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『森羅万象の中へ』(山尾三省)

連載第12回(著者=小林千穂/山岳ライター・編集者)

思考の原点に帰れる本

書棚でも手に取りやすいところに『森羅万象の中へ』があって、いったん考えを整理したい時、気持ちを落ち着かせたいとき、私はこの本を開く。東京に住んでいた一時期、屋久島の自然に強く憧れて、屋久島に関する本を図書館で借りては読んでいたことがあった。当時、実際に行くことはかなわなかったので、本を読んだり、写真を見ることで衝動的な気持ちを押さえていたのだ。

そのなかで屋久島に暮らす著者の随筆集『ここで暮らす楽しみ』や写真家・山下大明氏との写文集『水が流れている』に出会い、著者の生命や自然に関する文章に感銘を受けた。そして続けて読んだのが本書だ。

もともとは山と溪谷社の月刊誌であった『Outdoor』誌(2001年休刊)に1999年から2001年にかけて連載され、本書はそれをまとめたもの。連載終了直後に山と溪谷社から出版され、その後2012年に野草社から再刊行されている。今、私の手元にあるのは野草社のものだ。

親和力が私を山へ導く

山尾さんの本は哲学的で私には難しいところもあり、どこまで読み込めているのかわからないが、文章のなかに、頭の奥の、モヤモヤして言葉にできないものを、自分の代わりに言葉で表現してくれるようなところがある。よく「登山の魅力は何か、どうして山へ行くのか?」と聞かれ、この禅問答のように難しい質問に、私は決まって答えに窮するのだが、本書の中で山尾さんはこう書いている。

「なぜかは分からないが、ぼく達は森に魅かれて森に入る。川に魅かれて川へ行く。海に呼ばれて島に住む。《親和力》という大いなる不可思議な力が、ぼく達をしてそこへ導いているとしかいいようがない」。

親和力とは「なにごとかの対象に魅き入れられていく力」だとあるが、まさに、私がこれだけ山に惹かれるのは、この親和力によるものではないかと思う。私の気持ちの中に、それこそ自分でも説明できない不可思議な力があって、それが山に対して大きく動いているのだ、と考えると少し納得できる気がするのだ。

山尾さんは「山歩きや森歩きの楽しみのひとつは、ぼく達が人里の境界を超えて野生の懐そのものへと踏みこんでいく時に聞こえてくる、自然物達のささやきに耳を傾けることである」といい、山に登ることによって、人はゆるやかに野生を取り戻すのだというが、私はこの部分に共感する。私にとっての本当の登山の楽しみは、達成感とかそういうことではなく、一時的であっても山という大きな自然との距離が縮められることにあると思うからだ。そして山に登ることによって、普段はあまり意識することのない自分という存在を感じられることにあるように思う。

この本を開くと、山の景色も、足元に転がる石も、それがその形になるまでに壮大な出来事の積み重なりがあるのだということを教えてくれる。そして、自分も森羅万象の中、つまり「この世界に存在しているすべての物事や、この世界に引き起こされてくるすべての現象」の一部にすぎないという、当たり前でありながら、普段、忘れてしまっていることを自覚させられ、少し考えを原点に戻せる気がする。

低体温症の回避と対処

登山ガイド木元康晴さんからのアドバイス

3月中旬に気温が上昇したものの、20日から低気圧や前線の影響で、山では雪が降る荒れ模様となりました。春とはいえ、まだまだ油断はできません。

昨年の秋に週刊ヤマケイでは「秋の気象遭難に備える」と題した特別号を配信しました。そこで『山岳遭難防止術』などの著者である登山ガイドの木元康晴さんに「低体温症」についてアドバイスをいただきましたが、ここでその記事を再掲します。この春の登山にもぜひ役立ててください。

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低体温症を防ぐ3つのポイント

悪天候に遭遇した場合にもっとも警戒が必要なのは、寒さと冷えとによる低体温症だといえるでしょう。

低体温症を防ぐために大切なのは、まず第一に適切なウェアを身につけること。具体的にはアンダーウェアで肌の濡れを防ぎ、中間着で体を保温。さらにゴアテックスなどの防水透湿素材のレインウェアで雨や雪、風をシャットアウトするという、レイヤリング(重ね着)の基本を忠実に守ることです。ただし実際の荒天の行動時には、適切なレイヤリングをしているはずなのにいつの間にか体が濡れていた、という経験をお持ちの方は少なくないでしょう。これは主に、首回りや袖口から雨や雪が侵入してくることが原因です。レインウェアは乱れのないよう、確実に着用する必要があります。

第二に大切なのは、体を冷やさないペース配分。寒いときに立ち止まって休憩すると、体温は一気に奪われます。体を動かすことで発生していた熱が、休むと止まってしまうからです。したがって気温が低いときには、休憩の回数と時間は、いつもよりも少な目にしましょう。しかしだからといってハイペースで歩き続けると、こんどは汗で体を濡らしてしまうことに。速すぎないペースで歩き続けるのがポイントです。

そして第三は、行動食をこまめにしっかりと補給すること。食べるのは主に、体の中から熱を作り出すエネルギー源となる炭水化物と糖分で、同時に口にするようにしましょう。また寒いと水分補給を怠りがちですが、水分が不足すると血流が悪くなってしまい、体の冷えが進行します。意識して補給ように心がけることが大切です。

春とはいえ、下界と山の上とのコンディションは大きく異なります。気象遭難のリスクを正しく理解して、安全に行動しましょう

低体温症になってしまったら?

