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『人を襲うクマ』(羽根田 治)

連載第3回(著者=小林千穂/山岳ライター・編集者)

『人を襲うクマ』(山と溪谷社)福岡大学WV部のヒグマ襲撃事故の検証を筆頭に、最近のクマとの遭遇被害の事例を追い、専門家による生態解説など含め、クマ遭遇被害の実態を詳細に明かす

定説を覆すクマの襲撃

みなさんは山でクマに会ったことがあるだろうか? 私は遠くの斜面で見かけたことはあるが、安全圏でのことで、至近距離で見たことは一度もない。山の先輩からは「それだけ山に行っているのにその程度であるはずはない。よっぽど鈍感なんじゃないか?」と笑われたことがある。それもあるかもしれないけれど、単に運がよかっただけのことだと思う。

ちょうど私は今、熊野古道の伊勢路を歩いている。紀伊山地の麓に続く道だ。峠道ではクマの目撃情報が寄せられているところもあり、長距離の山道に入る前に、最近のクマ事情について知っておこうと本書を開いた。

本書は1970年7月に北海道カムイエクウチカウシ山でヒグマが大学生を襲った事故をはじめとし、秩父の猟師のインタビュー、近年のクマ襲撃事件、そしてクマの生態と4つの章で構成されている。

カムイエクウチカウシ山の事例は福岡大生3人が次々とクマに殺されるという凄惨な事故として、50年が経とうとする今も登山者に語り継がれている。私も同じ日高山脈の幌尻岳を登る前に事故の概要を調べ、その悲惨さに背筋が凍りついた。今回、その詳細を改めて読み、特にヒグマが多いといわれる七ツ沼カール付近の稜線で、背丈を越える笹ヤブをかき分けて進む時など、笹に触れる手の先にヒグマがいるかもしれないと、恐怖と戦いながら進んだ経験を思い出した。

私がもっとも注目したのは第三章の「近年のクマ襲撃事故」である。ここでは最近の6つの事故が掲載されている。日ごろ、山の事故を防ぐには、過去の事例からよく学ぶことだと思っているが、本書で紹介されている、実際にクマに襲われた方々の話はリアルでたいへん参考になる。これを読むと「クマは臆病で、刺激しなければ先に逃げるものだ」とか「ほかにも登山者がたくさんいるからクマは出ない」などといった定説を覆す事例もあった。登山者が多くいた休日の奥多摩・川苔山で襲われた人の話は衝撃だったし、冬眠していると思いがちな12月末の仙ノ倉山での事例にも驚いた。実際、上越国境の仙ノ倉山とはだいぶ気候が違うが、私が歩いている伊勢路でも12月24日にクマの目撃情報があったという警告表示も見かけた。また、クマの力や俊敏さは私の想像を超え、ストックなどではとても応戦できないことを知った。

そして、この本にもアウトドアショップを営む男性の経験談が載っているが、私の周りの山のベテランの中にもクマに襲われた人がいる。クマとの事故は偶発的で、山の経験の有無はあまり関係がないと、改めて思い知った。

一方で、ツキノワグマの大量出没といわれる事態がほぼ2年に一度の割合で起こっており、それらの年には2000~4000頭のツキノワグマが捕獲され、殺処分になっている(本書より)ことも忘れてはならないと思う。クマに会えば、自分が傷つく恐れがあるのはもちろんだが、相手のクマの命を奪うことにも繋がりかねないのだ。

お互いが不幸となるクマとの事故を防ぐには、会わないようにすることが一番である。自分はクマに会わないだろう、クマ鈴をつけているからだいじょうぶ、などと安心しないで、こちらが常に注意を払わなければならないことをこの本は教えてくれる。人がクマに対して無知であるがゆえに起きる事故もあるかもしれない。この本を読むことで、クマを知るきっかけになるだろう。

信州の山岳遭難現場より

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。

11月2日に第94号が、11月7日に第95号が配信され、10月18日から26日にかけて長野県で発生した3件の遭難事例が掲載されております。

10月の第4週は、長野県の主要な高山ではまとまった降雪が観測されました。この時期の天気の特徴としては、移動性高気圧におおわれれば終日快晴が見込めますが、低気圧や前線の通過を伴う悪天候に遭遇すると、猛烈な吹雪になります。また、冬型の気圧配置が強まると、長野県北部の山沿いでは降雪が続き、その他の山域でも強風に見舞われます。

気象遭難を防ぐため、日ごろから知識の吸収につとめて、登山力を高めてください。

***

・10月18日、北アルプス・焼岳中尾峠東側でオーストラリア人の25歳男性が下山中に浮石で足首をひねって転倒し、左足首ねんざの軽傷を負いましたが、県警ヘリで救助されました。

・10月24日、高社山で70歳の女性が下山中に疲労から歩行困難となりましたが、その後、無事救出されました。

10月26日、北アルプス・焼岳で発生した遭難現場の状況(写真=長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)11月2日付より)

・10月26日、北アルプス・焼岳の登山道で55歳の男性が体調不良による歩行困難となり、県警ヘリで救助されました。

(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)

・・・

下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

(文=週刊ヤマケイ編集部)

平成29年度 日本自然保護大賞の募集開始

自然保護と生物多様性保全に関する取り組みを顕彰

自然保護と生物多様性保全に貢献する取り組みを顕彰する「日本自然保護大賞」の今年度の募集が始まりました。

子どもから大人まで、日本全国で活躍されているすべての個人や団体、企業、自治体の皆様が応募対象です。受賞した活動は数多くのメディアに取り上げられ、さらなる発展をとげています。

