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今週末の「山のワンポイント天気」

ウェブサイト「山の天気予報」を運営し、メールでの天気予報配信も行なっている株式会社ヤマテンの気象予報士、渡部 均さんによる解説です。今週末の山行に役立ててください。

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先日5月10日に、観天望気ツアーで大菩薩嶺に登ってきました。大菩薩峠から雷岩までの稜線は好展望・・・・・・のはずでしたが、低気圧の影響であいにくの天気となり、終始ガスに覆われた中での登山となりました。とはいえ、「なぜ低気圧がだんだん遠ざかっているのに、このガスは取れないのだろう?」という、天気を学ぶツアーとしては絶好の機会。また、参加されたお客様が一言、「霧に覆われた山も幻想的でとても素敵、すごく幸せな気分です」とおっしゃっていたのが印象的でした。

今週末の天気ですが、土曜日は日本海を低気圧が東進するため、北日本から東日本の日本海側の山岳を中心に天気が崩れ、荒れた天気となるところもあるでしょう。日曜日は本州付近へ高気圧が移動してくるため、北日本をのぞいた広い範囲で青空が広がる見込みです。最新の気象情報をチェックして、登山へお出かけください。

(文責:渡部 均)

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ヤマテン主催講座が、6月10日(土)の名古屋に加えて、新たに6月25日(日)に大阪でも開催されることが決まりました。講義内容は両会場とも「山岳気象の基本と気象遭難を防ぐための天気図の見方」(初級編)、「ヤマテンの賢い利用方法~夏山の気象遭難を防ぐために~」(中級編)です。講座の詳細やお申込みにつきましては、名古屋はこちら、大阪はこちらをご覧ください(※定員に達した場合につきましては、お申し込みフォームが開かなくなりますのでご了承下さい)。

また、6月17日(土)から18日(日)に、雲取山から石尾根縦走のツアーの催行が決定しました。東京都最高峰の雲取山は、秩父側、甲州側、奥多摩側とで天候が異なることがあり、天気の分水嶺とも言えます。地形が雲の発生に及ぼす影響について学び、三峰口から石尾根へと縦走する充実の山行です。講師はヤマテンの猪熊隆之さんです。ツアー詳細はこちらをご覧ください。

これ以外にも2017年度上期の空見ハイキングの日程が決定しています。詳しくはこちらをご覧ください。

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「山の天気予報」(月額324円)

コーヒー1杯分のご利用料金で、全国18山域の山頂天気予報や大荒れ情報、予想天気図、ライブカメラ、雨雲レーダー、観天望気講座などが1ヶ月使い放題。メールでの天気予報配信登録もおこなえます。サービスの詳細やご登録方法につきましては、下記URLでご確認ください。

https://i.yamatenki.co.jp/

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『山の天気にだまされるな!』

ヤマテンの猪熊隆之さんの著書『山の天気にだまされるな!』が好評です。一般の天気予報だけでは防げない気象リスクについて解説。猪熊さん自身が生徒を連れて登る「お天気ハイキング教室」の具体例などもとりいれて、わかりやすく解説しております。ぜひ一度、手にとってみてください。

https://www.yamakei.co.jp/products/2815510190.html

信州の山岳遭難現場より

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。

5月23日に配信された第71号では5月8日から14日にかけて長野県で発生した4件の遭難事例が掲載されております。

標高の高い稜線や沢沿いの登山道などは、残雪により不明瞭な部分が多いので、滑落や道迷いに充分な注意をはらってください。事前に残雪や登山道の状況などを付近の山小屋に確認しましょう。

また、自分の体調や体力、登山技術などを客観的に把握して、自分の力量にあった山に登るように心がけてください。

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・5月8日、北安曇郡小谷村の雨飾山で、滑落した仲間の救助要請をするために69歳の女性がパーティ仲間と離れて下山。その途中で道に迷い、行方不明になる山岳遭難が発生しました。県警ヘリなどで捜索しましたが、4日後に自力で下山し、小谷村の民家に助けを求め、無事が確認されました。

・5月10日、塩尻市下西条の大芝山付近で、72歳の男性が下山中に転倒。頭蓋骨骨折などの重傷を負い、山梨県防災ヘリで救助しました。

・5月14日、北アルプス・北穂高岳南稜付近で47歳の女性が涸沢から北穂高岳に向けて登山中に滑落。顔面などを打撲しましたが県警ヘリで救助しました。

・5月14日、北アルプス・常念岳から蝶ヶ岳に向けて縦走していた43歳の女性が雪に足を滑らせて滑落。骨盤骨折の重傷を負いましたが、県警ヘリで救助しました。

蝶ヶ岳で発生した滑落遭難の現場。稜線から約200m滑落(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月19日付より)

(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)

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長野県警のホームページでは長野県の春山情報をご覧いただけます。長野県警察ヘリ「やまびこ2号」によるヘリコプターテレビシステムにより撮影された横尾~涸沢、涸沢より上部、西穂高岳などの映像も見ることができます。

http://www.pref.nagano.lg.jp/police/sangaku/index.html

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下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

(文=週刊ヤマケイ編集部)

藪尾根歩きの楽しみ

新刊『続・秩父藪尾根単独行』の著者・坂井勝生さんが解く「藪尾根人気の理由」

著者近影

『続・秩父藪尾根単独行』著者:坂井勝生/2100円+税(POD版)、1050円+税(電子書籍版)/2017年3月17日発売/四六判(POD)/258ページ(POD)/ISBN:9784635886550(POD)

登山道を歩かないことで「登山の楽しみ」に迫る、貴重な記録『秩父藪尾根単独行』が世に出たのは2014年。そして今年3月、待望の続編が刊行され、さっそく「藪尾根ファン」の間で話題になっています。

道なき尾根や谷を上り下りする「藪尾根歩き」はかつて一部の篤志家が志向するものでしたが、この数年はその裾野を広げ、注目を集めています。

著者の坂井さんに「なぜいま藪尾根歩きが注目されているのか」をお伺いしたところ、丁寧な分析をいただきましたので、ご紹介いたします。

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ここ数年で、登山道を使わない山歩き(藪尾根歩き)を実践する人が急激に増えています。ヤマレコをはじめとしてネット上にアップされる記録の急増、登山道のない尾根筋におけるマーキングの急増をみてもこのことは明らかでしょう。また、松浦隆康氏のバリエーションハイキングシリーズ(新ハイキング選書)が売上を伸ばしていることも、拙著がそれなりの支持を受けていることなども、藪尾根歩き人口の増加を物語っているといえましょう。