実際に低体温症になってしまった場合、その症状の始まりは震えです。寒い日にブルブルっと震えるのは誰もが経験することであり、震えを軽く考えがちかもしれません。しかし気温の低い悪天候下で、ブルブルでは済まなくてガタガタと震え続けるような場合には要注意。もう既に、軽度の低体温症が始まっていますので、食べ物と水分とを補給しつつ、体が動くうちに暖かな場所へ移動しましょう。

低体温症がさらに進行すると、こんどは震えが止まって、ヨロヨロとしか歩けなくなってきます。こうなると自分自身での対応は難しく、一緒にいる仲間がサポートすることになります。

低体温症が進行すると会話の反応も鈍くなり、「大丈夫?」と声をかけても無反応だったり、力ない返事が返っくるだけだったりしますが、こういうときはもう大丈夫ではありません。何としてでも山小屋やテントなどに運び込み、濡れた衣類を着替えさせた上で、シュラフやレスキューシートで保温します。さらにお湯を入れたペットボトルを、太い血管が通る首や脇の下に入れて温めてあげましょう。もし飲み物を口にすることが可能であれば、温かなホットミルクなどを飲ませるのも効果的です。

逆にやってはいけないのは、マッサージをしたり、急に暖房にあてること。これでは手足の冷たい血液が一気に体の奥に流れ込んでしまい、低体温症が悪化します。あとは血管を収縮されたり拡張させたりする効果のある、カフェイン類やアルコールの摂取は止めるべき。もちろんタバコも禁止です。

なお、ビバーク装備は必携です。特に持ちたいのはツェルト。布地一枚で空間を作るだけのものですが、それで寒さから身を守ってくれます。山小屋などに避難できない厳しい状況でも、ツェルトがあることで助かるということもあり得るのです。

(文=木元康晴/登山ガイド)

この夏、尾瀬の山小屋「原の小屋」で働いてみませんか?

山小屋スタッフ募集

2000m級の山に囲まれた尾瀬。散策初心者から登山者まで、幅広い人気をほこる

「尾瀬のおへそ」ともいうべき見晴地区に昭和33年から建つ「原の小屋」。清潔でゆったりとした小屋づくりがモットー

尾瀬ヶ原の見晴地区に建ち、50年以上の長きにわたって人々を迎えてきた歴史ある山小屋「原の小屋」。立地の良さもさることながら、あたたかいもてなしで数多くの登山者に愛されている山小屋です。

ミズバショウの咲く春から、涼しい風が吹き渡る夏、そして燃えるような紅葉が広がる初秋まで、数々の表情を見せる大自然のまっただ中に立つ原の小屋で、あなたも働いてみませんか。

小屋での職種は「厨房チーフ」と「一般アルバイト」です。

水が豊かな尾瀬なので毎日、お風呂に入れます。Wi-Fi環境もあります。

ご興味のある方は、まずは下記まで、お電話かメールでご連絡ください。詳しい仕事内容などをご説明いたします。

〒101-0051

東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビル

山と溪谷社内 原の小屋係

TEL:03-6744-1913(山と溪谷社内)10:00~17:00

FAX:03-6744-1928(山と溪谷社内)

E-Mail:oze.haranokoya@gmail.com

https://www.yamakei-online.com/job/job_detail.php?id=1319


知床半島・羅臼岳南西ルンゼ~東岳(前編)

爆風に体力を限界まで削り取られました

羅臼岳南西ルンゼ取付から見た知床峠と除雪車(写真=谷水 亨)

三ツ峰のC1より朝陽に染まった羅臼岳(写真=谷水 亨)

3月17日~18日

いわずと知れた世界自然遺産の登録地、知床。この時期は人を寄せ付けない深い雪に閉ざされていて、国道334号線の開通はまだまだ先の話です。今回は厳冬期を避け、気温のゆるむこの時期を狙って山岳会の仲間と3人で、羅臼岳南西ルンゼから東岳までの縦走に挑戦してきました。

南西ルンゼの取付(標高約1000m)まで、標高110m付近の車止めからスキーで5時間かけて登ります。先日の大雨の影響で、小石大の氷魂がへばりつく急斜面ではスキーアイゼンも効力がなくなったのでスキーをかつぎ、総重量25kgのザックを背負いアイゼンとピッケルで残り600mを登ります。

最大斜度40度、知床特有の強風、雲で先の見えない壁。体力も奪われていきます。山頂直下の岩壁はザックをデポし登られるところを探りながら、ほぼアイスクライミングなみの技術で山頂にたどり着きました。

山頂は視界がなく、また爆風のため、羅臼平にむけて移動を開始しますが、クライムダウンはザックを回収しても続き、コンパスだけで下ります。しかし目標物もなく、何度も方向修正をしながらの迷走を繰り返します。

羅臼平にたどり着き、やっとフードBOX(ヒグマ対策のフードコンテナ)を見つけて位置関係を特定したころには15:00を過ぎ、体力も限界に達していました。強風が当たり前の羅臼平ですのでテン場を探してみたものの、適切な場所はありません。そこで計画通り三ツ峰のコルまで登り返し、先に進むことを決断しました。

ようやく最低限風を避けられる斜面を見つけ、1時間かけて除雪、ブロック積みをして、テントに落ち着いたころにはすっかり日が暮れていました。

夜中は強風も止まず、雲も切れてくれませんでしたが、太陽がのぼるころには一気に晴れ渡り、朝陽に照らされた羅臼岳を見ることができました(次々週、掲載予定の後編に続く)。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

