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今週末の「山のワンポイント天気」

ウェブサイト「山の天気予報」を運営し、メールでの天気予報配信も行なっている株式会社ヤマテンの気象予報士、河野卓朗さんによる解説です。今週末の山行に役立ててください。

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秋は低山歩きにうってつけの季節です。ということで、空木岳から東に延びる尾根の下部、池山の周辺を散歩がてら歩いてきました。山頂からは千畳敷カールが望め、ほどよい広さがあります。ピクニックにちょうどいいのでしょう、家族連れで訪れる人が目立ちました。あるご家族は千畳敷カール越しに見える宝剣岳を眺めながら、この夏の山歩きの思い出話に花を咲かせていましたが、いよいよ秋山シーズンも終わりにさしかかっています。すぐそこに迫った冬山シーズンまで、束の間の秋山を楽しみたいものです。ただ、寒暖の差が非常に大きく、ウェアリングの難しい季節でもあります。最新の天気予報で気象状況を確認して、安全な山歩きに備えましょう。

さて、今週末の天気ですが、22日(土)は北日本から東日本を中心に高気圧に覆われるため、東北地方から中部地方にかけては晴れるところが多い見込みです。ただし、九州付近に停滞する前線が活発化する影響で、九州地方や四国地方では天気が崩れたり、他の西日本の地方でも雲が広がりやすい天気になりそうです。また、23日(日)は日本海の別の前線の影響で、北海道や東北地方の山岳でも天気が崩れる見込みです。

このため、22日(土)は東北地方から中部地方の山岳がおすすめで、23日(日)は北関東や上信越の山岳が比較的天気の崩れが小さい見込みです。ただし、前線の動向によっては天気が変わる可能性がありますので、最新の天気予報を確認するようにしましょう。

登山シーズンも一段落し、山の天気や安全登山のスキルを学ぶには良い季節です。12月4日(日)には「安全登山フェスタ2016」を東京・竹橋の毎日ホールで開催します。

鈴木みきさんのトークショー、長野県山岳救助隊副隊長の講演、遭難事例から学ぶヤマレコ、やまきふ、ヤマテンを利用した安全登山のためのトークショーなど盛り沢山の内容となっております。入場は無料です。詳細は、近日中にhttp://yamatenki.co.jp/prof.phpにアップさせていただきます。

また、この他にも冬山の気象を学ぶ講座を11月23日(水・祝)には東京で、11月27日(日)には名古屋で開催予定です。名古屋では初級向けの「山岳気象の基礎と落雷、局地豪雨から身を守る方法」という講座も開始します。こちらも、詳細はhttp://yamatenki.co.jp/prof.phpにてご確認ください。

(文責:河野卓朗)

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「山の天気予報」(月額324円)

コーヒー1杯分のご利用料金で、全国18山域の山頂天気予報や大荒れ情報、予想天気図、ライブカメラ、雨雲レーダー、観天望気講座などが1ヶ月使い放題。メールでの天気予報配信登録もおこなえます。サービスの詳細やご登録方法につきましては、下記URLでご確認ください。

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山岳遭難防止術

登山ガイドが実体験から遭難防止を考える【連載15】

なにかに気をとられて歩くと道を間違ってしまう

山での遭難理由でもっとも多い、道迷い。もちろん夏山で迷う例もありますが、多いのはむしろ、秋から春にかけての低山でしょう。夏山登山の対象となる森林限界を超えた山は、地形が比較的シンプルで見通しがよく、登山道もしっかりと整備されている場合がほとんど。いっぽう低山では、地形が複雑な上に樹木が茂り、視界が悪い場合が少なくありません。さらにもっと標高の低い里山では、林業作業者の道や、山菜やキノコを採る人の踏み跡、さらにはけもの道なども錯綜して、道迷いを起こすリスクはより高いといえるでしょう。

恥ずかしながら私もときどきは、道迷いには至らずとも、道間違いをすることがあります。その道間違いのほとんどが、秋から春にかけての低山です。状況として多いのは、前回記したように単独行のとき。ひとりだとつい考えごとをしながら歩くのですが、それがよくないのでしょう。あとは親しい友人と一緒のときにも、間違ってしまったことが何度かあります。

最近では2014年2月に下見に行った神奈川県の三浦アルプスで、乳頭山から京急田浦駅に向かう途中の分岐を見落として直進。森戸川源流の近くへ下ってしまいました。

同じ2014年の4月には、妙義山の相馬岳から中木沢に下る途中の岩場で、岩をトラバースしなければいけないのに基部に道があるように勘違い。コースを外れて、右往左往してしまいました。

これらはいずれもおしゃべりに気をとられて、ルートファインディングがおろそかだったことが原因だと思います。

違和感を感じたときはすぐに地形図とコンパスで現在位置と進路とを確かめるようにしましょう(写真=木元康晴)

道間違いをする確率を減らして道迷いを防ぐ

けれども私は、前述のとおり、道間違いはしばしばするものの、道迷いの状況に陥ったことはほとんどありません。いつも間違ったことにすぐ気づき、ただちに復帰の行動に移るからです。道迷いを防ぐには、道間違いをしないことも大切でしょうが、見た目では正しい進路が判断できない場合も低山では多く、間違わず完璧に進むのは、難しいのではないでしょうか。それよりも周囲の違和感を感じとる注意力や、間違ったときにはただちに引き返せる決断力といったもののほうが、より大切ではないかと思います。

また基本的なことですが、なにかおかしいと思ったときには地図を見ることと、コンパスで方向を確かめることも非常に大切です。さらにスマートフォンのGPSアプリで、現在位置を確かめるのもいいと思います。目の前の状況に向き合うだけでは気づかなくても、地図を見て視点が変わることによってわかる道間違いは、意外と多いものです。

さらに典型的な間違いやすい道や地形のパターンを知って警戒すれば、単純な道間違いをする確率を減らすことは可能でしょう。私は以下のような場面では、特に注意するようにしています。

まずは沢に入ったとき。その沢を離れるポイントを見落とすことが少なくないからです。

尾根を下るときも注意します。特に直進する尾根があるにもかかわらず、異なる方向に道が進む場合には、うっかり直進してしまうことが多いもの。そういった箇所は事前に地形図でチェックしておき、近づいてきたら周囲を観察しながら進むようにします。

