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読者アンケートから考える遭難防止

週刊ヤマケイ7月6日号で遭難について読者アンケートを実施し、147件の回答をいただきました。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。今回はそのアンケートの内容を『週刊ヤマケイBOOKS 山岳遭難防止術』の著者でもある登山ガイドの木元康晴さんに分析していただきます。

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今回のアンケートで「遭難したことがある」と答えた人は5.4%、「遭難しかけたことがある」と答えた人は63.3%。あわせて68.7%の人が危険な目に遭ったことがあるという状況がわかりました。遭難したことがある、遭難しかけたことがある人が7割というのは当然で、実際にはもっと多いかもしれません。本人が認識していなくても危ない場面というのはありますので、8割ぐらいはあってもおかしくないでしょう。総じていえるのは「遭難しかけたことがある」人たちは非常に幸せだということ。自分が危険なめにあったと認識し、その上で自力で帰ってきているのですから。非常に勉強になったのではないでしょうか。こういった経験からの学びを増やすことが、真の「遭難」を減らすことにつながると思います。

次に「遭難した」「遭難しかけた」要因については、1位が「道迷い」で58.8%。2位の「転落、滑落」は22.5%と、圧倒的に道迷いが多かったのですが、道迷いに至らない程度の「道間違え」は誰にでもありうるものです。私もこれだけ経験を積みましたが、間違えることはあります。やはり「絶対に道を間違えない」ということは、山ではありえないと思うのです。肝心なのは道間違えに早く気づき、適切にリカバリーして、道迷いに至らないようにすることです。

(文=木元康晴/登山ガイド)

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それでは、読者の皆様から寄せられた事例について、具体的に見てまいりましょう。

事例「道迷い」

週刊ヤマケイ読者アンケートより

読者の皆さんから寄せられた体験と、木元康晴さんによる解説コメントを紹介します。

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山のリボン

山開き前の二岐山の下りでリボンが無くそのまま下っていってしまいました。登って来た時と明らかに違う急斜面に出くわし、間違えたことに気づきました。登り返してもなかなかルートに戻れず、残雪もありましたし少々あわてました。頂上まで登り帰せばと開き直っていたらかなり先の左前方に赤いリボンが見えましたので何とか下山できました。(60代・男性)

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ルートファインディング

2015年7月、妙義山のタルワキ沢を下山中、ずっと沢筋沿いに道があるものと思って歩いていたところ、段々落ち葉が深くなり、踏み後が消え、登山道からはずれたことに気づいた。車道はすぐ下で、クルマやバイクの音が間近に聞こえ、強引に沢筋を降りようかとも思ったが、大きな岩や急崖となり、このままでは滑落すると断念、登り返し無事復帰した。大体1時間位ロスをしていた。(10代・男性)

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体調不良によるエスケープ

奥秩父を友人2人とトレラン中、体調が悪くなり途中の舗装路で別れてエスケープ。しかし地図も持っていなかったため、適当に歩いていたらまったく現在地不明になり、引き返した後、登山道に戻ったがさらにそこから道迷い。延々歩いた挙句、クルマを停めた場所から数キロ離れた道路を見つけ、山の斜面を無理矢理降りた。(50代・男性)

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岩稜にて

濃霧の岩稜でY字にわかれた広い方の尾根に進んだところ、3分ほどで断崖絶壁の先端に出た。ひょっとして間違えたかも? と案じながら歩いていたので、断崖絶壁に一歩を踏み出さずに済んだ。(60代・男性)

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マイナールートにて

週末にひとりで近隣の山にハイキングへ行った時、地図を持っていたが、マイナーなルートだったため、一部、藪に覆われて進めなくなっていた。頂上に戻るには時間が遅く、別のルートもかなり大回りになってしまうので、少し焦った。結局大急ぎで別のルートをたどり、駅に着いたが、それ以来、山へ入る時は相当余裕を持って行動するようにしている。(40代・女性)

事例「転落、滑落、その他」

週刊ヤマケイ読者アンケートより

クサリ場で飛ぶように着地

東鎌尾根縦走中のこと。西岳の下り、鎖の最後で「ポン」と飛ぶように着地しようとしたところ、持っていたストックが壁面に当たり、体勢が崩れて滑落。すぐ下の木の枝に体ごと引っかかった。運よく、かすり傷程度で済み、家族に引き上げてもらい縦走路に戻ることができた。(40代・女性)

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ハシゴの踏み外し

2800m峰からの下山中、樹林帯の鉄ハシゴを踏み外して2mほど落下し、左手首関節を骨折。(50代・男性)

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滑落後の処置

御嶽の雪渓で滑落し、岩に手をついてケガをした。ケガは手のひらの皮が一部剥がれる程度だったが、飲み水で手を洗ったために飲料が底をつき、夏場に飲み水なしで数時間もの登山となったのがツラかった。(40代・男性)

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疲労による行動不能

鳳凰三山のツアーで急激に体力が落ち足がもつれ転倒した。幸い同行したガイドさんに後ろからザイルで支えてもらい無事生還できた。一人で行っていたら遭難でしょうね。(60代・男性)

あとがき

今回のアンケートでは「遭難した」「遭難しかけた」下山後に、どのようなアクションを起こしたか、についても質問をしました。その結果は以下になります。

1:プランニングを綿密にたてるようにした(40%)

2:読図について学んだ(34.8%)

3:体力をつけた(27.8%)

4:装備を整えた(28.7%)

5:山岳保険に入った(20.9%)

また、この質問とは別に山岳保険の加入率を聞いたところ、73.9%の方が山岳保険に加入している、とお答えいただきました。

登山をする以上、遭難したり、遭難しかけたりすることは誰にでもありうる、ということが今回のアンケートでもおわかりいただけたと思います。「山岳保険」でしっかり備えて、安心して登山を楽しみましょう!

(文=週刊ヤマケイ編集部)

株式会社山と溪谷社
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビルディング
解説・表紙写真
木元康晴
表紙モデル
小林千穂
編集
佐々木 惣
アートディレクター
松澤政昭
SSデザイン
塚本由紀(T&Co.)
提供
日本費用補償少額短期保険
プロデューサー
萩原浩司

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