北アルプス・唐松岳

好天をつかみ、素晴らしい山行に

上ノ樺付近にて。志賀高原方面からのぼる日の出(写真=山田哲哉)

唐松岳山頂からの剱岳(写真=山田哲哉)

3月17日~18日、晴れ

北アルプス後立山連峰は、春の気配が漂いだしてからがいちばん素敵です。冬型の気圧配置の間は、毎日のように吹雪が続き、厳しい山域ですが、周期的に天候が変わりだす春は好天をつかめば素晴らしい雪山が味わえます。

ゴンドラ、リフトを乗り継いで八方池山荘に到着。歩き出したところから右に白馬三山、不帰ノ嶮、左に五竜岳から鹿島槍ヶ岳と、息をのむ光景が広がります。石神井ケルンまで登れば、一歩ごとに後立山の稜線がぐいぐいと大きくなっていきます。八方池は白い広がりになっていました。

下ノ樺は大きなダケカンバが生え、この尾根の数少ない安住の地。硬い雪を掘り下げ、ブロックを積み、ジャンボエスパースをたてました。

翌朝3時半起床。5時にヘッドランプで出発です。上ノ樺にかかるころ、背後の雨飾山、焼山、火打山、妙高の北信の山が明るくなり、前方の不帰ノ嶮はピンク色に染まりだし、丸山手前で日の出となりました。馬ノ背で上部から下ってくるザイルでつながった二人組、志水哲也ガイドのパーティーと出会いました。志水さんは、上ノ樺を3時に出たそうです。

馬ノ背からはザイルで安全を確保。ただ、例年雪庇が張り出し、痩せて緊張する八方尾根上部は、今年は雪庇が小さく、尾根も痩せていません。稜線に飛び出した途端に強烈な西風とともに剱岳、立山が大迫力の展望で広がっていました。大好きな毛勝三山も真っ白で堂々としています。やや不安定な雪質と強い風に緊張する最後の登りを制して、僕たちだけの山頂に立ちました。360度の展望は日本海の海岸線まで見えて、春の雪山の素晴らしさを体験できた2日間となりました。

なお、この土日の唐松岳は晴天に恵まれたので多くの登山者が日帰りで登っていました。中にはチェーンスパイクや軽アイゼンの人、布製のトレッキングシューズの人もたくさんいました。

唐松岳はゴンドラなどのアプローチが発達しても雪山登山まで容易になったわけではありません。ネット情報などでは「簡単に登れる雪山」として紹介されているようですが、しっかりとついたトレースも一瞬の吹雪、地吹雪で消え去ります。ここはかつて何回も大量遭難のあった山ですので、きちんとした準備と雪山の知識をもって登っていただきたいものです。

(文=山田哲哉/山岳ガイド「風の谷」主宰 (株)KAZEエクスペディション顧問 山岳ガイドⅡ)

八ヶ岳・硫黄岳

冬の終わりが近づいてきた好展望の山頂へ

御嶽山と中央アルプスとを背にして硫黄岳の頂上へ(写真=木元康晴)

硫黄岳頂上から見た東天狗岳(右手前)、西天狗岳(左)、蓼科山(左奥)。稜線上の雪は消えかかっていました(写真=木元康晴)

3月17日~18日、両日とも晴れ

雪山初級者の皆さんと一緒に、八ヶ岳の雪山入門コースである硫黄岳に行ってきました。

入山日は、美濃戸口から歩きはじめ、凍結箇所の多い南沢コースを登って行者小屋へ。この時期は週末のみ営業する行者小屋には初めて泊まったのですが、暖かで展望も良く、とても快適に過ごすことができました。

翌日は朝食後、すみやかに出発。中山乗越を越えて一旦赤岳鉱泉に下り、そこから樹林帯の中の急登を登ります。森林限界に達すると、間もなく急登は終わって赤岩ノ頭に到着。空気は澄み渡ってとても展望はよく、正面には白い山並みを連ねる北アルプスを一望することができました。

あとは岩場やガレが交じる尾根道を登り、360度の展望が広がる硫黄岳頂上へ。間近にそびえる南八ヶ岳の山々をはじめとする、山々の展望を満喫することができました。

下山は赤岳鉱泉まで引き返し、北沢コースへ。堰堤広場を過ぎた先の、林道のショートカット道付近は見事なまでに道が凍結していて、アイゼンを着用して慎重に下りました。

(文=木元康晴/登山ガイド)

新潟県・角田山

桜尾根の歩行と撮影には充分な注意を

陽を浴びて咲き誇る雪割草(オオミスミソウ)(写真=奥谷 晶)

雪割草(オオミスミソウ)はさまざまな色で咲く(写真=奥谷 晶)

3月18日、晴れのち曇り

数日前より雪割草が咲き始めたという一報を得て、角田山へ行ってきました。

角田浜の駐車場より桜尾根に取り付きます。冬型の気圧配置のなごりか、朝方の気温はマイナス3度。まだ充分な日差しが当たらず、雪割草は麓でも花びらを閉ざした状態です。そこでいったん角田山頂上まで登り、陽が上がるのを待ち、ゆっくり下りながら撮影することにしました。頂上付近はまだたっぷり残雪がありました。

頂上から滑りやすい急傾斜の尾根道を下りてゆくと、中腹の笹藪の下に、登りではまったく姿をみせなかった雪割草が見事に開花しているではありませんか。山麓に下るにつれ、白、赤紫、薄紫、濃いピンクな色や形をさまざまに変異させながら、まるで光と戯れるように群舞している様子を捉えることができました。

