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今週末の「山のワンポイント天気」

先日、お天気ハイキングで八ヶ岳の北横岳へ行ってきました。当日は快晴。この上ない登山日和でしたが、観天望気講座を行うには少し物足りない天気に。

そんな中でも、稜線から山麓を見下ろし、逆転層で頭を押さえつけられた下層雲の広がりや、それが日中消えていく様子など、晴れた日ならではの雲の様子が観察できました。また、樹氷が溶けて水滴が輝いている様子や雪と青空のコントラストなどが印象的で、穏やかな冬山をのんびりと満喫できました。

(文責:河野卓朗)

さて、今週末の天気ですが、27日(土)は冬型の気圧配置が続くため、北日本~西日本の日本海側の山岳を中心に天気が崩れる見込みです。28日(日)は北日本中心の冬型となり、また日本海の気圧の谷の影響も受ける見込みで、日本海側の山岳を中心に天気の崩れるところが多くなりそうです。西日本も東シナ海の気圧の谷の影響で、雲が広がったり天気の崩れるところがあるでしょう。最新の気象情報をチェックして、山へお出かけください。

(文責:渡部 均)

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2018年度のヤマテン主催講座の日程が決まりました。詳細などにつきましてはこちらをご確認ください。

2月3日(土)と4日(日)に、八ヶ岳の赤岳鉱泉にて、第8回アイスキャンディフェスティバルが開催されます。猪熊隆之のお天気講座のほか、馬目弘仁さんによる山トークショーやアイスクライミングの体験、長野県警による冬山安全登山講習会など他にも盛りだくさんのイベントです。詳細につきましてはこちらをご覧ください。

2月24日(土)には、霧ヶ峰の車山で、日帰りで空見ハイキングを行います。冬の霧ヶ峰は晴天率が高く、晴れると八ヶ岳ブルーの青空と純白の大雪原が迎えてくれます。また、中部山岳の真ん中に位置するため、南北、中央アルプス、八ヶ岳、富士山などの大展望が得られます。中部山岳の山域ごとの気象特性を学びます。詳細などにつきましてはこちらをご確認下さい。

また、2月25日(日)には、東京で「山のリスク解決講座(山の天気&地図)」が開催されます。猪熊隆之による山の天気入門講座と、地図読み講習会を併せてに開催する机上専科です。山岳ライター 佐々木亨さんと猪熊隆之のセッションもあります。詳細などにつきましてはこちらをご確認下さい。

皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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「山の天気予報」(月額324円)

コーヒー1杯分のご利用料金で、全国18山域の山頂天気予報や大荒れ情報、予想天気図、ライブカメラ、雨雲レーダー、観天望気講座などが1ヶ月使い放題。メールでの天気予報配信登録もおこなえます。サービスの詳細やご登録方法につきましては、下記URLでご確認ください。

https://i.yamatenki.co.jp/

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2015年10月29日配信の週刊ヤマケイ通巻163号より連載してまいりました、ヤマテンによる「今週末の山のワンポイント天気」は今回をもちましていったんお休みとさせていただきます。ヤマテンの猪熊隆之さん、河野卓朗さん、渡部均さん、小林充さんには長年にわたって登山者のための情報をお届けいただき、本当にありがとうございました。また読者の皆様のご愛顧にも感謝申し上げます。

(佐々木 惣/週刊ヤマケイ編集部)

新妻喜永写文集『山は斜光線』(新妻喜永)

連載第8回(著者=小林千穂/山岳ライター・編集者)

新妻喜永写文集『山は斜光線』(山と溪谷社) 山岳写真の第一人者として知られる著者の写真と文は、いまも多くの人を魅了してやまない

30年たってもなお、みずみずしさをたたえる本

私が山岳写真家・内田修さんのアシスタントをしていたころ、その仕事部屋で見かけたのがこの本との出会いだ。ちょっと薄暗い仕事部屋の、机の右に置かれた書棚に差し込まれていた。きれいに整理され、数知れず並ぶ山の書籍のなかで、この本に目がいったのは、装幀の美しさが大きかったように思う。書棚から本を抜き出すと玉虫色に光り、それも斜めに配置されたタイトルの表紙に驚いた。中を開くと著者である新妻喜永さんのサインが入っている。

本のことを内田さんに聞くと「小泉弘さんのデザインだからね。そりゃきれいだよ。新妻さん? ウェアとかのロゴを片っ端から取って、ノーブラとか言うちょっと変わった人」とぶっきらぼうに教えてくれた。「35(さんごー・35㎜フィルム)の魔術師」と言われた、山岳写真家の新妻善永さんが「ノーブラ」?

風景の細かい表情を見逃さずに写しとる作風から、勝手にまじめで寡黙な方というイメージを抱いていたが、そのギャップに俄然興味が湧き、サイン入りの本を汚さないように気をつけながら、食いつくように読んだ。

この本が出版されたのは1988年。私がはじめに本をとった時点でも十数年が経っていたぐらいで、30年も時が経過した今は絶版となっている。書店で入手しがたい本を紹介するのは気が引けるが、それでもここに書くのは、それだけおもしろいからだ。

~~門外漢の写真家ふぜいが「ことば学」などふり回したりして、身のほど知らずもいいとこだが、「ことばは生きもの」である。~~という文章からはじまる「ことばごろし」は山岳写真の作られたイメージを皮肉った内容なのだが、小気味がよく、最後は落語のような落ちが付く。また、某写真誌にグラフとして見開きで掲載された紅葉の涸沢の写真に、魚の缶詰めが写っていたという、あってはならない失敗談を書いた「罐入り写真」は笑いがこらえられない。

「山岳写真家評論家」をはじめ、本書のいたるところに、当時、山岳誌などで活躍していた山岳写真家たちが登場する。内田さんのアシスタントをしながら、私も山で写真を撮ろうか、いや自分にはとても無理だ、などと密かに将来を考えていた私にとって、山岳写真界の大御所が登場するこの本のなかの世界が興味深かった。ちなみに、たびたび本の中に登場する山本和雄さんは内田さんの師匠である。

