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今週末の「山のワンポイント天気」

ウェブサイト「山の天気予報」を運営し、メールでの天気予報配信も行なっている株式会社ヤマテンの気象予報士、小林 充さんによる解説です。今週末の山行に役立ててください。

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八十八夜を過ぎて初夏の季節になりました。全国ニュースでは真夏日の便りもありますが、長野県茅野市の八ヶ岳山麓にある標高900mのヤマテン事務所周辺では山桜や八重桜が満開です。木々の新緑が一斉に始まり、残雪の八ヶ岳や甲斐駒を背景にした景色は一枚の絵画のようです。仕事に追われて山に行けないストレスが溜まってきておりますが(笑)、紅葉の時期と並び、1年でもっとも美しい季節を堪能しています。

今週末の天気ですが、土曜日は日本の南を前線や低気圧が東進する見込みです。このため、北日本を除き、日曜日の方がおすすめの場所が多いでしょう。ただし、日曜日も関東沖に低気圧が残るため、関東地方から北では天気がぐずつきそうです。

なお、週末の天気については、毎週木曜日に発表しているヤマテン「今週末のおすすめ山域」で詳しく解説しています。ご登録方法などは下記「山の天気予報」の案内をご覧ください。。

(文責:小林 充)

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6月10日(土)にヤマテン主催講座が名古屋で開催されます。今回の講義内容は「山岳気象の基本と気象遭難を防ぐための天気図の見方」(初級編)、「ヤマテンの賢い利用方法~夏山の気象遭難を防ぐために~」(中級編)です。講座の詳細やお申込みにつきましては、こちらです(※定員に達した場合につきましては、お申し込みフォームが開かなくなりますのでご了承下さい)。

また、6月17日(土)から18日(日)に、雲取山から石尾根縦走のツアーの催行が決定しました。東京都最高峰の雲取山は、秩父側、甲州側、奥多摩側とで天候が異なることがあり、天気の分水嶺とも言えます。地形が雲の発生に及ぼす影響について学び、三峰口から石尾根へと縦走する充実の山行です。講師はヤマテンの猪熊隆之さんです。ツアー詳細はこちらをご覧ください。

これ以外にも2017年度上期の空見ハイキングの日程が決定しています。詳しくはこちらをご覧ください。

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「山の天気予報」(月額324円)

コーヒー1杯分のご利用料金で、全国18山域の山頂天気予報や大荒れ情報、予想天気図、ライブカメラ、雨雲レーダー、観天望気講座などが1ヶ月使い放題。メールでの天気予報配信登録もおこなえます。サービスの詳細やご登録方法につきましては、下記URLでご確認ください。

https://i.yamatenki.co.jp/

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『山の天気にだまされるな!』

ヤマテンの猪熊隆之さんの著書『山の天気にだまされるな!』が好評です。一般の天気予報だけでは防げない気象リスクについて解説。猪熊さん自身が生徒を連れて登る「お天気ハイキング教室」の具体例などもとりいれて、わかりやすく解説しております。ぜひ一度、手にとってみてください。

https://www.yamakei.co.jp/products/2815510190.html

北穂高岳の雪崩

小規模ながら頻発する湿雪雪崩に厳戒を

5月4日、10時48分ごろに発生した第1回目の雪崩の直後に撮影。中央のふたりの登山者が巻き込まれた。この後、撮影者も第2回目の雪崩に巻き込まれた(写真=奥谷 晶)

5月4日涸沢より北穂高岳登頂後、北穂沢を下降中に小規模な雪崩に遭遇しました。

午前10時48分ごろ、朝から晴れて気温が高く、下降に入るころには、雪がぐずぐずの状態で、ステップは崩れ、アイゼンも効きが怪しく、ピッケルさえもスカスカなところが多く、一歩ごとに確実に打ち込んで下りていました。登ってくる人も多く、列をなしているのが見下ろせます。

もっとも傾斜の強い部分を過ぎたあたりで、緊張感から少し解放されて、ほっとした瞬間でした。突然、上方から叫び声が次々と発せられ、「雪崩だ!」と聞き取れたときには、私のいた位置より10数m横を、雪崩の先端が滑っていったかと思うと、ものすごい勢いで何か黒い塊が転げ落ちていくのを目撃しました。それは巻き込まれた登山者でした。

150~200mも流されてようやく止まったようです。付近にいた何人かの登山者から「大丈夫か」という声がかかっています。私も滑落した登山者の方へ下りていきました。滑落した方は男性2名。ひとりは無事でしたが、もうひとりの方が肩に大ケガを負い、ザックを背負って歩けないので、救助要請を行なったことを確認しました。

登ってきた人はしばらく様子を見ている人もいましたが、これからさらに気温が上がれば再び雪崩が起きるかもしれません。私は一刻も早く危険地帯から下りることを考えました。そうして十数歩進んだあたりでしょうか。再び「雪崩だ!」の声が。振り返ると、逃げるまもなく、ぱらぱらと雪粒が降りかかり、おおきな雪のブロックの直撃を腰にうけ、転倒してしまいました。

滑落停止に入ろうとしましたが、すぐに跳ね返され、巻き込むような雪崩のなかで、押し流されるというのではなく、大きく何度も回転させられ、転落していきました。少し傾斜が緩やかになり、幸い、ピッケルを手放さなかったので、速度が少し落ちたところで、仰向けになった姿勢から滑落停止の姿勢に反転し、ようやく止めることができました。

距離にして100mほど流されたようですが、時間にしてわずか10秒ほどのできごとです。すぐにピッケルを打ち込んでセルフビレイをとり、ストックをあげて、無事であることをアピールしました。幸い、打撲や傷はどこもありません。流されたところに雪が多く、露岩も出ていなかったので、どこにもぶつからずに済んだのでしょう。

後で気がついたのですが、ザックにさしていた愛用のバイルがなくなっていました。また、1回目の雪崩で無事だった方とお話ししましたが、アイゼンの爪がもう片方の登山靴の側面を切り裂いていたとのこと。私も、その人も、それぞれ愛用の道具が身代わりになってくれたのでしょう。

この2回目の雪崩で巻き込まれたのは私ひとりであることを確認し、そのあとも、躊躇なく下降を続けました。3回目の雪崩も直後にありましたが、これは小規模で登山者をまきこむことはありませんでした。

雪崩を目撃した登りのパーティや登山者のほとんどは登頂を中止して下っていかれましたが、雪崩が起きたことを知らずに登ってくる人もいます。それらの人に雪崩の状況を伝えましたが、そのまま登って行かれる方も多かったです。

翌日、上高地に下山してから、奥穂高の小豆沢や前穂高のコブ沢でも、同じような時間帯に雪崩による死亡事故が起きていたことを知り、改めて心底から恐怖を覚えました。雪崩に対する警戒はしていたものの、午前中に登頂、下降を終了すればよいと経験則で考えていた判断が甘かったのです。5月連休の直前にも降雪があり、最初は気温が低く、張り付いた雪が落ちていないところで、好天と気温の急上昇で湿雪の雪崩が多発する状況になったのではないかと推測します。雪がしまっている、もっと早い時間帯に行動を終了すべきであったと痛感しています。

(文=奥谷 晶)

信州の山岳遭難現場より

島崎三歩の「山岳通信」。

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。

4月28日に第67号、5月8日に第68号、10日に第69号が配信されました。4月4日から4月30日にかけて長野県で発生した12件の遭難事例が掲載されております。

4月28日には白馬大雪渓で大規模な雪崩が発生し、登山者が巻き込まれ行方不明となりました。週末をはさんだ数日の間に、標高の高い山小屋ではまとまった降雪が観測されています。残雪の多い山域に入山する際は、事前に積雪状況や天候、気温などをチェックし、慎重な判断をしてください。また、入山の際はビーコン、スコップ、ゾンデ棒等の装備品を携行して、雪崩の発生に充分な警戒をしてください。

また、里山散策にも最適な季節ですが、一歩間違えると道迷いや滑落などの危険性をはらんでいます。事前の情報収集、装備品の携行、そして基本的な準備を確実に行なってください。

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【4月4日から30日に発生した主な遭難事例】

・4月4日、下伊那郡阿智村の大川入山で、53歳の女性らふたりが山頂から下山中にコースを見失い、沢筋を下降。誤って沢に滑落して負傷し、行動不能になりました。警察、消防が捜索した結果、ふたりを無事発見し、救助しました。

・4月16日、中央アルプス宝剣岳で、41歳の男性が稜線を通過中に、解けて緩んだ雪に足を滑らせ滑落、負傷しましたが、中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会隊員などに救助されました。

4月22日、霞沢岳で滑落した遭難者のもとへ駆けつける救助隊員(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)4月28日付より)

・4月22日、北アルプス・霞沢岳で50歳の女性が下山中にスリップして滑落。仙骨骨折の重傷を負う山岳遭難が発生し、県警ヘリで救助しました。

・4月23日、下伊那郡大鹿村の大西山で55歳の男性が登りと同じ登山道を下山するつもりが、反対方向の尾根に迷い込み、ルートを見失って行動不能となる山岳遭難が発生しました。飯田署員などが捜索し、24日に無事発見し救助しました。

