長澤義茂さん
デジタルモノクロームの美にこだわる。
山岳写真や風景写真といえば、彩り豊かなカラーを思い浮かべますが、デジタルモノクロームの美を求めて集った山岳写真を愛する人たちがいます。「写団創美」。この3月25日から、東京新宿で、すべて自宅のプリンターでプリントした写真による展覧会を開催します。10人のメンバーのなかのお一人、長澤義茂さんにうかがいました。
(聞き手=久保田賢次/『週刊ヤマケイ』編集長)
久保田:「モノクロームの美」。展示予定の作品を拝見していますと、その言葉の意味がわかってくる気がします。長澤さんがモノクロームにこだわる理由は、どのような点にあるのでしょうか。
長澤:「モノクロームは写真の原点」とよく言われますが、デジタルカメラ全盛になっても変わらないと思います。モノクローム写真は、見る人にイメージを創造させる大きな表現力を持っています。モノトーンのグラデーションが豊かな色彩を思い起こさせてくれるのです。デジタル化の進歩で今までの暗室作業以上のことができるようになりました、これからもデジタルモノクロームで臨場感をイメージできる作品を狙っていきます。
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久保田:今回は10人の方々での写真展ということですが、「写団創美」というグループはどのようにしてできたのですか。どんな方々がいらっしゃるのでしょう。
長澤:「デジタルモノクロームの美を追求し、イメージ通りに仕上げた作品を創り発表する」を趣旨に有志が集いました。今まで写真展の展示作品はプロのラボラトリィに依頼しましたが、今回は自宅で試行錯誤を重ねて楽しんでいます。山岳写真のメンバーが多いですが、山を含めた大自然と対峙しています。メンバーは山岳写真同人四季の井上のぞみ・岡孝雄・黒須信市・鈴木菊雄・中川淳・長澤義茂・名取洋・松本正、全日本山岳写真協会の代政雄、そして金武治の10名です。
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久保田:力強い山岳の写真や、優しさあふれる森の写真など、さまざまな写真が展示されるようですね。今回の写真展の見どころは、どんな点にありますか。
長澤:山岳写真と言えば、厳しい岩峰や雪稜と思われるでしょうが、被写体はいっぱいあるのです。写真展では山稜、湿原、森、滝、渓谷、そして身近な景色など、山々を取り巻くモノクロームの世界にご案内します。
一人3点の組写真にまとめ、30点展示します。「凍てる噴煙」では厳冬期の頂を、「映える樹」では光と影が織りなす稜線と樹影を、「ミツマタの森」では森の中の春を、「水の彫刻」では渓谷の造形美を表現します。モノクロームの世界をご覧いただき、山への新たなイメージを膨らませてください。ご来場をお待ちしております。