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信州の山岳遭難現場より

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。

8月21日に第83号が配信され、7月31日から8月6日にかけて長野県で発生した14件の遭難事例が掲載されております。

8月第1週に発生した14件の遭難のうち、3件が道迷い、2件が疲労による行動不能です。その遭難の内容は、ほとんどが日没近くもしくは日没後に救助要請しているものでした。長時間の行動により極度の疲労に陥ったり、夜間、視界不良のなかを無理に行動し続けて遭難しています。登山の常識として「早出早着」があります。無計画な長時間行動を避け、時間および体力に余裕をのこして山小屋やテントサイトにつくようにしましょう。午後の落雷被害を避ける観点からも「早出早着」は大切です。

***

・7月31日、北アルプス白馬鑓温泉のテント場付近で58歳男性が足を踏み外して転倒、腰椎圧迫骨折の重傷を負い、県警ヘリで救助されました。

・8月1日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で68歳の女性が下山中に登山道を外れて道に迷いましたが、駒ヶ根署員などの捜索により、発見救助されました。

・8月2日、北アルプス西穂高岳で57歳男性が何らかの原因により稜線から滑落。県警ヘリで救助しましたが、頭部外傷による死亡が確認されました。

・8月2日、北アルプス大天井岳から常念岳に向かっていた54歳男性が道に迷い、行動不能となりましたが、県警救助隊員らにより発見救助されました。

・8月3日、南アルプス易老岳に向けて登山口を出発した67歳男性が何らかの疾患を発症し、体調を崩して意識を喪失。山梨県防災ヘリが救助しましたが、その後、死亡が確認されました。

・8月3日、中央アルプス南木曽岳で、山麓避難小屋から山頂に向けて登山中の72歳男性が足を滑らせて転倒、左大腿骨骨折の重傷を負い、県警ヘリで救助されました。

・8月3日、北アルプス蝶ヶ岳に向けて登山中の79歳男性が疲労により行動不能となり、遭対協により救助されました。

・8月4日、北アルプス常念岳から下山中の61歳女性が王滝ベンチ付近でスリップ、滑落して右足首骨折などの重傷を負い、県警ヘリで救助されました。

・8月4日、北アルプス前穂高岳の重太郎新道で、57歳女性が下山中に浮石に乗ってバランスを崩し滑落、頭部裂創などの重傷を負い、県警ヘリで救助されました。

・8月4日、北アルプス針ノ木岳の針ノ木雪渓下部で70歳の女性が転倒して頭部や顔面などを負傷しましたが、付近の山小屋従業員により救助されました。

・8月5日、北アルプス七倉岳で、船窪小屋から七倉登山口へ下山中の76歳男性がなんらかの原因により滑落。県警山岳救助隊が発見救助し、県警ヘリにより収容されましたが、多発外傷により死亡が確認されました。

・8月6日、北アルプス針ノ木岳のテント場で宿泊中の36歳男性が誤って熱湯を足にこぼして右足甲部熱傷を負い行動不能となり、県警ヘリで救助されました。

・8月6日、八ヶ岳連峰の双子山で3歳の子どもを含む家族6人が日帰り予定で入山したものの、下山中に日没となり、道に迷い行動不能になりました。その後、茅野警察署員により救助されました。

・8月6日、67歳男性が北アルプス大キレットを北穂高岳に向けて登山中、疲労のため歩行困難となりました。遭対協隊員が出動し、付近の山小屋へ収容、その後、症状が回復し、翌7日に自力下山しました。

(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)

・・・

下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

(文=週刊ヤマケイ編集部)

日本山岳写真協会のFacebookページ

2017年春からインタラクティブな情報を発信

雲湧く剱岳(写真=大石高志)

日本山岳写真協会Facebookページ

山岳写真に興味のある方へ

日本山岳写真協会では、2017年春から同協会のFacebookを創設。随時、協会または各支部の写真展や例会などのイベント、会員各位の写真展の案内、週刊ヤマケイへの表紙採用、寄稿など会員の活躍やレポートも発信しています。

日本山岳写真協会では、山岳写真に関心のある方に、協会や会員の活動といった情報発信だけでなくインタラクティブな関係を構築できるよう取り組んでいきます。ぜひ以下のアドレスを訪問していただき、「いいね!」、「フォロー」をしてください。

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なお、Facebookを利用されていない方は、協会のホームページをご覧ください。

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(文=伊藤哲哉/日本山岳写真協会)