【応募方法】

「日本自然保護大賞」のウェブサイトよりご応募ください。

http://award.nacsj.or.jp/

自薦、他薦は不問。3部門より複数の部門にエントリー可能。

【応募部門】

●保護実践部門・・・・・市民、大学生、専門家、企業、行政などがそれぞれの立場と特性を活かし、具体的な自然保護の実績をあげた活動、研究。

●教育普及部門・・・・・自然観察をはじめ、広く自然保護を目的とした教育・普及活動。

●子ども・学生部門・・・・・小学生から高校生まで、子どもが主体的に取り組んだ活動、研究。

【選考と公表】

応募締め切りは2018年1月5日(必着)です。

最終選考(2018年1月)を経て、2018年3月に授賞式と受賞者の活動発表会を予定しています。

『山怪実話大全 岳人奇談傑作選』

実話として語られた山の怪談の名作集

『山怪実話大全 岳人奇談傑作選』東 雅夫 編/11月11日発売/1200円+税/四六判/240ページ/ISBN:978-4-635-32011-5

山の裏側を垣間見る「黒本」シリーズ最新作

近現代の文豪が手がけた山にまつわる幻想と怪奇を精選収録した『文豪山怪奇譚』の続編である本作は、登山者や岳人によって実話として語られた山の怪談の傑作選です。

巻頭を飾るのは夢枕獏の「不思議な山」。続いて深田久彌の「山の怪談」、上田哲農「焚火をかきたててからの話」、西丸震哉「木曾御岳の人魂たち」と続きます。

不思議な話しから、未確認生物の話し、そして背筋がぞっとする話しまで全26編。読み終えてから山に出かけると、いつもとは違う「山」を感じるかもしれませんね・・・

日高山脈・ペケレベツ岳

この時期ならではの北海道の山のリスク

登山口50m先から笹薮で隠れた登山道とペケレベツ岳を眺める(写真=谷水 亨)

頂上付近から不明瞭な登山道と十勝平野を眺める(写真=谷水 亨)

11月1日

昨年の台風災害で不通となっていた国道274号線の日勝峠が10月28日、1年2ヶ月ぶりに開通したため、約10年ぶりにペケレベツ岳に登ってきました。日勝峠・十勝側標高800mに除雪ステーションがあり、そのフェンス横に5~6台の駐車スペースを備えたペケレベツ岳登山口があります。

登山口50m先からは背丈ほどの笹藪が登山道をおおい隠し、足元が見えない限りほぼ登山道は認識できません。しかし、登山口から尾根に取り付くので、登山道を外しても方向は同じですから、気にせず笹藪を両手で分けながら登りました。

1時間ほど登ると看板と共に「シャクナゲの沢」「母の胎内」が次から次へ現れてきます、それらの岩の横を通り抜けてダケカンバの尾根を進むと、今度は雪に押し倒された笹藪が登山道を隠していました。主稜線にぶつかる1343mコブからは、ペケレベツ岳の山頂部も見えます。このコブからも雪を被った笹藪に足を滑らせながら稜線の東斜面を進みます。

コルからは左手に十勝平野の広がりを眺めながら、急なハイマツ帯の斜面を登って行きます。ハイマツにも湿った雪が被り、登山道におおい被さります。2度ほど匍匐前進で潜り抜け、両手でかき分けながら登ると、冬用アウターからオーバーパンツまでびっしょり濡れてしまいました。この時期なので想定内でしたが、雨具の方がよかったと後悔したほどです。

ペケレベツ岳山頂からは、ウペペサンケ山やニペソツ山、大雪山や十勝連峰の山並み、リゾートトマム、十勝平野の奥には阿寒の山も見えるはずでしたが、わずかに十勝平野が望めただけでした。全長3440mの登山道で、はっきりわかる所は10%、登山道らしき所は60%、登山道ではないが歩きやすい所は10%、意に反して歩いていた所(迷った)は20%の割合でした。

この時期の北海道の登山は、厳冬季でもないので行動中に汗をかきます。湿った雪や雑木やハイマツの枝に付着している水分対策で雨具などを着ます。そのため、内外ともに濡れたままプラスからマイナスの気温の中を行動することになります。登山道も不明瞭になるうえ、雪が積もっていて歩きにくくなります。かといって登山道以外を進もうにも、厳冬季と違って歩けません。従って体力消費が激しく、低体温症や遭難のリスクがもっとも高くなります。

この時期の状況とその山に想定されるリスクをしっかりと認識し、リスクに対処する装備と対策をした上で登山を楽しまれることを望みます。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

宮城県・神室岳(仙台神室)

峠道冬季閉鎖により静かな山歩きとなりました

山形神室を背に仙台神室の登り(写真=福井美津江)

落差40mの仙人大滝(写真=福井美津江)

11月3日、晴れ

川崎町笹谷~山形県境の国道286号が冬季閉鎖となった翌日、宮城県側の閉鎖ゲート近くに車を1台置き、山形県側の関沢から旧登山道を登り始めました。

稜線は、ハマグリ山、トンガリ山、山形神室と続き、青空の下、心地良い気温にも恵まれました。神室岳(仙台神室)まで足を伸ばし、展望を楽しみダンゴ平から稜線を離れます。ダンゴ平からすぐの涸沢を下る途中、足元に気をとられ左手に入る登山道を見落しやすいようです。痩せ尾根や沢の徒渉、沢沿いの狭いトラバース道は落ち葉で滑りやすく、各々注意が必要です。焦らず下山するためにも時間に余裕を持ってスタートするとよいでしょう。

