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今週末の「山のワンポイント天気」

ウェブサイト「山の天気予報」を運営し、メールでの天気予報配信も行なっている株式会社ヤマテンの気象予報士、河野卓朗さんによる解説です。今週末の山行に役立ててください。

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新年、あけましておめでとうございます。皆さんの2017年の登り初めの山はどこでしたか? 私は茅野市からほど近い、入笠山でした。山頂からは八ヶ岳や南アルプスはもちろん、奥秩父や富士山、北アルプスや中央アルプス、御嶽山まで、中部山岳を中心に360度ぐるっと見渡せ、「今年はあの山に行こう…」などと思いを馳せるのにうってつけの山です。雪山といえるほどの積雪はありませんでしたが、湿原を流れる沢は表面が凍り、その下を気泡交じりに水が流れる様は独特で、寒い季節ならではの光景を楽しむことができました。

さて、今週末の天気ですが、14日(土)と15日(日)ともに強い冬型の気圧配置となるため、日本海側を中心に、広い範囲で大雪や大荒れの天気となるおそれがあります。関東地方南部の山岳では、比較的天気の崩れは小さいですが、14日は強い寒気が入るため、にわか雪の降る不安定な天気となるおそれがあります。気温が低く、登山の際にはしっかりとした防風・防寒対策が必要でしょう。

また、ヤマケイ登山教室の空見ハイキングが、1月21日(土)~22日(日)に三峰山&美ヶ原で、2月7日(火)に入笠山で、2月18日(土)~19日(日)には北信・飯綱山&戸隠高原でおこないます(日程が変更になっております)。講師はヤマテン代表の猪熊です。天気だけでなく、冬山におけるリスク管理なども学ぶことができますので、ぜひご参加ください。登山教室の詳細やお申込みは下記よりご確認ください。

http://alpine-tour.com/japan/2016_10/010ta.html

それでは、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

(文責=河野卓朗)

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「山の天気予報」(月額324円)

コーヒー1杯分のご利用料金で、全国18山域の山頂天気予報や大荒れ情報、予想天気図、ライブカメラ、雨雲レーダー、観天望気講座などが1ヶ月使い放題。メールでの天気予報配信登録もおこなえます。サービスの詳細やご登録方法につきましては、下記URLでご確認ください。

https://i.yamatenki.co.jp/

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『山の天気にだまされるな!』

ヤマテンの猪熊隆之さんの著書『山の天気にだまされるな!』が好評です。一般の天気予報だけでは防げない気象リスクについて解説。猪熊さん自身が生徒を連れて登る「お天気ハイキング教室」の具体例などもとりいれて、わかりやすく解説しております。ぜひ一度、手にとってみてください。

https://www.yamakei.co.jp/products/2815510190.html

山岳遭難防止術

登山ガイドが実体験から遭難防止を考える【連載21】

ずさんなプランニングが原因で冬の八ヶ岳でビバーク

年末年始、それに成人の日がらみの3連休と休日が続きました。この間に、今年最初の登山に向かった方もあるでしょうし、また新年ということで、今年の山行目標やプランニングを練り上げた方もいると思います。

ところで山の遭難事例を調べると、プランニングそのものに遭難に至る要因があったのではないか?と思われるものも少なくありません。ここでぜひ、練り上げたプランの内容を、もう一度吟味してみることをおすすめします。

特にひと通り経験を積んで、実力のついてきた中級レベルの登山者は、無理なプランを立案しがちなので注意が必要です。思い返すと私もかつては、そういったプランを立てて危ない思いをしたことが何度かありました。特に記憶に残るのは、1999年2月中旬の週末2日間で向かった、八ヶ岳の山行でした。

そのころの私はサラリーマン。一週間の仕事を終え、金曜日の夜遅くに友人の車で都内を出発。山行のプランは美濃戸口で仮眠をとった後、土曜日の早朝から行動開始。行者小屋のキャンプ場にベースとしてテントを設置した後、赤岳南西面の立場川源頭部の岩稜を登り、翌日は別のルートを登攀するというものでした。

ところが出発後のペースははかどらず、テントを張って文三郎道の赤岳と中岳の分岐に着いたのはすでに昼近く。そこから立場川方面に下り、目的の岩稜に取り付いたのは午後1時を過ぎてからでした。さらに目指したルートの状態は悪く、途中で敗退することになったのでした。

その後は来たコースを引き返したのですが、立場川からの登り返しは長く、赤岳と中岳の分岐に戻ったのは20時頃。その間に天候は悪化し、尾根を越えて行者小屋側の斜面に踏み出したとたん、吹雪にさらされることに。ここで行動中止を決断し、風の当たらない立場川側に戻ってビバークすれば良かったのですが、どうしてもテントに戻りたいと考えて下山を続行。しかし吹雪の夜にヘッドランプを灯しても、目の前に浮かび上がるのは横なぐりの雪ばかりです。下山路を探し求めつつ、30分も動き回ってけっきょく行動を断念。もはや立場川側に引き返すことすらできなくなってしまい、ツェルトをかぶって吹雪を耐える、非常に辛い一夜を過ごしたのでした。

今この山行を振り返ると、タイムマネジメント意識の欠落や天候判断の甘さ、ビバーク決断の遅さなど、反省点は多々あるのですが、一番の問題点はプランニングそのものにあったと思います。睡眠時間を削った所要時間ギリギリのタイトなスケジュールで、何かのアクシデントによる時間ロスへの考慮は一切なし。自分たちの力量を過信した、ずさんな計画でした。

冬の赤岳。左手の赤岳西壁の下あたりで身動きがとれなくなってしまいました(写真=木元康晴)

登山以外の目的はできるだけ取り除いたほうが安全

プランニングではタイムマネジメント的な細かな部分で無理のないようにすることも大切ですが、もっと大切なのは自分の技術、体力、経験に応じた行き先を選ぶことと、登る時期が適切であることです。

さらに念頭においておきたいのは、純粋に登ること以外の目的をプランに盛り込むと、危険度を増す場合がある、ということ。その目的を達成するために、無理な行動をしがちだからです。

例えば日本百名山全山登頂という目標も、プランニング次第では危険に結びつくこともあり得ます。天候などを判断しつつ、確実にひとつずつ登るにはいい目標ですが、

「今年は必ず●座登る!」

といったプランを立ててしまう人もいるでしょう。しかしこれでは目標の登頂数に向けて、悪天候をおして登る場面も増え、リスクは高まります。以前私がガイドをした日本百名山を目指すツアー登山でも、風雨の激しさから登頂断念を検討していると、