『秋山JOY』

秋山ガイドの決定版

『秋山JOY2017』/8月31日発売/926円+税/A4変形判/146ページ

美しい秋を歩こう

秋は一年を通じて山がもっとも美しく彩られる季節です。鮮やかな紅葉の山を満喫したい登山者に向けて、今年の秋山JOYでは全国の紅葉コースガイドを満載。

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首都圏1000kmトレイル3『丹沢・箱根371km 特選ハイキング30コース』

詳しい地図で迷わず歩く

首都圏1000kmトレイル3『丹沢・箱根371km 特選ハイキング30コース』/佐々木亨=著/9月18日発売/1550円+税/A5判/144ページ/ISBN:978-4-635-18052-8

首都圏ハイカー待望の丹沢・箱根の詳細ガイド

首都圏1000kmトレイルシリーズ『奥武蔵・秩父354km』、『奥多摩・高尾384km』に続く3作目は『丹沢・箱根371km』です。丹沢・箱根に精通した著者がGPSを駆使して綿密な実踏調査を敢行。公共交通機関を利用して、日帰りで歩ける30コースを収録しています。迷わず歩けるよう、登山口や分岐は拡大表示し、安全確保のための注意喚起やアドバイスも充実。

またトレイルランナーの利用も視野にいれ、距離を記すとともに、複数のコースを結んでロングトレイル走破にもチャレンジできるようになっています。

日高山脈・ペテガリ岳(前編)

20kg強の荷を背負い、はるかなる山へ

日高の鋭鋒だけが雲海から顔をのぞかせた(写真=谷水 亨)

カムエクウチカウシや1839峰も夕闇に消えようとしている(写真=谷水 亨)

8月18日~19日

ペテガリ岳(1736m)は日高山脈中部に位置し、日高山脈襟裳国定公園に含まれ、日本二百名山に選定されています。アイヌ語で「回遊する川」を意味し、山頂には二等三角点(点名「辺天狩岳」)があります。地元では「ペテカリ岳」とも呼ばれ、「はるかなる山」とも称されていました。

西尾根コースの登山口となるペテカリ山荘までは、本来は道道111号静内中札内線を静内川沿いに進むルートを通るのですが、2005年より道道111号の静内ダムから先40km弱の区間で一般車両は通行禁止となりました。そのため元浦川林道を遡り、神威山荘手前の分岐からニシュオマナイ川支流に入渓して、標高660mの稜線を越えてペテカリ山荘まで、約9kmを歩きます。しかし、この元浦川林道もゲートから神威山荘まで林道補修工事のため今年の8月21日から来年1月9日までの期間は一般車両通行止めになります。

私はこの山へ9月に登る予定でしたが、上記の理由のため、18日、19日とも天気が思わしくないのを知りつつ、今シーズン最後だと思い、出かけました。

一般的な行程は、ペテカリ山荘に前後泊しペテガリ岳を日帰りするコースです。健脚向けのコースはペテカリ山荘に前泊しペテガリ岳を日帰りしてから神威山荘まで戻るもの。私たちは全装備をかついで山頂にテント泊する、累計標高差約1950mの行程を選びました。

日の出と共に入渓し、2時間30分後にペテカリ山荘に到着。山荘には後泊者がいて、前泊者は1時間前に出発したらしく、今日の山頂テン泊者はいないようです。山頂には2人用テントがぎりぎり張ることのできるスペースが1箇所のみ。途中にもテン場がありません。水場もないので、ここで4.5リットルの水を補充し、20kg強のザックをかついで再出発です。

標高1000mまでは曇りでしたが、以降は霧雨と小雨。天候も悪く、雨と朝露で濡れたくなかったので雨具を着ました。樹林帯は無風で蒸し暑く、しばらくすると体じゅうから汗が吹き出て、何時間も汗が止まりません。脱水症状だと自覚しはじめるのですが、途中で水は補給できません。カロリーと塩分摂取をこころがけましたが、からだが思うように動かなくなり、足もつりだしました。雨も降りはじめて、最後550mの直登は地獄でした。

ようやく山頂にたどり着きました。テントを張って夕食を食べていると雲が切れてきました。ブロッケン現象が現れ、みるみるうちに日高の名峰たちが姿を現します。やがて、夕陽に照らされた雲海で、すべての景色がオレンジ色に染まっていきました。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

日高山脈・ペテガリ岳(後編)