トラバース道を進む途中で枝尾根を横切る場合にも、ついそちらに引き込まれてしまうことがあるので同様に注意します。

さらに地形の起伏が乏しい樹林帯や、岩場でマーキングや鎖がない場合にも慎重な進路確認を怠らないよう心掛けています。

こうやって書き連ねると、注意することばかりでくたびれてしまいそうですが、道間違いはほんのわずかな気の緩みから起きる場合が多いもの。油断せずに、山歩きを楽しんでいただければと思います。

(文=木元康晴/登山ガイド)

十勝連峰・美瑛岳

十勝連峰の各山頂はまっ白になっています

標高1400m付近からは濃霧と登山道探しに苦労しました(写真=谷水 亨・宮腰智子)

ようやく視界が開け美瑛岳(中央)と歩いてきた登山道を振り返る(写真=谷水 亨)

10月16日、晴れ

10月24日11時より道道966号線の一部(吹上温泉白銀荘~望岳台間)が冬期通行止めになるため、その前に、美瑛岳(2052m)から十勝岳への縦走を友人と計画しました。

すでにこの山域では3回の降雪があり、十勝連峰の各山頂付近はまっ白になっています。

十勝岳と美瑛岳の登山口となる望岳台から、完全冬山装備で朝早くに出発。十勝岳避難小屋手前の雲ノ平分岐から美瑛岳に向かいます。足もとは20cmの積雪で、消えかけたトレースをたどりました。しかし1kmほどで撤退したようで、その後は兎と狐の足跡が3kmくらい延々と続きます。アバレ川支流の渇沢は深さおよそ10m。ロープとハシゴで渡り、ポンピ沢の徒渉はまだ雪で埋まっておらず、飛び石は滑りやすいため注意が必要です。ここを過ぎると急斜面のハイマツ帯を20~40cmほどの湿雪に足をとられながら登りました。

美瑛岳分岐からの登山道は侵食で掘れ下がっているところに40cm以上雪で埋もれており、標高差250mを膝ラッセルで登りました。そして稜線に出ると、積雪と濃霧で登山道や風景が確認できなくなり、標高差150mほどを、記憶と経験で頂上を目指します。結局、夏道なら3時間30分(6.8km・標高差1100m)で登るところを、予想外に雪が柔らかく、またすべてツボ足ラッセルだったため、5時間を要し、十勝岳までの縦走はあきらめざるを得ませんでした。

※10月24日以降、白金温泉~吹上温泉間完全閉鎖まで、望岳台へは白金温泉経由で行くことができます。

※先日、トムラウシ短縮道登山口までの林道が開通しました。積雪により通行不能となるまでの間は、通行可能です。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

秋田山形県境・鳥海山

白く輝く双耳峰を望む

康新道の標高1700m付近から山頂を望む。この辺りの紅葉は既に終わっていて鮮やかなナナカマドの赤い実が目をひいた(写真=佐藤 要)

康新道上部から見上げる新山(右)と七高山(左)(写真=佐藤 要)

10月15日、雨のち晴れ

鳥海山は10日に初冠雪が発表されました。その後も寒気が居座り、積雪が増えていることが予想されたので北面の祓川に向かいました。

未明からの雨が止むのを待って祓川駐車場を出発。御田付近まで登ると、湿原の草紅葉に朝日がさし始めて風景が生き生きとしてきます。七ッ釜の先で、まっ白い七高山が姿を現わしました。

康新道に入り冬枯れの台地を横切って進むと、前方に新山と七高山の雪化粧をした双耳峰が見えてきます。西風を受けながら七高山に向かって登りました。標高1800m付近から足元に雪がところどころに現われ始めて、2000mあたりからは雪を踏んで登ります。

しかしながら、先週痛めた左膝に違和感があったので下山を決めました。その後、10数人の登山者が七高山に向かって登って行きました。この日は気温が高く雪も緩んでいましたが、これからの季節、降雪があった時の朝夕や悪天時には山が最も危険な状態になります。特に岩が露出する氷化した斜面では慎重な行動が要求されます。雪氷対策や防寒対策など、装備を万全にしたいものです。

(文=佐藤 要/「山歩きの雑記帳」編集人)

二口山塊・小東岳

展望の稜線、石橋、滝、ブナの森、二口満喫コースをめぐる

小東岳から笹谷峠方面(南側)を望む(写真=福井美津江)

北石橋にて(写真=福井美津江)

10月15日、晴れ

宮城県と山形県を結ぶ二口峠を越える二口林道は現在車両通行止めなので、峠上部にある糸岳の登山口まで1時間ほど歩き、入山します。

急坂を登り糸岳へ。10月11日に訪れた際は石橋峠の先で背丈ほどの笹藪に阻まれ引き返していました。今回は山の大先輩にご一緒いただき、再チャレンジです。

幸運なことに前日から刈り払い作業が行なわれ、道が明確になり無事に小東岳へたどり着くことができました。北石橋へのコースも刈り払いされるとのことで、貴重なこの機会に北石橋を訪れてみることに。小東岳より樋ノ沢避難小屋を経て大東岳裏コースの途中から北石橋コースへと進み、望洋平を下山するという、18kmのロングコース周回となりました。

北石橋のコースは登山道が一部崩れていたり、不明確な箇所もあります。慣れた方とご同行ください。

(文=福井美津江)

山形県・二ッ森

素晴らしい展望が魅力の低山

南峰から見た北峰。左奥に鳥海山の姿が望める(写真=曽根田 卓)

山頂から尾花沢市の田園を見下ろす。後方には葉山と月山がシルエットで見えている(写真=曽根田 卓)

10月16日、晴れ

二ッ森は翁山の南端に位置する双耳峰で、馬の上に乗せる鞍のように見えることから荷鞍山とも呼ばれ、尾花沢市民に親しまれている山です。標高は700mにも満たない低山ですが、登山道のある南峰はツツジの低木と野芝に覆われて、登ってみると高山にいるような不思議な感覚を味わえます。