なお、桜尾根は正規の登山コースではありません。私有地で、雪割草群落の再生のために地元の方が保護されているところです。登山道以外に足を踏み入れること、植生を傷つけるスパイク突きの長靴や、ゴムキャップのないストックなどは厳禁です。私は三脚や一脚の使用も控え、困難ですが、手持ちで撮影することにしています。撮影に夢中になると思わず足を踏み出してしまいそうになるのは自戒するところです。

(文=奥谷 晶)

谷川岳

楽観視せず、装備の準備は万全に

天神峠よりこれから登るルートを一望する(写真=小山貴之)

万太郎山への稜線が美しく輝く。トマノ耳より万太郎谷を望む(写真=小山貴之)

3月17日、快晴

群馬県と新潟県にまたがり、ふたつのピーク(オキノ耳、トマノ耳)を持つ双耳峰の谷川岳。2000mに満たない標高ですが、山頂や稜線上からは素晴らしい景観を得ることができます。

谷川岳ロープウェイを利用し、快晴の中、天神平(天神平スキー場)より登山開始です。土合口駅に登山届のポストがあります。天神平駅への移動中すでに稜線上には登山者の列ができていました。ロープウェイ利用客のほとんどが登山者で、谷川岳の人気がうかがえます。

天神峠からは山頂に部分的に雲がかかっていたものの、これから歩くルートをすべて見渡すことができました。しばらく歩くと山頂にかかっていた雲はなくなり晴れわたっていました。

雪ですべて埋もれた熊穴沢避難小屋以降は本格的な登りの道となります。このポイントでトレッキングポールからピッケルに持ち替えました。避難小屋を過ぎるとすぐに森林限界に達します。ここからは空の青と、稜線の白の2色の世界に突入します。目に入るすべての景色が白く輝き、美しさを放っていました。

息を切らしながら急登を登り詰め、ケルン状の標識が見えてくると山頂(トマノ耳)は目と鼻の先です。山頂では続々と登山者が登ってきて登頂の喜びと、360°の大絶景を満喫していました。登山者が多いため、もうひとつのピークであるオキノ耳には行かずに肩の小屋(冬季休業中)わきで休憩し下山としました。複雑な気候の山域ですが、1日穏やかな天気に恵まれ絶好の登山日和となりました。

なお、ルート上はすべて雪道で急登もあります。雪質はパウダー、アイスバーン、ザラメ雪、モナカ雪と場所や時間帯で刻々と変化していました。スノーシューのみや、チェーンスパイクのみ、軽アイゼンのみでこのルートを歩き通す方を見かけました。個人差もあるかと思いますが、状況に応じて装備の使い分けが必要と感じました。

アクセスも比較的楽で、ロープウェイで簡単に標高を稼げる山域ですが、天候も急激に変わる山域です。天候次第で難易度も急激に変わってきます。楽観視せずに、装備は万全に準備して登山を楽しむようにしていきましょう。

(文=小山貴之/長野県自然保護レンジャー)

群馬県・万座温泉朝日山

プチ・バックカントリースキーを楽しみました

朝日山頂上から北アルプス方面の展望(写真=畠山茂信)

滑降後にお茶を飲みながら歓談しました(写真=畠山茂信)

3月18日、晴れ

万座温泉スキー場で開催された、バックカントリースキーの入門ツアーに参加しました。

前日にスキー場内の非圧雪エリアでシールの脱着、シール登高、ビーコンとゾンデの使用方法をトレーニングし、当日は向かいにある朝日山で実践のツアーです。前日は冬に逆戻りした気温の低い天候でしたが、この日はポカポカ陽気の春スキーになりました。

リフトで万座山に上がり、迂回路の途中から熊四郎コースに入ります。木々を抜け、雪融けが早いために頭を出している岩を避けながら熊四郎洞窟の真下を横切り、旧朝日山ゲレンデの横に出ます。そこからシールを着けて朝日山山頂までハイクアップしました。

頂上からの眺望は素晴らしく、北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳、富士山、北信五岳がきれいに見えていました。

ここは草津や志賀高原へのツアーの起点ですが、今回は入門編なので旧朝日山ゲレンデを滑降し、最後に雪上でお茶を飲みながら歓談して解散となりました。

案内していただいた地元の方からは、ツアー中は周囲の木々や動物の足跡、小鳥などのお話を、歓談中は地元の歴史に関する大変楽しいお話をうかがいました。次回はぜひ草津や志賀高原へツアーしたいと思います。

(文=畠山茂信)

上信国境・根子岳

これまで根子岳を訪れたなかでいちばんの展望

奥ダボススノーパーク第1リフト終点(1595m)より、根子岳(2207m)(写真=中村重明)

標高2100m付近にて。乗鞍~槍・穂高~北ア中部(写真=中村重明)

3月17日、快晴

今季2回目となる根子岳登山に行ってきました。前回(2018/1/29)は山スキーで下りの滑降を楽しみましたが、今回は同行者が山スキーをしないため、歩きでの往復でした(チェーンアイゼン、前爪付きアイゼン、スノーシュー、そしてそりを携行し、チェーンアイゼンとそりのみ利用)。

登山口となる奥ダボススノーパーク駐車場の手前から登山起点の第1リフトトップの先まで、前日の雨か雪のためか、まったく期待(予想)していなかった見応えのある霧氷に出迎えてもらいました。