30年経ってもみずみずしく、ひと昔前の山の雰囲気が味わえ、そして、ちょっとだけドロドロとしていた山岳写真の世界を垣間見られるこの本が、絶版のまま埋もれてしまうのがとても惜しく、ぜひとも復刻してほしいと願うのだが……。

ちなみに「魔術師」についても「ノーブラ」についても、本書で新妻さん自らが語っておられるので、機会があればぜひ読んで笑っていただきたい。

信州の山岳遭難現場より

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。

1月23日に第100号が配信され、昨年12月22日から今年の1月1日にかけて長野県で発生した遭難事例6件が掲載されております。

また100号を記念して、新旧編集長と長野県警察山岳遭難救助隊の隊長、副隊長による鼎談も掲載されております。

下記URLよりぜひご覧ください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/documents/n100_20180123.pdf

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・12月22日、四阿山から根子岳へ縦走中の56歳男性が積雪と疲労のため行動不能となり、県警ヘリに救助されました。

12月22日、根子岳山頂付近の状況(写真=長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)12月28日付より)

12月23日、西穂高岳における遭難現場の状況(写真=長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)12月28日付より)

・12月23日、北アルプス西穂高岳独標付近で、59歳の女性が下山中に上高地側へ滑落、腰椎骨折などの重傷を負い、県警ヘリに救助されました。

・12月27日、八ヶ岳連峰東天狗岳で、48歳男性と48歳女性が強風と降雪のため行動不能となりました。翌28日に根石岳付近で発見され、県警ヘリで救助しましたが、その後、ふたりとも死亡が確認されました。

・12月31日、北アルプス白馬乗鞍岳でバックカントリースキーなどで入山した42歳男性、36歳女性、34歳女性が道に迷い行動不能となり、翌1日に県警ヘリに救助されました。

・12月31日、北アルプスの蝶ヶ岳から燕岳へ向けて稜線を縦走していた35歳男性が燕岳蛙岩付近で疲労により行動不能となりました。遭対協隊員により山小屋へ収容され、1月2日、県警ヘリに救助されました。

・1月1日、八ヶ岳連峰横岳で石尊稜を登攀中の67歳男性と68歳女性が疲労のため行動が遅くなったことから、仲間が救助を要請。翌2日、茅野署員及び諏訪地区遭対協隊員が2名を発見して、付近の山小屋へ収容しました。

(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)

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下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

(文=週刊ヤマケイ編集部)

第8回 日本山岳遺産サミットのご案内

2月25日(日)開催、特別講演は「日本の山とシカ問題」をテーマに

今年度の認定団体「入笠ボランティア協会」による、地元小中学生との外来種除去作業の様子

日本山岳遺産基金では、未来に残したい日本の豊かな自然環境や、人と自然の関わりを有する山岳地域を「日本山岳遺産」として認定し、登山道整備や環境保全活動を行う団体に対して助成金を拠出し、支援しています。

また、年に一度「日本山岳遺産サミット」を開催し、当基金の一年間の活動報告、日本山岳遺産認定地および認定団体の発表、自然保護などをテーマとした特別講演を行っています。

第8回目となる今年度の「日本山岳遺産サミット」は、2月25日(日)に開催。全国6箇所の新たな認定地の紹介のほか、ニホンジカ研究の第一人者、麻布大学いのちの博物館上席学芸員の高槻成紀先生をお迎えし、「日本の山とシカ問題」と題した特別講演を行います。

開催概要は下記の通りです。参加ご希望の方は、日本山岳遺産基金のウェブサイトから申し込みフォームより事前にお申し込みください。

ニホンジカ研究者の高槻成紀先生

■サミット概要

第8回 日本山岳遺産サミット

日時=2018年2月25日(日)13時30分~16時(開場13時)

会場=インプレスグループ セミナールーム(東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビルディング23階)

第1部 2017年度認定地・認定団体発表

第2部 特別講演「日本のシカ問題を考える(仮)」

麻布大学いのちの博物館上席学芸員・高槻成紀先生

定員=80人 参加費=500円(参加費は「日本山岳遺産基金」への寄付として預かり、基金の活動に活用)

*会場の都合により事前登録が必要

申込方法=日本山岳遺産基金のウェブサイトより

http://sangakuisan.yamakei.co.jp/news/info_summit2018.html

申込締切=2018年2月16日(金)

*定員に達した場合、締切前に受付を終了します

問い合わせ先=日本山岳遺産基金事務局(山と溪谷社内)☎03-6744-1900(代)

主催=日本山岳遺産基金

山と溪谷社の書籍が、Kindleストアで開催中のエッセー・随筆フェア対象に

Amazon.co.jpはKindleストアにて、「50%OFF以上」エッセー・随筆フェアを開催中です。このセールでは、500タイトル以上の「エッセー・随筆」が通常時の半額で販売されており、山と溪谷社からは15点の電子書籍が選出されました。

フェア選出された電子書籍には、岡田喜州が昭和三十年代の日本各地の山・谷・湯・岬・海・湖などを歩き、旅の記憶をまとめた傑作紀行文学『ヤマケイ文庫 定本 日本の秘境』や、不世出の釣り師・ツチノコ博士と呼ばれる山本素石の渓流釣り文学『ヤマケイ文庫 山釣り』などが通常時の半額にて販売されています。

この他にも『諸国名峰恋慕 三十九座の愛しき山々』や『ヤマケイ文庫 山なんて嫌いだった』、『ニッポンの山里』など数々の名作が選出され、通常時の半額で購入可能です。

セール期間は2月1日までのようですので、おトクなこの機会をお見逃しなく。

『素晴らしき山々 谷川岳から二百名山へ』

YAMAKEI CREATIVE SELECTION

YAMAKEI CREATIVE SLECTION『素晴らしき山々 谷川岳から二百名山へ』著者=松下正信/1月12日発売/2200円+税/四六判/312ページ/ISBN 978-4-635-88660-4