日高のピークで最高の朝を迎える

雲海から陽がのぼり始める(写真=谷水 亨)

神威岳やピリカヌプリが雲海に浮かぶ島のようだ(写真=谷水 亨)

8月18日~19日

テント内で着替えて薬を飲み、食事を済ませて静養していましたが、思いがけない夕焼けに力を振り絞ってテントから抜け出し撮影をした。

日が沈むとすぐに私は爆睡。深夜、相棒が満天の星空に歓声をあげていましたが、私はからだを起こすことができません。2日前から寝不足が続いていたからです。朝、目を覚ますと、体調は多少回復していましたが油断はできません。

日の出の時間帯は快晴で、北方面にカムイエクウチカウシ、ヤオロマップ、1839峰などの鋭峰が見えます。一方、南方面は神威岳、ソエマツ岳、冬に登ったピリカヌプリが見えました。いずれも北海道の山並みでは珍しい鋭峰揃いだ。「日高のピークで朝を迎えるのは最高だよ」と先輩たちがいつも声をそろえて言っていたのがわかるような気がします。

慌ただしく6時10分に下山開始。1301mピークから1050mピークまで何度も登り返しのある稜線を見ると、それだけで足がつりそうです。ようやく550mの急坂を下ると、ペテガリ岳を含む日高の山頂たちが雲のなかに消えていきました。

途中、山荘前泊の登山者からクマ遭遇情報を聞き、笹藪地帯では笛を鳴らしながら先に進みます。

ペテカリ山荘で沢靴に履き替え、山を越えて沢を下る道程を歩きました。空を見上げると雨が降りだしそうで、昨日今日の日高の山々は雲のなかだったようです。水4.5リットルを含む20kg以上のザックをかついで、山頂泊を選択したのは正解でした。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

秋田山形県境・鳥海山

出羽富士へ高山植物観察山行

鳥海山山頂の溶岩ドーム「新山」(写真=都築香純)

チョウカイフスマ(写真=都築香純)

8月19日

山形県遊佐町のNPO法人遊佐鳥海観光協会の主催する「鳥海山高山植物観察山行 大平~山頂~鉾立<山頂コース>」に参加しました。東北の山には、日ごろでかける関西の山や、中部山岳とは違った魅力があり、機会を狙っていたところ、神戸の石井スポーツ店頭でこの企画の案内チラシをたまたま手に取り、申し込みをして夏休みの楽しみにしていました。

予報によるとこの日は雨。また、当日朝のレーダーによると近隣に雷雲の接近もあるとのことで、悪天を覚悟して、大平登山口(吹浦口)から登山開始。登りはじめの小1時間はナナカマドやオオカメノキなどの低木の間につけられた登山道です。2時間強で高木限界を超えて七合目のカルデラ湖・鳥海湖を見下ろす御浜小屋の前に出ます。悪天の予想された時間帯ではありましたが、鳥海湖の向こうには出羽の名峰・月山の姿も見えています。ニッコウキスゲ、ハクサンフウロ、キンコウカ、オクキタアザミなど、色とりどりの花が楽しめました。鳥海山の固有種であるチョウカイフスマ、チョウカイアザミも開花していて、引率のガイドさんの案内でしっかり観察することができました。

御浜小屋からは御田ヶ原、七五三掛を経由して、千蛇谷の雪渓を渡り、山頂御室小屋を目指して岩の多い夏道を登ります。6時10分に大平登山口出発、山頂御室小屋到着は11時50分でした。

その後、ガイドさんの案内で、溶岩ドーム「新山」を目指しました。溶岩を手でつかみながら登りますので手袋装着推奨です。ペイントマークを目印に20分ほど登りますと2236m、鳥海山最高地点に到着です。残念ながら眺望はありませんでしたが、海抜ゼロメートル付近の宿を出発、最高点にたどり着けて感激ひとしおでした。

雨が降りはじめたのでスリップに注意しながら『胎内くぐり』経由で御室小屋まで戻り、雨具を着こんで下山開始、御浜小屋からは、賽の河原を経て秋田県側の鉾立登山口(象潟口)に17時に下山しました。

雪渓は、千蛇谷下部および、新山下山路基部(大物忌神社裏)の短い区間のみでしたので滑り止めの装備は不要でしたが、時期によりますので状況に応じてご持参ください。

このコース内のトイレ・売店は七合目御浜小屋、山頂御室小屋にありますが開設期間は7月から9月ごろまでとなっていますので、ご確認ください。

遊佐鳥海観光協会では鳥海山登山に際して登山ガイドの紹介もしていただけるようです。

(文=都築香純)