見上げるほどの仙人大滝は迫力がありました。

(文=福井美津江)

北アルプス・立山室堂

充実した撮影山行

黎明の天狗平にて。真紅に燃える空の下、そびえ立つ剱岳が印象的だ(写真=伊藤哲哉)

静夜のミクリガ池。霊峰立山から昇るオリオン座が光彩を放つ(写真=伊藤哲哉)

11月1日~3日、快晴

11月1日、室堂に向かう前に、晩秋の美女平に立ち寄りました。晴れて風もなく気持ちよく美女平遊歩道を散策します。立山杉は11月でも青々として、空に向かって背を伸ばし、力強い生命力を感じます。

室堂バスターミナルを降りると、冬の装いを始めた室堂周辺の景色が目に入ります。みくりが池温泉小屋では、初めて宿泊する私を旧知の仲のように暖かく迎えてくれました。夕方まで、室堂周辺の初冬の景色と眼下に広がる富山市街をのんびりと眺めます。このような時間にゆとりのある撮影山行も久しぶりです。

午後5時前、立山が真紅に染まると、待っていた月が立山連峰の稜線から昇ってきました。感動の一瞬です。夜は星空撮影です。室堂の空には、秋冬の星座が次々に現われます。安定した天気のもと、未明まで撮影を続けました。最低気温は、手元の温度計でマイナス5度です。

朝4時には天狗平へ向かいました。天狗平までの道はすっかり雪に覆われており、クランポンがよくきき、気持ちよく歩くことができます。午前6時前に、立山連峰から剱岳までの稜線にかかる雲が真っ赤に染まり、とても幻想的な光景に出会いました。

11月3日、9時ごろ、ミクリガ池を再び周回しました。快晴で少し暑いぐらいで、散策路の雪も大分消えました。偶然にも、ミドリガ池付近で、純白のオコジョを見かけ、初めて撮影することができました。オコジョは警戒心が強く、またすばしこく、カメラを向けるやいなや姿が見えなくなり、落ち着いて撮影をすることができません。それでも、妖精のような愛らしい姿を撮影でき、満足しました(※編集部注:今週号の表紙です)。

心身共にゆとりのある充実した撮影山行を堪能しました。

(文=伊藤哲哉/『改訂新版 千葉県の山』共著者)

南アルプス・鋸岳

雪雲につかまる前にエスケープしました

鋸岳(第一高点)。後方は北岳と間ノ岳(写真=畠山茂信)

甲斐駒ヶ岳。上空は厚い雪雲に覆われています(写真=畠山茂信)

11月3日~4日、3日快晴、4日曇りのち雪

横岳峠で尾根に乗り、荷物をデポして横岳を往復しました。登る人が少ないせいか踏み跡が非常に薄く、半分藪漕ぎのような状態でした。ここから三角点のある無名峰までは樹林帯で見晴しはなく、しばらくは辛抱の急登です。しかし頂上は展望が開け、快晴の空の下にこれから向かう鋸岳や甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳や北岳などが間近に望めました。

翌日は一転して朝から冷たく強い西風が吹く冬型の天気で、遠くから分厚く黒い雪雲が近づいてくるのが見えました。計画では甲斐駒ヶ岳まで縦走の予定でしたが、あの雪雲につかまって吹雪になるのは時間の問題と思われたので、鋸岳に登頂後、角兵衛沢にエスケープしました。

下り始めてまもなく稜線は雲に覆われ、戸台川に着くころには雪が舞い始めました。気温も下がり、冷気が上空から下りてくるのが見えます。八丁坂ルートで北沢峠に向かいましたが、戸台川の水量が多くてなかなか徒渉できず、かなり上流まで遡ってなんとか渡れました。

午後3時ごろからは北沢峠でも吹雪になり、計画を中止して下山して良かったとしみじみ思いました。

(文=畠山茂信)

南アルプス・薬師岳、観音岳

夜叉神峠(1770m)より白根三山(写真=中村重明)

観音岳より薬師岳と富士山(写真=中村重明)

11月3日~4日、3日晴れ、4日曇り

久々に好天の予報となった週末の三連休の2日間を利用し、鳳凰三山の薬師岳と観音岳に登ってきました。夜叉神峠登山口からの往復(南御室小屋泊)です。

初日はマイカーで夜叉神峠登山口まで行き、8時ごろに登山開始。芦安から駐車場付近まで、紅葉がみごとでした。1時間ほどで着いた夜叉神峠からは白根三山の迫力ある姿を望むことができました。ただしその先は薬師岳小屋の手前まで、時折樹林越しに白根三山や富士山が見られるものの、基本的には展望の乏しい樹林帯です。

南御室小屋に宿泊用の荷物をデポし、この日は薬師岳を往復。山頂からは、白根三山、八ヶ岳、奥秩父の峰々、富士山等々、360度の大展望が得られました。

翌日は薬師岳山頂で御来光を見るのを目当てに4時半過ぎに小屋を出発。薬師岳には思ったよりも早く着いたため、観音岳まで足を伸ばしました。ただし残念ながら昨日と異なり空は広く雲におおわれており、日の出時刻になっても太陽は雲に隠されていて、期待した景観は得られませんでした。南御室小屋まで戻り、デポしていた荷物を回収し、続々と登ってくる登山者とすれ違いながら夜叉神峠登山へ下山しました。

なお南御室小屋の今季営業は11/4の宿泊が最後で、この先は年末年始の短期の営業まで休業となります。ただしテント場、水場、冬季用トイレは使用可能とのことです。

(文=中村重明)