半世紀にわたる著者の真摯な登山の記録

昭和34年(1959年)、谷川岳の衝立岩正面壁が初登攀された年、著者が在学していた高校では山岳部の活動が活発で、山岳部員である級友たちの自慢話にひきこまれ、著者も山登りを始めるようになりました。17歳の著者が初めて自分の意志で登ったのは大菩薩嶺。その後、東京近郊の山々に登り、丹沢・水無川の沢登り、富士山、八ヶ岳、冬の金峰山を経て、谷川岳へ通い詰めるようになります。

本書は昭和36年(1961年)11月に著者が一ノ倉をめざすところから始まり、日本百名山、二百名山はもちろん、岩稜のバリエーションルートや厳冬期の登山、モンブランやマッターホルン登山にいたるまで、著者が半世紀にわたって登り続けてきた山の魅力が描写されています。

本書がほかの山行記と一線を画するのは、その真摯な筆致。苦しかった山や失敗した山、そして平成26年(2014年)10月、谷川岳で重傷を負いヘリで救出された遭難事故にいたるまで、丁寧にしたためられており、多くの読者の心を打つに違いありません。

日高山脈・日勝ピーク

復旧した国道から、深雪の斜面へ

ピークに向けて登る同僚(写真=谷水 亨)

日勝ピーク北斜面と十勝平野(写真=谷水 亨)

1月17日、晴れ

北海道を東西に分ける日高山脈を貫く国道274号線は2016年9月の台風のため、通行止めになっていました。1年2ヶ月の間、日勝付近の山々に登れなかったのですが、昨年10月末に復旧。雪も充分に積もったので、職場の同僚と日勝ピークを目指し、南斜面を2本半と北斜面(帰路)を滑ってきました。

日勝ピークは、日勝峠の駐車帯から標高差425mも登ればピーク(1445m)にたどり着きます。凍えるような吹きっさらしの暴風のなかを登り、北斜面を滑り降りれば、それで体も冷えきってしまいます。この日はマイナス14度と冷えていますが、無風のため暖かくさえ感じました。

日勝ピークに立つと、さっそく南斜面1250m付近まで滑走。二度登り返し、滑走面を変えながら深雪を楽しみます。南斜面はふたりの独占でした。そこからまた国境線まで登り、最後は北斜面を滑走して駐車場まで。南斜面は20cmほどの深雪で、北斜面の下部はハイマツの頭が出ていますが、東側の沢沿い付近は滑走には充分でした。

ちょうどこの時間に日勝ピークを経由し沙流岳まで往復してきたスノーハイクの女性二人組がスノースライダーなる遊具で滑走を楽しんでいました。厳しい北海道の冬を元気いっぱいに楽しんでいる姿は、私たちにも楽しさを感じさせてくれました。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

みちのく潮風トレイル

新地町エリアを歩いてきました

鹿狼山を望む(写真=中村重明)

鹿狼山山頂より、蔵王方向(写真=中村重明)

1月20日~21日、20日快晴のち曇り、21日晴れのち曇り

常磐線新地駅からスタートし、阿武隈山系の鹿狼山(かろうさん・430m)に登り、新地駅の一駅先(南側)の駒ヶ嶺駅まで歩く行程で、鹿狼山山麓の鹿狼の湯泊の1泊2日の行程です。

初日は新地駅から新地城址、右近清水(平成の名水百選)、真弓清水などを経て、「蔵王眺望コース」から鹿狼山に登りました。西側の雪で真っ白の蔵王の景観を楽しみにしていましたが、雲が少しかかっていた上、午後の逆光の時間帯だったこともあって、期待していたほどの眺望は得られなかったものの、それでもなかなかの景観でした。逆に東側には、さほど期待していなかったのですが、太平洋岸の素晴らしい展望が拡がっていました。

鹿狼の湯でいいお湯と品数豊富で美味しい食事(特に締めのお蕎麦が絶品)を楽しんだ翌日、まずは日の出の時刻(6:48)に合わせて鹿狼山に再度登りました。ただ、日の出前の上空はきれいな星空でしたが、水平線には雲があり、海からの日の出は見られませんでした。また西側の蔵王は、昨日午後と異なり逆光ではなかったものの、くっきりした展望は得られずじまいでした。

鹿狼の湯に戻り、入浴、朝食、荷造りを済ませた後、この日は子眉嶺神社(こびみねじんじゃ・馬に関わる伝説あり)、新地貝塚(国の史跡に指定とのことながら、一帯は畑で、場所の表示や解説の掲示など何も無し)、白幡のイチョウ(福島県指定天然記念物)などを巡って、駒ヶ嶺駅にゴールイン。鹿狼山の登り下り以外はアップダウンは少なく、名所や史跡も多い楽しい行程でした。

(文=中村重明)

北八ヶ岳・北横岳、縞枯山

満天の星空と樹氷とブロッケンと

七ッ池から見る星空と流星(写真=増村多賀司)

左上:北横岳山頂からのブロッケンと北アルプス/右上:北横岳ヒュッテの島立夫妻と/左下:朝の北横岳北峰(マイナス19℃)/右下:縞枯山の樹氷(写真=増村多賀司)

1月13日~14日、曇りのち雪、のち晴れ

寒波が来て樹氷が発達した北横岳と縞枯山に行ってきました。

初日は北横岳ヒュッテに宿泊。夜はマイナス19℃と冷え込みましたが、暖かい山小屋はありがたいです。午後から夜にかけて新雪が20cmほど積もりましたが、夜中には晴れたので七ッ池へ満天の星空を見に行きました。

翌朝、山頂へ。日の出が見られ、蓼科山の向こうには北アルプスも望めます。朝食のために小屋へ戻ろうとすると、北アルプス方面にブロッケンが現れ、夢中でシャッターを切りました。

この日は縞枯山に足を伸ばします。私自身20年ぶりに行きましたが、縞枯の枯れの部分が稜線に到達しているようで、以前と比べて展望も広がっており、縞枯現象を実感した瞬間でありました。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

北八ヶ岳・北横岳~三ツ岳

北八ヶ岳と雪山の楽しさを満喫

北横岳山頂直下にて。南八ヶ岳が大きく見えた(写真=山田哲哉)