駐車場(無料)から第1リフト(300円)で移動し、リフトトップで身支度をして登山開始です。リフトトップの上も、山頂手前まで雪上車で登ってスキーで滑るプログラムがあり、山頂近くまでしっかりとゲレンデ同様に圧雪されています。雪面は堅くクラストしていて、最初はつぼ足でも問題なかったものの途中からはチェーンアイゼンを装着。ただし踏み抜きはまったくなく、携行したスノーシューは使わずじまいでした。

第1リフト終点でもすでに北アルプスの素晴らしい絶景が広がっていましたが、標高を上げると展望が拡がり、八ヶ岳~中ア~御嶽~乗鞍~北ア(槍穂~白馬三山)~頸城山塊の大パノラマが一望できました。さらに山頂では、黒斑山~四阿山~志賀高原などの展望に加え、遠くに富士山もくっきりと望むことができ、これまで根子岳を訪ねた中で一番良い展望が得られました。

下りでは、登りよりは少し緩んだとはいえ堅い雪面で制動に苦労しつつも、ざっと半分くらいの区間をヒップそりで滑ることができ、楽しみながらあっという間に下山しました。

(文=中村重明)

秩父・大ドッケ周回

黄金のスプリング・エフェメラルを求めて

金色のフクジュソウ。太陽の光を花びらいっぱいに受け止めて、咲きたての一番美しく輝く瞬間です(写真=林 由季子)

左上:コブハサミムシの珍客さんが雄蕊をかじっていました/右上:少しずつ順番に開花する様子/左下:粉砂糖のような雪でした/右下:ハナネコノメソウも咲きはじめました(写真=林 由季子)

3月17日、快晴

春めいた陽気が続き、黄金の自生地が気になり始めました。ちょうど昨年も訪れて、見事に広がる金色の野に感動したものです。

昨年と同じコースで沢を登っていくと北側斜面を中心に薄っすらと雪化粧していましたが、その景色を抜けると足もとでフクジュゾウが出迎えてくれました。とはいえまだ多くのフクジュソウは花弁が濡れて俯いていました。しかし時間の経過とともに日差しが強まってくると、俯いていた花弁は大きく開き輝きを増していきました。

なお、今回のコースは正規の登山コースではなくテープや踏み跡も乏しいです。半壊した鹿除けネットやジャングルのように茂ったアセビによってルート判断をまどわされる場面もありましたが、ソロでしたので登山地図アプリのGPS機能に助けられました。

(文=林 由季子)

奥多摩・三頭山

「三頭山の日」の充実したイベント

檜原都民の森一番の巨木のトチノキ(写真=石丸哲也)

上から反時計回りに三頭山山頂からの富士山、三頭大滝、作ったキーホルダーとつきたてのお餅、マンサクの花、三頭山山頂と石尾根(写真=石丸哲也)

3月18日、晴れ

多用で丸1カ月、山に出かけられない異常事態でしたが、やっと復帰。その初日が三頭山の日にあたり、檜原都民の森でイベントがあるとのこと。森林館のキーホルダー製作体験など取材したかったこともあり、出かけてきました。三頭山の日のイベント、製作体験の時間を考え、コースは欲張らずに都民の森~三頭沢~三頭山~鞘口峠のお手頃周回コースにします。

新宿からホリデー快速あきがわ1号に乗り、武蔵五日市駅発8時10分の始発バスで9時18分、都民の森に到着。入口の売店横で、さっそくスタッフがクイズカードとイベントのスケジュールを配布していました。もう終わったクイズなので、問題と解答を記すと「1:三頭山の標高は?」「2:イノシシのこどもの呼び名は?」「都民の森最大の巨木は?」の3問で、敷居が低めでした。解答が得られる場所も記されている親切さです。

巨木がわかりませんでしたが、ヒントを探すまでもなく、バス停から森林館へ向かう途中に、その木がありました。トチノキで、高さは不明ですが、幹周り6.7m。大人が4人で手をつないで、やっと囲めるくらいの太さです。奥多摩は東京都の水源林として保全され、原生林も多く見られますが、中でも三頭山は大木が多く、今回のコースでもサワグルミ、カツラ、モミ、ミズナラ、ブナなど様々な大木を見られました。

森林館でクイズカードを出し、くじを引いて、レストランの飲みもの300円割引券をゲット。割引といっても、コーヒー、紅茶など300円で、無料でいただけることになってしまいます。それでは申し訳ないので、朝食を済ませて間もなかったのですが、食事もすることにしました。先着30人まで、とれたてのフキノトウの天ぷらが付くのに惹かれて、ミニ天丼とうどんのセットをいただきました。独特の香りの強さは、やはり地のもの。食感でも春の訪れを感じながら、木材工芸センターへ向かう途中、マンサクが満開でした。

木材工芸センターのキーホルダー製作体験は、たくさんある型紙から好きな絵柄を選び、鉛筆でヒノキの板に写し取った後、糸ノコ盤で切り出し、最後にキーホルダーを取り付けるというものです。糸ノコ盤を使うのは初めてでしたが、親切に教えていただき、上手にできました(と、思います)。

キーホルダーを作り終わって外に出ると、ちょうどお餅がつけたところ。無料でいただけるとのことで、さっそく並んでいただきました。あんこ、きな粉、しょうゆの3種類で、つきたての柔らかさ、風味のよさは格別でした。