「今年はこの山を必ず登る予定だから、ぜったい頂上に向かってください!」

という参加者は多く、困ってしまうことが少なくありませんでした。

あとは遠くに住む知人と山の頂上で待ち合わせるといったような、約束事の達成を目的として山に向かったりするのも、行動に無理を生じがち。とにかく、現地での状況判断を惑わせる登山以外の要因は、できるだけ排除したほうが安全です。

なお自分の技術や体力は経験を積み重ね、トレーニングをしていくことでグングン伸ばしていくことが可能です。ひとつの山行が、次の山行のトレーニングにもなるようなステップアップの方法を考えて、年間のプランニングを組み立てていく、というのが楽しいですし、理想だといえるでしょう。

(文=木元康晴/登山ガイド)

日高山脈・佐幌岳

十勝平野をのんびり眺めながらの山スキー

雪庇に気をつけながら頂陵部を歩く(写真=谷水 亨)

歩いてきた稜線を振り返る(写真=谷水 亨)

12月26日、曇り、トレースなし

山スキーが初めてという所属山岳会の新人を連れて、日高山脈の北端の山、佐幌岳(1069m)に登ってきました。今回のコースは、十勝平野を右手に眺めながら頂稜部を歩き、スキー場を滑って降りてくるという、山スキー初級者にはうってつけのコースです。

北海道を東西に分ける日高山脈の北端に、昔からの交通の要所である狩勝峠(650m)があります。そこから、スキーで4つのピークをアップダウンしながら頂稜部を歩きます。終始稜線を歩くため、雪庇には注意が必要です。また、風が非常に強いので寒さ対策をしながら、そしてバランスを崩さないよう、新人をサポートしながら歩きました。

このコースの夏道は笹藪のなかを歩きますが、冬は視界をさえぎるものはなにもなく、十勝平野をのんびりと眺めながら歩けるので、冬に歩くのがおすすめの山だと思います。

3時間30分で強風のなかを佐幌岳に立ち、記念写真を撮るとすぐにスキー場側へ降ります。50mほど下るとリフトの頂上駅に到着。そこからスキーヤーと同じく楽しみながら滑り、デポしていた車に乗り込んでスタート地へ戻りました。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

富良野周辺・トマム山

積雪、雪質、斜面ともに満足だった一日

トマム山から延びる北稜線と同行者(写真=谷水 亨)

トマム山上空に救助ヘリがホバリングしていた。稜線の向こう側がスキー場(写真=谷水 亨)

12月31日、曇り時々晴れ、トレースなし

星野リゾート・トマムスキー場を有するトマム山に山仲間と登ってきました。

トマム山はその山頂から3つの稜線が伸び、スキー場はその東南東斜面に展開されています。私たちはスキー場とは逆の西北西からアプローチして北に伸びる稜線のピークに取り付き、その後トマム山山頂へと登ることとしました。

車止め位置から牧草地の端を1.7km歩き、森のなかへと入っていきます。その先の林道の橋が崩落していたため、スノーブリッジを探して沢沿いを詰め、沢を渡ると作業道に出ることができました。ルートはたくさんありますが、せっかく作業道に出くわしたので、今回はそのまま利用して終点まで登ります。

その後は1145mピークを目指し、約40cmのヒザ下ラッセルで標高差450mの急勾配を登ります。1145mピークからはクラストした稜線を登り詰めてトマム山(1239m)山頂に立ちました。東南東をのぞくと、ゲレンデを滑走する多くのスキーヤーが見えます。

しばらく風景を楽しんだ後、戻ることにしましたが、1145mピークの左右にあるオープン斜面は雪付きが悪くクラストしていたため、1145mピーク直下の樹林帯を滑ることに。積雪、雪質、斜面とも満足のいく山スキーとなりました。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

北アルプス・燕岳

白イルカに逢えました

12月28日の白イルカ(写真=原 誠一)

1月6日の黒イルカ(写真=原 誠一)

12月27日~29日

冬毛のライチョウを見ようと燕岳を目指しました。初日は小雨のなか、ゲート手前に車を止めて、12.5kmの林道を傘をさしながらひたすら歩きます。雨は観音峠過ぎから雪へと変わりました。中房温泉に一泊して、雨で濡れたウエアを乾かしました。

二日目、うっすら新雪に覆われた合戦尾根に取り付き、先行の単独行者のトレースを追いました。ワカンの出番はいつごろかと思いつつ登高していると、合戦小屋から上部は、燕山荘の従業員の方々がしっかり登山道を踏み固めてくださっていたので、アイゼンだけで燕山荘までたどり着くことができました。

その後、燕山荘にワカンなどをデポし、燕岳を目指しましたが、そこからはノートレースで、風下に回るとヒザ上から腰までラッセルを強いられました。

燕岳山頂は、風は強かったものの快晴で、穂高連峰、槍ヶ岳、裏銀座、後立山連峰、上越国境、八ヶ岳、富士山、南アルプスと360度のパノラマを堪能できました。

帰りには、一面、エビの尻尾でおおわれた真っ白なイルカ岩を写真におさめることができましたが、ライチョウには逢えずじまいでした。

〈後日談〉年が明けての1月6日、再度ライチョウウォッチングのために燕岳を訪れましたが、その時のイルカ岩はいつもの黒イルカに戻っていました。なお、両日ともお目当てのライチョウは足跡だけでした。

(文=原 誠一/アルプスネイチャークラブ ・登山ガイド)

北アルプス・上高地

静かな上高地を楽しみました

穂高連峰のアーベントロート。赤く染まる峰々がとても印象的だ(写真=伊藤哲哉)

霞沢岳付近から昇る冬の大三角形。冬の代表的な星たちの競演である(写真=伊藤哲哉)

12月29日~31日、曇りのち晴れ

12月29日(木)午後、上高地に入りました。天気は下り坂で、夜まで曇っていました。この日は翌日に備えて体力を温存。

翌朝、天気が回復傾向になり、明神に向かいました。朝は黄金色に輝く明神岳を眺めることができました。河童橋に戻り、お昼すぎまで、穂高連峰が顔を出すまで待機します。しかしながら、全容を拝むことはできません。岳沢湿原を散策し、夕方になると、突然、穂高連峰が見えてきました。急いで、大正池に戻り、撮影を開始します。夕暮れまでの時間は、滅多に拝めない素敵なアーベントロートを見ることができました。