話を進めるにあたって、我が国の登山の形態を大雑把に分類してみます。

①高尾山や奥多摩・奥武蔵の低山などを対象としたハイキング

②北アルプスや八ヶ岳などの一般登山道を対象とした無雪期の登山

③本格雪山、岩登り、沢登り

(ここでは仮に、登山道を使わない山歩き〔藪尾根歩き〕をⅢとしておきます。)

①と②は特別な装備と技術を必要としないという点で共通しています。③は本格的な装備と技術が必要とされるという点で、①や②とは性格を異にします(Ⅲは③のような本格的な装備を必要としない点では①や②と同様ですが、ある程度の読図力が必要とされる点で①や②と異なります)。我が国の登山愛好家のほとんどは①や②の形態を楽しんでおり、③の形態を実践している人は僅かにすぎません。

ここ数年、上記①や②の形態の登山を専らとしている人達の中で、「ひと気のない静かな山を、自分の力で、自分の判断によって、自由に歩いてみたい」と考える人達が、次々とⅢの形態の登山を実践しはじめています。

登山をはじめたばかりの頃は、安心感の得られる人の多い山を好んでいたにしろ、慣れてくれば「ひと気のない静かな山」を歩いてみたくなるのが人情というものです。

山岳雑誌の読図特集が人気があることからも分かるように、読図がうまくなりたいと願う登山愛好家はかなりの数にのぼると思われます。が、読図特集を繰り返し読もうが、講習会に参加しようが、それらは所詮「畳の上の水練」――読図がうまくなるにはⅢの形態の登山を実践する以外に方法はありません。はじめのうちこそ不安があっても、二、三回も実践すれば、読図が急激に上達したことに自ずと気づき、驚くことでしょう。そうなると、ますます「自分の力で、自分の判断によって、自由に歩いてみたい」と思うようになり、Ⅲの形態の登山から抜けられなくなります。

さらにⅢの形態の実践者が急増している現象を考えるにあたって、次のような環境、状況の変化を忘れることはできません。

Ⅲの形態の登山は二万五千図の存在を抜きに成り立ちませんが、近年、二万五千図の入手が極めて容易になりました。コピーでよければ「国土地理院地図」をダウンロードしてプリントアウトできますし、実物の入手もネット経由の通信販売で簡単になりました。二万五千図は一枚でカバーできる範囲がごく限られていますので、行き先を変えるたびに新たに複数枚を用意しなければならず、以前はその入手に手間がかかりました。

次に、ネットを利用して登山道のない場所(藪尾根)に関する情報が容易に入手できるようになったという点を挙げなければなりません。よくいわれるように、アップされた情報は玉石混交ですが、複数の記録を照合すれば、地形図からは読み取れない崖や急斜面の有無、崩落箇所の有無などについて、かなりの程度知ることができます。

三つ目として、全国的に見られるスズタケの衰退・壊滅現象を挙げておきたいと思います。詳しいことは知りませんが、スズタケの衰退が顕著になりだしたのは二十年ほど前からで、ほぼ壊滅状態となったのは五、六年前(秩父山域の場合)ぐらいからでしょうか。拙著に収録したルートにも、平成の初め頃までなら通過が困難と思われるものがいくつもあります。①と②の形態の登山を専らとしている人の中には、道のない尾根筋は藪が蔓延(はびこ)っていると思っている人もいるかもしれませんが、実際は枯死したスズタケが疎らに立っている程度であることがほとんどです。

こうした三つの追い風が吹いていることを考えると、従来の登山形態(①②③)を専らとしていた人達が、続々とⅢの形態の登山を実践しはじめているのも、当然の流れといえるのではないでしょうか。

(文=坂井勝生)

本の雑誌6月号は「山の本特集」

いますぐ読みたい、山の本をずらり紹介

『本の雑誌』2017年6月号(本の雑誌社)定価667円+税

椎名誠さんや沢野ひとしさんが創刊した『本の雑誌』。毎月掲載されるユニークな書評や新刊紹介に、週刊ヤマケイ読者のなかでもファンの方は多いのではないでしょうか。

いま発売中の6月号では「そこに山の本があるからさ!」と題して、山の本が特集されています。タイトルをちらっとご紹介すると・・・・・・

・座談会「山の本ベスト30はこれだ!」

・失われた若い命を想う三冊

・黄金期ヨセミテに集った二人のライバル

・山にはミステリーがよく似合う

・変わりゆく山岳マンガの“いま”

・生涯現役・田部井淳子のクライマー人生

・読者アンケート 私の一押し“山の本”

・おじさん二人組、ヤマケイに登る!

どうです、このまばゆく輝くタイトル群。どのページをめくっても、「読みたい!」と思わせる山の本がずらりと並んでいます。

そのなかで異色を放っているのが、特集巻末の「おじさん二人組、ヤマケイに登る!」。山と溪谷社は神保町の23階建てビルの22階に入っているのですが、その最上階(23階)をめざして、本の雑誌社のおじさん二人組が階段を登ります。その案内を不肖・佐々木が務めさせていただきました。「シェルパ佐々木」で誌面に登場しております(笑)。

特集が見逃せないのはもちろんですが、沢野ひとしさんや服部文祥さんのエッセイも収録されております。ぜひお買い求めください!

(文=佐々木 惣/週刊ヤマケイ編集部)

『丹沢の谷 200ルート』

丹沢の沢に入渓するすべての沢ヤ必読の一冊

『丹沢の谷 200ルート』著者:後藤真一/5月26日発売/3200円+税/A5判/320ページ/ISBN:978-4-635-18048-1

玄倉川水系 小川谷廊下

全ルート踏査! 地形図ベースの手描き遡行図!