北アルプス・白馬岳~栂池自然園

展望や植物を楽しむ稜線漫歩

白馬岳を後に稜線を行く(写真=増村多賀司)

左上:大雪渓終了地点・夏道を歩く/右上:天上に浮かぶ白馬大池/左下:白馬山荘から見た天の川と杓子岳、鑓ヶ岳/右下:栂池自然園から夜明けの白馬三山(写真=増村多賀司)

8月19日~21日、19日雨時々霧、20日晴れのち霧、21日曇り

猿倉を早朝にスタート。大雪渓への取付は例年通り白馬尻より10分ほどのところですが、雪渓下部には大きなクラックが開いており、右岸の夏道へ迂回します。夏道は崩れやすいので慎重に通過しました。雨が降り始めて霧も濃いので、常に上部よりの落石に注意します。雪渓から夏道へ上がる部分は浮き石も多いので、落石しないように。

葱平(ねぶかっぴら)から小雪渓まで、急登ですが高山植物が見られ始めます。小雪渓はこの時期はすべて消えています。ここから稜線まではお花畑が広がります。残雪が消えたばかりの所は初夏の花、それ以外は晩夏から秋の花が咲き始めていました。ウルップソウはほとんど終わっていましたが、まだきれいな状態のものもありました。この日は白馬山荘に宿泊。夕日は見られなかったのですが、夜は晴れて満天の星空が見られました。

翌日は予報に反して晴れとなり、ご来光や遠く富士山や南アルプス、白山などの山岳展望を楽しめました。小蓮華山から白馬大池までは高山植物や展望を楽しみつつ稜線漫歩でした。白馬大池付近は雪が消えたばかりの斜面にチングルマが咲き誇っています。この日は栂池山荘に宿泊し、翌日は栂池自然園を一周しました。湿原ではピンク色のオニシオガマが最盛期を迎えていました。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

北アルプス・赤木沢

天下一といわれる美しい渓

黒部奥ノ廊下徒渉(写真=平野裕也)

ナメ滝をいく(写真=平野裕也)

8月18日~19日

黒部川奥ノ廊下に合流する赤木沢に6名パーティで行ってきました。

18日の朝に折立で集合し、薬師峠でテント泊。その夜はかなりの雷雨に見舞われましたが、19日はどうやら天気が持ちそうなので薬師沢小屋に下り黒部本流を遡行します。若干の増水のせいか、途中の徒渉にてまどりました。

赤木沢に入ってからは特に難しい滝もなく、天下一といわれる美渓を堪能しながら順調に遡行し、出発から8時間ほどで赤木岳に登り詰めることができました。シーズン中は1日200人も入渓すると言われる赤木沢ですが、この日は終始まったくの独占状態でした。

薬師峠でもう1泊して、20日に登山者でにぎわう折立に下山しました。

(文=平野裕也)

日光・日光白根山

さえない天気の合間をぬって

日光白根山ロープウェイ山頂駅先の散策路内。各種のキノコが目立ち始めていました(写真=中村重明)

日光白根山山頂(写真=中村重明)

8月19日、曇りのち雨

この週末、関東甲信越はどこもさえない天気予報ながら、19日の午前中は天気が持ちそうな予報だったため、ロープウェイ利用で手軽に高山を楽しめる日光白根山を訪ねました。

ロープウェイ山頂駅から七色平を経由し、行きは山頂の南西側から「白根山ルート」で登り、帰りは北西方面の「座禅山ルート」で下ってから座禅山には登らずに「弥陀ヶ池ルート」で七色平経由へ戻りました。約5時間、標高差600m弱の行程です。

ガスでほとんど展望はないものの、コケとキノコとカニコウモリが目立つ樹林帯から、ハクサンフウロなどが点々と咲く火山性の砂礫帯、そしてところどころにトウヤクリンドウが群生する岩稜帯と、短い行程のなかで地質・植生・景観が大きく変化するのが楽しめました。また、山頂脇で昼食休憩中に短時間ながらガスが晴れ、五色沼のきれいな展望も得られました。

北関東では昼過ぎから雷雨との予報通り、下り始めて間もなく遠くで雷鳴が鳴り、雨も降り始めましたが、幸いそれほど強い雨にならないうちにロープウェイ山頂駅に戻ることができました。