4月28日、白馬大雪渓で発生した雪崩遭難現場の状況(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月2日付より)

・4月28日、北アルプスの白馬大雪渓上部付近で雪崩が発生。37歳男性が巻き込まれる山岳遭難が発生し、県警ヘリと山岳遭難救助隊などで捜索しましたが、発見にいたっていません。

・4月30日、八ヶ岳連峰横岳で57歳の男性が杣添尾根を山頂に向けて登山中、肉離れを発症。行動不能となる山岳遭難が発生し、県警ヘリで救助しました。

(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)

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長野県警のホームページでは長野県の春山情報をご覧いただけます。長野県警察ヘリ「やまびこ2号」によるヘリコプターテレビシステムにより撮影された横尾~涸沢、涸沢より上部、西穂高岳などの映像も見ることができます。

http://www.pref.nagano.lg.jp/police/sangaku/index.html

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下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

(文=週刊ヤマケイ編集部)

埼玉群馬県境、金山志賀坂線で斜面崩落のため一部通行止め

八丁トンネル駐車場近くの林道が崩落

崩落現場。八丁トンネル側より(写真=林 由季子)

崩落現場。国道299号側より(写真=林 由季子)

八丁トンネル駐車場近くの林道が写真のように崩落し、国道299号から八丁トンネル駐車場手前までの区間が通行止めです。国道140号から中津川、ニッチツ鉱山を経て八丁トンネル駐車場に行くことは可能です。

埼玉県森林管理道(林道)の通行制限情報

http://www.pref.saitama.lg.jp/b0904/tukoseigen/

(文=林 由季子)

講演会『故郷チベットを見つめて ~日本在住ロディ・ギャツォさんの話~』

5月14日(日)、東京・新宿で開催

東チベットのチャムドの農村で車道を歩くヤクの群れ(撮影=小林尚礼)

ヒマラヤやチベットの自然や文化について発信する集い、カワカブ会が日本に在住するチベット人をお招きしてお話を聞きます。

ロディさん(33才)の故郷は東チベットのチャムドにある農村。17才まで大自然のなかで半農半牧の暮らしをしていました。10年前に来日してからは学校へ通い日本語を習得。映画「ラサへの歩き方」や「オロ」の字幕制作にも関わりました。異国で暮らすようになって、チベットでは当たり前だった物事の「役割」が見えてきたといいます。

日本へ来てからも故郷の村へ何度か戻って、写真や動画を撮影してきました。特に、村で年に1度行われる“山の神の祭り”の動画は貴重なものです。そんな映像を上映しながら、故郷チベットへの思いを語っていただきます。日本語でお話を聞けますので、興味のある方はぜひご参加ください。

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講演会『故郷チベットを見つめて ~日本在住ロディ・ギャツォさんの話~』

日時:5月14日(日)10:15~12:30(開場9:55)

会場:新宿歴史博物館(講堂)(東京都新宿区三栄町22)

話者:ロディ・ギャツォさん(東チベット出身、埼玉県在住)※日本語で話します

会費:1000円(学生500円、チベット人無料)

主催:カワカブ会

※予約不要ですが、資料準備のため参加人数をお知らせください

山岳写真家・菊池哲男さんと山と溪谷編集長の対談「山岳夜景の魅力を語る」

5月13日(土)、東京・新宿で開催

週刊ヤマケイの表紙を2012年の創刊時から3年にわたり飾っていただいた山岳写真家・菊池哲男さん。菊池さんは小学生のころから星に興味をもち、フィルム時代から山岳夜景を撮り続けてきました。いま、デジタルカメラが主流になり、夜景作品もブームになってきています。そこで菊池さんが山と溪谷編集長とともに「山岳夜景」の魅力を語るトークイベントが開催されます。ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

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イベント名:菊池哲男×山と溪谷 山本編集長「山岳夜景の魅力を語る」

日時:5月13日(土)10:30~12:00

会場:ニコンプラザ新宿内セミナールーム

東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階

※予約応募は終了しておりますが、当日見学も可能です。

※参加者多数の場合、入場制限によりご入場いただけない場合もございます。あらかじめご了承ください。

イベント詳細は下記URLをご参照ください。

https://pcw.nikon-image.com/tokyo/a13.html

『山岳遭難防止術』

週刊ヤマケイの好評連載が電子書籍に!

週刊ヤマケイBOOKS『山岳遭難防止術』/著者:木元康晴/300円+税/2017年5月12日Amazon Kindleをはじめ各種電子書籍ストアで発売開始

登山ガイドが実体験から遭難防止を考える

2016年4月から1年にわたって週刊ヤマケイで隔週連載されてきた、登山ガイド木元康晴さんによる『山岳遭難防止術』。その連載に加筆修正した電子書籍がいよいよ5月12日に発売開始!

本書のコンセプトは「登山ガイドが実体験から遭難防止を考える」というもの。登山ガイドである著者の木元さんが実際に現場で見た、あるいは体験したアクシデントを紹介し、読者の皆さんと共有することで、遭難防止のための、より確実な思考を養うことができます。

Kindle端末をお持ちでない方も、お手持ちのスマホやタブレット、PCにkindleアプリをインストールすれば、電子書籍を読めるようになりますので、この機会にぜひ週刊ヤマケイBOOKSをご覧ください。

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本書の刊行を記念して、木元康晴さんと山岳ライターの小林千穂さんが「実体験から遭難防止を考える」をテーマに、山岳遭難防止について対談、考察するイベントが開催されます。ぜひ足をお運びください。

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●日時:5月18日(木)19:00~20:30

●会場:モンベル渋谷店サロン

東京都渋谷区宇田川町11-5モンベル渋谷ビル

●定員:40名

●参加費:一般1200円、モンベルクラブ会員1000円(当日集金。モンベルクラブ会員の方はメンバーズカードをご持参ください)

※要事前申し込み

5月11日時点で、残席はおよそ10席となっております。お早めにお申し込みください。

●イベントの申し込み・問い合わせ

風の旅行社東京本社

TEL:0120-987-553

メール:info@kaze-travel.co.jp

石狩山地・ユニ石狩岳

大雪山系や東大雪を見渡せる好展望の山

分水嶺頂嶺部から見たニペソツ山(右)とウペペサンケ山(左)(写真=谷水 亨)

山頂より音更岳(左)と大雪山系(写真=谷水 亨)

5月2日、晴れ、トレースなし

ユニ石狩岳は十勝平野と石狩平野の分水嶺となる石狩山地の西側に位置し、ニペソツ山・石狩岳・音更山などが連なる東大雪の東部にあります。また、三国山へとつながる頂稜部は、日本海側や北部からの湿った空気がぶつかり、雪や雨を降らした後、十勝に乾いた空気を運び「十勝晴れ」を生み出す、気候の分岐線でもあります。

国道273号から延びるユニ石狩岳・石狩岳登山口への林道が、まだ深い雪に埋もれてゲートが閉じられているため、今回はこの頂稜部を歩くコースをスノーシューで楽しんできました。

国道273号三国峠の松見大橋と緑深橋の間に20~30台は停められる整地スペース(工事・除雪車両駐車スペース)があり、そこから尾根伝いに頂稜部を目指します。熊の出没情報もありましたが、小動物に会うこともありませんでした。標高差500mも登れば樹林帯を抜け、木々の枝の樹氷が青空に映え、ここはまだ氷点下の世界なのだと実感します。さらにここから眺望も良くなり、左右に延びる稜線やニペソツ山などを見上げることができました。

そんな風景を楽しみながら残り100mの急坂を登ると稜線に出ます。風は多少強いが歩けないほどではありません。距離にして3.2km、大小6つのピークをアップダウンしながら、ユニ石狩岳山頂へ。

ハイマツ帯の上を歩いたり、腐りかけていた雪面を歩き、頂上に着くころには気温も上昇していました。大雪山系や東大雪がきれいに見え、青空と白い雪面と深緑の針葉樹のコントラストが実に美しかったです。

帰りは自分のトレースをたどりますが、深さ2mほどのハイマツトラップにはまりました。これには焦りましたが、慎重に脱出。稜線から尾根伝いに下るときも、スノーシューが抜けないほどの踏み抜きもありました。今後は暖気も入るため、要注意のコースであると実感して下山しました。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

東北・朝日連峰縦走

古寺鉱泉から大井沢まで

大朝日岳を越えて(写真=山田哲哉)

天狗角力取山の直下にて(写真=山田哲哉)

5月3日~6日

朝日連峰の最高峰である盟主・大朝日岳の標高は1820m。そのような低い標高ながら、このゴールデンウィークでも豊富な積雪をまとい、稜線には巨大な雪庇がならび、まだまだ春の雪山の表情を見せる朝日連峰。ここは大朝日岳から以東岳への主脈だけでなく、四方に重厚な尾根を巡らして、寒河江川や三面川などの大きな谷を生み出す巨大な山塊です。