八ヶ岳・赤岳

冬靴にアイゼン持参で正解

赤岳稜線を行く(写真=増村多賀司)

左上:一日目は雪降る中を登る/右上:月光の赤岳山頂と赤岳頂上山荘/左下:阿弥陀岳と赤岳の影/右下:赤岳を後に(写真=増村多賀司)

11月4日~5日、雪のち晴れ

美濃戸から入山、お昼に今シーズン最後の営業日の行者小屋で名物ラーメンをいただいて、文三郎道で山頂に向かいます。

天気は下り坂で、中岳との分岐付近で本格的な降雪になりました。みるみる足元が白くなっていきます。今回は冬靴にアイゼン持参で正解でした。

山頂では風雪が強く、視界もないのですぐに赤岳頂上山荘に入ります。中は温かく快適で、夜は小屋閉めのイベントで盛り上がりました。消灯後に外を見ると天候が回復し、明るい月に照らされて、雪化粧した阿弥陀岳や横岳が幻想的に浮かび上がっています。甲府盆地の夜景が明るく、その上には富士山も見えました。

翌朝は快晴で日の出の時には北アルプスも赤く染まっています。遠く白山まで見えたのが印象に残りました。

下山は薄く積もった雪の地蔵尾根を慎重に下ります。再び行者小屋に立ち寄り、昨日は見えなかった赤岳、横岳、阿弥陀岳に見送られながらの下山となりました。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

上越・守門岳

すばらしい山岳景観を独占

黎明の空と雪のコントラストが美しい守門岳山頂(写真=小瀬村 茂)

朝日を受ける大岳(中央)と日本海に向かって伸びる守門岳の影(左奥)(写真=小瀬村 茂)

11月1日、晴れ

守門(すもん)岳登山口である保久礼へ続く林道は紅葉が真っ盛りで、山全体がブナ林の黄色一色に染まっていました。

車を走らせ保久礼駐車場に着くと、ここは紅葉のピークは過ぎ、落葉が進んでいました。

守門岳へは翌朝未明に山頂をめざしました。登るにつれて落ち葉に混ざって雪が現われ始め、その雪と登山道の薄氷に足をとられ、大幅に時間をオーバーしての登山となりました。

さらに、途中の青雲岳から守門岳までは湿原地帯の木道が大きく傾いて歩きにくく、足もとに注意しながらの油断できない歩きを強いられ苦労しました。雪山登山らしい装備が何もないなか、滑りやすい道を登り詰めようやく着いた守門岳山頂はすっかり雪に覆われていました。そこはすでに秋山の景色ではなく冬山の景色に一変していました。

日の出前の黎明の空はすでに真赤に色づいて、さすがにこの時間は山頂には自分以外誰ひとりおらず、すばらしい山岳景観をひとりじめでした。

(文=小瀬村茂/山岳写真工房)

信越・雨飾山

荒菅沢手前の台地上に携帯トイレブースが新設

雨飾山山頂と日本海(糸魚川市)(写真=増村多賀司)

左上:雨飾山布団菱/中:ブナ平はすっかり落葉/右上:笹平と焼山/左下:携帯トイレブース/中:登山道下部の紅葉/右下:荒菅沢の流れ(写真=増村多賀司)

11月3日、晴れ

登山口の駐車場はシーズン最後の雨飾山を楽しむ人の車が止まっています。大海川沿いにはまだ少しだけ紅葉が残っています。ブナ平付近はすっかり落葉して白い木肌が青空に映えて美しいです。

先日降った雪が残る山頂からは秋晴れの大展望が楽しめました。近くに見えている新潟焼山は真っ白です。足もとには日本海と糸魚川の街、西には冠雪した北アルプスが連なっていました。白馬から遠く槍ヶ岳まで確認できました。

なお、荒菅沢手前の台地上には携帯トイレブースが新設されています。登山口には無料の携帯トイレが置いてあります。さらにブース内には500円携帯トイレが置いてあるので、山頂までの往復で不安がある人は利用するといいでしょう。

その効果か上部の笹平のトイレゴミも減っていました。今週には冬の準備の為にいったん撤去されますが、来年の雪解けの後に再び設置されるとのことです。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

奥多摩・三頭山

富士山とブナの黄葉を楽しむ

初冠雪が溶けた蒼い富士山(写真=槙田幹夫)

黄金色に輝くブナの黄葉(写真=槙田幹夫)

11月2日、快晴

紅葉シーズンを迎え、武蔵五日市駅前には都民の森行のバス待ちで長蛇の列が。なんとか全員乗れましたが、立ったまま1時間の乗車はなかなか辛いものがありました。都民の森の駐車場のカエデが真っ赤になってちょうど見ごろです。今年は昨年と逆回りで、鞘口峠から三頭山に登り、ムシカリ峠を経由して三頭大滝に下るコースを歩きます。

森林館までの山道は秋の草花の名残がありました。トリカブトはまだ青い花をつけていて、カメバヒキオコシの紫色のガク、フッキソウの丸い実、リンドウの紫色の花、ゲンノショウコの御神輿型の種などを楽しみました。途中ブナの道から外れて尾根北側の登山道を歩きましたが、落ち葉が積もって滑りやすく、谷側が急斜面なので、下りで通る場合は細心の注意が必要です。

三角点のある東峰、いちばん高い中央峰を通って、見晴らしの良い西峰に登りました。快晴の天気で最高の景色です。南側には先週初冠雪したがその後雪がとけて夏の姿に戻った青い富士山が、北側には雲取山から続く石尾根の山々が連なって見えます。ツアーの登山客を含めて山頂は大にぎわいでした。