著者の後藤真一さんは、“山は記憶ではなく、記録に残せ”という信念のもと、各地の沢を記録に残してきました。そして丹沢のほぼすべての沢を遡行し、自分でも驚くくらい記録の細かさはエスカレートしていったといいます。今回、それらすべてが本書刊行のために書き直されましたが、地形図上に情報を落とされた詳細な遡行図は、まさに正確無比な記録そのものです。

後藤さんは現在、地元遭難対策協議会の救助活動にも携わっているので、遭難対策の視点からも本文は書き記されています。各沢のプロテクションや残置スリングの状態、それらを利用する際の注意点なども紹介されています。

最後に後藤さんはあとがきで、このように記しています。

「沢登りは登山の総合格闘技だ。山を登る体力、ナビゲーション力、悪場を突破するクライミング力、時には泳ぎや雪渓処理などの力にそれぞれ磨きをかけ、尾根からでは見られない素晴らしい風景に出会ってほしいと思う」

ぜひ本書を手に、丹沢の沢で素晴らしい風景に出会ってください。

道東・雌阿寒岳

眼下に輝く北海道三大秘湖のひとつ、オンネトー

神秘の湖オンネトーを見ながら、ポンマチネシリ火口稜線を登る(写真=谷水 亨)

ポンマチネシリ噴火口の青沼と阿寒富士(写真=谷水 亨)

5月17日、晴れ、トレースあり

雪解けを待ち、冬装備のいらなくなった雌阿寒岳に妻とふたりで、野中温泉登山口から登ってきました。北海道の日本百名山のなかでは、初級者でも比較的容易に登れるため、普段は山に登らない妻でも登ることができました。

北海道三大秘湖のひとつ、オンネトーは、夏には鮮やかなコバルトブルーになりますが、この日はエメラルドグリーンに輝いていました。標高をあげるにつれ、光の角度が変わるとオンネトーの色も変わり、ふりかえるたびに変わる湖の色に、誰もが感動するでしょう。ポンマチネシリ火口内にある青沼と赤沼も、夏とは違って、赤沼は青色に、青沼はコバルトブルーになっていました。

野中温泉登山口からの登山道はほぼ残雪もなく、夏の装備で大丈夫ですが、高山植物はまだ一輪も咲いていません。

オンネトー登山口からの登山道は樹林帯や六合目付近の砂礫地の窪地には残雪が残っているようですが、朝晩の冷え込んだ時間帯でなければ、夏の装備で大丈夫のようです。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

神室連峰・八森山

東北随一のヤセ尾根を有する神室連峰南部の山を歩く

八森山から烏帽子山、そして槍ヶ先へ続く稜線は雪蝕によって東側が切れ落ちている(写真=曽根田 卓)

槍ヶ先から振り返った八森山(写真=曽根田 卓)

5月21日、晴れ

山形県北部の神室連峰は標高が1000~1300mとさほど高くありませんが、豪雪地帯に位置しているため、偏東積雪により稜線の東側が削られて東西非対称の山容を有しています。

今回歩いた八森山から槍ヶ先までの主稜線はヤセ尾根をたどる、景色に恵まれたミニ縦走が楽しめます。そして最上町薬師原の登山口から八森山に登り、槍ヶ先を経て薬師原へ周回できる点でも、ポイントが高いコースどりが可能です。

稜線上ではシラネアオイ、ミツバオウレン、ツバメオモト、イワカガミ、エチゴキジムシロの花が多く見られました。

ただし、5月中は八森山七合目の市町境尾根に出る直前で急な雪渓が残るため、残雪歩きに慣れない方は注意が必要です。またブユが多い山域ですので、虫除け対策は万全に。

(文=曽根田 卓)

山形県・月山

新緑のブナ林と沼めぐり

ブス(ブシ)沼と湯殿山(写真=福井美津江)

皮松谷地にて。左が湯殿山、右が姥ヶ岳(写真=福井美津江)

5月19日、晴れ

月山の西側に並ぶ姥ヶ岳と湯殿山。その湯殿山の南側にあるブナ林の中、沼めぐりを楽しみました。

山形県立自然博物園・ネイチャーセンターから雪解けの進んだ石跳川沿いを行き、遊歩道の橋を右岸へ。リュウキンカ広場ではリュウキンカとミズバショウが咲き始めていました。カワクルミ沼を見逃してしまいブス(ブシ)沼へ。見晴らしがよく、湯殿山の南側全景が見渡せます。夏道はないので、雪が開いてブス(ブシ)沼を見ることのできる貴重な時期です。

その後ブナの新緑の中を歩き、カワクルミ沼と皮松谷地に立ち寄りました。

(文=福井美津江)

北アルプス・涸沢

山頂を目指さない3日間

陽光に輝く岩峰(写真=山田哲哉)

奥穂高を背後に涸沢を下る(写真=山田哲哉)

5月16日~18日

ゴールデンウィークが明けた翌週、穂高連峰に囲まれた「登山根拠地」の涸沢へ、ピークを目指さず「滞在」に行ってきました。

上高地から横尾までの道は、横尾山荘手前でわずかに雪の上を歩いた以外、雪はありません。外国人観光客が何人か見られる以外は人影のない、静かな上高地です。横から流れだす清水川の清流や、流れにたゆたうイワナを見たりしながら、ゆっくりと景色を楽しみます。

見上げる明神岳や前穂高が進むごとに刻々と姿を変えていくのはみごとなもので、初めて訪れた方がポツリ、「日本にこんな場所があると思わなかった」ともらしていました。少年のころ、ここを訪れた自分も同じ感想を抱いたものです。徳沢の手前から、道の両脇はニリンソウでいっぱいでした。初日は横尾に泊まります。

翌日、涸沢へは屏風岩の裾を見上げながら、シラビソの美しい森の中を進みます。本谷橋の上からは完全な雪の中の道。本谷に積み上ったデブリの堆積の上を本谷とわかれ、涸沢へと向かった最初の斜面を上った時、「あっ! 見えた」の声が。前穂高の頭が見え、北尾根が見え、吊り尾根が屏風のように立ちふさがるのが見え・・・・・・。奥穂高が、涸沢岳が、涸沢槍が見え、その度に立ち止まり見上げ、そして、涸沢に到着。

涸沢では北穂高も視野に加わり、半日たっぷりと雪の穂高を見上げました。雲がかかったり、常念岳方向が見え隠れしたり、ただ半日「山を眺める」だけですが、飽きることのない時間でした。

涸沢は東に面しているので、日の出のころがもっとも素敵な時間帯です。暗かった空が白みだし、前穂高の上に残った月が少しずつ霞んできて、稜線の白さが際立ち、オレンジ色に染まっていく様子を寒さに震えながら見上げました。そして一気に明るくなり、太陽の光をいっぱいに浴びた穂高岳連峰の一日が始まります。

「まったく山頂を目指さない」不思議な3日間の涸沢訪問でした。

なお、昨年、一昨年と雪の少ない春の涸沢が2年続きましたが、今年の積雪はおそらく平年並みなのでしょう。涸沢まではトレッキングシューズに軽アイゼンで歩けましたが、そこから上は完全に本格的な雪山です。ザイテングラードの下あたりまで散歩をしたかったのですが、雪山装備がないと無理でした。