山奥の小さな鉱泉宿・古寺鉱泉から、ブナの美しい純林を通って長旅は始まりました。真っ白な斜面をグイグイと登っていくと、夏には湿原となる広大な鳥原湿原の中に建つ立派な避難小屋・鳥原小屋に到着しました。ここまでトレースらしきものもなく、僕たちだけで山を占領した気分でした。

翌朝4:20、明るくなると同時に出発。前方には小朝日岳から大朝日岳にかけての雄大な展望が一気に開け、快晴の空の下、朝日が昇ってきます。朝の硬い雪に行程ははかどり、小粒ながらも急峻な小朝日岳に立ちました。目の前にはこれからたどる朝日岳から寒江山の山並みが「たおやかに」真っ白く続きます。急峻な道から熊越に降り立ち、一歩ごとに大きくなっていく美しい三角錐の大朝日岳に向かいました。大きく立派な大朝日小屋から裏手の山頂へ。360度、さえぎるものもない大展望が広がります。3年前の連休中は、すべて雨のため見ることのかなわなかった飯豊連峰が白い屏風のようです。蔵王、月山、鳥海山。ひとつひとつを確認して、最初の大物の山頂を味わいました。

中岳を越え、南側に氷河のような亀裂を入れた大きな雪庇の張り出す真っ白な西朝日岳を越えます。少しずつ雪が緩みだし、ところどころ潜りながら竜門山を越えて、また大きな南寒江山、寒江山、北寒江山と小さくない山を越えて狐穴小屋に到着。この日は終日晴れ渡っていました。

3日目も日の出前に出発。山肌が暗い色から白くかすみ、そして朝日にオレンジ色で染め上げられる中、飯豊連峰方向からやや強い風が吹いています。大きく羽を広げたコウモリのような以東岳に向かいました。宿泊装備を置いてきたため身体は軽く、夏道の出た楽しい稜線を休むことなく以東岳に立ちました。地図上では朝日連峰の北の端の山に見えますが、さらに真っ白な山々が北にも西にも尾根を伸ばし、足もとには「タキタロウ」で知られる凍結した大鳥池が見下ろせます。

朝日連峰は、どこを見ても主要な稜線の上には道路も送電線も不粋な人工物が一切なく、雪庇に守られた広々とした山脈と山腹を埋めつくすブナばかりが見える素晴らしい山塊だと改めて感じます。もう大朝日岳は遠い彼方です。

狐穴小屋に駆け戻り、目の前にドッシリと居すわる天狗角力取山に向かいました。天狗角力取山は近くに見えていますが、高松峰を越えるあたりから亀裂のズタズタに入った雪庇と共にヤセ尾根が続いたので、ザイルを出して慎重に進みます。オバラメキ、コバラメキから二ツ石山にかけては切り立った雪のリッジにズタズタにクラックが入り、ひとつひとつの悪場を慎重に越えました。二ツ石山を越えてホッとするころ、ところどころで夏道が出ている箇所では、足の踏み場も無いほどのカタクリの大群落が続きます。雪国独特の濃い色のカタクリに、イワウチワ、マンサク。これらの花が緊張をほぐしてくれました。

重荷と悪場にキックステップする力も弱々しくなってきたころ、最後の大物・天狗角力取山に這い上がります。振り返ると小朝日岳から以東岳への主脈がすべて背後に、大きく白く連なっていました。かたい握手をかわした後、清潔な天狗小屋に駆け下りました。

最終日は、ゆっくりと6:00ごろに出発。大きな竜ヶ岳の手前の巻き道がわからず少しウロウロした後、最後の下りに入ります。下るほどにブナの新緑は濃くなり、南俣沢出合で車道に出るころには緑の中を歩いていました。車道脇一面がミズバショウに覆われた春らしい道を大井沢へと歩きます。朝日連峰の中核を縦走し、さらに東へと伸びた大きな支稜を横断した充実の4日間でした。

なお、今回の五月連休の朝日連峰は出発地である古寺鉱泉から下山地の大井沢まで深い雪の中でした。稜線は数mの雪庇が張り出す一方、ところどころで夏道も出ていて、基本的には登山靴で硬雪もグサグサの雪もこなすことが必要でしたが、アイゼンやワカンも状態に合わせて使う状況でした。

朝日連峰の山小屋は避難小屋ですが、数年前からゴールデンウィークごろにはほとんどの小屋で管理人さんがいるようになりました。狐穴小屋以外、水は「雪溶かし」ですが、ルートの状況や周囲の山について詳しく教えてくれます。

狐穴小屋から二ツ石山にかけての尾根では、この時期は積雪状況によりロープを随所で出す必要があります。ハーネスを含めて装備しておき、かつ有効に使えないと危険だと思います。

(文=山田哲哉/山岳ガイド「風の谷」主宰 (株)KAZEエクスペディション顧問 山岳ガイドⅡ)

北アルプス・奥又白池

前穂東壁のベース、奥又白池への撮影行

茶臼ノ頭に昇る銀河(写真=川上詔夫)

朝焼けの明神岳と前穂高岳(写真=川上詔夫)

4月22日~24日

好天の予報に合わせ、4月22日(土)から24日(月)にかけて奥又白池へ単独で写真撮影に行きました。

GW前の上高地は、バス路線開通後もまだ登山者が少なく、明神や徳沢の宿も準備中で、売店も水場も使えません。22日午後から上高地に入り、奥又白谷に足を踏み入れると、トレースはありません。初日は松高ルンゼ取付の手前でビバークして、翌朝登高を開始。取付から池までの標高差600mはひたすら急勾配の連続で緊張を強いられましたが、雪渓は雪崩や落石の心配がない、いい条件でした。終始無風快晴のなか、夜は星空の撮影です。朝は眼前の明神岳と前穂高岳がピンクに染まりました。

(文=川上詔夫/山岳写真同人四季)

※編集部注:奥又白池にいたる中畠新道は一般登山道ではありません。ルートを熟知していない登山者は無雪期であっても安易に立ち入らないようにしてください。

北アルプス・涸沢、北穂高岳

下山時は緊張の連続でした

涸沢のテントサイトにて。設営にいそしむ登山者たち(写真=伊藤哲哉)

月照の槍ヶ岳。雲が抜けたので急いで撮影を開始(写真=伊藤哲哉)

5月2日~5日、晴れ時々曇り

5月の上高地の気候は例年通りで、バスを降りると息も白く、肌寒さを感じました。5:30前に涸沢を目指して出発です。GW期間中でもあり、河童橋付近は早朝からにぎわっています。小鳥たちのさえずりがこだまし、山を覆う木々には新葉が芽吹いており、春が近づいていることを感じます。梓川の対岸では西穂高の峰々が朝陽に照らされ、まぶしく輝いており、周囲からは感動の声も聞こえてきます。徳沢ではキャンプを楽しんでいる家族が目立ちました。深山の静寂な朝に、子供たちの歓声が印象的です。

本谷橋付近からアイゼンを履き、冬ルートを進みます。ルートの積雪は平年並みでした。照りつける陽光がとてもまぶしく、また5月の陽気のせいもあってか暑さを感じました。本谷橋から30分くらいの場所にたくさんのデブリがあり、早々に通過します。正午前には鯉のぼりが目印の涸沢ヒュッテに到着。眼前には奥穂高岳、涸沢岳、南側には前穂高岳、北側には北穂高岳と涸沢圏谷の峰々がそびえ立っています。夏山とは違い、陽のあたり具合と雪によって山の姿は違って見えます。この美しくも近寄りがたい岩稜を1座ずつ撮影していきました。

夜になると、気温は一気に下がります。8時ごろに手元の温度計では4度でした。そのなかで月照の雪稜と星空を撮影します。圏谷は寒々しくも静かな世界を演出し、孤独感と寂寥感が増していきます。その景色とは対照的に、テン場からは時々楽しそうな声が聞こえてきて羨ましさを感じます。夜半に小休止し、この日は明け方まで撮影を行いました。

翌3日の朝は北穂高岳を目指して6:30ごろに涸沢ヒュッテを発ちました。天気は快晴で、風もほとんどありません。涸沢小屋を通過すると本格的な雪山登山となります。雪はしまっていて、アイゼンがよく効きます。標高と斜度が上がると息もきつくなり、ザックがさらに重く感じられます。インゼルのあたりにクラックがあったので迂回して登り、松濤のコルを目指しました。コルまでは新しいデブリがたくさんあり、小休止のみで早々に通過しました。日が高くなるにつれ、アイゼンの効きが悪くなってきます。踏み跡を参考にしながらキックステップを繰り返し、10:30前にようやく北穂高岳山頂に到着しました。山頂からは360度すべての山々を見渡すことができました。

北穂高小屋にチェックインすると、スタッフの方々はまるで久しぶりの友人が来たかのように暖かく出迎えてくれました。楽しみにしていた生姜焼き定食に舌鼓を打ち、夜から撮影を開始しようと思いましたが、曇りとなったため夜半まで待機。2時ごろから晴れてきて朝まで撮影しました。