ムシカリ峠を経由して三頭大滝に下るブナの道は、その名の通り黄金色に輝くブナの黄葉が素晴らしいところです。色々な種類があるカエデ類はほとんど葉っぱを落としていて少し寂しいものがありました。

途中で数回沢を横切りましたが、先月までの雨で増水しているのでスリップしないように慎重に渡ります。三頭大滝は水量が多く、紅葉の中を滑り落ちる落差33mの滝は迫力がありました。

(文=槙田幹夫/森林インストラクター東京会)

裏丹沢・蛭ヶ岳

黄金色に輝くカラマツ林

姫次はカラマツ林の展望台。春の芽吹き、秋の黄葉と登山者を和ませてくれる。カラマツの黄葉は蛭ヶ岳の絨毯(写真=白井源三)

十五夜から二日目の月が富士山を照らしていた早朝。満月の天空で星の輝きは減っていた(写真=白井源三)

11月4日~5日、晴れ

丹沢山塊の中心点、蛭ヶ岳はどこから登ってもアプローチが長い山です。公共の交道手段が不便な相模原市緑区青根からのルートで、マイカー利用の登山をしました。林道ゲート前の駐車場か、各コースまでの林道脇に駐車するマイカー登山者が最近増加しています。

釜立沢からの東海自然歩道か手前の八丁坂の頭への各ルートは、それぞれ焼山から延びる丹沢主脈尾根に突き出ます。今日の釜立沢、東海自然歩道ルートは沢の流れと紅葉が光り、北斜面ですが明るい登山路でした。青根分岐から姫次まではなだらかな尾根で、丹沢三峰から蛭ヶ岳が木間越しに望ます。姫次はカラマツの名所。一帯は黄金色の輝きで迎えてくれました。原小屋平までもモミジやカラマツが秋を歌っています。地蔵平からの登山路はまさに落ち葉の絨毯でした。蛭ヶ岳直下の長い階段は最後の踏ん張りどころです。

この夜、山頂の蛭ヶ岳山荘にはアメリカの若いグループや台湾のグループが加わり、約100人の宿泊客で小屋が揺れるほどのにぎやかさでした。

夜の雨が止んだ翌朝、秋の高い空の下、360度の展望を堪能して下山しました。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

山梨県・大菩薩峠

牛ノ寝通りを歩いてきました

牛ノ寝通りは場所によって、カラマツ、カエデ類、ブナなど、いろいろな木が見られ、紅葉も様々な色合いを楽しめました(写真=石丸哲也)

上/雷岩からの眺め。富士山、三ツ峠、南アルプスの聖岳から北岳へ続くパノラマが雄大でした。広角でも収まらなかったので、2枚の写真をつないでいます。下左/雷岩から大菩薩峠への下り。下右/松姫峠で夕映えの富士山が見送ってくれました(写真=石丸哲也)

11月3日、快晴

1ヶ月前に大菩薩へ登ったとき、牛ノ寝通りの下山も考えていて、介山荘のご主人・益田真路さんからも「最近、牛ノ寝通りが人気」と聞いていたので取材したかったのですが、時間の都合で見送っていました。

年齢がバレますが、牛ノ寝通りを歩いたのは37年前に一度だけ。地形図を見ていて、奥多摩まで尾根続きであることに気づき、その年に結婚した妻と2人で初冬に歩いたのでした(私事で恐縮です)。途中で行き会ったのは、やはり夫婦連れの1組のみの静かな道で、葉を落としたブナ林のたたずまいなど、しみじみと心に残る山行でした。

そんなことを考えていたところへ「週刊ヤマケイ」11月2日号に山田哲哉さんがレポートを書かれていて、折良く快晴にも恵まれたので、急きょ、出かけてきました。

山田さんの行程のように、小屋平から牛ノ寝通りへ直行すればよかったのですが、最近では稀な好天が予想されたので、ついつい上日川峠バス停まで行き、大菩薩嶺、大菩薩峠経由で向かいました。期待にたがわず、富士山や南アルプス、八ヶ岳、さらには北アルプスの乗鞍岳まではっきり眺められたのですが、写真を撮りまくったため、時間が押してきてしまいました。早足で遅れを取り返そうと思うものの、牛ノ寝通りに入ると、今度は素敵な紅葉で、ブナやミズナラの巨樹が現れてきます。急ぎ足で通り過ぎるのはなんとももったいなく思われ、写真を撮っていると遅れを取り戻せません。

予定では大ダルミから小菅の湯に下山でしたが、このペースだと最終バスに間に合わない可能性があり「小菅の湯でビバークか」などと考えたほどでした。そこへ出会った「山と溪谷」読者のご夫婦が松姫峠まで車で来ており、乗せていってくださるとのことで、大ダルミから大マテイ山、鶴寝山を越えて、松姫峠へゴールイン。期せずして、山田さんと同じコースでの下山となりました。

紅葉は上日川峠~大菩薩嶺~大菩薩峠では葉を落とした木々のほうが目立ち、石丸峠~大ダルミは場所によりピークだったり、ピークをやや過ぎていたり、大ダルミ~松姫峠はほぼピークという感じでした。今週末は、全体にはピークを過ぎそうですが、まだ紅葉を楽しめると思います。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

鈴鹿・釈迦ヶ岳

秋の鈴鹿の充実した山行

釈迦ヶ岳の中尾根から望む艶やかな紅葉(写真=山口敬二)

ハライド山頂から、釈迦ヶ岳の眺望(写真=山口敬二)