好天は夜も続きました。この日は徹夜の覚悟で臨みます。大正池から上高地まで、あらかじめ決めておいた場所で南天や北天の空を撮影していきます。午前3時ごろ、焼岳に沈むオリオン座を撮影して終了です。

朝、日の出に輝く連峰を撮影し、ホテルに戻りました。帰りの、中の湯バス停までの足どりは軽いものでした。

(文=伊藤哲哉/『改訂新版 千葉県の山』共著者)

南アルプス・仙丈ヶ岳

雪をまとった南アルプスの女王

小仙丈沢カールと仙丈ヶ岳(写真=金丸勝実)

左上から時計まわりに、稜線から見る北岳と富士、八合目から山頂に続く稜線、こもれび山荘での団らん、年末年始も営業のこもれび山荘(写真=金丸勝実)

12月25日、曇りのち晴れ

12月24日から山に入り、25日に登攀してきました。

仙丈ヶ岳は、北沢峠を挟んで対峙する甲斐駒ヶ岳の屹立した山容に対し、そのなだらかな山容から、南アルプスの女王と呼ばれています。夏は花が多いので有名ですが、厳冬期の雪化粧した姿も大変魅力的です。しかし冬の3000m峰は厳しく、容易には山頂を踏ませてくれません。そこで気象予報により、風速が10m未満で晴れの日を登攀日に選びました。

夏は北沢峠までバスで上がれ、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳ともに日帰り山行が可能ですが、積雪期は山麓の戸台から歩くことになります。戸台川の河原が登山口で駐車場にもなっています。戸台川に沿って緩やかに高度を上げ、約4時間で赤河原分岐に到着。ここで丹渓新道が分岐します。北沢峠までは高低差500mの登りで、傾斜のきついのが八丁坂です。積雪はそれほど多くなく、アイゼンやワカンもつけることなく北沢峠までたどりつけました。

今回は、年末年始の営業をしている北沢峠の「こもれび山荘」でお世話になることにしました。この日は小屋泊、テント泊ともに数パーティが入山していました。暖かい小屋で鋭気を養い、明日の登頂に備えます。

翌日、穏やかな朝を迎えました。小屋の朝食をすませ、6時過ぎに北沢峠を出発。夏のコースタイムは登りが4時間、下りが3時間ですが、厳冬期は積雪と風に大きく左右されるので、参考にはなりませんが、ターニングポイントを13時と決めました。

北沢峠から大滝の頭までは樹林が続きます。積雪もそれほど多くなく、前日のトレースに助けられ、ほぼ夏タイムで五合目に到着。六合目から森林限界となり、一気に展望が開けてきます。心配した風もそれほど強くなく、クラストした雪面にアイゼンがよく効き、10時過ぎに小仙丈ヶ岳2855mに到着しました。

ここからは稜線に沿って仙丈ヶ岳まで進みます。天候は予報通り、曇りから晴れになり、小仙丈沢カールを従えた仙丈ヶ岳を正面に見ながらの稜線歩きは格別でした。南アルプスの全山、富士山、八ヶ岳、中央アルプス、北アルプス、白山など中部山岳の山々が一望できました。風もそれほど強くなく、ラッセルを強いられることなく、八合目までは順調に進めましたが、その先はアイスバーン化した雪面となり、軽い体重の女性のアイゼンやピッケルの効きが悪くなったので、ロープを使いコンテ(※1)で進むことにしました。少しもたつきましたが、山頂には12時50分に到着できました。心配した風もそれほど強くなく、風裏で少し休憩し帰路につきます。

アイスバーンになっている斜面は登りよりも下りが危険なため、八合目まではスタカット(※2)で対応しました。その後は順調に下り、16時30分に北沢峠に到着しました。

小屋に帰ると夕食は豪華なクリスマスメニューが待っていて、登頂できた充実感に浸りながら食べるチキンとポトフは格別でした。翌日は下山のみということで気持ちも軽く、暖かく快適な小屋でスタッフや登山者と山談義に花を咲かせ、楽しい夜を過ごしました。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

※1コンテ=コンティニュアス・クライミングの略。ロープで結び合ったふたり以上の者が同時に移動する登り方。

※2スタカット=スタカット・クライミングの略。ロープで結び合ったふたりのうち、ひとりだけが移動し、他方は確保して、これを繰り返して交互に移動する登り方。

※編集部注:こもれび山荘の年末年始の営業は1月10日までです。

南アルプス・観音岳

鳳凰三山最高峰を目指す、南アルプス雪山入門コース

天気の良かった1日目に夜叉神峠から見た、北岳(右)と間ノ岳(左)(写真=木元康晴)

観音岳頂上直下を登る。背後は薬師岳(写真=木元康晴)

1月2日~3日、2日晴れ、3日曇り時々小雪

南アルプス・鳳凰三山のうちの2座、薬師岳と観音岳とを登りに行ってきました。コースは夜叉神峠からのピストンです。

初日は甲府駅からタクシーで夜叉神峠登山口へ。ひと登りでたどり着いた夜叉神峠は、1月であるにもかかわらず積雪ゼロ。まるで秋を思わせる景観でした。

そこからは杖立峠を経て火事場跡を過ぎると、登山道全面が凍結した状態になり、アイゼンを着用して歩行。宿泊先である南御室小屋へと向かいました。

南御室小屋の宿泊者数は30名程度。年始ということで夕食時にはお神酒、朝食時にはお雑煮を振る舞っていただきました。

朝食後はすみやかに出発。樹林帯のなかで日の出を迎え、工事中で営業していない薬師岳小屋前を過ぎ、薬師岳へ。さらに森林限界を超えた稜線を歩き、観音岳の頂上に立ちました。薬師岳と観音岳の間は、積雪は少なかったものの凍結している箇所もあり、慎重に通過しました。この日は曇り空に小雪が混じる天気で、期待した展望はほとんどない状況。縦走路の先に、うっすらと地蔵岳の姿が見える程度でした。

(文=木元康晴/登山ガイド)

北八ヶ岳・北横岳

樹林帯を抜けると、強い北風にさらされました

北横岳山頂(北峰)にて。奥は蓼科山(写真=畠山茂信)

七ツ池はまだ氷が薄かったです(写真=畠山茂信)

12月23日、霧のち曇り

北横岳はロープウェイで一気に2200mまで上がることができ、頂上はそこから1時間半ほどで途中にそれほど難しい箇所もないので、初心者の冬山入門には最適です。

この日の天候は強い冬型で、ロープウェイ山麓駅は雪。山頂駅は霧で、強い北風が吹いていて見通しはききません。寒々とした風情の坪庭を過ぎ、北横岳ヒュッテへの急登にかかると、木々に囲まれたせいか風が途端に弱まりました。