登山口は国道347号線の母袋集落の東にある「和牛育成センター」が目印で、車で牧場のいちばん東端まで入ることができます。この牧場、以前は牛の放牧が行なわれていましたが、最近は採草地として使われているようです。

登山口の看板から採草地の右端を登り、小沢に沿った道を登ると笹原の広がる鞍部に着きます。ここから南峰までステップの薄い急坂を一気に登ります。たどり着いた山頂は360度の素晴らしい展望が得られ、思わず歓声をあげてしまうことでしょう。

鳥海山、月山、葉山、御所山など山形の名山が一望で、稲刈りの終わった田園では稲わらを焼く煙が立ち上り、秋の深まりを感じます。

ファミリー登山にもおすすめの山で、山頂の芝生に腰を下ろし、景色を眺めながらのランチタイムは最高の思い出になると思います。

(文=曽根田 卓)

吾妻連峰・一切経山~東大巓~浄土平

東吾妻連峰を1泊2日で歩いてきました

家形山から五色沼と一切経山を望む。雲間から時折陽射しがこぼれ、沼の色が明るくなります(写真=日向俊雄)

谷地平に下り立つと広大な湿原が広がり、前日歩いた烏帽子山から昭元山の稜線が長く伸びていました(写真=日向俊雄)

10月15日~16日、15日曇りのち晴れ、16日晴れ

初日は不動沢登山口から五色沼に登り、一切経(いっさいきょう)山を往復した後、家形(いえがた)山、烏帽子山、昭元(しょうげん)山、東大巓(ひがしだいてん)を経て弥兵衛平(やへえだいら)の明月荘で小屋泊まり。翌日は東大巓から谷地平に下り、谷地平避難小屋から姥ヶ原に上がり、鎌沼や樋沼を見ながら浄土平に出て、後はバスで不動沢まで戻るコースです。2014年(平成26年)12月12日より吾妻山(一切経山)の噴火警戒レベルが2に引き上げられて登山規制がされており、浄土平から一切経山には登れないので今回の変則周回コースをとりました。

磐梯吾妻スカイラインも夜間通行止めで、高湯温泉ゲートを朝7時の開通後に入ると不動沢の登山開始が8時近くと遅くなり、1日目は厳しい行程となりました。

快晴の予報に反し、一切経山の上空は雲に覆われて陽射しもさえぎられ、五色沼が充分に輝いていなかったのが残念です。家形山から先は、ぬかるみあり、倒木あり、大石の間を縫う烏帽子山の下りなど、アップダウンの多い疲れる縦走でしたが、たどり着いた弥兵衛平の明月荘は素晴らしい自然のなかの避難小屋でした。

翌日も東大巓から谷地平への下りは沢沿いの難路でしたが、最後に樹林帯を抜けると広大な湿原の木道となり、谷地平は疲れも吹き飛ぶ気持ちいい場所でした。

(文=日向俊雄)

※編集部注:10月18日、仙台管区気象台より吾妻山の噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げることが発表されました。

那須・三本槍岳~茶臼岳

秋空の下、紅葉を楽しむ登山者でにぎわう山

隠居倉付近より朝日岳方面を振り返ります。三斗小屋にかけて紅葉が見ごろでした(写真=日向俊雄)

姥ヶ平の登山道から200mほど入ったひょうたん池は、水面に茶臼岳が映える絶景スポットです(写真=日向俊雄)

10月14日、晴れ

那須の三本槍岳と茶臼岳に行ってきました。峠の茶屋駐車場から峰の茶屋跡に登り、朝日岳を経て三本槍岳を往復。その後、熊見曽根から三斗小屋温泉に下り、裾野をまわって姥ヶ平に出て牛ヶ首から峰の茶屋跡に戻るコースです。最後に茶臼岳をお鉢巡りしてから、峰の茶屋跡から峠の茶屋に戻りました。

この日は金曜日でしたが週末にかけて好天が続く予報のせいか、茶臼岳周辺は大勢のハイカー、登山者でにぎわっており、紅葉の山を楽しんでいました。

今年の紅葉は色付きがいまひとつといった印象でしたが、それでも隠居倉から三斗小屋温泉へかけての紅葉と、姥ヶ平周辺の紅葉は見ごたえ充分でした。

(文=日向俊雄)

信越国境・苗場山

晩秋の苗場山を楽しむ

神楽峰から見た晩秋の苗場山(写真=長谷部 勝)

山頂湿原の草紅葉(写真=長谷部 勝)

10月11日、晴れ

天気に恵まれなかった体育の日の三連休でしたが、10月11日(火)に苗場山へ行ってきました。今年の山岳紅葉は、9月に入り涼しい気候のため例年より早いピークを向かえ、またきわめて少ない日照により色づきもあまりよくなかったようですが、ここ苗場山でも頂上付近の紅葉は終わっており、晩秋の雰囲気を漂わせていました。

祓川コースを約4時間登るとそこは標高2000m超、広さ2kmにもおよぶ頂上湿原が現われます。その様はまさに「苗場」。そのゆるやかな山頂部に無数にある池塘はまるで天然の棚田のようです。一面の草紅葉とそのテーブルマウンテンの形状、そして谷を隔てて中部山岳がズラリと見える晩秋の景色を堪能しました。

苗場山は奥地の山という印象がありますが首都圏から意外と近く、祓川コースなら首都圏から3時間程度で登山口に着くので日帰りのコース設定も可能です。

また、頂上にこれだけ水を湛えた山なので、基本的に登山道はぬかるんでいます。雨が降れば沢になるような道ですのでレインスパッツは必携です。

(文=長谷部 勝/山岳写真同人四季)

北アルプス・爺ヶ岳

晩秋の山景を撮影

アーベントロート。鹿島槍ヶ岳までの稜線が美しく染まっている。(写真=伊藤哲哉)

朝陽に照らされる鹿島槍ヶ岳。モルゲンロートが美しい(写真=伊藤哲哉)

10月14日~15日、快晴

抜けるような青空の下、午後2時に種池山荘に到着しました。小休止の後、爺ヶ岳の南峰へ鹿島槍ヶ岳のアーベントロートを撮影に登りました。山肌には落葉後の木々の姿が目立ちます。