(文=山田哲哉/山岳ガイド「風の谷」主宰 (株)KAZEエクスペディション顧問 山岳ガイドⅡ)

北アルプス・北穂高岳

快晴無風、残雪の北穂高岳

汗の出る北穂高沢の登り(写真=川﨑拓兵)

山頂から奥穂方面の眺望(写真=川﨑拓兵)

5月20日、晴れ

ゴールデンウィークには大変なにぎわいを見せる涸沢も、その時期を過ぎれば落ち着いた雰囲気になります。今回は涸沢をベースに北穂高岳に登りました。

この時期、北穂高沢から登るルートでは雪崩や落石に充分注意しなくてはなりません。快晴無風のいい天気でしたが、気温が上昇すれば雪の結合が緩んで崩れやすくなります。特に登りよりも下山の際、緩くなった雪は支持力がなく、滑落や雪崩のリスクが高まります。なるべく雪が固く締まっている時間帯に行動できるよう、また地形を見て雪崩や落石の走路を想定して、可能な限りリスクを減らしましょう。

また登山者が多い場合は落雪にも注意して、万が一、落雪や雪崩が起きた場合には大きな声で周囲の登山者に知らせましょう。

雪をまとった槍・穂高の景色はこの時期ならではの素晴らしいものです。リスク軽減に充分配慮して、残雪の山を楽しみましょう。

(文=川﨑拓兵/オフィスカワサキMountainGuide やまんど塾)

北アルプス・杓子岳

山スキーシーズン終盤は残雪豊富な白馬へ

白馬稜線を行く。鑓ヶ岳にて(写真=増村多賀司)

左:杓子沢を後に双子尾根に登り返し/右:長走沢を滑る(写真=増村多賀司)

5月20日、晴れ

この日は気温が高くなることが予想されたので、雪崩や落石のリスクを回避する意味もあり猿倉を4:30出発と早めに設定しました。気づけば夏至の1ヶ月前でもあり、思ったよりも早くから明るくなります。最初、500mの林道歩きは残雪が途切れる箇所もありますが、長走沢の出合から先はシール歩行可能です。

白馬大雪渓の末端には白馬尻より下から取り付きます。日があたると暑く、半袖でもいいくらいでした。大雪渓は葱平付近から傾斜がきつくなるので、スキーからアイゼンに変更し、板は背負いました。

この日は白馬岳へは向かわず、杓子岳との最低鞍部をめざします。稜線まで雪がつながっていますが、大きな雪庇が上に見えているところもあるので、遅い時間帯は避けるべきでしょう。

稜線では夏毛に換羽した雄のライチョウに出会いました。大雪渓の上部でも縄張り争い中の雄を見かけました。これからが繁殖期ですね。

稜線はほぼ夏道が出ています。時間が遅くなると雪崩のリスクがあるので、杓子岳の山頂は今回は割愛しました。右手に剱岳、白山が見えています。

鑓ヶ岳と杓子岳のコルから、いよいよ杓子沢へスキー滑降となります。出だしは緩斜面ですが次第に谷は狭く急になっていきます。眼下には白馬の街が見えています。デブリや石も少なく、快適にターンを刻んで行きますが、杓子岳の東壁の下に出ると雪面に石が多くなります。スキーの板が悲鳴を上げていますが、ここでは止まらず足早に通過します。落石地帯を抜けると斜度も落ち着き、再び快適に滑ります。振り返ると杓子岳の東壁や鑓ヶ岳の北東壁が圧倒的な高さで杓子沢のカールの上に立ち並んでいます。杓子沢のカールは長野県側では初めての氷河とされる鹿島槍ヶ岳のカクネ里と同様にその可能性が指摘されていて、いつか調査が入るかもしれません。

2050m付近で杓子沢から離れて双子尾根の樺平まで少し登り返します。ここは文字通り平らな場所で、休憩するのに絶好のポイントです。いままでの緊張からも解放されて大休止としました。鑓温泉方面や小蓮華山がよく見えています。

ここからは長走沢を滑ります。先ほどの杓子沢とは違い、広い谷で石もなく快適な滑りが楽しめました。気持ちのいい斜面が続きますが、猿倉への道は雪が切れているので長走沢沿いに向かい、最後は林道に出ます。付近はブナの芽吹きが始まっていて新緑が目にまぶしく、残雪の白馬の山々とのコントラストが素晴らしかったです。新緑のブナの森を野鳥の声を聞きながら歩くと猿倉の駐車場は近く、すぐにゴールです。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

中央アルプス・三ノ沢岳

残雪と360度の大展望を楽しみました

三ノ沢岳遠望(写真=原 誠一)

カモシカの摺り足(写真=原 誠一)

5月20日、晴れ

三ノ沢岳は中央アルプスの主稜線から西側に外れた所に位置しながら、標高は2847mと高く、木曽駒ヶ岳や宝剣岳の雪がとけた後も豊かな残雪に恵まれています。この雪山シーズン、三ノ沢岳に登ろうと4月上旬と5月中旬に計画をたてながら、天候に恵まれず敗退していました。今回は3度目の正直を狙って、菅ノ台からひとりで中央アルプスロープウェイ行きのバスに乗り込みます。

千畳敷カールは快晴。木曽駒ヶ岳方面をめざす登山者が行列をつくっていましたが、極楽平方面は誰もいません。駒ヶ岳神社の前でアイゼンを履き、朝の8時だというのにクサり始めた残雪を踏みながら登り始めました。

極楽平を過ぎると、核心部の雪稜も雪がとけて、ナイフリッジが丸みを帯びていたため、例年より恐怖感はありません。しかし時折遭遇する股下までの踏み抜きのため、思わぬ苦労をさせられました。

頂上では360度の大展望を楽しめました。中央アルプス南部、北部はもちろん、御嶽山、乗鞍岳、穂高連峰などが見えます。

帰りも踏み抜きの連続となりましたが、無事に千畳敷カールまで戻ることができました。

(文=原 誠一/アルプスネイチャークラブ・登山ガイド)

中央アルプス・富士見台高原

阿智セブンサミット富士見台高原、南沢山を歩く

萬岳荘にて(写真=原 誠一)

富士見台山頂は大にぎわい(写真=原 誠一)

