西山秀夫さん
東海周辺の山々のガイドブックを編む。
名古屋を基点に日帰り可能なエリアから120座を選定したガイドブックが完成した。『東海周辺 週末の山登り ベスト120』というタイトルのこの本は、地元の山々に精通した11人の方々により取材・執筆されたもの。編者として尽力された西山秀夫さんに聞いた。
(聞き手=久保田賢次 『週刊ヤマケイ』編集長)
久保田:256ページというボリュウムのなかに、三河・尾張、南アルプス深南部、中央アルプス、木曽谷・木曽山地、伊那谷、美濃、飛騨、鈴鹿、伊勢、台高、紀州ほか、ほんとうに幅広いエリアの山々が紹介されていますね。名古屋を基点に登れる山々の多様さに驚きました。
西山:そうなんです。東海周辺の山々の魅力はその多様性にあると思います。
地理的分布として西は近江側の鈴鹿、南は三重県南部の太平洋の見える山々、信仰と生活の熊野古道につらなる東紀州の山、北は白山付近の山、特に東側は木曽山脈の山々が1500m級から3000m級の山まで垂直分布も大きい。展望を楽しみに登るなら富士山付近の山が良い。
関東圏から、関西圏からも山好きの転勤族は異口同音に「東海地方は山に恵まれていますねえ」と言います。往年の山男は「名古屋に勤務していた頃は良かったな」とも。数年すると皆さん、泣く泣く次の任地へ行かれるんです。山の雑誌等で情報ぜめになることが少ない分、新鮮さがあるかに思います。
久保田:11人の方々にご執筆いただきました。みなさん、西山さんとともに登山をなさっている人たちだと思いますが、普段はどのように登山を楽しまれていらっしゃいますか。
西山:今回の執筆陣は東海白樺山岳会と日本山岳会東海支部の会員のうち、山スキークラブの面々に声をかけて協力してもらいました。日本百名山や日本三百名山を目標にする人、地元のやぶ山の沢登り、山スキー、岩登りをする人などです。特に変わったことはしていません。
特筆するのは東海支部には他の会にないメディア系のカルチャーセンターで登山教室を開催し、その講師陣もいまして、受講生の修了実技登山の企画からリーダーとして汗を流しています。私も付き添いに応援で登ることがあります。
久保田:『週刊ヤマケイ』は、全国各地の読者のみなさんにご覧いただいています。もし、名古屋周辺にお住まいのかたでなく、遠方のかたがこのエリアを訪ねるとしたら、どんな山々がお勧めでしょうか。
西山:東海地方の日本百名山は伊吹山、恵那山、木曽駒、空木岳、御嶽山と少ない。しかし、遠方から来られても目標に足る山はある。例えば、奥美濃の盟主・能郷白山は一押しです。残雪期の登山はそれなりのキャリアと準備がいりますが、忘れえぬ山になるでしょう。
秋も素晴らしい。小秀山は美濃で第二の高峰ですが、目の前に迫る御嶽山を見られたら感動します。鈴鹿の藤原岳は花の名山としての地歩を築きあげました。福寿草の開花期は登山口だけでなく、周辺の民家も庭を有償で提供するくらい多数のファンが訪れるほどです。