長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。
7月31日に第80号、8月2日に第81号が配信され、7月10日から23日にかけて長野県で発生した20件の遭難事例が掲載されております。
特に7月21日に唐松岳と五竜岳の間で発生した滑落遭難は、本来の縦走路を間違え、不安定な岩場に迷い込んだことにより発生したものでした。このような岩稜帯での「ルート外し」は、岩そのものが安定しておらず、浮石などが堆積している斜面に迷い込むため、滑落や転倒のリスクが高く、致命的な事故につながります。岩稜帯の通過は、岩の形状などをよく見極めて、安定したルートを進むようにしてください。また、講習会などで基礎的なクライミング技術を身につけておくといいでしょう。
***
・7月10日、槍ヶ岳で韓国人の65歳女性が山頂から下山中にバランスを崩して転倒。左足首を負傷し、県警ヘリで救助されました。
・7月13日、燕岳合戦尾根を登山中の69歳女性が体調不良を訴え、行動不能になりました。その後、県警ヘリで救助されました。
・7月14日、白馬大雪渓上部の小雪渓付近を山頂へ向けて登山中の62歳男性が、雪渓上を約50m滑落。県警ヘリで救助しましたが、多発外傷により死亡が確認されました。
・7月15日、塩見岳で山頂に向けて登山中の61歳女性が天狗岩付近で足を滑らせ、約6m滑落。環椎横突起骨折などの重傷を負い、県警ヘリで救助されました。
・7月15日、八ヶ岳連峰の蓼科山で63歳の男性が下山中に天狗の露地付近の岩場でつまずいて転倒。右足骨折などの重傷を負いましたが、県警ヘリで救助されました。
・7月16日、五竜岳山荘から唐松岳へ向けて縦走中の50歳女性が、階段で足を踏み外して転倒。右足首骨折疑いの重傷を負い、県警ヘリで救助されました。
・7月16日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳南稜を登山中の33歳女性がP3付近で、先行の仲間が起こした落石により負傷。右足を打撲しましたが、山岳遭難救助隊らにより救助されました。
・7月16日、白馬乗鞍岳から下山中の71歳男性が天狗原付近の雪渓上でバランスを崩して転倒。右足首ねんざ疑いの軽傷を負い、県警救助隊員に救助されました。
・7月16日、涸沢へ向けて登山中の38歳男性が、本谷橋上部で疲労のため両足がけいれんして歩行困難となり、松本警察署員が救助しました。
・7月17日、八方尾根を唐松岳に向けて登山中の42歳女性が、何らかの疾患を発症し、滑落して死亡しました。
・7月17日、槍ヶ岳東鎌尾根西側の斜面で62歳の男性が死亡しているのが発見されました。状況から、なんらかの原因により、東鎌尾根登山道から滑落したものと推定されます。
・7月18日、常念岳から蝶ヶ岳へいたる尾根筋で、61歳の女性が石につまずいて転倒。頭部裂傷などのケガを負い、県警ヘリで救助されました。
・7月18日、南アルプス易老岳で、44歳の男性が下山中に尾根を間違えて道に迷い、行動不能になりましたが、19日に県警ヘリで救助されました。
・7月19日、戸隠連峰高妻山から下山中の50歳男性が足を滑らせて転倒。左足骨折などの重傷を負い、県警ヘリで救助されました。
・7月20日、白馬大雪渓を白馬岳に向けて登山中の58歳女性が体調不良により、行動不能になりましたが、県警ヘリで救助されました。
・7月21日、75歳の女性が南岳小屋から槍ヶ岳に向けて登山中になんらかの疾患を発症して倒れて、意識不明になりました。県警ヘリで救助しましたが、その後、死亡が確認されました。
・7月21日、69歳の男性が唐松山荘から五竜岳へ縦走中にスリップして約200m滑落。腰部等骨折の重傷を負い、県警ヘリで救助されました。
・7月22日、72歳の男性が燕岳の山小屋に宿泊中、体調不良を訴え、行動不能になり、22日に県警ヘリで救助されました。
・7月23日、奥穂高岳から涸沢に向けて下山中の74歳女性が転倒し、負傷しました。
・7月23日、白馬大雪渓を単独で下山中の69歳男性が雪上でスリップして転倒。軽傷を負い、県警救助隊などが救助しました。
(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)
・・・
下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。
http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html
(文=週刊ヤマケイ編集部)