三ツ岳の下り(写真=山田哲哉)

1月20日、晴れ

北横岳には標高2200mまでロープウェイがかかり、氷点下の世界まで一気に運んでもらえます。この山には「体力も根性もないけど雪山初体験」というタイトルをつけて、雪山一年生の雪山講習で毎年登っています。

この日も一緒に登ったのは、雪山登山靴を履くのも初めての人ばかり。ロープウェイ山頂駅の休憩所で登山靴の履き方や雪山装備の装着を練習してから、快晴の空の下、まぶしい坪庭に向かいます。

霧氷や樹氷の森に感激し、北横岳ヒュッテからはアイゼンで登りました。この日は気温も高く、たくさんの登山者が登っています。

山頂だけ森林限界を越えた北横岳からは背後の八ヶ岳連峰の大きな広がりが望め、また蓼科山は眼前にあります。槍・穂高、南アルプスもばっちり見られ、感激です。

三ツ岳に向かうと人影は途絶え、トレースも薄くなりました。三ツ岳Ⅰ峰の岩場をおそるおそる登り、大穴が所々に開く溶岩台地の上をたどります。急激に下ってシラビソの原生林のなか、雨池山を登り返して、雨池峠から坪庭へ戻りました。

(文=山田哲哉/山岳ガイド「風の谷」主宰 (株)KAZEエクスペディション顧問 山岳ガイドⅡ)

北八ヶ岳・北横岳

年明け最初の雪山山行にと、一行四名で北横岳山頂を目指しました

夕暮れ迫る蓼科岳(写真=板橋 励)

朝焼けの南八ヶ岳(写真=板橋 励)

1月14日~15日、晴れ

初日は天候に恵まれ、日曜日ということもあり、坪庭周辺は雪上トレッキングを楽しむ登山者が多く見受けられました。樹林帯を抜ける登山道にはトレースもしっかり付いており、私たち一行は縞枯山や三ツ岳を右手に眺めながら北横岳南峰へ向かいます。山頂では、夕日に染まった円錐形の蓼科山が、そして遥か先には真っ白な北アルプスの稜線が連なり、新年を祝福しているかのように広大なパノラマを見せてくれました。

翌朝の頬を刺す気温はマイナス14度。日の出前に北横岳ヒュッテを後にして北横岳北峰へ上がり、朝日に輝く樹氷の森の先に、霧が流れる南八ヶ岳の峰々を一望することができました。

(文=板橋 励/山岳写真同人四季会員)

八ヶ岳・硫黄岳

コンディション良好の硫黄岳

峰ノ松目から硫黄岳(写真=川﨑拓兵)

硫黄岳山頂はいつも強風のため雪がない(写真=川﨑拓兵)

1月20日~21日、晴れ時々曇り

年末から年明けにかけて、何度か八ヶ岳エリアにクライアントと出かけるも、腰ラッセルを強いられたり、強風が続いて稜線に上がれなかったりと敗退続きでした。しかし、この日は久々に天気や積雪のコンディションがよく、硫黄岳の山頂に立つことができました。

初日に赤岳鉱泉小屋まで入り、快適な空間にて宿泊。翌朝は赤岩の頭まではほぼ無風快晴で、トレースもしっかりありました。稜線をたどって硫黄岳山頂に出ると少々風がありましたが、眺望最高の気持ちのよい稜線歩きでした。山頂滞在時間は短くしましたが、快適な下山で無事に美濃戸まで下りることができました。

美濃戸山荘から下はアイスバーンが多く、特に下りはチェーンアイゼンがあると、とても快適に下れるでしょう。

雪山は天気よしの場合と悪しの場合では雲泥の差があります。強風や気温、積雪コンディションなど様々な状況に、ある程度は対応できる技術と体力を備え、そして万全な計画で入りましょう。

(文=川﨑拓兵/オフィスカワサキMountainGuide(やまんど塾))

上信国境・四阿山

快晴・微風、見事な樹氷満載の四阿山

八合目からはクラストした雪原を踏みわけて樹氷に覆われた山頂へ(写真=奥谷 晶)

樹氷をまとった四阿山山頂。樹氷はまだモンスターへの成長の途上(写真=奥谷 晶)

1月20日、快晴

大荒れ情報もある低気圧と寒気が接近する前の週末、移動性高気圧に覆われてどの山域も絶好の登山日和になったようですが、四阿山(あずまやさん)も快晴・無風に恵まれ、みごとな樹氷をまとった山頂に立つことができました。頂上付近ではさすがに微風が吹いていましたが、心地よいほどです。

山スキーヤーもふくめて多くの登山者で、立派なトレースができており、牧場から樹林帯の半ばまではツボ足で、傾斜の強まるところでスノーシューを装着し、八合目からの雪原も快適でした。ブルースカイを背景に、発達途上ながらさまざまな雪のオブジェへと変身していく樹氷群を縫うように登った山頂では、360度の大展望が待っていました。

(文=奥谷 晶)

秩父・宝登山

青空に映えるロウバイの丸いツボミ

鈴なりのツボミが可愛らしかったロウバイ(写真=石丸哲也)

左から時計回りに、西ロウバイ園から武甲山、秩父盆地を望む、宝登山神社奥宮のお犬さま、フクジュソウ、マンサクの花(写真=石丸哲也)

1月16日、晴れ

宝登山は荒川の上流、岩畳やライン下りで知られる長瀞の渓谷に望んで頭をもたげています。標高497mの低山ですが、秩父三社のひとつ宝登山神社をまつる霊山であり、ロープウェイや花木園が整備され、観光に親しまれてもいます。宝の登山と読める縁起のよい山名で、新年の登山にも人気がありますが、この時期の楽しみは花木園のロウバイです。ロウバイは蝋梅、臘梅などと表記されるロウバイ科の花木で、名前のとおり蝋のように光沢がある、黄色の花を真冬に咲かせ、芳香を漂わせます。