11月4日~5日、4日曇りのち時々雨、5日快晴

のんびり鈴鹿の紅葉を愛でようと、釈迦ヶ岳へテントを担いで行ってきました。朝明渓谷の駐車場が起点ですが、庵座谷は台風による崩壊が危ぶまれたので中尾根を登ることにしました。晴れ間があるのに雨が降りだすというおかしな天気で、次第に風も強くなってきました。

2時間ほどで尾根上部まで登ると、ハト峰側の谷間の紅葉がみごとです。釈迦ヶ岳のピークはふたつ。頂上直下の迫力あるキレットを越えて登ったひとつ目の顕著なピーク(1097m)が最高点で、正式なピーク(1092m)はその先の低い方の頂です。滋賀と三重の県境稜線沿いのハト峰への分岐からも四日市側の谷間の紅葉がきれいに望めました。

ここから猫岳(1058m)を越え、のんびり写真を撮りながら羽鳥峰峠まで歩き、早々にテントを張りました。水場もすぐ近くにある快適なテント場ですが、三連休にもかかわらずこの日は私ひとりきりでした。風は終日吹き止まず、日が暮れるとさらに強さを増しテントを叩き続けました。

明け方、満月の月明かりは異様なほどでした。夜が明けると雲ひとつない快晴。依然、風は鳴り止みませんが、まだ誰も上がって来ない清々しい稜線は、金山、中峠、水晶岳(954m)、根の平峠と渡り歩く朝のプロムナードです。そして根の平峠から1041m地点まで登って岩の上に立つと、鈴鹿山脈の大展望が広がりました。ハライドの分岐からは、白い砂礫の上に大きな露岩が重なり合った山容が印象的な国見岳(1170m)までピストンしました。山頂からはこれまた素晴らしい絶景が望めます。伊吹山は霞んで見えませんでしたが、御在所岳までは指呼の間。心行くまで眺望を楽しんでから引き返し、伊勢湾を見下ろす岩の上でお昼にしました。

先ほどの分岐を今度はハライドへと向かいました。ここは結構ハードな下りとハライドへの登り返しが応えます。しかしハライド山頂(908m)からは昨日の釈迦ヶ岳を真正面に望み、二日間でたどってきた稜線の絶景が広がり大満足です。

麓の朝明渓谷の駐車場までは1時間ほどの下りで、標高700~800mの紅葉の盛りを写真に収めながら秋の鈴鹿の充実の山行を終えました。

(文=山口敬二)

岡山県・県立森林公園、霧ヶ峯

紅葉は既に終盤、お陰でたっぷりの落ち葉の絨毯を踏みしめることができました

ブナ林の落ち葉を踏みしめる(写真=舩越 仁)

千軒平より大山東壁を遠望する(写真=舩越 仁)

11月1日、快晴

10月末に台風がふたつも訪れては、折角の紅葉もたまったものではありません。歩き始めのカラマツ園地もすっかり落ち葉を敷き詰めた遊歩道になっていました。登るにつれてブナ林に代わるとフカフカの絨毯になり、踏みしめるカサカサ音がとても心地よく、あちらこちらではしゃぎ声が聞こえます。

奥ブナ平を過ぎ、鳥取県境尾根手前の根曲がり竹に小さなリボンが結んであります。ここから森林公園を東にそれ、20分ほどヤブ漕ぎをすると、3等三角点霧ヶ峯に着きます。ここも今日のもうひとつの目的地なのです。ヤブが小さく刈り払われているものの展望はまったくない三角点にタッチして、元の森林公園に戻ります。この霧ヶ峯も冬季にはヤブは完全に雪の下となり、白い台地になるのです。

元に帰った私たちは1000~1100mの県境尾根をスズノコ平~もみじ平~千軒平と進み、秋晴れの終盤紅葉を楽しみながら、遠くの山々や日本海の眺望を満喫しました。

(文=舩越 仁/みつがしわ山の会)

鳥取県・大山

七合目から上は霧氷の花が咲き誇っていました

大山北壁、左奥が剣ヶ峰(写真=舩越 仁)

前日の薄化粧を踏みしめる弥山山頂(写真=舩越 仁)

11月5日、晴れ

3連休の最終日、それも快晴の天気予報と相まって、駐車場は最後の砦の第4にやっと入れるという大にぎわいです。北壁方向を見上げると上部は真っ白です。一合目あたりはまだまだ黄葉が楽しめるブナ林ですが、山頂の樹氷が楽しみです。私たちは高齢者組織の山の会なので普段は平日登山、今日のように小さな子供さん連れのファミリーや若者サークルと前後すると不思議に若返ったような気持ちになります。

七合目の草鳴社ケルンあたりの小枝にはエビの尻尾が朝日を受けて、まぶしくきらめいています。八合目の木道の階段部分には昨日の小雪の名残が凍り付いていて滑りやすく、また下山者も多くなり、狭くて滑る木道はすれ違いにとても気を使います。

大勢で順番待ちの頂上碑の前で記念写真を済ませ、超満員の避難小屋外の風裏でゆっくり昼食をとりました。

下山は行者尾根コースを元谷へ、青い空、白い北壁、紅葉の元谷の三段構図を描いていたのですが、逆光をうまく撮る写真技術がなく適いませんでした。

(文=舩越 仁/みつがしわ山の会)

愛媛県・銅山峰

旧別子から銅山峰へ

銅山峰と後方は西赤石山(1625.7m)(写真=西田六助)

①旧別子小学校跡の石垣 ②ダイヤモンド水:地下200mより自噴している。探鉱の折、その先端にダイヤモンドが取り付けられていたのでこの名前がある ③歓喜抗:元禄3年、初めて銅鉱石を掘り出たところである ④銅山越 峠のお地蔵さん(写真=西田六助)