この時点で、もう11時30分。はち切れそうなお腹をかかえて三頭山へ向かいます。落差33mという三頭大滝は、1月は全面凍結していたそうですが、すでに氷はまったくなく、雪がごく一部に残っているだけでした。この後、登山道は三頭沢沿いに登っていき、サワグルミ、カツラなど沢に育つ木の巨木を見ることができます。

三頭山山頂に着いたのは13時30分。やや遅めだったので、山頂は空いていました。この日は気温が高く、遠景が霞みがちだったり、時折、雲が出たりで富士山の展望はあきらめていたのですが、春らしい、やや霞んだ姿を見せてくれました。反対の北側には雲取山から鷹ノ巣山の石尾根もよく見えました。登山道は、沢の中や日陰も含めて、雪や凍結箇所は少なく、歩くにはまったく問題がなく、アイゼンなども不要でした。

都民の森では13時30分~15時にライブが行われ、地元のミュージシャンや中学校吹奏楽部、村長のオカリナ演奏が予定されていましたが、写真を撮りながら下ったため、着いたのは終わった直後。焼きそばと豚汁の模擬店も閉店しているところでした。そのままバス停へ向かい、前に並んでいた地元の方とお話ししていたら、「もらったんだけど、家に帰っても食べないから」と焼きそばをいただきました。「檜原焼きそば」と名づけられていて、食べてみると、檜原村の特産品でしょうか、細かく切ったコンニャクが入っていたのがめずらしかったです。この日は、行動食にほとんど手を付けることなく終わってしまいました。

3月13日が「み・とう・さん」と読めることから、三頭山の日とされ、毎年、その日に近い土曜か日曜にイベントが開催されているとのことです。とても楽しく、年々充実しているとのことで、また来年も来たくなってしまいました。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

神奈川県北・草戸山

梅から桜へ、そしてカタクリのシーズンへ

静寂な早朝、城山湖と本沢ダムの堰堤から延びる草戸山の稜線と後方の高尾山(写真=白井源三)

左:梅の里、城山川尻地区本沢梅園満開の梅がまぶしい/右:龍籠山から登った陽が当たり始めた朝もやの相模平野を俯瞰(写真=白井源三)

3月14日、晴れ

梅も桜も一緒に開きそうな陽光を浴びる日、梅の里、相模原市緑区川尻地区の本沢梅園(18日で閉園。ただし、付近の梅も見ごろ)を散策して草戸山ハイキングをしてきました。

この日は駐車場に車を停めて、城山発電所前から三沢峠下へ向かうコースを登りました。文学碑から野鳥観察休憩所を越えていきます。道は緩やかで、家族ハイキングにおすすめです。

右下に城山湖が見えてくると、三沢峠下、峰の薬師分岐に出ます。右に下っていき、東屋が建つふれあいの休憩所に着きます。眼下に城山湖、都心が霞んで見えます。自然林に囲まれたピークをふたつ越えると、ヤグラが建つ草戸山へ到着です。休日は南高尾山稜や高尾方面からの登山者もまざりにぎわう山頂です。

休憩後、小さな山之神神社を通り、高尾方面に下る梅の木平への下りと分かれ、右の城山湖への道を下ります。江ノ島まで延びる堺川の源流が左下にあります。次に大沢地青少年センターへの下りを左に分けて東屋が建つはなさき休憩所に着きます。

階段を降りるとまもなく城山湖の堰堤に出て、左に都心方面、右に城山湖から今歩いてきた稜線が望まれました。出口の扉は3月までは4時(4月から5時)に閉まります。右上の金毘羅宮が祀られる小高い龍籠(たつこ)山は都心から横浜方面の展望台となり、朝夕はカメラマンが並んでいます。再び城山発電所前に戻りました。マイカー登山にてごろな一周約5kmのコースで、駐車場(2個所)の閉鎖は4時です。

間もなく、ここも梅から桜、草戸山からの下りを小松地区にとればカタクリのシーズンを迎えます。

(文=白井源三/『神奈川県の山』共著者)

鈴鹿山系・藤原岳

花を愛でながら孫太尾根を登る

残雪が消え始めた藤原岳(写真=金丸勝実)

左上:ミスミソウ/右上:ヒロハノアマナ/左下:セツブンソウ/右下:フクジュソウ(写真=金丸勝実)

3月14日、晴れ

3月第二週の週末から暖かい日が続いています。鈴鹿の山は雪解けが進み、春の花が咲き始めました。

鈴鹿北部に位置する藤原岳は花の百名山に名を連ねる、フクジュソウの咲く山として知られています。フクジュソウ以外にもこの時期はセツブンソウ、ミスミソウ、ヒロハノアマナが見られます。

藤原岳への一般的なルートは、藤原町から登る大貝戸道です。歩きやすく、もっとも登山者の多いルートです。

7合目から落葉樹林帯に入り、花が多く見られるのもこのあたりからです。一方、県境稜線に沿って南側から登るルートとして、最近は孫太尾根ルートがよく使われるようになりました。こちらの方は距離が長く、ゴツゴツとした岩場や急登があるため、以前はバリエーションルートとして一部の登山者に歩かれていましたが、日当たりの良い尾根で花が少し早くから咲くので、最近では一般登山者にも歩かれるようになりました。

孫太尾根は花の多いルートで、この日はセツブンソウ、タチツボスミレ、フクジュソウ、ミスミソウ、ヒロハノアマナガ咲いていました。

県境稜線は残雪がありましたが、藤原岳山頂直下の南面は残雪が消え、フクジュソウやセツブンソウが咲き始めていました。山上台地は所々に残雪があり、春の訪れが感じられました。