(文=中村重明)

福岡県・叶岳~高地山~高祖山

汗だくで低山縦走

高祖山山頂に設置された「山ナビBOX」(写真=池田浩伸)

登頂記念のかわいいメダル(木札)表と裏(写真=池田浩伸)

8月17日、曇り

今宿野外活動センターに車を停め、10分ほど来た道を戻ると叶(かのう)岳の登山口です。眺めのよい遥拝所までは、たくさんの鳥居が立っています。吹き出す汗をふきながら、海からの涼しい風に吹かれて、糸島付近の海を見ていました。

叶岳へ最後の階段は、いつもきれいに掃き清められています。下山の女性から「暑いですね! お疲れさま。稜線は涼しいですよ」とうれしい言葉をかけられました。次に出会ったおじいさんからは「北風や東風のときは、この山で雨に濡れることは少ない。暑いときは高祖山から登ったほうが海風で涼しい」など、この山の歩き方を教わりました。

稜線では涼風が吹き、ママコナの花を楽しみながら高祖山につくと、去年はなかった「山ナビボックス」が設置されていました。ボックスには「ようこそ高祖山へ! メダル(木札)とパンフレットを登頂記念品としてお持ち帰りください。怡土(いと)の山に登ろう会」と書かれています。さっそくザックにつけて、自然観察路を野外活動センターへ下山しました。

アクセスもよく、高祖山だけなら1時間程度で山に着き、縦走も4時間程度と手軽に楽しめます。高祖山(メダル)を目指して登られてはいかがですか。

(文=池田浩伸/登山ガイド)

大雪山・黒岳~北海岳

雪渓近くに咲く可憐な花々

北海岳山頂にて。相棒の足がつったと話しをしていたら、女性パーティの方々に漢方薬をいただきました(写真=葉山美和)

雪渓の豊富な雪解け水に潤うお花たち(写真=葉山美和)

8月10日、晴れ時々曇りとガス

白雲岳でテント泊の予定でしたが天候が不安定なので、日帰りお鉢めぐり一周に変更し、黒岳に登りました。登ってみると意外にいい天気で、綿毛のチングルマが多いなか、雪渓近くにはまだ可憐な花が咲いています。

北海岳に向かう途中で相棒の太ももがつるアクシデントに見舞われたので往路を戻ることにしました。すると笛を吹きながら近づいてくる単独行の男性がいました。往路で会話した方です。「そこのハイマツでクマに会った」との情報をいただき、同じく笛を吹きながら石室に戻りました。

前の晩は雨だったものの朝はトムラウシの眺望が素晴らしかったと、その方に聞きました。今回はテント泊もお鉢めぐりも叶いませんでしたが、来年こそは実現したいと思う北海道の山旅でした。

(葉山美和/千葉県/よく行く山:中央線沿線の山、奥高尾)

会津・磐梯山

磐梯山はずっと霧の中でした

ガスがはれた裏磐梯方面・天狗岩(写真=葉貫正憲)

火口壁越しに銅沼(写真=葉貫正憲)

8月21日、曇り

天気が不安定な中、磐梯山へいってきました。ゴールドラインの八方台~中ノ湯~弘法清水~山頂を往復しました。

会津平野は小雨でしたが、登山口は今にも雨が降りそうな曇天です。この日は月曜日でしたが、ツアーバスの40名を始め、60~70名の登山者がありました。雨の日が続いたためか泥濘があり、足もとも滑りやすいので慎重に歩きます。8時35分にスタートし、弘法清水に10時35分着。そこで休憩の後、山頂へ。残念ながら山頂が近くなるとガスがたちこめ、全方向を見渡せるはずの山頂で展望はまったくありませんでした。

弘法清水に戻って昼食をとった後、お花畑までの花々を観察しました。キオンの一面の黄色、道端近くのあちこちにソバナの高貴な薄紫とそのなかにアクセントを添える赤いタカネナデシコなど、花めぐりを楽しみます。ふと顔を上げると裏磐梯方面のガスがきれ、檜原湖、小野川湖、秋元湖などが姿を現し、得をしたような気になりました。

帰り道はいつもより慎重に下り、13時40分に八方台に戻りました。雨を覚悟していましたが、午後になって好転したのがよかったです。

(葉貫正憲/福島県/70歳/よく行く山:会津百名山)