5月21日、晴れ

大学時代のサークル「歩行会(あるこうかい)」の後輩から、ボクの地元の富士見台に登りたいという連絡がありました。ちょうど、富士見台の山小屋萬岳荘(ばんがくそう)では、山岳画家・成瀬洋平さんの原画展が開催されていて、観に行こうと思っていたところでしたので、実にタイムリーなお誘いでした。

当日は中央道園原ICで待ち合わせ、南沢山の下山口に車を1台デポしました。

天気は晴れ。うだるような暑さのなかを、神坂神社から登り始めます。道すがら、ショウジョウバカマやイワウチワ、バイカオウレンなど春の花を楽しむことができました。

萬岳荘では、管理人の赤井さんとしばし歓談。成瀬さんの原画にも魅せられました。なお、原画展は5月末まで開催とのことです。

その後、富士見台から横川山、南沢山と縦走して、清内路「せいなの森キャンプ場」へ下山しました。

(文=原 誠一/アルプスネイチャークラブ ・登山ガイド)

八ヶ岳・大同心稜

雪が多く、岩場もベルグラに覆われていました

大同心、右の木の陰が小同心(写真=畠山茂信)

赤岳から阿弥陀岳の稜線。権現岳と編笠岳も見える。遠くの山々は南アルプス(写真=畠山茂信)

5月13日~14日、雨のち晴れ

初日は雨でしたが、翌日の晴れ予報を信じて赤岳鉱泉まで入山しました。堰堤を過ぎ、しばらく行ったあたりから雪が残っていますが、アイゼンは不要です。

翌日は予報通りの晴れ。大同心沢を少し行って左の尾根に乗り樹林帯を直登しますが、大同心の基部直前まで雪が続いていました。基部でアイゼンを外し、小同心に続くバンドをトラバースして左のルンゼに取り付きます。

左手の窓に向う踏み跡はロッククライミングのアプローチなので、我々は直上します。次の岩場は右側がおもしろいのですが、一面ベルグラ(岩肌に張った薄氷)で覆われていて断念。いちばんやさしい中央のチムニーを登りましたが、こちらもベルグラで覆われ、わずかに出ている乾いた岩が頼りでした。

登り切って踏み跡を左にたどると、大同心の頭です。若干霞んでいましたが、北・南・中央アルプスがすべて見えました。

眺望を楽しんだ後は横岳まで踏み跡をたどり、主稜線を赤岳まで行き、中岳と阿弥陀岳を越えて御小屋尾根を美濃戸口に下りました。

途中、日ノ岳と二十三夜峰の間のルンゼが完全に雪で埋まっており、クサリも雪の下なので、急な雪面の下降とトラバースになります。また赤岳への登りと中岳のコルから阿弥陀岳までも急な雪面の登高になるので、かなり注意が必要でした。

(文=畠山茂信)

※編集部注:大同心稜は一般登山道ではありません。

乗鞍山系・十石山

避難小屋の小屋開けをお手伝いに

無事、小屋開けができました(写真=増村多賀司)

下山は全員お楽しみの滑走にて(写真=増村多賀司)

5月14日、晴れ

乗鞍山系の北のはずれにある十石(じゅっこく)山に、地元有志で管理している避難小屋があります。いまの山小屋は二代目で、長い間荒れて放置されていたところを1989年に地元の方々によって登山道の整備とともに再建されました。登山道の草刈りなどの手入れはいまも定期的に行われています。避難小屋は通年解放されていますが、冬は冬用の出入り口以外は板でふさがれるので、この日は除雪と冬囲いを外す作業の手伝いに行ってきました。

白骨温泉から少し奥に入った林道からスタート。メンバーは下山の効率も考えてスキーやボード持参ですが、最初は雪がないので背負います。落ち葉の積もったカラマツ林を登り、標高1800mの通称・湯沢ノ平から先は雪が出てくるのでツボ足からシール登行に変更しました。この付近は文字通り平らな地形で、上りも下りも迷いやすいので注意が必要です。1850mから上は明瞭な尾根になるのでそのまま登りますが、傾斜も急になるのでここがいちばんきつく感じられるでしょう。セバ谷側は崖になっているので滑落に気をつけます。

2050mまで来ると傾斜も緩くなり、2300m付近からは木々も疎らになって穂高方面の展望が開けます。山頂までのラスト150mは森林限界で、無木立の真っ白な斜面をまっすぐ上がれば避難小屋です。

小屋から十石山山頂までは5分。そこでは360度の大展望が得られます。北は槍・穂高に笠ヶ岳や焼岳、南は乗鞍がまっしろな巨体を横たえています。

メンバーが全員そろったところで避難小屋の窓を覆っている雪をどかし、囲っている板を外します。暗かった小屋のなかが明るくなり、窓を開け放って空気を入れ替えました。

昼食後に下山ですが、お楽しみの滑走でもあります。山頂直下は板がよく走る快適な斜面でした。槍・穂高をバックに滑る姿は絵になります。雪がつながっている限り下まで滑りますが、下部は藪や雪の上に落ちている枝なども多くなり、快適ではありません。それでも時間短縮にはなりました。

無事に小屋開けができましたが、小屋の周囲には人の排泄物が見られました。携帯トイレなどで対応をお願いします。

また、下山時に尾根を外れて湯沢やセバ谷に入らないように注意してください。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

赤城山・荒山

まだまだ見ごたえのある山頂付近のアカヤシオ

荒山山頂より、アカヤシオと上越国境(写真=中村重明)

登山口付近のヤマツツジ(写真=中村重明)

5月20日、快晴

数年前からツツジを目当てに、この時季訪ねている赤城山南端の荒山を歩いてきました。

昨年(5月21日)歩いたときは、アカヤシオ(ピンク色)はほぼ終わっていて、山頂付近にわずかに数輪残るのみ。他方、登山口から中腹にかけてを中心にトウゴクミツバツツジ(紫色)やヤマツツジ(橙色)がみごとに咲き誇っていました。

今年はトウゴクミツバツツジもヤマツツジもまだ少ししか咲いておらず、逆に山頂付近のアカヤシオがまだまだ見ごたえがありました。まぶしい新緑に加え、山頂付近からの上越国境の雪山の眺めもあり、とてもいい行程でした。

(文=中村重明)

奥高尾縦走

陣馬山から高尾山まで

鯉のぼりが泳ぐ陣馬山山頂から奥多摩の大岳山を眺める(写真=石丸哲也)