撮影後、山荘で夕食をとり、しばし就寝です。夜10時ごろにモルゲンロートを撮影するために山荘を出発。

満月に近い月が山々を照らし、物音ひとつ聞こえません。南峰から見ると鹿島槍ヶ岳の上方には、北極星がありました。南東には、冬の代表的な星座のオリオン座やおおいぬ座があり、撮影意欲が湧いてきます。爺ヶ岳南峰の12時ごろの気温は、手元の気温計によるとマイナス5度で、黒部側から少し風が吹いていました。身体が寒さに慣れていないためか、ダウンや重ね着をしてもかなり寒く感じました。風を避けるため、大町側の斜面にベースを移しました。大町側はまったく風を感じません。そこで、しばらくじっとしていると突然「ワンワン!」と吠える声が聞こえました。犬かとも思いましたが、なにか小動物が威嚇をしたのでしょう。ナワバリに入ってすまないねと思いながら、時々熊よけの鈴を鳴らしながら、過ごしました。

2時ごろになるとダウンやリュックに霜が降りています。もちろんカメラのレンズも同様です。待機か撤収か、決めなければなりませんが、こんな時は、まず腹ごしらえです。その後、湿気がなくなったせいか霜がつくことはありませんでした。

再び撮影開始。4時前には月が立山三山に沈み、月が沈むにつれあたりが暗くなっていきます。月が沈んだ後は天の川が見え、星たちが真夜中の空を支配します。しばらくすると、東の方が白んできて夜明けです。急いで、モルゲンロートの鹿島槍ヶ岳の撮影に備えます。

6時半過ぎには撮影を終え、達成感を味わいながら山荘へ戻りました。徹夜明けにもかかわらず、その足取りはとても軽いものでした。

なお、高山での夜通しの撮影は、気象条件やご自身の体力をよく確認して実施してください。防寒対策はいうまでもなく、次の日の行程を考慮することも必要です。

(文=伊藤哲哉/『改訂新版 千葉県の山』共著者)

※編集部注:種池山荘の営業は10月16日で終了しております。

北アルプス・奥又白

穂高連峰・奥又白で紅葉を愛でる

嘉門次(かもんじ)小屋の囲炉裏(写真=原 誠一)

中畠新道の紅葉(写真=原 誠一)

10月17日~18日、17日雨、18日晴れのち曇り

雨がちな秋空が続いていたため、天気予報とにらめっこをしながら紅葉を楽しむための目的地を選定していたところ、奥又白が浮かび上がりました。

実は小生、オールドクライマーの端くれであったのにもかかわらず、その聖地である奥又白に足を踏み入れたことがありませんでした。

そこで、オールドならではのプラン、嘉門次小屋からの奥又白池ハイクを計画しました。

17日は、雨の中を上高地から嘉門次小屋へ。岩魚の骨酒と岩魚塩焼きメインの夕食を楽しみました。

翌朝は、早朝出発して、徳沢から中畠新道経由で奥又白池までピストン。池に着いたころには、明神岳も前穂高岳も雲の中となり、池の水面に映る山影は写真に収められませんでしたが、念願の聖地を訪れることができて大満足でした。

(文=原 誠一/アルプスネイチャークラブ ・登山ガイド)

鎌倉・台峯~源氏山

丘陵地帯の裏道をつないで歩いてみました

台峯の最高地点から六国見山(左)、鎌倉アルプスへ続く山なみを見渡す。六国見山の中腹に見える寺院は円覚寺(写真=石丸哲也)

左:長窪の切通、右上:谷戸池、左下:左は鎌倉中央公園の棚田、右は中世の墳墓跡とされる瓜ヶ谷のやぐら(写真=石丸哲也)

10月16日、晴れ時々曇り

台峯は北鎌倉駅の西側に広がる丘陵地です。名前のとおり、尾根筋が平坦な台地状。東海道本線側からは六国見(ろっこくけん)山の前山というロケーションですが、六国見山が標高150m足らず、台峯は最高地点でも100m弱の里山ですが、まとまった緑が残されています。現在、鎌倉市が(仮称)山崎・台峯緑地として保全の基本構想を計画中とのことで、コースは歩道として整備されてはいないものの、縦横にトレースがあります。

今回は、北鎌倉駅北側の長窪の切通、鎌倉中央公園とあわせて、なるべく裏道を通りながらたずね、さらに瓜ヶ谷を経て源氏山へ向かうことにしました。源氏山が今回のコース「最高峰」ではあるものの、源氏山までが目的の9割以上を占めている感じです。

たどった道は込み入っていますし、どこを通らねばならないというものでもないので、経路をざっと記しておきます。北鎌倉駅から長窪の切通、多門院、熊野神社、光照寺、神明神社、台峯北側の尾根上、山崎切通、矢戸池、鎌倉中央公園、台峯最高点(展望台)、瓜ヶ谷、源氏山、化粧坂、鶴岡八幡宮、鎌倉駅です。一部、写真で紹介しますが、それぞれネットに情報があるので、興味を持たれた方は、ぜひ調べて、オリジナルのコースで楽しんでください。

鎌倉中央公園も、名前から想像されるイメージと異なり、保全され、棚田もある里山に、広場などが点在していてハイキング気分で歩けます。台峯から公園に沿った東側の尾根を歩いてから入園し、一周したので、歩きごたえもありました。台峯の最高点では、乳児を外気浴している、近所にお住まいらしい夫婦がアウトドアブランドのジャケットを着ていたので、話しかけてみると、おふたりとも山好きで、ヤマケイ出版物の愛読者。近所にこんな穴場があるのがうれしい、子どもが大きくなってファミリーハイキングに出かけるのが楽しみ、と話してくれ、いい思い出になりました。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

中央線沿線・石老山

巨岩群が特徴の山へ

津久井湖にかかる道志橋から寝姿の観音様に似た石老山を眺める(写真=白井源三)

樹木が成長して視野が狭くった山頂から大室山と無雪の富士山を遠望(写真=白井源三)