10月31日、晴れ

いろいろな案内書には別子銅山で有名な「銅山峰」とあり、はて「銅山峰」とはどこだろうかと思いました。昭和38年に開業した角石原の山荘は「銅山峰ヒュッテ」です。文献やネットなどで調べると1429mの西山や銅山越などまちまちで一定していません。銅山峰は銅山越(1294m)周辺が銅採掘の中心となっていることから、これらの尾根筋を指しているという。

別子銅山は元禄3(1690)年から昭和48(1973)年に廃坑になるまで、300年近く栄えてきた旧別子の遺跡が数多く残っていて、当時を思い浮かべながら歩くとそのイメージが湧いてくると思います。

南側の日の浦の登山口から足谷川沿いに円通寺跡・接待館・測候所・小学校・劇場跡、病院など、苔むした石積みが往時を忍ばせてくれます。

ダイヤモンド水から少し谷沿いに登り、足谷川にかかる鉄製の橋を右に、左に3個目の橋の対岸に階段が見えます。寛永谷経由の道でこちらの方が明るく多くの登山者はこちらを通っているようです。橋を渡らずまっすぐに行くと目出度町から蘭塔場経由です。どちらを行っても時間的な差はありません。

両方の登山道が合流して歓喜坑へ。少し登ると三差路があり、真直ぐに登ると銅山越えへの近道で、左方に行くと平坦な牛車道となります。

銅山越には苔むした石垣の囲いの中に、昔から旅人を見守ってきたお地蔵様が迎えてくれました。この銅山越えを中心にした広い尾根筋が銅山峰で、高山植物である白いツガザクラやコメツツジの群落があり、5月ごろには可憐な花を見ることができます。

(文=西田六助/分県登山ガイド『愛媛県の山』共著者)

宮崎県・大崩山

岩峰群を飾る紅葉

袖ダキに立つ登山者(写真=池田浩伸)

りんどうの丘より、ワク塚尾根の紅葉を眺める(写真=池田浩伸)

10月26日、晴れ

前日は、祝子川キャンプ場コテージ大崩にテント泊をしました。今回は天気に恵まれ、アルプスにも負けないと思うほど素晴らしい満天の星空に感動しました。

登山当日はヘッドランプを頼りに大崩(おおくえ)山荘を目指しました。台風などの影響でしょうか、4月に訪れたときより倒木が道をふさいで通りにくい箇所もありました。

大崩山荘に着くころ、小積ダキが赤く染まリましたが、残念ながら短い時間でした。渡渉できるか心配だったワク塚渡渉ポイントは数回の飛び石で対岸までたどりつき、ここからが大崩山の登山開始です。

水場から急坂を登り始めると、ふたりの中年男性が疲れ果てた様子で腰を下ろして休んでいました。「昨日象岩のトラバースが怖くて通過できず、引き返す途中で日没になりビバークした。自分たち以外にも暗くなりかけた道を急いで下っていく登山者がいた」と話してくれました。暗い中を無理して下山しなかったことは賢明な判断だったと思います。

袖ダキ展望所からは、そびえ立つ岩峰群と染まりかけた紅葉を眺め、暖かな日差しに深呼吸。下ワク塚ではさらに高度感のある眺めを楽しみ、りんどうの丘では、先ほどまでいたワク塚尾根を眺めながらぜいたくな時間を過ごしました。

私より先に坊主尾根へ行った登山者が引き返してきて、「この先の道が通れなくなっています。」と話しかけてきました。水場の斜面が崩れたことは事前に知っていたので、ロープを持って先ほどの登山者と水場まで行ってみると、2mほどの長さで道がなくなっていました。小さな足場とホールドする岩もあったので、進み方を教えてロープで確保し、安全な場所まで渡ってもらいました。インターネットなどで、登山道の最新状況を事前に調べておくと慌てずに済んだかもしれません。

小積ダキでは、コーヒーを飲みながら象岩周辺の紅葉を楽しんでから、連続するハシゴを慎重に下って坊主尾根渡渉ポイントにつきました。前回グラグラしていたハシゴもキレイに固定され、不安なく下ることができました。ここでの徒渉は靴を脱いでヒザまで水に浸かりながら対岸へ渡りました。

なお、大崩山は難易度が高い山です。初心者の方は、信頼できるリーダーの同行が望ましいと思います。

(文=池田浩伸/登山ガイド)

裏磐梯・小野川不動滝、小野川湖畔探勝路

落葉の樹間から思いがけない山々が見えました

水量豊富で迫力満点の小野川不動滝(写真=葉貫正憲)

厚く敷きつめられた落葉の遊歩道(写真=葉貫正憲)

11月2日

パークボランティアで小野川不動滝・小野川湖畔探勝路を歩いてきました。

不動滝の駐車場前にある鳥居からスタートです。すでに大部分の樹木が落葉し、フカフカの落葉を踏みしめて歩きました。道端の植物・冬芽などを探しながら歩きましたが、40分ほどで不動滝に到着。迫力満点の水量で落ちてくる姿を対岸の橋から眺めたり、しぶきのかかる滝下へいったり、しばらく滝に見入りました。

滝から小野川湖畔探勝路に進み、背丈の高い樹林の中を歩きます。ここはかつて材木運搬のために作られたトロッコ道跡です。その痕跡が沢を渡る橋に築かれた石垣に見ることができました。