翌4日の日中は快晴で、ハロ現象(編集部注:太陽の周囲に光の輪が現われる現象)も見ました。山小屋で山談義をしていると、あっという間に夕方になり、雲湧く滝谷、前穂高岳、奥穂高岳、槍ヶ岳から大キレットまでの稜線撮影を楽しみました。夜は小屋から月照に浮かぶ雪稜撮影を試みましたが、11時ごろから雲が湧いてきてやむなく撤収しました。しかし早朝には真紅に染まる槍ヶ岳から大キレットまでの稜線を見ることができ、最高の時間を過ごすことができました。

最終日、涸沢までの冬ルート下山は緊張の連続でした。6:30前に出発し、小刻みなステップで雪面を下り、インゼルを通過後はデブリが増えていました。北穂高岳下部の雪面はアイゼンの効きが悪く、少し滑りながらの不安定な歩行となり、足に負担がかかります。次第に涸沢のテン場が大きく見えるようになり、9:30前にようやく涸沢ヒュッテに到着しました。

ヒュッテから上高地までの道のりは緊張も解け、今回の山行で勉強したこと、出会った仲間から教わったことを振り返りながら下山しました。

(文=伊藤哲哉/『改訂新版 千葉県の山』共著者)

北アルプス・蝶ヶ岳

常念岳や槍・穂高の展望を満喫

蝶槍からの常念岳(写真=増村多賀司)

上:蝶ヶ岳から槍・穂高連峰/右下:大キレットに沈む夕日/左下:吹雪のなかのライチョウつがい(写真=増村多賀司)

4月30日~5月1日、30日晴れ(強風)、1日雪のち雨

安曇野側の登山口である三股で登山届を提出して出発。まめうち平から先は雪だけになります。蝶沢から先のトラバースは、蝶ヶ岳ヒュッテの方がステップを切ってくださっていたので、歩きやすかったです。

稜線に出ると強風が吹き付けてきますが、槍・穂高の展望が素晴らしく、展望を楽しみつつ蝶槍まで往復します。蝶槍からは、常念岳が安曇野から見る姿とは違った迫力で見えていました。この日は暖かく快適な蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊。

翌朝は相変わらずの強風で、雪も降る荒れ模様でしたが、ライチョウのつがいが姿を現してくれました。オスは換羽が進んで黒い部分も多くなってきています。

標高を下げると雨になりましたが、午後に安曇野から山を見上げると、すっかり晴れていました。

(文=増村多賀司/写真家)

南アルプス・塩見岳

残雪の南アルプスへ

山頂稜線の登高(写真=原 誠一)

カモシカさんの糞(写真=原 誠一)

4月29日~5月1日

ゴールデンウィーク前半は、残雪を求めて、南アルプス塩見岳に向かいました。

初日は、鳥倉林道の駐車場まで車で入り、林道経由で三伏峠を目指しました。天候は、途中で霰のち雪となりましたが、峠に着くころには、塩見岳が遠望できるほどまで回復。峠の冬期小屋の前にテントを張りました。

2日目は朝5時前に出発し、快晴の空の下、三伏山でご来光を拝みました。雪の状態は予想通り、朝のうちは締まっていて快適に登高できましたが、天狗岩と頂上直下の雪壁は雪がクラストしていて急峻なため、ピッケルアイゼンの高度な技術が必要でした。自信がない場合は、いざぎよい撤退を勧めます。

塩見岳山頂は快晴で風も穏やかでした。南アルプスの北部、南部はもちろん、東には富士山が、西には中央アルプスが眺められました。

下りは、日差しの影響で雪が緩み始めました。登りではアイゼンの前爪しか刺さらなかった雪壁も、油断するとスタンスが崩れかねない柔らかさに。慎重な行動が求められました。

なお、下りで注意しなければならないことは道迷いです。特に権右衛門山のゴーロからのトラバースルートは、夏道が雪で埋まっているので、読図術とGPSを駆使して通過していただきたいと思います。

また、本谷山と三伏山は午後になると雪面の踏み抜きが頻発し、過度な疲労の素となります。ストックなどを利用して体重の分散をはかることをお勧めします。

3日目は鳥倉林道を目指しての下りでしたが、ここでも雪面の踏み抜きに神経を使わされました。

残雪期の塩見岳は、総合的な体力と技術力が試されます。山行計画は慎重にお立てください。

(文=原 誠一/アルプスネイチャークラブ・登山ガイド)

群馬県・鳴神山

春の花が咲く沢沿いの道を登り展望良い頂上へ

桐生嶽頂上から北側の展望。左が袈裟丸山で、右が皇海山(すかいさん)。さらにその右奥には日光の山々も見えていました(写真=木元康晴)

桐生嶽の山頂部の岩場を進む(写真=木元康晴)

5月7日、曇り

ゴールデンウィークの最後の日に、群馬県東部の鳴神山に行ってきました。

アクセスはJR桐生駅前より、おりひめバスに乗って終点の吹上バス停へ。そこから車道を20分ほど歩いた、駒形登山口から登山スタートです。

沢沿いの道を登って第一石門を過ぎ、中間地点の標識から少し登ると水場のある広場へ。足元にはニリンソウ、頭上にはヤマツツジの花があちこちに咲いて、春らしさが感じられる区間です。さらに第二石門を通過して尾根につめ上げ、雷神岳神社へ。この日は氏子の皆さんが集まって、神事が執り行われていました。また狼の姿をした狛犬の前では、登山道整備と植物保護のための資金協力の呼びかけがあり、私も協力金をお渡しして記念品のバッジをいただきました。

神社からは岩場をひと登りで、双耳峰である鳴神山の頂上のひとつ、桐生嶽へ。春霞がかかっていたものの、周囲の山々を見渡すことができました。

さらにもうひとつの山頂である、仁田山岳にも立ち、新緑の始まった尾根道を下って椚田峠へ。下山口となる赤柴方向へ向かう前に、反対方向へ5分ほど下った絶滅危惧種であるカッコソウの復元地にも立ち寄りました。管理者の方にうかがったところ、今年は開花が遅れているとのことでしたが、それでも柵に囲われた一角には、淡い紫色をした可愛らしい花が点々と咲いていました。

(文=木元康晴/登山ガイド)

西上州・四ッ又山、鹿岳

かなり疲れましたが楽しいコースでした

四ッ又山より、鹿岳(かなたけ)。右奥には浅間山(写真=中村重明)

鹿岳の二ノ岳より、アカヤシオと妙義山(写真=中村重明)

4月30日、晴れ

アカヤシオを目当てに、西上州・四ッ又山の4つのピークと鹿岳のふたつのピーク(一ノ岳と二ノ岳)を巡るコースを歩いてきました。

行程では、終わりかけながらヤマザクラ(白色)やトウゴクミツバツツジ(紫色)がまだそこかしこに咲いており、お目当てのアカヤシオ(ピンク色)も花びらがだいぶ地面に散っていたものの、まだ多く咲いていました。ヤマツツジ(橙色)も咲き始めており、新緑と相まって春らしいいい景観でした。

行程は急斜面のアップダウンの繰り返しで、ロープとハシゴが数箇所にあり、また鎖場も一箇所あって、かなり疲れましたが、変化に富んだ楽しいコースでした。

(文=中村重明)

外秩父・釜伏山~登谷山

鮮やかな新緑とヤマツツジ

展望台が建つ金尾山山頂付近から登谷山方面を望む(写真=石丸哲也)

皇鈴山山頂から西面の両神山、長瀞方面。山頂の東側は関東平野の展望が開ける(写真=石丸哲也)

4月29日、快晴のち曇り

4月23日に外秩父七峰縦走大会の参加者を迎えた寄居駅で秩父鉄道に乗り換え、波久礼駅下車。まずは荒川を渡り、北西に頭をもたげる金尾山を目指します。標高229mの低山ですが、山頂一帯にツツジが植えられ、メインのヤマツツジが満開です。群植されたツツジで赤く染まった斜面を登り、山頂に立てば南に登谷山方面、西には長瀞方面ののどかな山里風景などの展望が開けます。

来た道を戻り、風布へのコースに入ります。ちょうど新緑がまぶしく、民家の庭先にも路傍にも様々な花が咲いて春全開の趣きです。風布川に沿った風のみち歩道に入り、ニリンソウやヤマブキの花に迎えられて歩き、風布の里の食事処で昼食をとって、釜伏山へ向かいます。文字通り、お釜を伏せたようなドーム形の山頂部を見せるだけに、山頂近くは露岩も見られる急登が続きます。北面には日本武尊にちなむ日本水の名水が湧いていますが、岩場崩落の危険があるため立入禁止でした。

釜伏山山頂は狭く、樹林に囲まれて見晴らしがききませんが、石祠と狼像が祀られて、信仰の歴史が感じられます。

下山道も岩混じりの急斜面で、下りきったところに釜山神社が建っています。付近に植えられたサトザクラがちょうど見ごろで、思いがけず遅い花見も楽しめました。狼像が次々に現れる参道を進み、外秩父七峰の縦走コースに合流して、登谷山、皇鈴山、愛宕山と縦走して、二本木峠から内手(打出)へ下山。バスで小川町駅へ出て帰宅しました。