左から時計回りに小仏城山のサトザクラ、ヤマツツジ、キンラン、薬王院のシャクナゲ(栽培品)、ホオノキの花(写真=石丸哲也)

5月7日、曇り

ゴールデンウィーク最終日、定番の奥高尾縦走路を歩いてきました。天気が今ひとつで、GW明けに備えて休養している人も多かったのでしょうか。直前に臨時バスが出たこともあり、高尾駅からのバスを陣馬高原下で降りたのは私を含めて5人だけでした。登山道も予想外に空いていて、ゆったりした気分で歩けました。

新緑はだいぶ濃くなっていて、咲く花もホオノキ、ウツギの仲間など初夏のものが咲き進んでいました。一方で、ヒトリシズカやヤマルリソウなど春の花もまだ咲いていて、いろいろな花を見られました。陣馬山、景信山、小仏城山などの山頂も比較的空いていて、ベンチは空いていました。シーズンの休日なので、茶店は明王峠も含めてすべて営業しており、それぞれに天ぷら、かき氷など名物に舌鼓を打つ登山者でにぎわっていました。

これからさらに緑が深くなり、ウツギの仲間など白い花が目立つ季節です。例年なら5月下旬あたりから6号路のセッコクが咲き出すなど、山は装いを変え、次の季節を楽しませてくれます。一方、夏日になるなど、予想外に気温が高い日もあるので、充分な飲みもの、タオル、アンダーウェアの着替えなどを用意していきたい季節でもあります。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

奥多摩・御岳山

ヒメレンゲやガクウツギなどが見ごろです

緑陰を広げる山上集落の神代ケヤキ(写真=石丸哲也)

左から時計回りに七代ノ滝、ヒメレンゲ、ミッキーマウス似のガクウツギ、ラショウモンカズラ(写真=石丸哲也)

5月20日、快晴

首都圏の標高1000m前後の山では、新緑が色濃く、鮮やかになる時期です。フレッシュな緑と渓谷に抱かれてリフレッシュするべく、御岳山に出かけて、ロックガーデン(奥御岳渓谷)を周回してきました。往復ともケーブルカー利用のゆるゆる山行です。

ケーブルカー御岳山駅前の御岳平の広場には藤棚がありますが、花のピークは過ぎていました。まっすぐ御岳山へは向かわず、緑陰豊かな大塚山に寄り、御岳ビジターセンターで見ごろの花などを教えていただいてから御岳山へ向かいました。

御岳山山頂の武蔵御嶽神社に詣で、長尾平で奥ノ院などの展望を楽しんでからロックガーデンへ。ミニ奥入瀬とも呼ばれるように、苔むした渓流が美しい所で、晴天が続いたせいか、水量はやや少なめでした。

花はビジターセンターで教わったとおり、ヒメレンゲ、ガクウツギ、ラショウモンカズラ、クワガタソウなどが見ごろでした。ガクウツギは花びら状のガクの形や枚数に個体差があり、中にはミッキーマウスかミニーマウスを思わせる形の花もあって、楽しかったです。

目論見通り、ゆっくりと歩いて、初夏の樹林と渓谷を満喫できましたが、残念だったのは当日の13時と17時、武蔵御嶽神社下の広場で奉納された雅楽演奏を聴けなかったことです。

なお武蔵御嶽神社では、今年は12年に1度の酉年式年大祭にあたり、秘仏の御嶽蔵王大権現が5月31日まで、1日4回、特別公開されています。期間中、社殿の南側には、社殿内のご神体と結紐で結ばれた心御柱(しんのみはしら)が立てられ、御柱に触れることで御利益をいただけるので、ぜひご参拝ください。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

山梨県・三ツ峠屏風岩

岩登りの練習に行ってきました

夏の「本チャン」に向けてトレーニングです(写真=山田哲哉)

快晴の天気に助けられ、2日間ひたすら練習できました(写真=山田哲哉)

5月20日~21日、晴れ

三ツ峠の岩場のなかでも屏風岩は、富士山を終日背後に感じながら岩登りができる、標高1700mの素晴らしい岩場です。高度差が90m近くあり、正面左端の巨人ルートから右端の草溝ルートまで幅が約200mあり、硬軟とりまぜた様々なタイプのルートが詰まっています。また、しっかりした支点が随所に設置され、カムなどを併用すれば安全な登攀が可能です。そして、なによりも単に岩を登るだけでなく、本番の岩登り同様、マルチピッチの実践的な練習ができることも魅力です。

この岩場で練習する人が注意しなければならないのは、取り付き点がほとんど「三ツ峠登山道」となっていること。落石や初心者の登攀器具などの「落とし物」が、岩登りと関係ない登山者を襲う可能性が高いことには充分注意しなければなりません。

ここで2日間、夏の「本チャン」に向けたトレーニングをたっぷりと行ないました。初めてザイルの結束を体験する初心者から、すでに多くの登攀を行ない本番前の調整に来た者まで、レベルごとに3つのチームにわけ、3人のガイドが教えました。2日間ずっと初夏を思わせる暑いほどの陽気に、まったく雲を見ない快晴の下、楽しく練習することができました。

なお三ツ峠の岩場は最後まで登りきってわずかで三ツ峠山山頂に到達可能です。「登山としての岩登り」を行なう人は一日の練習の最後に山頂まで登ることをすすめます。富士山だけでなく、南アルプスや奥秩父、大菩薩、丹沢の眺めもみごとです。

(文=山田哲哉/山岳ガイド「風の谷」主宰 (株)KAZEエクスペディション顧問 山岳ガイドⅡ)

鈴鹿・イブネ クラシ

「鈴鹿の雲ノ平」と呼ばれる別天地へ

鎌ヶ岳(左)や雨乞岳(右)を望みながらひたすらまったり過ごす(写真=山口敬二)

曙光を浴びるイブネの大地。シルエットは御在所岳(写真=山口敬二)

5月20日~21日、晴れ

南北に連なる鈴鹿山脈は、変化に富んだ山岳地形と植生豊かな自然が登山者たちに人気ですが、主峰・御在所岳(1212m)の麓の愛知川源流を挟んだ西側に、鈴鹿の雲ノ平と呼ばれる広大な台地状の別天地があります。今回はその憧れの地でテントを張りたくて、鈴鹿のジャンダルムと呼ばれるクラシジャンダルム(通称クラジャン)を越え、クラシ北尾根からこの桃源郷へと入りました。