ほとんど落葉していましたが、モミジ・カエデの類は所々であざやかな赤や黄色を見せ、そんななかにも変わりもののヤマハンノキは青々とした緑色の葉を見せていました。

林の中から樹林越しに磐梯山が顔を出したところで昼食。しばらく休憩した後、再び歩きだしましたが、梁部山の南側の裾を蛇行しながら進むので、なかなか先に進んだようには感じられません。6kmほどの行程でしたが、ぬかるみ箇所が多く、歩きにくかったです。

不動滝から終点の曽原まで総行程約5時間でした。ここは遊歩道といっても甘くみることはできません。クマの糞があちこちに見られ、イノシシが荒し回った跡もたくさんありました。単独行動は控えて複数で歩き、クマ鈴なども携行した方がよいでしょう。

(葉貫正憲/福島県/70歳/よく行く山:会津百名山)

奥多摩奥秩父・雲取山

常に滑落の危険があることを肝に銘じた山行

雲取山山頂避難小屋横より、秀麗富士(写真=一寸木紀夫)

雲取山山頂から開放的な尾根道を望む(写真=一寸木紀夫)

11月4日~6日、晴れ

雲取山は東京都の最高峰で標高は2017m。本年は西暦2017年と同じということで記念登山が盛んだといいます。そのせいか、頂上には「雲取山西暦二千十七年記念」の角柱が立ち、鴨沢の登山道入り口に「標高2017m雲取山 西暦2017年の山」の標語とともにオブジェが飾られていました。

1日目は、奥多摩駅からバスで「鴨沢西」まで行き、そこから長い林道と短めの登山道でこの日の泊まりの「三条の湯」に到着。時間にして3時間ちょっと。薪の懐かしげなにおいとともに、温泉につかり身体はとても休まりました。深夜の月の真っ白い色は都会の月とは鮮やかさが違っています。

翌日の3時間の登山道は、林を抜け出してみるとそこは山梨県に属する頂上といえる場所のようで「山梨県百名山」の丸柱も。少し先の頂上にはいくつかの標柱がありましたが、その中でも「明治十五年十二月内務省地理局」とある一等三角点の石柱は貴重な文化財でしょう。

「鴨沢」に向かう下山道は、登ってきた三条の湯からの道とは異なり、開放感のあるなだらかな尾根道でとても歩きやすかったです。七ツ石山までは雲ひとつない空の下、気持ちよく、常に富士山を望むことができました。登山道は一貫して歩きやすいものでした。

しかし、頂上までの道はいずれも長く、また、初日に林道を歩いているときに、救急車、パトカー及び緊急自動車に追い抜かれました。林道終点で滑落した人を収容したようです。おおむね安全な道ですが、常に滑落などの危険はあると肝に銘じた次第です。

(一寸木紀夫/東京都/65歳/よく行く山:八ヶ岳、北アルプスなど)

高尾周辺・大垂水峠~草戸山

南高尾山稜から東高尾山稜へ

この日いちばんの眺め、見晴台より丹沢方面(写真=葉山美和)

まだ緑が多い、黄葉のトンネル(写真=葉山美和)

11月5日、晴れ

週末ごとにやって来る台風のため、久しぶりの山歩きとなったこの日、色づき始めた南高尾に行ってきました。混雑した高尾山口駅を後にして、バスで大垂水峠に向かいます。

静けさを取り戻した山道の途中で、ビーチサンダルとわらじの間の子みたいなサンダルを履いた女性三人に出会いました。聞けば見た目どおり「ワラージ」だとか。軽く走れるのだそうです。

私も足どり軽く、緑や黄、時々赤の木々の道を進んで見晴台に到着。富士山はやや雲がかかっていましたが、津久井湖や丹沢の山々の眺めのよさに早々とお昼休憩にしました。

要所要所にベンチや可愛らしいリュック掛けがあり秋の遠足気分が味わえました。

三沢峠からは東稜に入ります。こちらの紅葉はこれからのよう。草戸山からはアップダウンを繰り返し高尾山口駅に戻ってきました。

(葉山美和/千葉県/よく行く山:中央線沿線の山、奥高尾)

奈良県・観音峰、みたらい渓谷

紅葉には少し早いものの

遠くに青く裾野を広げる金剛山と大和葛城山(写真=小林昭生)

エメラルドグリーンに輝く山上川と小さな滝(写真=小林昭生)

11月6日、快晴

朝から雲ひとつない絶好の秋日和、1時間足らずで行ける観音峰(1347m)とみたらい渓谷のもみじ狩りに出かけました。

山上川に架かる吊り橋の足もとは霜で真っ白になっていました。夜間に冷え込んだためでしょう。

吊り橋をわたると登りが始まります。「観音の水」の水場を過ぎると、第1展望台がもうすぐです。左に20mほど進んだ展望台からは弥山や近畿最高峰の八経ヶ岳が望めますが、成長した木々が邪魔をして、思ったほどの展望はありません。

登山道を中ほどまで登ってくると「観音平」と呼ばれる休憩所があり、小広い台地を囲むように周囲のモミジは赤く色付いてこころ癒されました。

急坂を終えると観音峰展望台、360度の展望が開けます。青空のもと40kmほど先になる金剛山、大和葛城山まで見渡すことができました。

登山口近くのみたらい渓谷分岐点まで戻り、ここから1.6kmで滝が連続するモミジの名所です。渓谷沿いの細い道は、大勢の観光客でにぎわっていました。

紅葉には少し早いようでしたが、快晴に恵まれた気持ちのよい一日でした。

(小林昭生/奈良県/76歳/よく行く山:金剛山系はじめ関西一円の山々)

週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

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●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

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●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

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「お父さん 登山道具を 片付けて」

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