全体に新緑が鮮やかで、しかも淡い緑から濃い緑まで様々な色合いがあって美しく、山野草の花も楽しめました。二本木峠付近のヤマツツジはまだツボミの木が多かったです。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

奥秩父・甲武信岳

本来の積雪量だった、春の鶏冠尾根

途中の岩稜にて(写真=山田哲哉)

原生林の中の登り(写真=山田哲哉)

4月29日~30日

4月26日に甲武信小屋に電話で状況を聞くと「木賊山の標識の木の字しか雪の上に出てないよ」と教えていただき、全員にワカンを準備してもらいました。29日朝6:30に行動開始。目の前には青空の下、鶏冠尾根がキザギザにそびえています。

西沢渓谷の遊歩道とわかれ、東沢に入って飛び石伝いに鶏冠谷出合を渡ります。みごとな原生林の中、胸がつくような急登を木の根につかまりながら登ります。チンネのコルに上り、ここからは原生林の中、ところどころに顔を出す岩場を越えたり、巻いたりして高度を上げます。やがて第一岩峰に。これは右から巻きます。その先で左側が大きく望まれ、東沢が真下に見下ろせ、乙女ノ沢や西のナメ沢がスラブになって注ぐのが見えました。

以前は第二岩峰と呼んでいた岩場の下には「第3岩峰巻き道」の標識があります。この岩峰を大きく巻いて尾根に上がり展望台に立つと、鶏冠山の「山梨百名山」の標識があります。西側に鋭く食い込む東のナメを筆頭に、大きな展望が素晴らしかったです。それにしても、ここが「鶏冠山」でないのは地形図を見れば一目瞭然。ここから「奥秩父唯一の岩稜」と呼ぶにふさわしい岩場が続きます。クサリが取り付けられた岩場を登り、下って次のクサリですが、尾根が痩せていて少し恐いところです。岩と灌木の混ざった尾根をたどり、本物の鶏冠山山頂に到着。かつては「ゼフィルス山の会」のプレートだけが山頂の目印でしたが、いまは立派な標識があります。

このあたりから雪が現れ、しかも硬く凍っているのでアイゼンをつけます。小さな上下が急峻に続き、鶏冠谷左俣三ノ沢の見覚えのあるツメで尾根は左に曲り、この先のコルから2177mピークを越えて本格的な登りにかかります。寒気の流入か、黒雲が湧き、雪が降り出しました。ここからは雪や凍った苔が地面を覆う原生林の中を延々たる厳しい登りです。やがて尾根は斜面に吸収され、ボコボコ潜る雪と丈の低いシャクナゲのヤブが混じった最後の登りを這い上がり、木賊山の山頂に立ちました。西沢渓谷から実に10時間。最後の登りとラッセルがいちばんこたえました。

1m近い積雪の中にしっかりとつけられたトレースを下って、親しい甲武信小屋に飛びこみます。薪ストーブの温かさがうれしかったです。

翌朝、完璧に晴れた大展望の甲武信岳に立ちました。

なお、鶏冠尾根は原生林の中の岩稜として山水画を思わせる重厚な岩尾根です。岩場そのものはそれほど難しくはないのですが、岩稜の小さな上下には緊張感が必要です。最近はクサリや標識が増えてルートはわかりやすくなりました。標識には疑問に思う表現もありますが、鶏冠山までは目印も多いです。西沢から日帰りで「鶏冠山」の「山梨百名山」山頂まで往復する人も多いです。ロープやハーネス、ヘルメットは必要です。

(文=山田哲哉/山岳ガイド「風の谷」主宰 (株)KAZEエクスペディション顧問 山岳ガイドⅡ)

※編集部注:鶏冠尾根は一般登山道ではありません。

神奈川県北・生藤山

新緑や春の花を愛でながら歩きました

軍刀利神社の奥の院にそびえる大桂。新芽が開き陽光に輝いていた(写真=白井源三)

生藤山手前の三国山山頂から新緑の樹林越しに残雪の富士山が望める(写真=白井源三)

4月29日、晴れ

山梨県側から生藤山へのマイカー登山には、国道20号線上野原工業団地の信号を入ります。県道を登っていくと上野原駅からの生藤山登山口、石楯尾神社や上野原カントリークラブを過ぎ、正面に笹尾根の稜線が迫ると軍刀利神社が近いです。鳥居を潜り、神社社務所横に駐車スペース(無料)があります。

神社の階段入り口には満々と清水が湧いています。軍刀利神社は軍神として広く信仰を集め、信玄の奉納の記録が残ると案内にあります。奥に進むと山岳写真の大御所、白籏史朗氏が奉納した奥の院に入る鳥居の先に、この神社のシンボルである桂の大木がそそり立っています。高さ33m、周囲9m、樹齢500年。パワースポットとしても人気があります。

登山路は奥の院裏から始まり、小さな沢を渡り、急な杉林の尾根をジグザグに登ります。木漏れ日を浴びたヒトリシズカやヤブレガサが単調な登りを癒してくれました。左上に登る女坂・軍刀利神社元社への道標を分けて直進。道は緩い巻き道になり、やがて鎌沢、佐野川峠からのコースと合流します。三国山までワンピッチ。この日はまだ桜が点在していました。急な岩場を登り、狭い台地の生藤山を往復して、笹尾根へ延びるピークをひとつ越え、軍刀利神社元社に登って、のんびり昼時を過ごしました。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

神奈川県北・石砂山

新緑がまぶしい、静寂の山

国道413号線、西沢大橋から新緑がまぶしい石砂山を望む(写真=白井源三)

4月上旬、石砂山山頂はギフチョウを追うカメラマンでにぎわう(写真=白井源三)

4月30日、晴れ

石砂山は4月上旬にギフチョウが飛来して賑わっていましたが、静寂が戻ってきました。国道413号線から県道518号に入り、牧馬峠を下って篠原の里駐車場(有料500円)に車を置きました。

閑静な篠原の集落を歩き、バス停先の橋を渡って観光用トイレを過ぎて小橋を渡ります。石砂山1.5kmの道標が建っています。

ヒノキ林を登って、しばらくすると落葉樹に囲まれた明るい登山道に変ります。若葉が広がり、左の石老山、右の陣馬山の稜線が見え隠れします。石砂山0.5kmの道標あたりから、胸突き八丁が始まります。

この日はゴールデンウィークの日曜日にもかかわらず、正面に丹沢山塊の焼山からの稜線が見える山頂のベンチには1組の親子連れが休憩しているだけでした。

公共の交通手段が不便なこの地域には、牧野地区乗合タクシーが運行されています。中央線藤野駅からやまなみ温泉まで路線バスで入り、ここから予約制の乗合バスで登山口の篠原まで行けます。予約や問い合わせは山口自動車株式会社へ(TEL042-780-0777)。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

鎌倉・六国見山~源氏山

新緑や花に迎えられて気持ちよく歩きました

六国見山から望む富士山。左に箱根、相模湾の展望が広がる(写真=石丸哲也)

左:源氏山公園の春もみじ/右:長窪の切通(写真=石丸哲也)

4月30日、快晴

前週に逗子から衣張山、鎌倉アルプスの天園と、鎌倉を囲む丘陵の東側を歩き、新緑や花が美しかったので、この日は西側を歩いてみました。鎌倉アルプスから西側は標高が低く、歩行時間も短いので、ひとひねりして大船駅からスタートし、長窪の切通を経て六国見山に登って、鎌倉アルプスのコースに合流する計画で出かけました。

住宅地を進み、突然現れる長窪の切通を通り抜けると、いったん新興住宅地に出ます。住宅地のはずれから雑木林をひと登りで六国見山山頂。名前のとおり展望が開けて、相模湾や箱根の山々、横浜市街、そして快晴の空に雪をかぶった富士山を眺められました。予定では南へ下って里道に出た後、建長寺半僧坊へ登り返す計画でしたが、のんびり歩きで時間が押してきたので、明月院下を通って下りました。県道に出合い、少し建長寺方面へ進んだところで亀ヶ谷坂の切通を抜けてツツジが見ごろの海蔵寺へ。さらに化粧坂を登って、源氏山の広場へ向かいます。

ツツジが咲き、初代鎌倉幕府将軍・源頼朝の像が建つ広場から源氏山山頂を往復した後、大仏坂コースに入り、新緑の尾根道を南下します。大仏坂トンネルからもハイキングコースは続き、極楽寺へ出ることもできますが、鎌倉指折りの花の寺である長谷寺に寄るため、ここで車道に下りました。大仏の高徳院かたわらを通って、長谷方面へ向かいました。長谷寺では下の段のボタンが見ごろで、ツツジも見ごろ。フジは木によって見ごろのものも、ツボミのものもありました。

当日はよく晴れて、関東各地で夏日となる気温の高い日でしたが、海からの風が涼しく、新緑や花に迎えられ、気持ちがよかったです。寺院や源氏山公園には春の紅葉を楽しめるカエデの品種が植えられ、新緑に映えていたのも印象的でした。ゴールデンウィークで人出を覚悟していましたが、山は空いていて、古都を囲む山なみをゆっくり楽しめました。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