これから緑の季節にかけ、春の花が楽しめると思います。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

鳥取県・大山

年末以来の大山ですが、すでにもう春山です

木道もあらわになった大山頂上、日本海に弧を描いているのは弓ヶ浜半島です(写真=舩越 仁)

六合避難小屋から七合沢にトラバース、ここから眼下の元谷へ下降します。先頭は筆者(写真=佐々木靖昌)

3月17日、晴れ

今年は例年になく雪解けの早い大山です。前日の雨でさらに雪がガクンと減ったようです。その雨で融けた雪が夜中の寒気で凍り、その上に新雪が覆っています。ちょっと歩き難い雪道なので、急登に備えて早めにアイゼンを付けることにしました。

五合目を過ぎると霧氷と真っ青な青空の下、登山者の列が続いています。

八合目からの木道は事前に仕入れた情報通りに現れていて、それもアイゼンの歯でスポンジ状に毛羽立って痛々しかったです。私たちはそこからは上り下りともアイゼンを外しました。それでも雪を被っている箇所もあるので一概に強制もできません。

ポカポカ陽気で気持ちのいい頂上台地でしたが(それでも気温はマイナス6度)、下山の時間になりました。雪の大山は初めてのメンバーもいるので、予定通り九合のキャラボク帯の雪面で滑落停止の訓練をし、体の動きを各自再確認した後、融雪氷で厄介な登山道の下山に備えました。

そして六合目から元谷へ下降、大神山神社を経て下山しました。

(文=舩越 仁/みつがしわ山の会)

熊本県・岩宇土山

春の花散策に出かけました

山頂の手前の特徴的な石灰岩の尾根を行く(写真=池田浩伸)

オコバ谷のフクジュソウの群生地では見頃を迎えていました(写真=池田浩伸)

3月15日、晴れ

久連子(くれこ)の岩宇土(いわうど)山登山口から急坂を登り尾根に取り付くと、アブラチャンの黄色い花やアセビの白い花、ヤブツバキの赤い花が石灰岩の点在するヤセ尾根を飾っていました。

標高1000mを少し過ぎると、明治時代のお地蔵様が祀られ、この先から足場の悪い急斜面のトラバースが始まります。しばらく進むと、植林帯の中に見ごろを迎えたフクジュソウの群生地が現れ、何枚も写真を撮影しました。

その先も落石を起こさないように注意しながら、足場の悪い急斜面を登って久連子岳から岩宇土山を目指します。久連子岳から岩宇土山の間はコース上いちばん展望がよく、久連子岳の石灰岩のピークでは北に上福根山や茶臼山、東に積岩山など展望が楽しめます。

岩宇土山からオコバ谷へ植林の急坂を下って、白崩平と名付けられたフクジュソウの群生地に到着しました。鹿ネットが設置されていますので、出入りのあとはネットが閉まっているか確認しましょう。広い台地に咲くたくさんの花を楽しみました。

標高1000mを過ぎたあたりから、山頂までは足場が悪いので落石に注意を。また、下山路は滑りやすいために雨の日などはさらに注意が必要でしょう。

(文=池田浩伸/登山ガイド)

裏磐梯・雄国山

想定したよりも大変な雪歩きでした

山頂直下、展望台がわずかにみえます(写真=葉貫正憲)

稜線にでてふりかえると白い平原となった檜原湖がみえました(写真=葉貫正憲)

3月12日、小雪模様、山頂強風

北塩原村の温泉施設「ラビスパ裏磐梯」より雄国パノラマ道で雄国山へいってきました。パノラマ道とは名ばかりで、稜線に出るまでほぼ4kmは背丈の高い落葉林の中です。

スタートしてすぐに急斜面が続き、尾根を外さないように上っていきます。途中、緩やかなピークがあってGPSとにらめっこをしながら方向を定めました。よくしまった雪の上に20cmほどの新雪がありましたが、歩くのに支障はありません。

稜線が近くなって風が強くなり、ガスがでてきたとき、突然スキーヤーがひとり下りてきました。聞いてみると雄子沢口へ下りるとか。足もとをみるとスキーのトレースが何本もつけられていました。

それから10分ほどではっきりした稜線となり、ガスの切れ間から雄国沼などもみえました。

スタートから3時間、やっと山頂に到着。強い風で指先が冷たく、また雄国沼も対岸の猫魔ヶ岳もまったくみえません。待っていても晴れる兆候は感じられず、すぐに引き返すことにしました。

帰路について20分ほどのところで男女の登山者とすれ違いました。こちらは、スノーシューではなくアイゼンをつけていました。

帰り道は上りに比べると快適でしたが、最後の急斜面はゆっくりゆっくり休憩しながら下りました。9時20分に出発し、ちょうど15時に下山。総行程は5時間40分と、想定よりは大変な雪歩きでした。

(葉貫正憲/福島県/70歳/よく行く山:福島県の山)

鎌倉アルプス

友人と春の鎌倉ハイキングに出かけました

樹齢400年を超えるタブの巨木をバックに御霊神社の河津桜(写真=葉山美和)

江ノ電脇の白桃の花(写真=葉山美和)

3月11日、曇りのち晴れ

北鎌倉駅から目指した六石見山展望台では、すでに富士山は春霞の中。時期的にも観光客はまばらです。

一度下山して浄智寺を横切り、起伏のある葛原岡コースを進みます。散り落ちたツバキの花で、山道はレッドカーペットのようでした。

この先には、醍醐天皇の忠臣として鎌倉幕府倒幕に活躍した、日野俊基卿を祀る葛原岡神社があります。最近では縁結びのパワースポットとして有名です。手作りの丸太の椅子で休憩し、チーズやラスク、生キャラメルと淹れたての珈琲で、プチ女子会となりました。