10月15日、晴れ

国道413号の道志橋下、橋から秋の日差しを浴びる地元で寝姿観音と呼ばれている石老山を眺めた後、出発。国道を左折し、閑静な関口の集落を抜け、登山口をわけて、今日は中腹に建つ名刹、顕鏡寺の駐車場に駐車しました。自販機やトイレも設置されています。奥にはNHKドラマで人気があった白蓮の墓もあります。

なんといってもこの石老山は、登山口から続く巨岩が特徴です。銀杏の巨木に囲まれた境内の洞窟からさらに巨岩が現われます。途中、桜道ハイキングコースがわかれ、南高尾山稜が一望できます。巨岩群最後の岩、八方岩上部で道は合流。融合平展望台からは眼下に相模湖と陣馬山の山並みが快晴の下、一望出来ました。礫岩の狭い登山路や樹林帯を抜けて山頂に立つとまだ雪をまとっていない富士山が、大室山の後方に青く姿を見せていました。

落葉樹林帯や岩の大下りから大明神展望台で再び相模湖、陣馬山の山並み、背後の丹沢山塊を展望して下山です。帰路、船で対岸の相模湖畔に出るのもまた一興。下山口前、プレジャーフォレストの温泉に浸かっての山行も趣きがあります。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

山梨県・雁ヶ腹摺山~稚児落し

秀麗富嶽十二景一番山頂から歩いた静かな縦走路

雁ヶ腹摺山から見た、五百円札と同じ姿の富士山(写真=木元康晴)

明るく開けた稚児(ちご)落しの岩壁。左のピークは岩殿山(写真=木元康晴)

10月14日~15日、14日曇り、15日晴れ

旧五百円札に描かれた富士山の撮影地として知られる雁ヶ腹摺(がんがはらすり)山に登り、そこから稜線をJR中央本線大月駅まで歩く、静かな縦走コースに行ってきました。

スタート地点は大菩薩連嶺の黒岳の東にある、大峠。大月駅からタクシーを利用してアクセスしました。運賃は7390円でした。

大峠からは1時間あまりで、雁ヶ腹摺山に到着。はじめは雲がかかってなにも見えなかったのですが、休憩をしている間に一時的に雲が切れ、期待通りの富士山の姿を望むことができました。

その後は稜線を南東方向へ。途中で姥子山に寄り道し、金山峠を経て大垈山の手前から、いったん金山鉱泉に下山。登山者の利用も多い山口館という旅館に泊まり、体を休めました。

2日目は前日の道を登り返し、まずは大垈(おおぬた)山へ。この一帯は踏み跡が薄く、地形は平坦で同じような小ピークがいくつもあるため、慎重なルートファインディングが必要です。

宮地山に向かう分岐を過ぎると、おおむねコースは明瞭となり、セーメーバン、高ノ丸と樹林に囲まれた静かな山頂を通過。林道が横切るトズラ峠から急な尾根を登ると、「富士山景勝地」と記された標識の立つ展望地があり、もう一度富士山を見ることができました。

その先の笹平を過ぎると稚児落しの岩壁の上に出て、浅利集落に下山。思いのほか長かった縦走コースも終わり、車道を歩いて大月駅へと向かいました。

(文=木元康晴/登山ガイド)

山梨県・乾徳山

紅葉は始まったばかりでした

国師ヶ原から見た富士山(写真=畠山茂信)

頂上直下の大岩を登る(写真=畠山茂信)

10月16日、晴れ

紅葉を愛でに日帰りで出かけました。雲は多いですが暑くもなく寒くもなく、風も穏やかで、絶好の登山日和でした。

登山口からは樹林帯が続きます。見通しがきかず、辛抱の登りです。国師ヶ原に着くと急に視界が開け、正面に頂上に続く尾根が見え、振り向くと甲府盆地とそれを隔てて南アルプスが、そして富士山が大きく見えました。正面の尾根を左に取り、また少し樹林帯を登ると、いよいよ岩場が現われます。鎖が付いているので、慎重に登れば大丈夫です。途中には何ヶ所かテラスがあり、格好のビューポイントと休憩場所になっています。

最後の頂上直下の大岩は右手に迂回路があるので、初心者の方はそちらを利用するのが安全でしょう。そこを越えると頂上です。正面遠くには金峰山の五丈岩も見えていました。

肝心の紅葉ですが、残念ながら始まったばかりで、山麓が少し色付いているだけでした。下山は国師ヶ原までは来た道をたどり、そこからは道満尾根を下りました。樹林帯で見通しはありませんが、比較的なだらかで歩きやすい道でした。

(文=畠山茂信)

南信州・大川入山

晩秋の大川入山に登る

登山口にて。阿智村地域おこし協力隊員のT崎さんとK藤さん(写真=原 誠一)

山頂直下の眺め(写真=原 誠一)

10月11日、曇り

阿智村セブンサミットの一座「大川入山(おおかわいりやま)」に登ってきました。メンバーは、阿智村地域おこし協力隊員のT崎さんとK藤さん。ふたりは登山女子であるとともに、大川入山のある阿智村浪合地区の振興室に在籍しているため、県内外の登山者からの登山道や紅葉などの最新情報の問い合わせが絶えないとのこと。そこで、今回はいっしょに大川入山の現状を調査することとなりました。結果は、登山道、標識などなどまったく異常なしでした。

紅葉も中腹で存分に楽しめました。これから麓の治部坂高原や近くの蛇峠山も含めて、浪合地区の紅葉のハイシーズンがやってきます。

(文=原 誠一/アルプスネイチャークラブ ・登山ガイド)

岐阜福井県境・能郷白山

色づき始めた秋麗の絶景

ナナカマドの向こうに続く秋晴れの稜線(写真=山口敬二)

荒島岳の奥には遠く白山も望めます(写真=山口敬二)

10月14日、曇りのち晴れ

両白山地の最高峰・白山(2702m)を仰ぎ見る能郷白山(1617m)は越美山地の最高峰で、荒島岳(1523m)よりも高く、おしくも百名山の選から漏れた秀峰です。関西からは近いようで遠く、なかなか足を向けにくい山でしたが、やっと今回登ることができました。