ヒュッテで休憩の後、頂上に向かいます。頂上直下までは樹林帯で風はほとんど感じませんが、南峰に上がるとさえぎるものがなく、強い北風にさらされました。霧で見通しもきかないため、そのまま北峰に移動します。北峰に到着した直後、霧が晴れ、雲の切れ間から陽がさしてきました。遠くの景色は望めませんが、眼前に蓼科山の美しい姿が現われ、感動的でした。

しばらく景色を楽しんだ後、下山にかかります。積雪量が少ないので雪が薄く、アイゼンが雪に隠れた木の根や岩に当たるので、転倒しないよう気をつけました。途中で七ツ池に立ち寄りました。全面結氷はしているものの氷が薄く、上を歩くことはできませんでした。

この日はクリスマスの3連休初日でしたが思ったほど混雑はしておらず、ゆっくりと雪山を楽しめました。

(文=畠山茂信)

北八ヶ岳・天狗岳

ダイヤモンドダストを見ることができました

天狗岩の右側を巻いていけば東天狗岳の頂上です(写真=日向俊雄)

霧氷がついた木々の間から、ダイヤモンドダストがきらきら輝いて見えました(写真=日向俊雄)

12月28日~30日、おおむね晴れ

山仲間3人で、しらびそ小屋を拠点に2泊3日で温泉と山を訪ねてきました。天狗岳は『山と溪谷』12月号の特集「ステップアップ本格雪山登山」でも紹介されている、小屋泊まりで雪山を楽しめる山です。

初日は、みどり池入口の駐車場を昼過ぎに出発してしらびそ小屋へ。翌日、天狗岳山頂をめざしましたが、中山峠でガスに覆われたので、目的地を本沢温泉の野天風呂に変更。3日目にやっと東天狗岳を往復しましたが、この日程変更が幸いして、稜線では素晴らしい景色を見ることができました。前夜に軽い降雪があり、かなり冷え込んでいて、稜線の木々は霧氷となっています。朝のうち出ていた霧も、峠に上がったころから少しずつ晴れてきました。樹林帯を抜けた先で、斜め前方から太陽光が射すところにダイヤモンドダストが現われ、サンピラーと呼ばれる紡錘形の輝きも見られました。幸先の良い一年になりそうです。

(文=日向俊雄)

八ヶ岳・ジョウゴ沢

2017新春アイスを快晴無風のジョウゴ沢で

小さいナイアガラの滝(写真=川﨑拓兵)

ナイアガラの滝の落ち口に登ると眺望が開けます(写真=川﨑拓兵)

1月6日、晴れ

八ヶ岳のジョウゴ沢は、冬には凍って楽しいアイスルートになります。普段は風が強く、ゴルジュ帯では猛烈な風の通り道になるのですが、この日は快晴無風の穏やかな天気に恵まれました。

赤岳鉱泉小屋を出発してジョウゴ沢の取り付きへ向かいます。F1は雪に埋もれてはおらず、氷が露出してアイスクライミングのよいウォーミングアップになります。F2もかろうじて凍っていましたが、右側は薄く壊れやすいので左を登りました。ナイアガラの滝は雪不足の影響で小さかったのですが、そこを登って詰め上げて稜線に出ました。

稜線からの眺望はとても素晴らしく、のんびりと楽しむことができました。

風や雪、気温といった条件により一喜一憂の氷瀑ですが、安全管理をしっかりして楽しみましょう。

(文=川﨑拓兵/オフィスカワサキMountainGuide やまんど塾)

※編集部注:このルートは雪山の一般ルートではありません。アイスクライミング技術や装備を身につけていない初心者、初級者は安易に立ち入らないでください。

奥多摩・雲取山

2016年の登りおさめに、標高2017mの山へ

奥多摩小屋~小雲取山間にて。奧に富士山(写真=中村重明)

三条ノ湯(写真=中村重明)

12月31日~1月1日、快晴

2016年の登り納めに、標高2017mの雲取山に登ってきました。その標高から2017年にちなんで人気が急に高まったようで、7:45時点で小袖乗越の駐車場はすでに満車。そこに荷物をデポして、青梅街道まで戻って駐車して登り返しました。その先雲取山山頂まで登り下りとも登山者は多数でした。

雲取山登山は3回目ですが、これまでで最高の天候と展望に恵まれました。堂所から山頂までの区間では富士山、白嶺三山、飛龍山の素晴らしい展望を楽しみながら登ることができ、さらに山頂からは浅間山や都心方向の展望も得られました。

山頂で富士山をバックに2017.1mの刻印のある山頂碑の写真を撮った後、三条ノ湯まで下山。この下山路では鴨沢からのルートとは打って変わって、出会った登山者は1名のみでした。三条ノ湯では、極上のお風呂と美味しい夕食を堪能。翌日、元旦の朝食はお屠蘇、お雑煮、黒豆、昆布巻、紅白蒲鉾などのお正月メニューでした。

なお、今回は三条ダルミ・三条ノ湯間で一部凍結した箇所があったほかは登山路上に積雪凍結もほとんどなく、滑り止めは結果的に使わずじまいでしたが、天候次第で状況は一変するため、アイゼンの携行は必須と思われます。

(文=中村重明)

奥多摩・日の出山

関東平野から昇る初日を拝みました

上から東京スカイツリーと新宿方面の高層ビル群、整った姿の麻生山、養沢和太鼓の演奏(写真=石丸哲也)

当日の初日を使って作成した年賀状。今年の西暦年号の山である雲取山の標識と富士山も使ったところ、雲取山の標高が「2017.1」mで、2017年1月と読めることを発見(写真=石丸哲也)

1月1日、快晴

大晦日から元旦にかけて、首都圏では終夜運行や未明の臨時の列車が運行されています。公共の交通機関を利用して夜が明ける前に登り、山頂で初日を拝める山がいくつもあります。そのなかでも人気が高い、奥多摩の日の出山へ行ってきました。終夜運行される御岳山のケーブルカー、JR青梅線の臨時列車と接続するバスを利用すれば、標高約880mのケーブルカー御岳山駅まで運んでもらえます。

このエリアの特長は初日を見られるスポットが豊富なこと。御岳山駅かたわらの御岳平園地、その上にあり臨時営業のリフトで登れる富士峰、御岳山への表参道や御岳山付近、長尾平などがあります。いちばん人気は御岳山駅から1時間足らずの日の出山で、関東平野が目の前に開けてダイナミックな初日を拝めますし、日の出山という名前も初日の出スポットにぴったりです。