宝登山のロウバイ園は早くから咲く西ロウバイ園、遅めの東ロウバイ園からなり、計3000本以上、全国有数の規模を誇っています。出かけた16日ごろは、例年なら西ロウバイ園が見ごろに入る時期で、また、今年は開花が早く12月下旬には一部、咲き始めていたそうです。しかし、ここのところの寒さで開花が遅れ、当日は咲いている木もあるものの、全体には二~三分咲きの感じでした。

長瀞観光協会のサイトに開花情報があり、まだ早いことはわかっていましたが、カルチャースクールの企画で日程を遅らせることができず、予定通り出かけました。しかし、たくさんの丸いツボミが青空に映える姿がとても可愛かったです。これまで見ごろのときしか登っていなかったので新鮮な眺めでした。マンサク、フクジュソウも咲き始めていて、冬の花に満足のいくハイキングとなりました。

宝登山に鎮座する宝登山神社は秩父三社に数えられる、由緒あるもの。秩父から奥多摩には狼(お犬さま)を神の使いとする信仰があり、三峯神社や武蔵御嶽神社などでは狛犬のところに狼像が鎮座しています。宝登山神社も麓の本殿は通常の狛犬ですが、山頂の奥宮には狼が迎えてくれます。戌の年の初めの山歩き、ぜひたずねていきたいところです。

下山後は宝登山神社の参道に面した喫茶山草へ。こちらのツクシのパスタは和風だしのスープスパゲティで、味覚からも春を感じさせてくれます。まだメニューになかったのですが、注文に応じてくれました。大盛りの自家製漬物とコーヒー・紅茶がセットになって1000円で、コストパフォーマンスも高いです。

宝登山のコースは、秩父鉄道野上駅で下車し、長瀞アルプスから登るコースが人気です。今回は長瀞駅から氷池を経て、長瀞アルプスの野上峠へと登りました。氷池は長瀞名物、天然氷のかき氷に使う氷を採る池で、ちょうど氷を切り出しているところに出会いました。観光協会の開花情報では、22日現在、西ロウバイ園が五~六分咲き。早咲きの梅も咲き始めているとのことなので、今週末あたりから見ごろに入りそうです。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

奥秩父・金峰山

穏やかな山頂からの眺め

山頂から、夕暮れの南アルプスを望む(写真=山田哲哉)

帰りの林道にて、みごとなツララ(写真=山田哲哉)

1月16日~17日

奥秩父の王者・金峰山が本格的な雪山となった1月半ばに訪れました。山頂直下の森林限界に建つ金峰山小屋は、冬季の平日は閉鎖されていますが、今回は小屋主のご好意で食事付きにて泊めていただきました。

出発地点の金峰山荘・廻り目平は人っ子ひとりいない静けさの中です。この冬は寒さが厳しいものの12月になってからの降雪が少なく、アプローチの林道からスケート場状態。しみだした水もすべて凍りつき、あちこちで蒼氷のツララが並びます。

中ノ沢出合から山に入りました。入山者は少なくトレースは薄いのですが、鬱蒼とした原生林の雪の中をゆっくりと登ります。中間地点では、背後に大きく八ヶ岳と瑞牆山が素敵でした。この日は寒さが緩み、のんびり登れます。森林限界に出た所で、ストーブの煙が上がる金峰山小屋に到着。小屋からは正面に浅間山から八ヶ岳が、回り込むと八ヶ岳や中央アルプスの展望が見事です。翌日は朝から悪天とのことで、とりあえず一名を残して山頂へ。小屋番によると、11月末に小屋閉めで降りた時が一番雪が多く、今年になってからはほとんど降っていないとのこと。ラッセルもなく、岩の間は雪で埋まり、とても登りやすい状態でした。背後に広がる展望を楽しみながら登ります。そして山頂到着。360度の展望です。ただし、暖かいせいで空気の緊張感はなく、穏やかな雪の眺めが続きます。夕暮れに追われるように小屋に戻りました。日没ごろから強風です。

夜半まで満天の星だったのですが、翌日、強い風とガスのなかを再度登頂。昨日まで緑色だった斜面は樹氷や霧氷で真っ白に変身しましたが、視界はゼロ。五丈岩下に立ち、山頂へ、その後そそくさと小屋に下降し、降り出した小雪の中を下ります。早めに中ノ出合に降り、みぞれが降る林道を下りましたが、登りでも目についたツララがきれいでした。その後、本格的な雨になったあと、金峰山荘前に着きました。

(文=山田哲哉/山岳ガイド「風の谷」主宰 (株)KAZEエクスペディション顧問 山岳ガイドⅡ)

奥多摩・御岳山

新年の安全を祈願し氷の花を楽しむ

武蔵御嶽神社に参拝しハイキングの安全を祈願(写真=槙田幹夫)

小さくて優雅な形の氷の花シモバシラ(写真=槙田幹夫)

1月12日、快晴

寒波が襲来し、JR御嶽駅前の気温は氷点下6度とかなりの冷え込みです。バスとケーブルカーで御岳山駅まで上り、そこから御岳山頂の武蔵御嶽神社まで歩きました。神社で新しい年の安全を祈願し、大楢峠を通って奥多摩駅に下山します。

天気がよく、ケーブルカーの御岳山駅前の御岳平から都心のビル群や筑波山、さらに左手には女峰、男体、白根の日光連山が白く輝いて見えます。ロウバイのツボミが膨らみ2、3輪咲き始めていました。

御嶽神社手前の御師住宅(馬場家)は屋根の葺き替え作業が終了し、茅葺、檜皮葺の屋根が真新しかったです。その裏手の斜面に生えるカメバヒキオコシの茎に、氷の花が咲いていました。気温が低すぎて根の働きが落ちたのか、2~3cmほどの小ぶりのシモバシラで、優雅な形状をしていました。この冬は気象条件がよく、あちこちの山で氷の花を楽しめます。

武蔵御嶽神社に参拝してハイキングの安全を祈願してから、大楢峠を通って奥多摩駅に向かいます。大楢峠までの下り道は、凍結した箇所はなく軽アイゼンなどの滑り止めなしでも歩けました。なお、谷側の路肩が崩れて道が狭くなっている箇所や、山側から大石が落下して道を塞いでいるところがあるので、注意が必要です。