主な登山ルートはふたつ。温見峠からのルートと、山名の由来となった能郷谷からのルートがありますが、今回は麓の岐阜県本巣市にある国道157号の道の駅で前夜泊し、ゆっくり寝てから温水峠まで車であがりました。平日にもかかわらず、すでに10台ほどの車が止まっていました。

頂上までのコースタイムは2時間ほどですが、高度を上げるにしたがって青空も広がり、頂上稜線からは奥美濃の山々や白山、御嶽山までも一望です。台地状の山頂にある能郷白山神社奥宮の祠横でお弁当を広げ、色づき始めた秋麗の絶景に酔いしれました。

(文=山口敬二)

飛騨・籾糠山

秋空の下、黄金色に輝く森

籾糠山山頂直下の森(写真=山口敬二)

木平分岐手前の美しいブナ林を行く(写真=山口敬二)

10月15日、快晴

秋の籾糠山(もみぬかやま1744m)をどうしてものぞいてみたかったので、能郷白山から九頭竜川を越えて、飛騨高山の白川郷へと車を走らせました。

朝早く天生峠(あもうとうげ)にあがると、まっ青な秋空の下、黄金色の森が輝いていました。抜けるような空の彼方では、北アルプスの盟主、槍・穂高連峰も気持ちよさそうに横たわっています。

天生湿原ではブナ、サワグルミ、ナナカマドに混じってカエデ、ツタウルシの紅葉が美しく、その先のカラ谷分岐ではブナの巨木たちの黄緑色に圧倒され、そしてカラ谷のダケカンバとブナの原生林ではカツラの落葉の甘い香りに包まれます。うっとりするような森はやがてカツラ門へと私たちをいざない、ここでしばし小休止。青空に映える黄葉を仰ぎながら、籾糠山の頂上にたどり着くと錦繍の山並みの奥の飛騨山脈は小槍も指呼できるほどの鮮明さです。

復路は木平湿原経由の探勝路を選びましたが、終始山の色づきに心踊らせながら歩くことができました。それでも森を巡回するガイドの話を聞くと、今秋は雨続きだったうえに急に冷え込んだため、色づきは充分ではなく、草紅葉も森の木々も例年に比べると紅葉が進んでいないそうです。

(文=山口敬二)

大台ヶ原・日出ヶ岳

この先、色の深まりを期待したいものです

日出ヶ岳山頂付近から見る正木ヶ原(写真=金丸勝実)

ガスに煙る幻想的な針葉樹林(写真=金丸勝実)

10月15日~16日、晴れのち曇り

標高が1695mの日出ヶ岳は大台ヶ原の最高峰で、三重県の山の最高峰でもあります。山頂一帯は吉野熊野国立公園に指定されています。西大台は入山規制がなされていて、事前申請と入山に際しての講習受講が義務化されていますが、山頂を含む東大台は自由に入ることができます。遊歩道が整備されていて、山頂から正木ヶ原、大蛇嵓(だいじゃぐら)を周回するコースが人気です。

今回は都合により夕方から入山し、翌日を尾鷲道でマブシ嶺を往復する予定でしたが、残念ながら二日目は天気が下り坂となり、朝からガスがかかっていたため、堂倉山で引き返してきました。

初日は山頂から夕日の風景と熊野灘と十五夜の月の風景撮影を狙いましたが、残念ながら雲が多く満足のいく撮影ができませんでした。紅葉はシロヤシオ、オオイタヤメイゲツ、ナナカマドなどが色づき始めていました。この先、色の深まりを期待したいものです。

2日目は朝からガスが立ちこめていましたが、天候の回復を期待し、尾鷲辻から尾鷲道を南下しました。しかし、堂倉山まで下っても天候の回復が見込めなかったので引き返しました。ガスに煙るトウヒやウラジロモミの針葉樹林は幻想的で、色づいたイタヤカエデやブナ、カマツカやガマズミ、ナナカマドの赤い実が彩りを添えていました。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

石鎚山系・堂ヶ森

広大な笹原と石鎚山の眺めを満喫

堂ヶ森山頂にて、石鎚山などを眺望しながらの昼食タイム(写真=西田六助)

笹原を行く。後方には面河ダム(写真=西田六助)

10月15日、晴れ

堂ヶ森山行は2年前に計画していましたが、登山コースが森林整備のため通行禁止の連絡が入り、延期していました。今回歩いてみると、作業道が登山道近くの尾根沿いに幾重にも開削されていましたが、登山道は確保されています。

今回のメンバーは西予市・宇和島市を中心とする19名。元気な山歩きの好きな高齢者の集まりです。主催は西予市明浜町教育課の「山あるきんぐ」のグループで、年数回こうして近場の山を案内しています。コースは一般的な登山コースですが、標高差約900m強。

久万高原町の梅が市から登山開始。胸突き八丁の急坂を登り標高1450mの稜線に出ると、前方に大きな反射板をいただいた山頂があり、周辺は緑のじゅうたんを敷きつめたような広大な笹原が広がっていて、登山道が刈り分けされているのが判明しました。前回来た時は笹をかき分けながら登り、大きな窪みに足をとられましたが、今回はその心配はなさそうです。順調に登り、途中から正面に山頂、後方に面河ダム、前年に登った中津明神山や石墨山などを見ることができ、足もとではリンドウが我々を迎えてくれました。

山頂手前の乗越に達すると、前面の鞍瀬の頭の左方に西冠岳・石鎚山が見えています。天気が崩れる前の巻層雲が広がりつつあり、快晴とまではいきませんが視界はよく、最高の登山日和です。

頂上には予定の12時に到着。登り3時間でした。360度の展望を楽しみながらの昼食でしたが、風が冷たく、しばらくすると寒くなってヤッケをとりだし着用しました。

参加者の声によると、石鎚山系は初めてであったが、地元の鬼ヶ城山系とはまた違う、広大な笹原と石鎚山の西方からの眺めが満足だったようです。

食後、集合写真を撮って下山。ゆっくり歩いたと思ったのですが、2時間程度で下山しており、15時に登山口に着きました。

(文=西田六助/分県登山ガイド『愛媛県の山』共著者)

くじゅう・三俣山

快晴の稜線歩きを楽しみました

タデ原湿原とくじゅう連山(写真=池田浩伸)