北アルプス・五竜岳~爺ヶ岳

緊張しつつも、展望を楽しんだ稜線歩き

五竜岳から鹿島槍ヶ岳までの稜線(写真=石川和重)

立山連峰のモルゲンロート(写真=石川和重)

8月12日~14日、曇り時々霧

五竜岳から鹿島槍ヶ岳を経由して爺ヶ岳まで縦走しました。

テレキャビンと展望リフトを乗り継ぎ、8時半ごろに登山開始。天候は予想していたほど悪くはなく、時々小雨が降る程度です。五竜山荘に到着し、夕方6時半ごろにはガスが下がって五竜岳が顔を出し、カメラに収めました。

翌日は5時前に出発して五竜岳へ。雲海の上の立山連峰を撮影した後、稜線歩きを開始。少し緊張しながらG5を通過します。その後ガスが出始め、キレット小屋もガスの中。

昼食をとった後、いよいよ八峰キレットへ。ガスのおかげで高度感を感じずに、無事核心部を通過しました。残念ながら鹿島槍ヶ岳山頂でもガスが抜けることはなく、登頂の証拠写真を撮って冷池山荘へ。

翌日も同じような天候で、立山連峰のモルゲンロートに出会えましたが、爺ヶ岳に着くころにはガスが増え始めていました。

種池山荘から扇沢までの下りでは疲れもあり、木や石に滑って数回尻餅をつきましたが擦り傷程度で、無事扇沢に下山できました。

(石川和重/埼玉県/46歳/よく行く山:北アルプス)

北アルプス・西穂山荘~焼岳

北アルプスのスケッチ山行・前編

西穂山荘付近のお花畑にて。ピンクはハクサンフウロ、黄色はミヤマキンポウゲ、白はタンポポ(画=江川 誠)

霧が晴れ始めた焼岳(画=江川 誠)

7月26日~28日

梅雨明け以来、安定した夏空がないこの夏、北アルプスに出かけましたが、ひさしぶりに3日連続の雨中山行となってしまいました。特に西穂山荘から焼岳小屋の間は、登山道の急斜面が滝のようで、緩斜面は沼地とぬかるみです。オオシラビソの大木と笹で展望はなく、北アルプスを歩いているのか、わからない状態でした。

ご来光を拝もうと毎朝4時に起きて出発するもののいつも雨と霧の中でしたが、ようやく3日目に焼岳山頂から焼岳小屋を過ぎた頃から天候が回復。ガスが薄く流れてスケッチをすることができました。しかし、残念ながら天空を突く北アルプスの絶景はおあずけです。

(江川 誠/東京都/65歳/よく行く山:北アルプス)

北アルプス・乗鞍岳

北アルプスのスケッチ山行・後編

剣ヶ峰途中にて。下は肩の小屋、山の上は気象観測所(画=江川 誠)

コマクサ(画=江川 誠)

7月29日、雨、霧

焼岳登山の後、乗鞍岳へ向かいました。前の晩に見上げた満天の星空から、好天を期待したのですが、早朝のほうのき平は小雨です。ご来光を見るため万が一を期待してほうのき平発3:45のバスに乗車。ご来光遥拝所は濃い霧と強い風が吹き、夏とは思えぬ寒さでした。明るくなり剣ヶ峰に向かって歩きだすと、肩の小屋で一瞬霧が薄くなり、山頂への登り道では約15分間隔で霧が晴れてきました。山頂は霧の中でしたが、また15分ほどで晴れるだろうと待っていましたが、その後はもう二度と霧は晴れませんでした。

展望は得られませんでしたが、乗鞍岳は高山植物が豊富な山です。コマクサ、ヨツバシオガマ、ハクサンイチゲ、チングルマなど、数え上げたらきりがありません。たくさんの登山者や観光客が訪れる理由がわかりました。

(江川 誠/東京都/65歳/よく行く山:北アルプス)

秩父さくら湖・大久保谷

水不足一転、脚力が試されるほどの水勢になりました

大久保谷での一コマ。水勢が強くなければ、緩急ほどよく快適な沢歩きが楽しめるのではないかと思いました(写真=林 由季子)

近場ノ谷の小滝。大久保谷も近場ノ谷も小滝がいくつも出てきましたが、今回歩いた範囲では取付も巻道も困難な場所はありませんでした(写真=林 由季子)