(文=槙田幹夫/森林インストラクター東京会)

南高尾山稜・中沢山~峰の薬師

新雪が積もったメルヘンの世界

中沢山手前のビューポイントからパノラマが展開。眼下に津久井湖、半島状の台地に旧津久井町、後方には丹沢山塊から石老山が広がり、富士山も顔を出す(写真=白井源三)

左:入山口より、津久井湖にかかる名手橋から新雪の名手集落と後方に南高尾山稜/右:峰の薬師にて通天橋から津久井湖、城山、相模原市街を見下ろす(写真=白井源三)

1月23日、晴れ

関東地方に降雪があった翌朝、津久井湖を隔てて南面に広がる南高尾山稜の中沢山を名手橋側から登りました。

橋を渡ると日の出前の対岸の名手集落の斜面は新雪がたわわに積もり、メルヘンの世界でした。東光寺前を過ぎて登山口がありますが、今日は寺横のゲート前から登山開始。上部で合流します。膝頭位の新雪ラッセルが心地よく、三井水源林の常緑樹林帯を詰めます。しばらく登っていくと、木間越に丹沢山塊が広がります。ジグザグに登ってベンチが置かれた休憩地で一息付きました。前面の樹林が伸びて展望が狭くなっています。

さらにジグザグを続けると稜線に出て、左折して展望のきかない中沢山に登り、引き返して、ワンピッチでビューポイントに到着。眼下に津久井湖、相模原市旧津久井の町並みが雪をすっぽりかぶった雪原となり、背後に丹沢山塊から石老山が広がり、白銀の富士山が顔をのぞかせていました。有志が製作したベンチも20cmほどの積雪です。

撮影の休憩後、峰の薬師に向かいます。いまだトレースは付いていません。西山峠前に設置されたテーブルも白い綿帽子をかぶっています。三沢峠前でやっと登山者とすれ違いました。東京電力の電波塔を過ぎると、峰の薬師が近くなってきます。境内よりも神社横の通天橋の方が格好の展望台となっています。眼下に津久井湖、右に城山がそびえ、雪の相模原市街の後方に横浜ランドマークが霞んでいました。

境内から表参道と東参道の下山コースがありますが、今日は東参道を上中沢へ下り、県道を歩いて城山公園水の苑地を散策して、城山高校前バス停に出ました。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

山梨県・岩殿山

迂回路の整備が終わり、縦走が可能に

このコースのハイライト、稚児落としの岩壁(写真=石丸哲也)

左/稚児落とし縦走途中で岩殿山を振り返る。右/鎖が付けられた岩場が登山のアクセントとなる(写真=石丸哲也)

1月20日、曇りのち晴れ

JR中央本線が大月駅へ近づくと、北側にドーム型の特徴ある岩山が見えてきます。この山が岩殿山で、富士山の眺めが素晴らしく、大月市秀麗富岳十二景に選定され、西へ向かう稚児(ちご)落としへの縦走コースは鎖場もあるなど、変化に富んで、人気が高い山です。最近では標高が東京スカイツリーと同じ634mということでも話題になりました。

昨年の8月、台風で登山道が崩落し、入山が規制されていましたが、12月7日に迂回路の整備が終わり、縦走可能になりました。私の著書では『関東周辺 週末の山登りベスト120』『駅から山登り 関東55コース』(ともに山と溪谷社アルペンガイドNEXT)でご紹介しています。コースがだぶらないよう、前者では稚児落とし縦走、後者では東の円通寺跡に下り、猿橋へ向かうコースとしています。円通寺跡コースはまだ通行禁止で、北側の神宮橋へ下るコースが整備されたとのことで、踏査のために出かけてきました。

大月駅から車道を岩殿山へ向かうと、登山口手前の駐車場は工事のため利用できなくなっていました。登山道に入ると、ほどなく崩落地手前で迂回路が右へ延びています。この道に入り、トイレを経て丸山公園・岩殿山ふれあいの館に出ます。ここも休館していましたが再開して、登山や観光のパンフレット配布、山岳写真家・白籏史朗氏の作品展示などがされています。水道がまだ復旧しておらず、トイレも利用できませんが、飲みものの自動販売機があります。

丸山公園から岩殿山へは、一部、崩落で立入禁止のところなどありますが、登山には支障ありませんでした。展望台は、足もとに大月市街の展望が開け、富士山の展望も素晴らしいのですが、当日は雲に隠されていました。岩殿山山頂から神宮橋へは、岩殿城本丸跡の説明板右側から下ります。道は細く、急ですが、要所に足場が作られているなど、整備されて下りやすかったです。神宮橋に下山後、この道を登り直すことを考えて、ちょっと鬱になりましたが、雑木林の雰囲気が好ましかったです。岩殿山山頂~神宮橋は標高差約250m、コースタイムは下り25分、登り40分ほど。神宮橋~円通寺跡は車道を10分ほどでした。

岩殿山に登り返し、稚児落としへ向かいます。途中、小規模な崩落がありましたが、安全な迂回路が整備されていました。2箇所の鎖場をこなし、稚児落としに着けば、谷を囲む岩場を見渡せます。岩殿山城が落城し、落ち延びる一行が、泣き叫ぶこどもが敵に知られることを危惧して、ここから投げ落とした伝承が地名の由来だそうです。

大月駅北側にある吉田うどんの店・吉田屋はメニューが豊富で、とても美味しいのですが、今回は神宮橋往復で遅くなり、閉店に間に合いませんでした。そこで大月駅前、国道20号に面したデイリーヤマザキへ。ここの赤飯のおむすびは甲州風で、小豆に甘納豆が使われています。これを買い、ちょっぴり甲州路の旅情を感じて、大月を後にしました。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

南房総・をくづれ水仙郷、津森山、人骨山

逸話になった山を訪ねる

スイセンのお花畑を散策するハイカーたち。子供の楽しそうな声が聞こえてくる(写真=伊藤哲哉)

津森山、人骨山にて(写真=伊藤哲哉)

