このような仕組みを作っています。
先日もモンゴルに行き、この仕組みを紹介したところ誠に熱心で、また再訪することになりました。国内の山岳地域でも、これからドンドンこの仕組みを広げていきます。
(聞き手=久保田賢次・『週刊ヤマケイ』編集長)