日の出山の南側に頭をもたげる麻生山が一昨年の秋、山頂東側が伐採されて展望の山に生まれ変わったばかり。ちょっと離れていることもあり、初日の出の穴場と思われ、当初はここを考えていました。しかし、御岳山山頂の武蔵御嶽神社に初詣をして、長尾平入口の長尾茶屋に寄って、「天空ソムリエ」川崎直之さんにごあいさつしているうちに時間が厳しくなってしまいました。広々して混雑を避けられる長尾平も考えましたが、関東平野から昇る初日を拝みたく、日の出山に変更。日の出の25分ほど前の6時20分に着き、無事、場所も確保できました。

当日は地平線近くに雲があり、太陽が顔を見せたのは6時54分でしたが、大地を赤々と染めて昇る、見事な初日で、周囲からは歓声があがります。丹沢山地の上には富士山も顔を出していました。例年より暖かく、ほぼ無風で、穏やかな一年の始まりを山の上で迎えられました。

日が昇り、明るくなってから、金比羅尾根を下山。つるつる温泉へ下る登山者が多いのですが、今回はしっかりと歩いて瀬音の湯へ下る計画です。つるつる温泉より混まないであろうことも選択の理由でした。地表付近にたなびく霞の上に顔を出す都心のビル群や東京スカイツリーが眺められ、「高層ビルの群れが/砂漠の中の蜃気楼に見える/都会の朝」で始まる五輪真弓さんの「空」を頭の中で再生しながら麻生山へ。

静かな山頂でお茶を淹れて憩い、瀬音の湯で入浴。新年を祝う乾杯の後、思いがけず養沢和太鼓の演奏を聴けました。勇壮で力強いパフォーマンスに新年の高揚感がいや増し、帰宅の途に着けました。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

神奈川県北・津久井城山

家族連れにもおすすめのコースです

津久井湖三井側湖岸よりご来光とシルエットの城山(写真=白井源三)

城跡、城山山頂より手前の山が南山、後方に丹沢山塊が広がる(写真=白井源三)

1月1日、快晴

穏やかな元日の朝、横浜ランドマーク後方から登る初日の出を拝みました。朝日に染まる津久井湖の上に、城山が黒いシルエットになっていました。

津久井湖観光センター前、春は桜のトンネルとなる登山口から山頂を目指します。城山北面は江戸時代に植えられたヒノキや落葉広葉樹などが茂っています。山城だった城山はふたつのピークを持っており、鞍部から左、まず鷹射場に登ると、柔らかな陽を浴びた相模原市の町並みの後方に都心ビル群はすでに霞んでいました。引き返して、山城の特徴のひとつ、引橋を越えて城跡の城山山頂へ向かいます。眼下に丹沢山塊の前衛となる南山が横たわり、頼りない雪をかすかにまとった最高峰の蛭ヶ岳を頂点に丹沢山塊が広がっていました。

帰路は南面の津久井湖城山公園に下り、山麓を半周して、津久井湖の対岸、峰の薬師から続く南高尾山稜を眺めて下山しました。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

中央線沿線・陣馬山

栃谷尾根で猿の集団に遭遇

南面の明るい栃谷尾根は茶畑の彼方に丹沢山塊から道志山塊が広がる(写真=白井源三)

陣馬山の広い山頂には3軒の茶屋があります。山頂のシンボルは白馬の石像(写真=白井源三)

1月3日、快晴

年間を通して人気の山・陣馬山へ、今回はいつもの一の尾尾根からの入山ではなく、下山に使っている栃谷尾根から登ってみました。登山口から100m先にトイレが移され、その横とさらに100m先、藤野観光協会が設置したスペースには狭いながらも駐車場ができました。

落合の集落から栃谷鉱泉へ通じる舗装道路を登っていきます。20分ほどで鉱泉の看板が立つ栃谷尾根の分岐が左にわかれます。登っていくと、ユズの残りを朝餉(あさげ)にしている猿の集団に遭遇し、緊張しました。

さらに登ると、栃谷休憩所があります。トイレもあるので、ここでひと息つけます。民家横を詰めると茶畑が南面に広がり、振り返ると丹沢山塊から道志山塊が展開して富士山が顔を出していました。

杉林に入ると、山頂までは意外に急登でした。すでに山頂では柔らかな陽を浴びた登山者が寛いでいました。知人が経営している茶屋であたたかいお蕎麦を食べながら12月の出来事を主人から聞いて、唖然としました。冬の風物詩シモバシラの季節ですが、絵になる霜柱が踏まれていたそうです。心ないカメラマンの仕業だそうですが、珍しい被写体の世界ではときどき聞く話です。

帰路は、枯葉を踏みながら南面が続く一ノ尾尾根を下りました。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

伊豆大島・三原山

期待以上の景観でした

三原山山頂中央火孔(写真=中村重明)

表砂漠コースにて(写真=中村重明)

1月7日、晴れ

三連休の2日間を使い、三原山(伊豆大島)を訪ねました。大島へのアクセスはイメージしていたよりもずっとよく、伊東港(伊豆)からだと高速船でたった35分(9:40→10:15)です。到着した元町港でバスに乗り換え、三原山頂口へ行き(10:30→10:55)、トレッキング開始です。

登りは舗装された山頂遊歩道で、「1986年溶岩流先端部」など火山活動を身近に感じる地点を通りながら三原神社まで。そこからは舗装路を離れ、溶岩石や砂礫で少々歩きにくい、噴火口一周道路をたどり、噴気のすぐそばや巨大な火口の脇を通るお鉢巡りをしました。

下りは文字通り砂漠を思わせるような表砂漠コースで三原山頂口へ戻りました(休憩込みで3時間弱の行程でした)。

浅間山や蔵王、阿蘇などの火山ともまた一風異なる、期待以上のなかなかの景観でした。また、海や富士山、伊豆半島などの展望もあり、変化に富んでいてとても楽しいトレッキングでした。

三原山頂口からは車道(「御神火(ごじんか)スカイライン」)経由で元町まで下り(約1時間半)、投宿。翌日も島の東側のトレッキング(「大島一周道路」沿いに、大島町陸上競技場から大島公園までの約16km)を楽しみ、午後の便(15:30→16:05)で伊東港に戻りました。

(文=中村重明)

鈴鹿・竜ヶ岳

今後の積雪を期待したいものです

シロヤシオについた樹氷と竜ヶ岳(写真=金丸勝実)