1月21日、晴れ時々曇り

をくづれ水仙郷、津森山、人骨山を訪ねました。をくづれのスイセンは、最盛期は過ぎたものの、まだ芳香を放ち、キラキラと輝く花を楽しむことができます。

をくづれから30分歩くと津森山登山口です。登山口には大きな標識があり、迷うことなく登山道に入ることができました。陽に当たりながら登山道をゆっくり歩くと、小1時間で山頂に到着します。山頂には木花咲耶姫など3つの神様を祀る石碑を目にすることができ、大切にされてきた山であることがわかります。20mほど西側にある展望地からは房総の峰々のほか、遠くに三浦半島や富士山を眺めることができるようですが、この日は富士山を見ることはできませんでした。房総の峰々を山座同定した後、下山です。

舗装道路を南下し、佐久間ダム方面に向かうと人骨山(ひとぼねやま)の案内標識が目に入ります。人骨山でも眺めを堪能した後、帰路に着きました。

人骨山登山口の標識のそばに逸話が書かれている小さなボードを見つけました。「昔、人骨山には、鬼が住んでおり、ある娘が自ら進んで人身御供となって鬼の生贄になりました。やがて、鬼は、猛犬により退治され、村には平和が訪れるのですが、節分で、生贄となった娘の親がその娘のことを思い出すことがないよう、節分の日にはこの付近では豆まきをしない」という風習があるそうです。逸話のある山の行程を振り返りながら帰りました。

(文=伊藤哲哉/『千葉県の山』共著者)

新潟県・赤禿山

海を望む山スキー

明星山と日本海(写真=増村多賀司)

左上:赤禿山山頂を目指す/右上:焼山(左)と雨飾山を望む/左下:終始雨飾山を見ながらのスキー/右下:山頂直下を滑る(写真=増村多賀司)

1月20日、晴れのち曇り

糸魚川市の山之坊集落の外れからスタート。大峰峠までは林道をショートカットしながら進みます。前日まで気温が高かったせいか雪は固く締まり、登りは早いです。ウサギやテン、カモシカの足跡が縦横に走り、動物相が豊かな里山である事を実感しました。

大峰峠から尾根に取り付き、杉の植林地を過ぎると北には黒い岩壁の明星山が見え、その背後には糸魚川の街と日本海が広がります。その先はブナ林となり、山頂まで続いています。山頂直下は雪庇もあり急斜面となりますが、短い区間です。山頂の東側では、尖った雨飾山と火山らしいドームの新潟焼山が姫川の深い谷の向こうに見えます。

滑走は山頂から一段下った所から、登りとは違う北東面に進路を取ります。ブナの疎林から海や雨飾山を見ながらの滑走は爽快です。

下り着いた平坦地から林道沿いに大峰峠まで登り返すと、ゴールの山之坊集落まではすぐです。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

鈴鹿・御池岳

山上台地でスノーハイクを楽しむ

青のドリーネ(写真=金丸勝実)

山上台地の霧氷(写真=金丸勝実)

1月21日、晴れのち曇り、のち雪

御池岳(おいけだけ)は石灰岩地形特有のドリーネやカレンフェルトが点在する台地状の山です。冬は積雪が多く、雑多なものが雪で隠され、雪原の中に霧氷の付いたブナ、ミズナラ、オオイタヤメイゲツなどの樹林やドリーネの点在するすっきりとした地形になります。この冬の特有の風景が登山者を魅了し、御池岳へと誘います。

無積雪期は比較的アクセスのよい御池岳ですが、積雪期は頼りの国道や林道が、積雪のために冬季閉鎖や通行止めになったりするので、アプローチに時間や労力を強いられることになります。今回は滋賀県側の君ケ畑から入り、T字尾根を使って山上台地に上がることにしました。

冬型が少し緩んではいましたが、積雪のために、小又谷林道分岐にある駐車場には車で入ることができず集落の外れから徒歩となりました。T字尾根は最近、道標が整備され一般登山道化されています。この日は登山口から積雪がありましたが、雪はよくしまっていて、ワカンなどの装備を使わずに歩くことができました。ただし、台地の直下の急斜面は雪が氷化していて、アイゼンが必要になりました。

山上台地は積雪が1mほどあり、しかもよくしまっていたので大変歩きやすく、ドリーネや樹林の霧氷を楽しみながら散策が楽しめました。ドリーネは大小様々なものがありますが、その中でも「青のドリーネ」と呼ばれるものは規模が大きくて美しく、登山者に人気があります。残念ながら曇りがちであったので、青空があまり映えませんでした。

帰路は土倉岳を経由し、尾根ルートでノタノ坂から小又谷に下りました。このルートにも道標が整備され、また鉄塔巡視路にもなっているので、大変歩きやすくなっています。しかし、ノタノ坂から小又谷の間は谷ルートになるため雪が深く、歩きにくくなっていました。

今回の周回ルートは歩行距離が14km、累積標高が1200m以上あり、全行程が雪上歩行になるため、思った以上に体力と時間が費やされます。天候を見極め、時間にゆとりを持つことが大切です。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

岡山鳥取県境・毛無山

毎冬恒例の毛無山から西毛無山へ周回縦走しました

毛無山頂上直下、登りは最後までツボ足で登れました(写真=舩越 仁)

本来なら背景に大山なのですが、ガスはまったく切れそうにありません(写真=舩越 仁)

1月20日、曇り

今年の中国山地は例年になく雪が少ないです。そのせいか、9時前というのに田浪駐車場には私たちの車が1台のみです。そんな状態なので冬道(尾根)ではなく、一般登山道に沿って登りました。新しい合目標識が併設されていました。その力強い文字の太い標柱はどなたか奇特な方の力作と思われます。

毛無山頂上は大山の素晴らしい展望台なので、幾らかの期待をしていましたが北西からのガスに切れ目はありません。昼には少し早いのですが、寒くない山頂で昼食にしました。

さあ、頂上から南西に向かう県境を下る楽しいドロップダウンです。雪が少ないとはいえ、下りは股まではまり込みます。斜面途中でカンジキ、スノーシューを履かねばなりませんでした。