伊豆諸島・青ヶ島

外輪山大人ヶ凸部、道なき道を行く

大凸部より左の道路が越えた地点が取付。中央が大人ヶ凸部、右端の最低鞍部が金太ヶ越(写真=大津洋介)

引き返し地点より、金太ヶ越えからタカトウ。小さな岩礁が金太(写真=大津洋介)

4月30日、晴れ

青ヶ島は八丈島の南70kmにあり、伊豆諸島最南端の小さな島です。周囲は断崖壁で構成され、中心部はカルデラ構造で、中央の丸山と外輪山で構成されたおもしろい地形をしています。2015年秋に最高地点大凸部に登り(週刊ヤマケイ2015年11月12日号掲載)、島全体を見渡したとき、外輪山をぜひとも縦走してみたいと思いたち、今回、実行しました。

港から村中心部に続く道路が外輪山を越える地点から大凸部の反対側、大人ヶ凸部(おおじんがとんぶ)へ続く外輪山の尾根に取り付きました。2万5千分の1地形図には大人ヶ凸部までは登山道が記されています。踏み跡のようなものはあるものの、常緑樹低木のヤブコギから始まりました。最初のピークを越えると密生したネザサの植生となり、一気に海に崩れ落ちる崩壊地や、カルデラ側の急斜面に注意しつつ、強烈なネザサに足を取られながら進み、一向にペースが上がりません。

なんとか大人ヶ凸部の四等三角点を確認し、最高地点をクリアすると尾根は大きく下ります。小さな鞍部を越えると浜路ヶ平で尾根が広くなります。さらにネザサの密度は濃くなり、尾根を外さぬようにカルデラ側の縁を進みました。

突然前が開け、青い海が目の前に広がります。尾根はスッパリ切れ落ち、もろく崩れたヤセ尾根が外輪山最低鞍部の金太ヶ越まで続いていました。25m懸垂下降でカルデラ側の樹林帯を巻こうとしましたが、ロープの回収がうまくいかず、ここから戻ることに。小さな鞍部まで戻り、小さなルンゼをカルデラの恋ヶ奥へ下ることにしました。ところどころネザサともろい急斜面に苦しみつつ、2回の懸垂下降(1回は空中懸垂)の末、林道の末端に降りることができました。

※全山縦走には2~3日必要です。金太ヶ越前後のヤセ尾根の通過がポイントとなるでしょう。

※大人ヶ凸部を往復するのであれば登攀具は必要ないが、尾根が痩せているところもあり、充分注意する必要があります。

(文=大津洋介/無名山塾・こぐま自然クラブ)

頸城・天狗原山、金山

どこまでも滑っていきたくなる雪原

火山活動中の焼山(左)と火打山。例年よりも残雪は多い(写真=余野 等)

金山からは白いキャンバスに思い思いにシュプールを描く。至福の時間(写真=余野 等)

4月23日、晴れ

豪雪地域に位置する頸城の山々の中でも、この時期、ひときわ白く輝いているのが金山と天狗原山。ふたつの山は双子の兄弟のように寄り添っていて、山スキーや登山客でにぎわう火打山とは対照的に、金山・天狗原山へは訪れる人も少なく、静かな山旅が楽しめます。

この日は笹ヶ峰高原から雪に覆われた林道を進み、杉野沢橋から真川に沿って上流へ。額に汗して滝沢上部の1427m台地に飛び出すと、さわやかなブナ林が迎えてくれました。ここから夏道を離れ、沢を詰めて1701mピークへ。火打山と焼山に見守られながら、真っ白な金山、天狗原山の稜線を目指します。

最後の急登を終えると、広大な天狗原山に到着。ここから鞍部へ下り、緩やかな登りで金山に。火山活動中の焼山や、雨飾山がすぐ近くに見えました。

天気は上々なものの、低温と強風のため、すみやかに準備を整えて金山谷へ延びる尾根をドロップイン。フィルムクラストの雪面で思い思いにシュプールを描くと、ザザザ・・・・・・という音が谷あいにこだまします。どこまでも滑っていきたい衝動を抑え、右の尾根に登り返して帰路につきました。

(文=余野 等)

安曇野・光城山

麓から山頂まで続く、桜のアーチ

光城山全景(写真=原 誠一)

山頂の満開の桜(写真=原 誠一)

4月25日、晴れ

残雪の北アルプスを目指して安曇野を北上していたところ、天気予報が芳しくないため、急遽、安曇野の桜の名所・光城山(ひかるじょうやま)に方向転換しました。この季節の光城山は、麓から山頂まで、桜の街道となります。実際に登ってみると、ヤマザクラや枝垂れ桜、ソメイヨシノの花のアーチをくぐりながら、山登りを楽しめました。そして、アーチの間からは常念岳を筆頭に北アルプスの白銀の山々を眺めることもできました。

「ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ」西行

まさに、この和歌を朗詠したくなるような美しい景色でした。

(文=原 誠一/アルプスネイチャークラブ・登山ガイド)

台高山脈・池木屋山~明神岳~桧塚

宮ノ谷渓谷からテント泊で台高縦走路へ

台高縦走路のブナ林(写真=金丸勝実)

蛇滝の宮ノ谷渓谷(写真=金丸勝実)

4月22日~23日、晴れ時々曇り

台高山脈は大峰山脈とともに、紀伊半島の骨格をなしています。山脈が三重と奈良の県境になっていて、北は高見山から南の大台ヶ原まで標高が1200mから1600mの山々が連なります。池木屋山は台高山脈の中ほどにある標高1396mの山で、三重県内の山としてはグレードの高い山に属します。今回は宮ノ谷から入山し、池木屋山から明神岳まで縦走後、桧塚を経由して下山する、山中1泊の周回ルートで歩きました。

【第1日目】

池木屋山への三重県側の登山口は宮ノ谷が一般的です。宮ノ谷は県内屈指の美しい渓谷で、高滝までは鉄製の橋、階段、桟橋でよく整備されたルートになっています。六曲屏風岩、蛇滝、石切河原などの見どころが多く、同時に植物も豊かで、この時季はミツバツツジ、アケボノツツジ、トウゴクサバノオ、オオミネコザクラ、ヒトリシズカなどが見られました。

高滝からはルート状況が一変し、厳しいルートになります。特に高滝、猫滝の高巻きは注意が必要。過去に何度も事故が発生しています。渓谷は奥の出合まで続き、その先は尾根ルートになり山頂まで一気に高度を上げていきます。この日はタムシバとアケボノツツジがきれいに咲いていて、コウヤマキが見られるのがこの尾根の特徴です。

さてテント泊ですが、水場のある千石山の手前まで行きたかったのですが、時間的に無理があったので、山頂直下の小屋池のほとりにテントを設営しました。ブナ林の林床は柔らかくテント泊には最適ですが、夜間の気温が氷点下となり、水が凍り付くほどでした。

【第2日目】

この日は明神岳までの縦走です。コクマタ山、千石山、笹ヶ峰などを越えていくため、約200m前後のアップダウンを繰り返します。稜線はブナ、ヒメシャラ、ミズナラ、シロヤシオ、シャクナゲなどの豊かな樹林が続きます。若葉の出るころには、シロヤシオやシャクナゲの花が楽しめると思います。

明神岳から桧塚までは緩やかな地形で、美しいブナ、ミズナラ林が続きます。この山域に入ると奈良県側からの登山者多くなってきます。桧塚は非常に展望のよいところで、台高山脈はもちろん、高見山地、室生山地まで一望できます。このへんはシロヤシオの多いところで、5月下旬の花の時季が楽しみです。

下山はヌタハラ林道登山口に降り、林道を歩いて宮ノ谷登山口に駐車した車に戻りました。ヌタハラ林道は作業が行われない期間が長引くと荒れるので、車での通行ができなくなります。徒歩での移動を想定し、時間にゆとりを持たせてください。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

岡山鳥取県境・伯州山

イワウチワ大群落の尾根を歩きました

可憐なイワウチワが広がっています(写真=舩越 仁)

下山は滝谷コース。残雪を踏む箇所もありました(写真=舩越 仁)

4月28日、快晴

岡山県鏡野町赤和瀬集落奥のバス回転場から奥に向かって歩き始めます。私たち、みつがしわ山の会の今月例会はイワウチワの花が目当てです。

20分ほどで遊歩道を右にとると、早くも山肌にひとつ、ふたつ可憐なイワウチワが現れ、歓声があがりました。やがて遊歩道が階段になると、花が咲きこぼれ始めます。写真を撮るのにみんな一生懸命です。

私たちは遊歩道が下りに差し掛かる地点で、右手の尾根登山道に入りました。ここからはイワウチワが両側に群生し、ひとり通過するのが精一杯の狭い踏み跡道なので、花を踏まないように注意して歩かねばなりません。

ロープも杭もないイワウチワ大群生の尾根小道が1km弱続きます。雪解けすぐに咲き始めるこの花が全面に咲き誇り、最高に見ごろの時期でした。

山頂には県外からの登山者もいらっしゃいました。2組の旧知の方々に声をかけられ、びっくりするやら嬉しいやら。遠く白い大山東壁を望む、大展望でにぎやかな山頂でした。その他の花ではイワナシ、バイカオウレン、キクザキイチゲが咲いていました。