イブネ(1160m)、クラシ(1145m)は、原の台地のなかの山頂ですが、鈴鹿セブンマウンテンの盟主・御在所岳、鎌ヶ岳(1161m)、雨乞岳(1238m)を配する大展望と、さえぎるものがなにもない、苔に覆われた大地は、まさに岳人たちの別天地です。

イブネ クラシへ至るルートはどれも一般道とは異なる破線ルートですが、今回たどったルートは要所には道標もあり、リードも付けられていますので、事前のコース研究と現地での地図読みをしっかり行いましょう。注意する箇所は、高岩と呼ばれる965m地点でルート取りを90度西へ方向転換するところと、その下のワサビ峠からクラジャンを越えるまでの痩せ尾根の岩稜です。

翌日は杉峠から愛知川源流を下り、コクイ谷出合に出る手前からルートファインディングをしながら小峠へと向かいました。そしてタケ谷出合いまでは沢沿いの透過する緑の光のなかを歩くのですが、これがまた素晴らしい森で、鈴鹿の上高地と呼ばれるところです。最後は根の平峠経由で起点の朝明渓谷駐車場へ戻り、二日間の変化に富んだ充実の山行を終えました。

(文=山口敬二)

※編集部注:ここで紹介したルートは一般登山道ではありません。ルートファインディングに自信がない登山初心者、初級者だけで安易に立ち入らないようにしてください。

福岡大分県境・経読岳

シャクナゲと新緑の稜線を楽しんだ一日

ブナ・ミズナラの混じる新緑に囲まれた稜線を経読岳へ向かう(写真=松本高志)

経読岳山頂周辺のシャクナゲ群落(写真=松本高志)

5月14日、晴れ

分県登山ガイド『長崎県の山』の著者である三浦ご夫妻ら山仲間と一緒に、経読(きょうよみ)岳へ行きました。『山と溪谷』5月号の「季節の山歩き」で紹介されたコースを歩きます。

犬ヶ岳登山口からウグイス谷を経て笈吊峠へ上がり、九州自然歩道の主稜線を東へ向かいました。笈吊峠に到着するとピンクのツクシシャクナゲが迎えてくれました。今年は少し開花時期が遅くなっているようで、運のいいことに稜線のシャクナゲはほぼ満開でちょうど見ごろでした。笈吊峠から茶臼岳まではシャクナゲが多く、花のトンネルを抜けて行きます。シャクナゲや登山道脇の小さな花々に目をとられ、なかなか前に進みません。

シャクナゲの群落を過ぎると、ブナやミズナラの混じる新緑がまぶしい登山道となります。新緑は少し色濃くなっていました。

経読岳の山頂は木立のなかで展望がないのが残念ですが、経読堂跡の石碑と小さな石仏が静かに迎えてくれました。山頂の少し先に三角点があり、その周辺のシャクナゲ群落も見ごろでした。

天気にも恵まれ、シャクナゲの花と新緑の稜線をゆっくりと楽しんだ一日でした。

(文=松本高志)

霧島・高千穂峰

ミヤマキリシマ鑑賞

お鉢を行く登山者。新燃岳や韓国岳が見える(写真=池田浩伸)

ミヤマキリシマ群生地の鹿ヶ原は人気スポット(写真=池田浩伸)

5月20日、晴れ

高千穂河原から高千穂峰を往復して、鹿ヶ原を散策しました。

去年は5月23日に訪れて、山頂からの展望と鹿ヶ原のミヤマキリシマ群生地の景観に感動しました。ところが今年はすべての花の開花が遅れているのか、去年に比べると花数が少ないようです。ツボミはたくさんついているので、5月最終週くらいから見ごろを迎えるのではないでしょうか。

下山後は、高千穂河原から歩いて15分ほど北へ行ったミヤマキリシマの群生地・鹿ヶ原まで散策。木陰でコーヒーを飲みながら、ミヤマキリシマと高千穂峰を眺めてのんびりと過ごしました。

(文=池田浩伸/登山ガイド)

裏磐梯・レンゲ沼、中瀬沼

裏磐梯は一気に初夏の様相です

レンゲ沼から磐梯山・櫛ヶ峰を望む(写真=葉貫正憲)

ヤマナラシの若芽(写真=葉貫正憲)

5月18日

パークボランティアで裏磐梯のレンゲ沼・中瀬沼へ巡視活動に行ってきました。サイトステーションからレンゲ沼を一周して休暇村探勝路を経由して中瀬沼を周回します。約2時間半かけて、ゆっくりと歩きました。

まだ雪が消えたばかりのところも多く、足もとに草花の姿は少なく、樹木の花や若芽など今の季節ならではのものがたくさん見つかりました。サイトステーションの建物のすぐわきの藪跡には大量の木の実が置いてありましたが、昨秋にリスたちが冬の食料としてため込んだもののようです。

花は、ミズバショウの脇の木に絡みついた枝のミツバアケビ、ツノハシバミ、キブシ、ウワミズザクラなどが存在感を見せていました。

レンゲ沼の畔のアカマツの根もとにはリスがかじったとみられるマツカサ(通称エビフライ)がたくさん落ちています。そのすぐそばのヤマナラシは薄緑色の若い芽を伸ばし始めていました。いたるところに見られる大きなオシダの株も手のひらを拡げ始め、遊歩道の脇にはヤグルマソウの若芽が林立していました。

最後は中瀬沼の展望台で休憩。ここは明治時代に磐梯山の大噴火で岩なだれが起き、火口原から直線で4km余りを泥流が滑り落ちたときにできた山です。当時のことに思いを巡らせながら磐梯山を画像に収めました。若葉の萌える林からは小鳥のにぎやかなさえずりがあり、木々のてっぺんには鳥たちの姿を見つけることもできました。昆虫類の登場はもう少し後になりそうです。

(葉貫正憲/福島県/70歳/よく行く山:会津百名山)

尾瀬・尾瀬ヶ原

静かな尾瀬でスケッチを

尾瀬ヶ原から至仏山を見る(画=江川誠)

夕闇迫る燧ヶ岳と山小屋のともし火(画=江川誠)

4月30日~5月1日、30日快晴、1日雨

山小屋が小屋開きを始めたこの時期に尾瀬へ行ってきました。去年は60年ぶりの少雪のため、まったく雪がなかったそうですが、今年は約2m以上の積雪で、道標はすべて雪に埋もれていました。

初日は快晴無風で、太陽がじりじりと肌を焼きます。至仏山には多数のシュプールが見えました。翌日は一転して雨になり、尾瀬沼はほとんど結氷して、本降りの雨に、手袋をしていても手は凍えました。