二つ三つピークを越え、西毛無山に到着しました。昨年は無くなっていた西毛無山の山頂標識が新しくなっていました。板もしっかりしていて達筆な文字の標識、これなら数年は風雪に耐えてくれるのではないでしょうか。

(文=舩越 仁/みつがしわ山の会)

山口県・小五郎山

明るい日が差し込む、気持ちのいい稜線

木々の向こうに顔を出した小五郎山を見ながら稜線を進む(写真=松本高志)

山頂は東側が開け、開放感ある展望が広がる(写真=松本高志)

1月20日、晴れ

西中国山地の西部に位置する小五郎山は中国百名山のひとつ。向峠(むかたお)バス停から山頂を往復しました。

冬季は雪が多い山域ですが、このところ暖かい日が続いたため、山麓には雪が見られません。林道を歩き、途中から登山道に取り付きます。山腹をゆるやかに巻いて主稜線の鞍部に出る付近からようやく雪が見られるようになりました。一帯はササで覆われていますが、ところどころ雪をかぶり、落葉樹林から日が差し込む気持ちのよい明るい稜線を進みます。

山頂は東側が開けていて大展望が広がります。北側には寂地山から吉和冠山の山並みが広がり、眼下には中国自動車道がくねり、その向こうには鬼ケ城山、羅漢山が間近に見えます。しばらく展望を楽しんだあと、往路を戻りました。

(文=松本高志)

福島宮城県境・鹿狼山

大男の伝承が残る、展望の山

山頂から蔵王山塊の眺め(写真=松井圭子)

水源の森登山口にて。山開きの幟がはためく(写真=松井圭子)

1月13日、晴れ

福島県と宮城県の県境の山、鹿狼山(かろうさん)に登りました。福島県側の地元新地町では「日本一早い山開き」を開催し、元旦早くから、近郊のたくさんの登山者が初日の出を眺めに登られるそうです。

好天に恵まれた登山日、水源の森登山口から反時計回りに周回しました。太平洋を木の間越しに見ながら山頂神社へ登り切ると、反対側には蔵王山塊の素晴らしい眺望が。東吾妻や吾妻小富士も見えるそうですが、そちらは曇っていて残念でした。

この山には手長足長という大男が暮らし、海から長い手で貝を採って食べていたとの伝説もあるそうで、そんな伝承を調べて出かけると一段と楽しめるかも知れません。

(松井圭子/神奈川県/よく行く山:福島県の山)

東京都・浅間山

小さな自然を深く楽しめる山の公園

堂山山頂にて。山名標の手前に三角点、右奥は浅間神社。麓は多磨霊園、左奥は小金井市街(写真=齊藤勝也)

前山に続く縦走路(写真=齊藤勝也)

1月21日、快晴、弱風

長く東京に住みながら未登だった浅間山を登りました。府中市の最高峰で三角点があり標高は79.8m、周囲の市街地や多磨霊園からの比高30mほどの小山です。

麓から10分足らずで最高地点の堂山に達します。8階建てほどの高さですが、周辺に高い建物はなく、落葉樹ばかりの山体は、この時期見晴らしがよいです。堂山~中山~前山と三山をミニ縦走すると、エナガ・シジュウカラ・コゲラ・メジロ・アオジなど野鳥が飛び交っていました。風穏やかな昼下がり、サクサク枯れ葉を踏みつつのんびり歩く日向の小径は楽しいものです。ニッコウキスゲ似の黄花咲くムサシノキスゲはここだけに自生するとか。次は5月の花期に訪れたいです。

(齊藤勝也/東京都/よく行く山:奥多摩、奥武蔵、赤石山脈など)

京都府・金比羅山、翠薫山、比叡山

歴史を振り返る山歩き

1月7日、仰木峠付近の杉林(写真=伊東明美)

左:道は何箇所も倒木に塞がれていました/右:厳かさが際立つ冬の横川中堂(写真=伊東明美)

1月6日~8日、6日曇りのち雨、7日曇り、8日雨

京都駅からバスで約1時間、終点大原の少し手前で下車。朝靄に包まれる田園地帯はわずかで、登山口にある江文神社は林道の突き当りにひっそりと佇んでいました。

稜線まで登ると粉砂糖をまぶしたような雪道。琴平新宮社から先は急坂となり、あの場に新宮社が設けられた訳を伺い知ります。金毘羅山の頂は木立のなかで小さな祠のみ、展望はありません。木の根が張り廻る細い道を大きく下り、同じだけ登って翠薫山(すいたいさん)へ。ここで木々の合い間から大原の町を望むことができました。寂光院まで誰にも会わずの山でした。

2日目は大原の民宿を9時に発ち、比叡山に続く稜線へ登り返します。東海自然歩道なので昨日の山道と違って道幅はありますが、やはり倒木が多い。国際観光都市も山の中の整備まではまだ追いつかないようだと観念していたところ「京都一周トレイル」と合流したあたりから歩きやすくなりました。積雪は数cmほど。横高山を経由するルートは見送り、横川へ向かいます。

比叡山延暦寺の敷地は実に広大で、根本中堂がある東塔、1km離れて西塔、そして西塔から4km離れて横川という3つの地域に分かれています。歩いてこの3箇所をまわると、最盛期の比叡山の権力がいかほどのものだったか、織田信長の心中を察するほどです。冬季はこの3地域を結ぶシャトルバスが運休のため、雪道を90分歩いて横川に向かう参拝者もいました。

3日目は比叡山から無明寺道を歩いて坂本へ下るつもりでしたが、未明から冷たい雨が降っていたので坂本ケーブルで下山。ここまで来たら・・・・・・と、雨のなかを西教寺まで歩いてみました。西教寺は聖徳太子の創建と伝わる古寺であり、比叡山焼き討ちの後、坂本城主となった明智光秀の一族の菩提寺でもあります。日本史上のミステリーであり続ける本能寺の変。歴史を振り返る山歩きでした。

(伊東明美/東京都/よく行く山:関東甲信越の山、日本百名山)

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週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

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「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

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