このような山は、本来はそっとしておくべき山かもしれません。でも週刊ヤマケイの読者なら正しい山のマナーもわきまえているので、安心ですよね。

(文=舩越 仁/みつがしわ山の会)

祖母山系・古祖母山

大分宮崎県境の山へ

古祖母山への稜線より、アケボノツツジと北側の大障子岩の山並みを望む(写真=松本高志)

古祖母山北側より、障子岳から祖母山へ続く雄大な主稜線を望む(写真=松本高志)

4月29日~30日、曇りのち晴れ

祖母・傾山系の古祖母山にアケボノツツジを見に行きました。コースは尾平越トンネルから往復です。

尾平越トンネルから祖母・傾縦走路の稜線に上がるには、トンネルを挟んで大分側と宮崎側に駐車場と登路がありますが、大分側は使用禁止になっていたので宮崎側から入ります。午後から登山開始。登山口で下山者にお聞きすると、アケボノツツジは標高1200~1300mが開花していて見ごろとのこと。少しでも多くのアケボノツツジを見るため、本谷側の稜線への登山道を上がりました。

稜線の縦走路に着くとピンクのアケボノツツジ、ミツバツツジが迎えてくれました。シャクナゲはまだツボミです。ここから西へ向かって、花を見ながら快適な縦走路を行きます。天気は曇りで、時々晴れ間も見えましたが、稜線はかなり強い風でした。

標高1400mあたりではアケボノツツジはツボミに変わり、ブナの芽吹きもまだで、冬枯れ色の縦走路になります。次第にアケボノツツジの開花と新緑前線が上がってくると思われます。途中、古祖母山から帰ってくる多くの登山者にすれ違いました。

古祖母山頂からは宮崎県側の展望が優れます。折り重なる山の向こうに、大崩方面の山々がよく見えました。この日は古祖母山周辺で幕営しましたが、一晩中、強風が吹き荒れていました。

翌朝は風もおさまり、雲ひとつない青空に。当初の予定は障子岳を越え、黒金山尾根を尾平へ下るつもりでしたが、青空の下のアケボノツツジの群落をもう一度見たくて、来た道を戻りました。そしてピンクの可憐なアケボノツツジと、北側の祖母山から大障子岩への雄大な障子岩尾根の山並みを、のんびり眺めながら下りました。

なお、下山時に尾平越トンネル駐車場や尾平登山口周辺は車で満杯状態でした。

(文=松本高志)

宮崎県・大崩山

山中で咲き誇るアケボノツツジを鑑賞に

急登道を登り終え、袖タキの岩場で寛ぐ登山者(写真=長谷川守克)

アケボノツツジ越しに望む木山内岳(写真=長谷川守克)

4月30日、晴れ

九州を代表する一座である大崩山。この時季、山中ではアケボノツツジが咲き誇り、登山者を迎えてくれます。今年もその素晴らしい光景を眼にしたくなり、広島県の山友と出かけることにしました。コースは、祝子川登山口から岩稜のワク塚尾根を進み山頂へ。その後、展望を味わいながら坊主尾根を進み、スタート地点に戻る周回としました。

晴天の下、急登道を大汗をかきながら進むと、目的の花であるアケボノツツジが眼に飛び込んできました。期待通りにきれいな花を咲かせて出迎えてくれ、これまでの疲れも吹き飛んでしまいました。袖ダキに到着して、これから進む周囲の岩峰を眺めながらひと休み。

その後、岩稜のワク塚に取り付き、アケボノツツジを愛でながら慎重に先をめざすと、山頂に到着しました。休憩後、ハシゴの多い坊主尾根を進みます。尾根からの展望は抜群で、気分は爽快。そのうえ、登山道周辺にはミツバツツジ、ヒカゲツツジ、シャクナゲなどが咲き乱れ、眼を楽しませてくれました。

今回のコースは、大崩山山行が初めての方にはなかなか厳しい道ではありましたが、花と展望に加えて多彩に変化するルートなどすべてに大満足していただけました。

なお、本コースは適所に道標が整備され、安心して歩けますが、岩稜帯では転倒滑落に注意が必要です。

(文=長谷川守克)

妙高周辺・堂津岳

残雪期にお気に入りの山

山頂直下は雪庇が張り出していた(写真=小林貞幸)

山頂の笑顔。背後は頸城三山(写真=小林貞幸)

4月30日、快晴

ミズバショウで有名な長野市鬼無里の奥裾花(おくすそばな)。その林道が開いたので残雪期お気に入りの山へ行きました。

故・清水栄一氏選定の信州百名山の一座で、完登狙いのふたりをガイドし、私は4度目の訪問となります。

(小林貞幸/長野県/68歳/よく行く山:北アルプス、妙高、戸隠)

山梨県・岩殿山

交通の要所にそびえる山

岩殿山頂上直下からの富士山(写真=一寸木紀夫)

兜岩のクサリ場。かなりの傾斜を持つクサリ場が2ヶ所ある(写真=一寸木紀夫)

4月30日、晴れ

岩殿山は山梨県大月市にある山で、JR中央線大月駅より近間に望むことができます。関東からの街道が富士方面と甲府方面とに分かれる手前にあり、交通の要所となっていたようです。今も東京から甲府に通じる中央線と、大月から山中湖方面に向かう富士急行線があります。ほかに中央高速道路や並行して走る一般自動車道が、狭い谷筋になっているこのあたりに延びています。それらを見下ろす中世の城跡からの景観は「交通の要所」であったことがよくわかります。

岩殿山の標高は634m。ム・サ・シでスカイツリーと同じ高さです。頂上へは直登気味の階段などが延々と続き、途中、道を折り返すたびに山中湖方面に向かう谷筋の中央に富士山が望めます。標高を上げていくと周辺の山は低くなっていくものの、富士山は同じように高くなっていきます。この感覚は新鮮なものでした。

頂上はかつての城の本丸跡で、今は電波塔が建っています。見晴らしはよくありませんが、その分、頂上手前の展望台は富士山側に開けていて、この日のような快晴のもとでは爽快感を味わえます。

来た道を引き返し、稚児落としへの分岐を行きます。新緑のなかの道は気持ちがいいです。途中の天神山へ向かう兜岩のクサリ場は、低山とは思えぬほど立派で、このコースが中級といわれるのにふさわしいです。クサリ場を過ぎると、もうひとつの目的地、稚児落としです。一枚岩の絶壁で、雄大さを感じさせてくれました。

登山道は歩きにくいわけではありませんが、下りでは滑りやすくなっているので、注意深い下山が必要です。

(一寸木紀夫/東京都/65歳/よく行く山:八ヶ岳、北アルプスなど)

鈴鹿・鎌ヶ岳、御在所岳

花を求めて鈴鹿の山へ

鎌ヶ岳にて。左上から時計回りにイワウチワ、アカヤシオ、ショウジョウバカマ、ハルリンドウ(写真=八木茂良)

御在所岳八合目付近から望む、曇り空の鎌ヶ岳(写真=八木茂良)

4月24日~25日、曇り

花の季節を迎え、鎌ヶ岳と御在所岳に登りました。今回の主な目的は鎌ヶ岳のイワウチワを愛でることです。しかし、今年の春の気候は気まぐれで、極端な暑さ寒さを繰り返しているため、花の時季が定まりません。

初日は鎌ヶ岳をめざしました。三岳寺から馬の背尾根を経て鎌ヶ岳山頂へ。そして長石谷から長石谷登山口に下ります。

この日、イワウチワの群生を見ることはできましたが、よく見ると花の盛りは過ぎているようでした。そのほかの花はショウジョウバカマ、バイカオウレン、タムシバ、ミツバツツジで、アカヤシオは咲き始めでした。

山頂で、長石谷から登ってきた方にイワザクラのことを伺ったところ、咲いていたとのことでしたので、長石谷を下りました。しかし初めての谷下りでルートファインディングに気を取られ、イワザクラを見つけることはできませんでした。

翌日は御在所岳へ中道コースを登り、下山は表道コースを利用しました。アカヤシオはまだ咲き始めでした。中道コースでは負ばれ岩や地蔵岩、大黒岩などの奇岩を見ることができます。山頂ではガスがかかり、強風のために寒く、登頂気分をゆっくりとは味わえませんでした。

(八木茂良/静岡県/70歳/よく行く山:東海地方の花の山、八ヶ岳)

滋賀県・賤ヶ岳、小谷山

合戦跡を歩いてきました

余呉湖が見える賤ヶ岳山頂広場で遊ぶ親子(写真=小林昭生)

小谷山にて。右手の小山は山本山(324m)、奥に浮かぶように見えるのが竹生島(写真=小林昭生)