山頂からの展望、滋賀県方面(写真=金丸勝実)

12月31日、晴れ

鈴鹿山系はどの山も冬季においてもアクセスがよく、週末には雪山を楽しむ登山者がよく入山しています。竜ヶ岳は山頂部とその周辺が笹原になっているので、積雪期は一面が雪原となり、開放感のある景観が特徴の山です。最近では事故の多かったホタガ谷ルートが閉鎖になり、代わって遠足尾根、金山尾根ルートが整備され比較的登りやすい山になりました。しかしその行程は歩行距離が長く、高低差もあるので、それに見合った体力が必要です。今回は遠足尾根を登り、ヨコ谷ルートで下りました。

遠足尾根は登路の中ではもっとも長いルートで、植林帯の山腹から尾根に取り付きます。尾根は自然林で雰囲気がよく、標高が900mあたりから笹原に入り、一気に展望が開けます。竜ヶ岳を左に見ながら、稜線に沿って徐々に高度を上げていきます。稜線の積雪は数センチと少なく、霧氷は期待外れに終わりました。季節的には厳冬期に入っているものの、今年の鈴鹿山系は今のところ積雪が少なく、気温も高めが続いています。しかしこのまま冬が終わることはないので、今後の積雪を期待したいものです。

帰路はヨコ谷ルートで下りました。樹林帯を急降下する道はあまりよくありませんが、以前よりも目印が多くなって安心感があります。積雪があったのは中腹まででした。その後、五階滝と魚止滝を見て帰りました。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

岡山県・那岐山

期待以上の新雪で、よい登り納めになりました

トレースのない真っ新な新雪を踏みしめる(写真=舩越 仁)

頂上をあとに、新雪のトンネルに入る(写真=舩越 仁)

12月28日、曇り

いったん消えてしまった雪ですが、降雪予報を信じて年末の納山に出かけました。那岐・山の駅近くの路面は15cmほどの積雪で、第1駐車場への上り坂に車のわだちはありません。無理せずにUターンし、安全なスペースに駐車してから歩き始めました。

歩き始めは気持ちのいい新雪も、20cm、25cmと増えてくると徐々にきつくなってきます。ちょうどころ合いを見計らったように、私たちのパーティ3名に姫路市から、そして岡山市から来たふたりの若手男性が追い付いて先頭に立ってくれました。

八合目を過ぎ、冬道から尾根に上がる手前ではヒザ上の吹き溜まりになり、ツボ足でははかどりません。そこからはカンジキ持参の私たちが先頭に立ち、那岐三角点峰に到着しました。はじめて出会った人たちですが、にぎやかな共同登山になりました。

避難小屋での昼食休憩の後、那岐最高点の山頂に立ち、いつものように登りはCコース、下りはAコース経由のBコースで、那岐山周回の登り納めになりました。

(文=舩越 仁/みつがしわ山の会)

福岡県・平尾台

初日を拝み縦走路をゆく

風神山より初日を拝む(写真=長谷川守克)

夜明けを迎えた縦走路(写真=長谷川守克)

1月1日、晴れ時々曇り

今回は平尾台で初日の出を拝んだ後、縦走路を歩く予定です。コースは、三笠台駐車場を基点に、大かんの台を経て、風神山で初日を拝み、不動山、三笠台と進んで三笠台駐車場へ戻る周回としました。

三笠台駐車場に到着すると、初日の出鑑賞の方々やアマチュアカメラマンが多く訪れていて、にぎやかな雰囲気でした。風もなく暖かいなか、初日の出が拝めることを期待して歩き始めます。上空には雲があり、きれいな初日が拝めるのか少々心配していましたが、しばらくすると雲がピンク色に染まり始め、7時20分過ぎに神々しい太陽が雲のなかから顔を出しました。立ち止まって初日を拝みながら今年の山行の安全を祈願した後、冬枯れの草原の道を進み、先を目指します。

ゴール地点の三笠台駐車場に到着して、まずは幸先よいスタートをきることができ、今年も健康に留意し、身の丈に合った山歩きを続けようと思いつつ帰路につきました。

(文=長谷川守克)

福岡県・福智山、英彦山

陽気に誘われホームグラウンドの山へ

福智山山頂より大展望を味わう(写真=長谷川守克)

福智山にて、末広がりの七の滝。落差15m(写真=長谷川守克)

1月3日、4日、晴れ

今年は穏やかな正月を迎えることができました。そこで新年恒例のホームグラウンドとしている福智山と英彦山を歩きに行ってきました。

コースは、福智山は鱒淵ダムを基点に七重の滝ルートを進み福智山山頂へ。その後、ホッテ谷新道をたどり鱒淵ダムへの周回としました。英彦山は高住神社を基点に北岳・中岳・南岳を経て、裏英彦山道に取り付き高住神社に戻る周回としました。

両日とも天候に恵まれ、青空の下、冬枯れの道を快適に歩くことができました。福智山では前夜の雨で道が滑りやすくなり歩きづらかったのですが、滝を流れ落ちる水量は多く、滝の音を聞きながらリフレッシュしてきました。

英彦山では、好天のお陰で久しぶりに由布岳・久住山系・阿蘇の山並みも見渡せる大展望を味わってきました。

さらには多くのお知り合いと出会うことができ、年頭の挨拶を交わして、お互い今年も健康に留意し山歩きを楽しみましょうということで帰路につきました。

(文=長谷川守克)

熊本県・白髪岳

白髪岳登山口から猪ノ子伏、白髪岳を往復

大木と苔が美しい森です(写真=池田浩伸)

ブナの大木の向こうが明るくなり、日の出を待つような気持ちで空を見ていました(写真=池田浩伸)

1月9日、曇り

白髪岳は霧氷がきれいな山で知られていますが、この日は残念ながら霧氷を見ることはできませんでした。

モミ・ハリギリ・ブナの原生林の稜線はガスに包まれていましたが、時々南の空が明るくなり、ブナの大木の向こうから太陽が出てくるような神々しい景色に出会うことができました。

山頂に近づくと台風並みの強風でしたが、ツエルトのなかで温かい飲み物を飲みながら枝を渡る鳥を見たり、落ちた木の実を拾ったりと冬山の楽しみ方を満喫してきました。

(文=池田浩伸/登山ガイド)

山梨県・雁ヶ腹摺山

山梨百名山・雁ヶ腹摺山から富士山を堪能

山頂に建つ旧500円札デザインの表示板(写真=遅澤惠子)