快晴の三俣山本峰からは、雲海に浮かぶ由布岳が見える(写真=池田浩伸)

10月10日~11日、快晴

長者原~坊がつる~三俣山~長者原を1泊2日のテント泊で周回しました。

10日は連休最後の日で、長者原の広い駐車場は満車に近い状態でした。タデ原の木道を抜けて森に入ると、ひんやりとした冷たく心地よい空気に包まれます。落葉樹の森は、紅葉にはまだ早く緑におおわれていました。

坊がつるでは、光るススキが風に揺れていてとてもきれいでした。四方を山に囲まれた坊がつるの夜は風も穏やかで、満天の星空を見ることができました。

2日目は朝陽が三俣山を赤く染めてスタート。諏峨守(すがもり)越から三俣山へ登ると、阿蘇山、祖母・傾、由布岳などの山々が雲海の上に浮かんだ絶景が広がっていました。

登山道にはリンドウやマイズルソウ、ユキザサの赤い実が目立ちました。紅葉は三俣山山頂部のドウダンツツジがわずかに赤く色づく程度で、まだ早いようでした。

(文=池田浩伸/登山ガイド)

那須・三斗小屋温泉

歩いて訪れる甲斐のある魅力的な山小屋

茶臼岳山麓・ひょうたん池の紅葉(写真=伊東明美)

朝日岳にて。ガスの切れ間にみごとな錦織が現われました(写真=伊藤明美)

10月9日~10日、9日曇り一時雨、10日曇り時々晴れ

いつ行っても風が強い茶臼岳ですが、この日は風速20mに至り、ロープウェイの運行は私たちが降りて30分後に中止となりました。そこで茶臼岳への登頂は見送り、本日のお宿・三斗小屋温泉に向かいます。牛ヶ首ではあまりの風の強さに一時座り込んだほどでしたが、かろうじて姥ヶ平まで下り、ひょうたん池でようやく紅葉を眺める余裕ができました。

三斗小屋温泉は、那須の温泉で唯一茶臼岳の西側にあります。1142年に発見された古湯で、現在お宿は2軒。今回お世話になった大黒屋さんはグループ毎の個室で部屋食。部屋もゆったりで、山小屋というより温泉宿。泉質は無論極上で、歩いて訪れる甲斐がある魅力的な宿でした。

明けて10日はまずまずの天気となり、隠居倉→朝日岳→三本槍岳→北温泉まで歩きました。この3連休ではもっとも天気が安定したせいか、山は多くの登山者で大にぎわいです。特に三本槍への道はもともと細いうえにぬかるみがひどく、道を譲りあうことでさらに混みあい、ガスで展望がないにもかかわらず、山頂は休む場所を見つけるのも難しいほどでした。

中の大倉尾根では、熊笹のじゅうたんに色とりどりの木々が映える稜線を左右に見ながら、天然の錦織に惚れ惚れします。映画『テルマエ・ロマエ』のロケ地となった北温泉に着いたのは午後3時。つくづくもう1泊したいところでしたが、あわただしく一浴し、黒磯駅行きの最終バスを逃さないよう、足早にバス停へ向かいました。

(伊東明美/東京都/よく行く山:関東甲信越の山、日本百名山)

南アルプス・甲斐駒ヶ岳

妻とふたりで「白い山」へ

仙水峠の朝(写真=小林昭生)

地蔵岳のオベリスクとシルエット状の富士山(写真=小林昭生)

10月11日、晴れ

かねてから登ってみたいと言っていた家内に同行して、甲斐駒ヶ岳に行ってきました。

彼女の歩行速度を考慮して仙水小屋に前泊し、翌朝早めの出発に備えました。

当日は小屋のご主人の予想どおり好天に恵まれ、気持ちのいいスタートとなりました。仙水峠には、ちょうど雲海の中から朝日が昇る時刻に到着。ここから急登が始まります。家内のスピードが遅いので途中で待つことしばしば、後続の登山者に次々と追い抜かれ、それでも9時過ぎにようやく駒津峰に到着しました。

振りかえると、黒く光る鳳凰三山の奥に富士山がきれいに裾野を広げています。眼前には甲斐駒ヶ岳が迫って見えます。

ここから往復3時間と計算し、「白い山」を目指して岩場を下っていきましたが、8合目で引き返すことにしました。予定より時間がかかり、帰りのバスに乗れるかどうか心配になったからです。

早めの下山となりましたが、岩崎元郎さんがいうところのハナマル登山です。しかし、亭主としては、いささかザンネン登山の山行となりました。

(小林昭生/奈良県/75歳/よく行く山:金剛山系はじめ関西一円の山々)

ニュージーランド・エベル・タスマン・コーストトラック

ニュージーランドグレイトウォークのひとつ

黄色い砂が輝いて見えるオネタフイビーチ。ジャングルから出て砂浜を歩き、またジャングルへ入る(写真=大久保かがり)

潮が引いた干潟を歩くハイカー(写真=大久保かがり)

10月12日~16日、雨のち快晴

エベル・タスマン・コーストトラックはニュージーランドグレイトウォークのひとつで、海沿いを歩くのが特徴です。

当初、マラハウから4泊5日で北上する計画でしたが、干潮時に干潟を歩ける時間を合わせるのが難しかったため、北から南下するルートを取ることにしました。1日目はまずマラハウからボートでトタナウイへ向かいます。小雨の中、波も高く、ジェットコースターのように手摺りにつかまって1時間半乗り、ビーチに上陸しました。ファリファランギ小屋まで4時間ほど、シダに覆われたジャングルを歩いたり、黄色い砂浜を歩きます。途中、セパレーションポイントという岬に上がると灯台があり、眼下に青い海、ニュージーランド南島北端の東西の半島、遠くには雪山も見ることができました。

ファリファランギ小屋はこの時期まだ管理人はいませんが、マットレスのついたベッドや薪ストーブ、トイレを使えました。

翌日ギブスヒルへ登り、ひとまわりしてからアワロア小屋を目指します。小屋の直前で渡る干潟は干潮が2時で、前1時間半、後2時間の間に渡ることができ、迂回路はありません。貝殻がたくさんあるので途中まで靴のまま歩き、まだ流れが残っているところから裸足で歩きました。水が冷たくて気持ちよいのですが、足の裏が痛かったです。