8月21日、曇り

入渓時の水深はヒザ~モモくらいでしたが、一昨日の雷雨の影響か水勢が強く、少しでも油断すると一気に足がすくわれます。水勢の強さに加えてP515付近では崩落土砂が堰となりその先の水深を増していたため、P515からは高巻き、標高600m付近にある作業小屋の先から再溯行しました。

しかし、その先も水勢が強いため本谷の溯行は断念、かわりに近場ノ谷を作業道まで溯行し、帰路はそのまま作業道から林道を経て戻りました。

谷ではイワタバコが咲き、作業道ではベニナギナタタケやキイボカサタケなど色とりどりのキノコがお出ましに、林道沿いで咲くボタンヅルやメハジキなどのお花はさまざまな昆虫でにぎわっていました。

なお、水流を巻く際に斜面のあちこちで古い茶碗や一升瓶のカケラを目にしました。足元注意です。

(林 由季子/埼玉県/よく行く山:秩父の山)

加賀・白山

天気に恵まれ、登山を満喫しました

大汝峰から御前峰を望む(写真=内山俊幸)

御前峰から望むご来光(写真=内山俊幸)

8月13日~14日、晴れ

開山1300年でにぎわう白山に登ってきました。

朝、前泊した市ノ瀬の永井旅館の窓から目の前のバスターミナルをのぞくと、始発時間までにはまだ1時間以上あるにもかかわらず、坂道の下の方まで長蛇の列。自分たちも急いで朝食をとって、当初の予定を1時間近く早めて出発しました。

前日も夜遅くまで雨が降っていて、今朝もまだ霧雨が舞っていたので、霧か雨の中の登山を覚悟していましたが、歩き始めてしばらくすると、上空を覆っていた雲が晴れて青空が広がり、真夏の日差しが痛いほどです。翌朝も少し雲が多かったものの、素晴らしいご来光を拝むことができました。

(内山俊幸/東京都/56歳/よく行く山:奥多摩、日本アルプス)

第百七回

リニアくる。マジで大丈夫かと山に聞く(仙丈のメリクリ)

大縦走、社会復帰さぁ~大変(あられちゃん)

【寸評】

一句目、仙丈のメリクリさん。環境への負荷は、本当に大丈夫でしょうか。誰もが山に尋ねてみたいと思います。

二句目、今週も元気なあられちゃん。登山とは、下山で終わるのではなく、社会復帰してはじめて終わりです、と小学校の先生が言ってました。

【段位】仙丈のメリクリさんは「2000m級」に昇級。あられちゃんはアイスフォールを無事通過です。

【応募方法】

山に関する川柳を募集します。投稿先メールアドレスは「weekly@yamakei.co.jp」です。メールの件名には必ず「週刊ヤマケイ・山の川柳」とお書きください。ペンネームでの投稿も受け付けております(読者の登山レポートはペンネームでの投稿不可)。

なお、ご投稿いただいた方には1000m峰から始まる「山の川柳段位」を授与します。ふるってご応募ください。

週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

「夏休み 孫と一緒に 百名山」

「お父さん 登山道具を 片付けて」

「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

山で体験したちょっといい話や不思議な話、使って役立った装備や安全登山のための工夫、昔の登山の思い出などを募集します。お気軽にご投稿ください。こちらの投稿もペンネーム可です。文字数は400字以内でお願いします。


投稿先メールアドレス

weekly@yamakei.co.jp

※メールの件名に必ず「週刊ヤマケイ・表紙写真応募」または「週刊ヤマケイ・読者の登山レポート投稿」「週刊ヤマケイ・山の川柳」「週刊ヤマケイ・よもやまばなし」とお書きください。

※表紙写真に採用された方、読者の登山レポートに採用された方には週刊ヤマケイのロゴ入り測量野帳を進呈します(初回のみ)。また山の川柳で高段位になられた方にも測量野帳を進呈します。どしどしご応募ください。

登山の「まさか」に! レスキュー費用保険で、確かな安心を。

山岳遭難が増えています。無理のない日程、万全の装備、登山届、そして「レスキュー費用保険」。まさかの捜索・救助費用にしっかり備えて、安心登山を楽しみましょう!

登山やアウトドアスポーツなど、日本国内での野外活動中に遭難事故に遭った際、捜索・救助に要した費用に対して保険金をお支払いする保険です。

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株式会社山と溪谷社
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1丁目105番地
編集
佐々木 惣
アートディレクター
松澤政昭
SSデザイン
塚本由紀(T&Co.)
技術サポート
福浦一広、金沢克彦
プロデューサー
萩原浩司

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