12月30日、晴れ

金山鉱泉から雁ヶ腹摺山(がんがはらすりやま)山頂ピストンのロングコースを選び、標高差1200mを往復しました。

葉を落とした木々の間から差し込む光のなか、聞こえるのは落ち葉を踏む音と遠くでさえずる鳥の声だけの静かな山です。左手に雪を冠した富士山が見え隠れして、疲れも飛んでいきます。雪はありませんが、日陰の霜柱は午後にも残っていました。

都心のビル群が右手に見え、遠く南アルプスの山々が見えるともうすぐ山頂です。旧五百円札のモデルになったほどの富士の姿は圧巻でした。

(遅澤惠子/山梨県/よく行く山:山梨・長野の山)

金剛山地・金剛山

好天に恵まれた正月登山

葛木神社に参拝(写真=小林昭生)

山頂広場から河内平野方面を望む(写真=小林昭生)

1月1日、晴れ

自宅から歩いて1時間あまりで天ヶ滝新道登山口へ。ここからゆっくり歩いて3時間ほどで金剛山山頂です。山頂の葛木神社と近くの転法輪寺に初詣に出かけることにしました。

歩き出してしばらくすると年配の男性とばったり。先月25日に山で出会った人でした。カメラしか手にしていなかったので、たずねると「暮れの29日に身内の葬儀があったので、元旦登山は控えています。初日の出だけを撮りに・・・・・・」とのこと。ちょっと驚きでした。

山頂の葛木神社は、戦前は皇族の参拝もあったようです。副祭神が後醍醐天皇の忠臣・楠木正成だからでしょうか。麓の千早赤坂村が正成の生誕地であることも祭神の理由かもしれません。

坂を下った転法輪寺でもお参りをすませ、山頂広場まで進むと大勢の登山者でにぎわっていました。広場の先端からは河内平野や大阪湾、六甲の山並みが望めますが、眺望は残念ながら平野がうっすらと見えるに留まりました。

向こう一年、無事に過ごせることを願って帰路につきました。

(小林昭生/奈良県/75歳/よく行く山:金剛山系はじめ関西一円の山々)

ネパール・アンナプルナサーキット前半

世界一といわれる高所湖ティリチョ湖へ

カンサール川の上流へ、ティリチョピークに向かう。風が強く砂埃が舞う谷(写真=大久保かがり)

5000m近くに広がるティリチョ湖と雪の壁、ティリチョピーク(写真=大久保かがり)

12月9日~15日、快晴

アンナプルナ山群を一周するアンナプルナサーキットと呼ばれるルートを歩きました。現在はマナンまで乗り合いジープが通っていますが、ベシサハールからマルシャンディ川上流に向かって旧道を歩くことにしました。

1日目はゲルムまで、2日目はダラパニまで20kmほど進みました。だんだん谷が深くなってきます。3日目になると標高も2000mを越え、朝の空気が冷たくなってきました。このあたりから振り返るとマナスル山群が見え、また前方にはアンナプルナII峰の切り立った岩肌が見え始めます。8000mに近い絶壁はやはり迫力があります。

松の木が増えてきた道には、朝に薄氷が張っていました。3000mを越えると眼下にローワーピサンの村、頭上には石造りの古い家が並ぶアッパーピサンの村が見えてきました。

5日目、大きな街マナンを通りました。ハイカー向けのホテルがたくさんありますが、オフシーズンで閉まっているところもけっこうありました。ここから高度順化を兼ねてティリチョ湖に寄り道をするため西の道へとはずれ、カンサール川に沿って荒涼とした風景の中を進んでいきます。

7日目、ベースキャンプのロッジを朝7時に出発。凍った沢筋から土砂崩れかと思うような急な岩場を抜け、高度を上げて行きます。風が冷たく手と足が痛くなってしまいました。

3時間ほど登って、5000m近くに広がるティリチョ湖に着きました。岩肌の茶色、青い空、半分凍った湖が輝いています。時々ティリチョピークの壁から雷のような音がして、氷や雪の塊が落ちてくるのが見えました。湖でも氷がきしむギュウギュウという音がしていました。

(大久保かがり/東京都/よく行く山:北アルプス)

第七十六回

富士山に登って見たのは人の山(ガンバ)

初夢は、一無事(いちぶじ)二高(にたか)三むすび(ブロッケンの妖怪)

雨・雪でボルダリングに足向かい(にいしばG)

【寸評】

一句目、ガンバさん。「初夢は富士山がいいなぁと考えていたときに作りました」とのこと。人の山の向こうに、見えてくるのが真の富士の姿です!

二句目、ブロッケンの妖怪さんも初夢ネタです。今年もいい切れ味ですね。三むすびのところに、おむすびのイラストを添えていただいたのもグッドです。

三句目、にいしばGさん。冬のボルダリングジムはいいですよね。私はいつも1本登ると、その後は知り合いと話ばかりしています。反省。

【段位】ガンバさんは「アンナプルナI峰」に、ブロッケンの妖怪さんは「ローツェ」に昇段。にいしばGさんはエベレスト「C2」にて天候回復待ちです!

【応募方法】

山に関する川柳を募集します。投稿先メールアドレスは「weekly@yamakei.co.jp」です。メールの件名には必ず「週刊ヤマケイ・山の川柳」とお書きください。ペンネームでの投稿も受け付けております(読者の登山レポートはペンネームでの投稿不可)。

なお、ご投稿いただいた方には1000m峰から始まる「山の川柳段位」を授与します。ふるってご応募ください。

週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

「夏休み 孫と一緒に 百名山」

「お父さん 登山道具を 片付けて」

「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

山で体験したちょっといい話や不思議な話、使って役立った装備や安全登山のための工夫、昔の登山の思い出などを募集します。お気軽にご投稿ください。こちらの投稿もペンネーム可です。文字数は400字以内でお願いします。


投稿先メールアドレス

weekly@yamakei.co.jp

※メールの件名に必ず「週刊ヤマケイ・表紙写真応募」または「週刊ヤマケイ・読者の登山レポート投稿」「週刊ヤマケイ・山の川柳」「週刊ヤマケイ・よもやまばなし」とお書きください。

※表紙写真に採用された方、読者の登山レポートに採用された方には週刊ヤマケイのロゴ入り測量野帳を進呈します(初回のみ)。また山の川柳で高段位になられた方にも測量野帳を進呈します。どしどしご応募ください。

登山の「まさか」に! レスキュー費用保険で、確かな安心を。

山岳遭難が増えています。無理のない日程、万全の装備、登山届、そして「レスキュー費用保険」。まさかの捜索・救助費用にしっかり備えて、安心登山を楽しみましょう!