この時期はまだ開いていない山小屋も多く、尾瀬沼方面は静かな山歩きができました。尾瀬ヶ原の木道はすべて雪がかぶっていますが、川を渡る橋のたもとの木道付近は踏み抜きの危険地帯です。足まわりはツボ足、スノーシュー、軽アイゼンとさまざまです。

(江川誠/東京都/65歳/よく行く山:北アルプス)

山梨県・乾徳山

変化に富んだ登山道と山頂からの展望を満喫

頂上直下、鳳岩の鎖場(写真=一寸木紀夫)

乾徳山頂上(写真=一寸木紀夫)

5月21日、晴れ

乾徳山は奥秩父に属する標高2031mの山です。乾徳山駐車場の標高は820mなので、登山の高低差は1211m。往復10kmで、今回の歩行時間は心持ちゆったりしたこともありましたが、休みを入れて7時間弱。7:20に駐車場を出発、乾徳山登山口、銀晶水、駒止、錦晶水、国師ヶ原、扇平、山頂を往復しました。

前半部の登りと扇平を経てからの登りで高度を稼ぎます。国師ヶ原と扇平は緩やかな起伏で広々とした開放感のある、気持ちのよい場所で、乾徳山頂上あたりを臨め、努力が報われる気もします。特に今回の扇平は最高の休息場所です。

山頂間近では鎖場やハシゴがあり、変化に富んだ登山道を楽しめました。頂上直下の鳳岩の鎖場は乾徳山登山のハイライトで、登り切ったところが頂上です。360度のパノラマは、天気がよいこともあって達成感を充分に味わうことができました。

本コースは高低差も大きく、距離があるので、健脚向きです。また頂上近くの鎖場などは上下する登山者で渋滞することも考えられます。山の人気の割には駐車場もそれほど広くないので、早出がおすすめです。

(一寸木紀夫/東京都/65歳/よく行く山:八ヶ岳、北アルプスなど)

石川福井県境・取立山

白山の眺めに感激

コツブリ山からの白山(写真=樋上春男)

取立平のミズバショウ群生地にて(写真=樋上春男)

5月17日、晴れ

4人組で大阪から車で行き、前日は勝山市に宿泊してアマゴ料理を堪能しました。

取立(とりたて)山は福井と石川の県境にあり、ミズバショウの群生地として知られています。登山口から大滝を経由する周回コースで登り始めましたが、大滝は数日前まで残雪により通行禁止となっていたようです。この日は少し雪がありましたが問題はありませんでした。大滝を経てしばらく登ると気持ちのいい稜線歩きになり、やがてコツブリ山に到着。正面にどんと白山がそびえ、感激の一瞬です。

その後は取立平のミズバショウ群生地で、可憐な花に心癒されました。取立山頂上でも白山を眺め、その後は経ヶ岳と荒島岳を眺めて登山口に到着しました。

登山道ではイワウチワを始め、数々の高山植物が咲いており、天気にも恵まれ、一同大満足の山行となりました。

(樋上春男/大阪府/68歳/よく行く山:六甲、妙見山、京都北山)

ダイヤモンドトレール・大和葛城山~金剛山

ツツジとヤマシャクヤクを鑑賞に行きました

葛城山のツツジ。北斜面にも広がっています(写真=小林昭生)

5月16日、曇り

葛城山のツツジが見ごろという情報を得たので、妻同伴で出かけました。彼女のお目当ては当然ながら葛城山のツツジですが、金剛山のヤマシャクヤクが咲くころなので、そちらもまわってみたいという欲張りな注文もありました。

まずは水越峠から出発です。ダイヤモンドトレール、通称ダイトレのルートで、いつもながらひと汗かく丸太階段の急坂が続きますが、両脇に咲くツツジが背中を押してくれるようです。歩き始めて2時間弱、視界が開け、南斜面いっぱいに広がるツツジの大群落が目に飛び込んできました。歓声があがるのが聞こえます。

ツツジを鑑賞した後、水越峠まで戻って今度は金剛山を目指します。林道ガンドガコバ線に入り、ダイトレのルートを進むと予想通り、展望台近くの斜面でヤマシャクヤクは咲いていました。その白い花には心が洗われるようです。クリンソウや遅咲きのシャクナゲも花をつけていたので、妻は大満足でした。

山頂広場のライブカメラは1時間ごとに作動しています。カメラに向かってバンザイやVサインをする人が増えているようです。スマホですぐ見ることができるので、これは自撮りの新しい形かもしれません。

(小林昭生/奈良県/75歳/よく行く山:金剛山系はじめ関西一円の山々)

第九十四回

山菜の芽吹きを見守る五月晴れ(JINTA)

君の名は? 春山シーズン花忘れ。。。(あられちゃん)

幸せが増えてストレス減る登山(ガンバ)

山靴下、脱いだらヒルが転がり出(にいしばG)

咲き誇るカタクリ道を通せんぼ(山形山人)

【寸評】

一句目、JINTAさん。前回に続き、山菜ネタですが今回は美しくまとめていただきました。

二句目、あられちゃん。私は春だけでなく、夏も秋も、いつまでたっても覚えられません(涙)

三句目、ガンバさん。幸せをこれからもどんどん増やしていけますように!

四句目、にいしばGさん。気がつかないんですよね、アレ。そういうときにかぎってまたたっぷり吸われていて、余計に腹立たしいという・・・・・・(笑)

五句目、山形山人さん。絵本の世界のような景色が目に浮かびます。美しい!

【段位】JINTAさんは3000m級に昇級。あられちゃんは8000m級「カンチェンジュンガ」に昇段。ガンバさんはエベレストB.C.に到着です。にいしばGさん、山形山人さんは川柳エベレスト頂上をめざしていますが、ここにきてヒラリーステップ崩壊のニュースが・・・・・・。

【応募方法】

山に関する川柳を募集します。投稿先メールアドレスは「weekly@yamakei.co.jp」です。メールの件名には必ず「週刊ヤマケイ・山の川柳」とお書きください。ペンネームでの投稿も受け付けております(読者の登山レポートはペンネームでの投稿不可)。

なお、ご投稿いただいた方には1000m峰から始まる「山の川柳段位」を授与します。ふるってご応募ください。

週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

「夏休み 孫と一緒に 百名山」

「お父さん 登山道具を 片付けて」

「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

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※平成28年4月20日より

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編集
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