20分ほどで渡り切り、アワロア小屋に到着しました。夜暗くなるころ湾に潮が満ちて、目の前は海になりました。1日で50分ずつぐらい干潮と満潮の時間がずれていく変化を間近で見て、とても感心しました。

1日12kmぐらい歩き、ルートはビーチとジャングルを行き来します。半島を越える時に登りがありますが全体的にはなだらかです。最終日、5日前にボートに乗ったマラハウへ到着し、約70kmのトレッキングを終えました。

(大久保かがり/東京都/よく行く山:北アルプス)

第六十五回

山ごはん、なにを食べても美味しそう(あい)

山ごはん、家ごはんより気合メシッ!(あられちゃん)

寒風を突き進み見る紅葉山(ガンバ)

すごい下り、ホントに登ったっけ、こんなとこ(にいしばG)

天気図を描く岳人は絶滅危惧種?(山形山人)

【寸評】

一句目、久しぶりの投稿、あいさん。ほんわかとした、秋の日差しのような優しい句ですね。

二句目、あられちゃん。あいさんと同じ山ごはんネタですが、こちらは力が入っています。山のほうが工夫を凝らすので、気合が入るのはよくわかります!

三句目、こつこつと標高をあげているガンバさん。寒さに首をすくめつつ、ぱっと開けた視界に飛び込んでくる紅葉の鮮やかさが目に浮かびます。

四句目、にいしばGさん。私も登りより、下りが苦手です。ヒザが痛くなるんですよね・・・・・・。

五句目、山形山人さん。テントの中でラジオに耳を傾けながら書いた天気図。「イシガキジマ、トウナントウ、フウリョクニ・・・・・・」。懐かしいですね。

【段位】あいさんとあられちゃんにはそれぞれ「3000m」級を、ガンバさんには「7000m」級を授与します。にいしばGさんは「K2」に登頂し、いよいよエベレストB.C.へ出発。山形山人さんはエベレスト「C1」から「C2」に到着!

【応募方法】

山に関する川柳を募集します。投稿先メールアドレスは「weekly@yamakei.co.jp」です。メールの件名には必ず「週刊ヤマケイ・山の川柳」とお書きください。ペンネームでの投稿も受け付けております(読者の登山レポートはペンネームでの投稿不可)。

なお、ご投稿いただいた方には1000m峰から始まる「山の川柳段位」を授与します。ふるってご応募ください。

週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

「夏休み 孫と一緒に 百名山」

「お父さん 登山道具を 片付けて」

「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

山で体験したちょっといい話や不思議な話、使って役立った装備や安全登山のための工夫、昔の登山の思い出などを募集します。お気軽にご投稿ください。こちらの投稿もペンネーム可です。文字数は400字以内でお願いします。


投稿先メールアドレス

weekly@yamakei.co.jp

※メールの件名に必ず「週刊ヤマケイ・表紙写真応募」または「週刊ヤマケイ・読者の登山レポート投稿」「週刊ヤマケイ・山の川柳」「週刊ヤマケイ・よもやまばなし」とお書きください。

※表紙写真に採用された方、読者の登山レポートに採用された方には週刊ヤマケイのロゴ入り測量野帳を進呈します(初回のみ)。また山の川柳で高段位になられた方にも測量野帳を進呈します。どしどしご応募ください。

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著者:山本素石/発売日:2016年10月7日/販売価格:1,200円+税/ページ数:284ページ/判型:四六判/ISBN:978-4-635-32015-3

10月の新刊
商品名 発売日 販売価格(本体価格)
『根本達久写真集 空から見た日本の名峰』 10/4 2,500円+税
『逃げろツチノコ』 10/7 1,200円+税
『新編 山小屋主人の炉端話』 10/14 1,300円+税
『山と溪谷』11月号 10/15 952円+税
『関西ハイキング2017』 10/17 933円+税
『ときめくインコ図鑑』 10/21 880円+税
ヤマケイ文庫『あやしい探検隊 バリ島横恋慕』 10/21 600円+税
『くらべてわかる野鳥 文庫版』 10/21 880円+税
『分県登山ガイド 愛媛県の山』 10/21 1,900円+税
『児玉毅のよくわかるバックカントリースキーテクニック』DVD付 10/28 2,200円+税
『skier2017』 10/31 1,100円+税


ヤマケイ登山教室からのお知らせ

【国内】地図読み講座(実践・初級編)西丹沢・大野山

美しい大野山の頂上一帯は、近年まで牧場だった草原が広がり、富士山をはじめ箱根や丹沢の山々が一望のもと。秋晴れの期待できる時期、地形図とコンパスを活用し、頂上から見える山を調べる山座同定にも取り組みます。

http://www.yamakei-online.com/tour/detail.php?tour_id=182993

日程 11月12日(土)
集合 JR御殿場線谷峨駅集合(9:10)
行程 谷峨駅~頼朝桜~大野山~地蔵岩~大野山登山口~JR御殿場線・山北駅(解散16:30予定)
参加費 8,000円
最少催行人数 15名
講師 佐々木 亨

【机上講習会】山のリスクマネジメント「山のリスクを考える」

山のリスクについてあらゆる視点から学びます。潜在するリスク、出現するリスクを分析そして理解し、リスクの低減を図る方法を学習します。毎回、短時間ではありますが、ロープワークなどの実技講習も行います。

http://www.yamakei-online.com/lecture/detail.php?id=2343

開催日 10月25日(火)
会場 アルパインツアーサービス本社 特設説明会場(3階)
時間 19:00~21:00
定員 35名(最少開催人数10名)
受講料 3,000円
講師 武川俊二(日本山岳ガイド協会常務理事)
株式会社山と溪谷社
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1丁目105番地
編集長
久保田賢次
編集スタッフ
佐々木惣
アートディレクター
松澤政昭
SSデザイン
塚本由紀(T&Co.)
技術サポート
福浦一広、金沢克彦

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本誌は、できるだけ正確な情報を掲載するよう心がけておりますが、山行時はご自身で現地の最新情報のご確認をお願いいたします。