登山やアウトドアスポーツなど、日本国内での野外活動中に遭難事故に遭った際、捜索・救助に要した費用に対して保険金をお支払いする保険です。

※海での活動は除きます

保険料、補償、加入方法を見直して、さらに充実!

※平成28年4月20日より

日本アルプス各地や八ヶ岳などの主要な登山口への便利なアクセスとしてすっかり定着した登山バス「毎日あるぺん号」。

電車・バスなどを乗り継ぐ面倒がなく登山口に到着できることから、夏・秋の登山シーズンにはたくさんの登山者にご利用いただいております。

日本山岳遺産基金賛助会員の(株)毎日企画サービスでは、今期も、厳冬期に雪山登山をご計画の方に向けて、「冬山登山バス」をご用意しました。

登山にかかる日数やコストの軽減をお考えの方は、登山装備のひとつとして、ぜひご活用ください。

なお、冬山登山は到底無理とお考えの方には、山カフェ女子プランをはじめ、安全に、楽に雪道歩きが楽しめるプランもご用意しました。

山小屋とのセット割引など、電子パンフレットでチェックしていただき、無理のないスケジュールで冬の山旅をお楽しみください。

2月25日、「日本山岳遺産サミット」を開催します

特別講演は「山でのクマとの新しいつきあい方」

日本山岳遺産基金では、未来に残したい日本の豊かな自然環境や、人と自然の関わりを有する山岳地域を「日本山岳遺産」として認定し、環境保全活動や次世代育成活動を行っている団体に対して助成を行なっています。

2月25日(土)に開催する「日本山岳遺産サミット」では、2016年度の日本山岳遺産認定地および認定団体(本年度は美瑛富士・北海道/山のトイレを考える会、嘉穂アルプス・福岡県/嘉穂三山愛会)を発表し、認定団体の方々から活動状況のご報告をいただきます。

また本年は、クマの行動研究の第一人者、東京農業大学教授の山崎晃司先生をお迎えし、今年ニュースをにぎわせたクマをテーマに「山でのクマとの新しいつきあい方」と題した特別講演を行ないます。

開催概要は下記の通りです。参加希望の方は、HPから申し込みフォームに進み必要事項をご入力ください。みなさまのご参加をお待ちしております。

「雲取山西暦二千十七年記念碑」除幕式レポート

1年間の期間限定で建立

山頂に建立された記念碑前にて

2017年の初日

日本百名山のひとつ、東京都最高峰の雲取山(標高2017m)で、西暦2017年を迎えるにあたり山頂に三峰神社の御用材で「雲取山西暦二千十七年記念碑」が建立されました。

元旦の山頂は3都県の山岳連盟関係者や初日の出を見に訪れた登山者で埋め尽くされ、東の地平線を見つめていました。

ついに6時50分、2017年の初日の出。同時に記念碑の幕が上がり、秩父市山岳連盟会長の音頭で万歳三唱をし、安全登山を祈りました。そして除幕式に居合わせた登山者には三峰神社の御用材(ヒノキ)のキーホルダーが配られました。

なお、この記念碑は永久に設置されるものでなく、設置は1年間のみで、2017年末には撤去される予定です。

(文=加藤秀夫/東京都山岳連盟・昭島山岳会)

東北山岳写真集団・福島写真展「山の写真六人展2017」

1月16日(月)~22日(日)、福島駅西口コラッセふくしまにて開催

「山の四季」より冬の安達太良(写真=若林健二)

福島氏在住の奥田博、菅野寛一郎、仁井田研一、湯沢吉一、若林健二、渡辺徳仁による写真展が1月16日から福島駅西口のコラッセふくしまにて開催されます。

東北の山、森、花をあるときは美しく、あるときは厳かに、またあるときはまばゆいばかりに活写した作品の数々を、ぜひご覧になってみてください。

***

日時:2017年1月16日(月)~22日(日)10:00~17:00(16日、22日は変更あり)

会場:コラッセふくしま5Fプレゼンルーム

http://www.corasse.com/access

『いまから始める山スキー入門』

雪山に登って滑るABC

「バックカントリー」という言葉に憧れるけど、はじめの一歩が踏み出せない人のための、格好の書がいよいよ刊行。本書は「山スキーの基礎知識」「山スキーの道具」「山スキーの技術」の3部構成で、初心者にもわかりやすく山スキーの魅力と必要な技術、知識を解説。執筆者は、白馬村のスキーガイドカンパニー「カラースポーツクラブ」代表として山スキーの魅力を発信し続ける舎川朋弘ほか、雪山の魅力からリスクまで知り尽くしたエキスパート揃い。ぜひ本書を片手に、バックカントリーをめざしてください!

https://www.yamakei.co.jp/products/2816242370.html

発売日:2017年1月20日/販売価格:1,900円+税/ページ数:120ページ/判型:A5判/ISBN:978-4-635-24237-0

2016年12月~2017年1月の新刊

商品名 発売日 販売価格(本体価格)
『山の不思議発見 謎とき登山のススメ』 12/3 780円+税
『南谷真鈴 冒険の書』 12/3 1,200円+税
『ROCK&SNOW 074 冬号』 12/6 1,333円+税
『天空の山旅日記 七十路の一人歩き。日本の屋根を歩く』 12/9 2,700円+税
『ときめく縄文図鑑』 12/9 1,600円+税
ドキュメント『単独行遭難』 12/9 800円+税
『柴犬のひみつ』 12/9 1,200円+税
『山と溪谷』2017年1月号 12/15 1,111円+税
『なごみ猫 BEST SELECTION』 12/15 1,000円+税
『体験的登山技術論 脱初心者のための実践アドバイス』 12/16 780円+税
『ときめく和菓子図鑑』 12/16 1,400円+税
『怪魚ハンター』 12/16 900円+税
『溪語り・山語り 山人たちの生活誌』 12/23 900円+税
分県登山ガイド『宮城県の山』 12/23 1,900円+税
『ワンダーフォーゲル』2017年2月号 1/10 926円+税
『糞土思想が地球を救う 葉っぱのぐそをはじめよう』 1/13 1,400円+税
『山怪 弐』 1/19 1,200円+税
『いまから始める山スキー入門』 1/20 1,900円+税
『ときめく文房具図鑑』 1/20 1,500円+税
『岩と雪 Best Selection』 1/20 2,800円+税
ヤマケイ文庫『生と死のミニャ・コンガ』 1/20 950円+税
ヤマケイ文庫『時代別 京都を歩く』 1/20 880円+税


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