4月29日、晴れ

賤ヶ岳(しずがたけ)は、信長亡きあと、天下を狙う秀吉がライバル柴田勝家と争ったところ。小谷山(おだにやま)はそれより前、信長が浅井長政と戦ったところです。

賤ヶ岳登山のルートはいくつかありますが、今回は大音(おおと)にあるリフト乗り場のすぐ横からスタート。リフトの下を2回横切ってジグザグに進んでいくと、30分足らずで山頂駅に合流します。リフトを使えばあっという間です。家族連れにはありがたい乗り物といえるでしょう。リフトに乗った男の子から「こんにちは!」と元気な声が飛んできました。

山頂広場には「七本槍古戦場賤ヶ岳」と記した大きな柱が立ち、眼下に琵琶湖と余呉湖が望めます。広場に咲くソメイヨシノはもう散っていましたが、ヤエザクラが1本残っていました。

休憩後は小谷山に向かうため、出発点となる「戦国ガイドステーション」まで車を走らせました。特定の日には、ここから小谷山中腹まで小型バスが運行されるとのことでした。わずかに石垣が残る本丸跡では20名ほどの人たちがガイドの説明にうなずいていました。

登山道は林の中に続いています。林の中は生まれたばかりのみずみずしい若葉でいっぱいでした。歩くには最高の季節です。山王丸から急坂を下り、登りかえすと小谷山です。先行者がひとり、緑の中で休んでいました。

(小林昭生/奈良県/75歳/よく行く山:金剛山系はじめ関西一円の山々)

山口県・寂地山

カタクリの花がとてもきれいでした

山頂で記念撮影(写真提供=小林龍聖、琥翔)

4月23日、晴れ

スタート地点はログハウス山店です。林道を歩いていると、道路には駐車禁止と書いてありました。橋を渡って、湧き水の延齢水を飲み、コンクリートの階段を上ります。滝には下から順に滝尾、登滝、白滝、滝門、滝頭と名前があります。滝を見ながら登ると分岐点がありました。右折してトンネルをくぐります。トンネルをくぐり抜けると横に川が流れていました。その渓流沿いの山道を登ります。みのこし峠の分岐点の近くになると急登がちょっとあり、それを登りきったら、みのこし峠に着きました。

そこから寂地山の方に行きます。カタクリ群生地があり、とってもきれいで、そこで写真を撮りました。その後、1時間ぐらい歩くと山頂でした。山頂では団体で登って来ているグループがいました。山頂でご飯を食べて下山します。

下山は山頂すぐの分岐点から寂地林道ルートで、急階段を下っていきました。林道に出て、犬戻りの滝を見ながら遊歩道を歩きます。あずまやから舗装道路を30分ぐらい歩くと、ログハウス山店に着きました。暑かったから、ログハウス山店でアイスを買いました! とても美味しかったです。

(小林龍聖、琥翔/熊本県/13歳、11歳/登山歴4年)

第九十二回

会議なぅ!山か?旅行か?攻防戦!(あられちゃん)

エステより美人になれる山登り(ガンバ)

登山口、ザックがないぞデポ車中だ!(にいしばG)

春スキーどこまで滑れる雪乞食(山形山人)

【寸評】

一句目、あられちゃん。まるで日露戦争の旅順攻防戦を彷彿とさせる激しさが伝わってきます。ゴールデンウィークは終わりましたが、次は夏休み。また新たな戦いの火蓋が切って落とされることでしょう・・・・・・。

二句目、ガンバさん。120%同意します!

三句目、にいしばGさん。ザックは忘れたことはありませんが、テントのポールやガスカートリッジ、はたまた登山靴など、私も忘れ物王です。

四句目、山形山人さん。着眼点はいいのですが、雪乞食はあまりいい言葉ではないですね・・・・・・残念!

【段位】あられちゃんは8000m級「マカルー」に昇段。ガンバさんはカトマンズからエベレストB.C.に向けて出発。にいしばGさん、山形山人さんは川柳エベレスト頂上まであと少しですが、ヒラリーステップで停滞・・・!

【応募方法】

山に関する川柳を募集します。投稿先メールアドレスは「weekly@yamakei.co.jp」です。メールの件名には必ず「週刊ヤマケイ・山の川柳」とお書きください。ペンネームでの投稿も受け付けております(読者の登山レポートはペンネームでの投稿不可)。

なお、ご投稿いただいた方には1000m峰から始まる「山の川柳段位」を授与します。ふるってご応募ください。

週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

「夏休み 孫と一緒に 百名山」

「お父さん 登山道具を 片付けて」

「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

山で体験したちょっといい話や不思議な話、使って役立った装備や安全登山のための工夫、昔の登山の思い出などを募集します。お気軽にご投稿ください。こちらの投稿もペンネーム可です。文字数は400字以内でお願いします。


投稿先メールアドレス

weekly@yamakei.co.jp

※メールの件名に必ず「週刊ヤマケイ・表紙写真応募」または「週刊ヤマケイ・読者の登山レポート投稿」「週刊ヤマケイ・山の川柳」「週刊ヤマケイ・よもやまばなし」とお書きください。

※表紙写真に採用された方、読者の登山レポートに採用された方には週刊ヤマケイのロゴ入り測量野帳を進呈します(初回のみ)。また山の川柳で高段位になられた方にも測量野帳を進呈します。どしどしご応募ください。

登山の「まさか」に! レスキュー費用保険で、確かな安心を。

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※平成28年4月20日より

ヤマケイ登山教室からのお知らせ

【机上講習会】 山の危急時対応・リスクマネジメント入門

山のリスクについてあらゆる視点から学ぶ講座です。リスクを理解し、リスクの低減を図る方法を一緒に学習しましょう。

参考書:『安全登山ハンドブック』日本山岳ガイド協会編

http://bit.ly/2pyfxJb

開催日・テーマ 6月20日(火)山のリスクを評価してみる
7月11日(火)事例検証 リスクを考えてみる
9月5日(火)計画立案時に注意すべきリスク
10月24日(火)山のリスクの総まとめ
会場 アルパインツアーサービス本社 特設説明会場(3階)
時間 19:00~20:30
定員 35名(最少開催人数10名)
受講料 3,000円
講師 武川俊二(日本山岳ガイド協会・理事)

【机上講習会】 山の危急時対応・山のファーストエイド入門

山で起こりがちなトラブルに対処するための事故防止対策、救助要請や応急手当の方法のポイントを学びます。また身の回りの登山用具などを応用できる資材と山で有効な救急用品の紹介と比較を行うなど「できるようになる」ための実習ベースの講座です。

参考書:『山のファーストエイド』(山と溪谷社刊)

http://bit.ly/2q2uQwN

開催日・テーマ 5月16日(火)小さなトラブルの予防と応急手当
6月13日(火)夏山で起こりやすい事故と対策
7月18日(火)筋肉・骨・関節の損傷と応急手当
8月23日(水)災害時に役立つ山のファーストエイド
9月12日(火)特殊なけがの応急手当
10月10日(火)応用編
会場 アルパインツアーサービス本社 特設説明会場(3階)
時間 19:00~20:30
定員 35名(最少開催人数10名)
受講料 3,000円
講師 悳 秀彦(日本山岳協会 遭難対策委員)

【机上講習会】 山の天気入門

『山岳気象大全』(山と溪谷社刊)を参考書として、机上で山岳の気象を学びます。『山岳気象大全』は山岳気象の基礎から発展までを総解説。計画時からの天候変化への対処法をフローチャートで掲載するなど、山岳気象の専門書です。

参考書:『山岳気象大全』、『山の天気リスクマネジメント』(ともに山と溪谷社刊)

http://bit.ly/2py24B6

開催日・テーマ・講師 6月16日(金)中級・前線の種類と梅雨期の気象(猪熊)

7月3日(月)基礎・夏山の気象(渡部)

7月24日(月)中級・夏山の気象(猪熊)

8月22日(火)基礎・秋山の気象(渡部)

9月19日(火)中級・秋山の気象(猪熊)

10月17日(火)中級・高層天気図入門(猪熊)
会場 アルパインツアーサービス本社 特設説明会場(3階)
時間 19:00~20:30
定員 35名(最少開催人数10名)
受講料 3,000円
講師 猪熊隆之(山岳気象予報士)、渡部均(山岳気象予報士)

【机上講習会】 地図読み講座「入門編」

山で地図が読めると、コースの未知数が減り、気持ちにゆとりが生まれ、道迷いの防止に繋がります。この講座では地形図とコンパスの活用法を身につけます。プレート付きのオリエンテーリングコンパス(シルバR3、スントA10など)を必ず持参してください。

参考書:『学べる! 山歩きの地図読み』(山と溪谷社刊)

http://bit.ly/2qqolok

開催日・テーマ 7月12日(水)地形図の読み方・コンパスの使い方
9月13日(水)地形図の読み方・コンパスの使い方
会場 アルパインツアーサービス本社 特設説明会場(3階)
時間 19:00~20:30
定員 35名(最少開催人数10名)
受講料 3,000円
講師 佐々木 亨(山岳ライター)
株式会社山と溪谷社
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1丁目105番地
編集
佐々木 惣
アートディレクター
松澤政昭
SSデザイン
塚本由紀(T&Co.)
技術サポート
福浦一広、金沢克彦
プロデューサー
萩原浩司

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