ここからの分岐を大仏コースに入ると、景色が開けわずかに海が望めます。さらに山道を進むとカフェの看板が出現し、山奥に似合わず赤白のパラソルが別世界のようです。

ハイキングコースも終盤、急な勾配を下り、かつての古道である大仏切通(国指定史跡)を過ぎると、大仏のある高徳院まで後わずか。ですが、あえて大仏トンネルを越え極楽寺方向に進みます。

アジサイで知られる成就院を過ぎ、御霊神社に到着。目当ての河津桜は散りかけていましたが、白桃は満開でした。ここから先は観光客にまじって、鎌倉駅まで散策をしました。

(葉山美和/千葉県/よく行く山:中央線沿線の山、奥高尾)

紀伊山地・明神平

台高の北に位置する山へ

雪が少し残っていた明神滝(写真=小林昭生)

かつてのスキー場跡と前山(写真=小林昭生)

3月14日、晴れ

紀伊半島の中央部を南北にふたつの山脈が走っています。世界遺産に認定された霊場と参詣道のある大峯山脈、もうひとつは台高山脈です。標高1200m以上の山々が50座以上あるといわれています。

今回訪れた明神平は台高山脈(台高の台は大台ケ原の台、高は高見山の高からとったもの)の北方に位置しています。比較的遅くまで雪が残っているところなので、まだ霧氷が見られるかもしれないとの期待がありましたが、残念ながら、登山口に向かう途中から望める明神平周辺の山々には雪はなさそうでした。

大きくえぐられた登山道や谷のあちこちでは倒木が無残な姿をみせていました。数年のあいだに随分変わっていました。台風の影響と思われます。

しばらく谷沿いを歩きますが、途中で谷を渡らねばなりません。雪どけの水がいつもより多いようでした。バンザイした格好で上部に張られたロープを伝って対岸に渡ります。同じパターンの徒渉が3箇所あるので、少し緊張するところです。

谷からはずれ、明神滝の上部を巻いてジグザグに進んでいくと滝の音が次第に小さくなり、ヒメシャラの木が目立つようになります。シーズンには霧氷のトンネルになるところですが、今は足もとに雪が残る程度でした。

左手の水場を過ぎれば明神平はあと少し。急坂を登り切れば広々とした草原台地に出ます。残されたリフトの台座が、ここがかつてスキー場だったことを物語っているようです。

この日の下界は20度を超える4月下旬の暖かさとか。解放感あふれる草原台地にも、柔らかい春の日差しがいっぱいに降り注ぎ、霧氷はなくても気持ちの良いひとときを過ごすことができました。自然の恵みに感謝です。

(小林昭生/奈良県/76歳/よく行く山:金剛山系はじめ関西一円の山々)

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週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

「夏休み 孫と一緒に 百名山」

「お父さん 登山道具を 片付けて」

「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

山で体験したちょっといい話や不思議な話、使って役立った装備や安全登山のための工夫、昔の登山の思い出などを募集します。お気軽にご投稿ください。こちらの投稿もペンネーム可です。文字数は400字以内でお願いします。


投稿先メールアドレス

weekly@yamakei.co.jp

※メールの件名に必ず「週刊ヤマケイ・表紙写真応募」または「週刊ヤマケイ・読者の登山レポート投稿」「週刊ヤマケイ・山の川柳」「週刊ヤマケイ・よもやまばなし」とお書きください。

※表紙写真に採用された方、読者の登山レポートに採用された方には週刊ヤマケイのロゴ入り測量野帳を進呈します(初回のみ)。また山の川柳で高段位になられた方にも測量野帳を進呈します。どしどしご応募ください。

編集後記

今週は水曜日が祝日なので、なんとか火曜日に配信準備ができるかと思いきや、やっぱりできませんでした。いま春分の日の夜7時、ようやくこの編集後記にたどりつきました。

それにしても20日から急に寒くなったのには驚きましたね。この天候の急変を受けて「低体温症」への注意喚起が必要だなぁ、と考えていたときに登山ガイドの木元康晴さんが昨年秋に週刊ヤマケイ特別号で「低体温症の防止と対処」について原稿を書いていただいたことを思い出しました。そこでその原稿の転載をお願いしたところ、ご快諾いただきましたので、巻頭でご紹介させていただきました。この場を借りて木元さんには御礼申し上げます。

さて、今週も皆さんの声をご紹介していきましょう。

「ヤマケイファンの集いを各地で開催しませんか?」

「もう少し文章を長く、写真もたくさんだと良いなぁと思います」

「イベント情報ももっと増やしていただければ幸いです」

「タイムリーな特集、たとえば「お花見登山」とかがあると良いと思う」

「時々、製品紹介をやってほしい」

「時々発行される特別号も楽しみです。もう少し増えればいいなと思います」

皆さん、本当にありがとうございました!

さて、5名様へのカレンダープレゼントですが、厳正なる審査の結果、鮫島信隆さん(千葉県)、八木茂良さん(静岡県)、栗原志乃さん(静岡県)、蓮田茂さん(茨城県)、葉山美和さん(千葉県)が当選されました! あらためて編集部からメールをお送りいたしますので、少々お待ちください。

というわけで、今回もアンケートを行います!

下記よりご記入ください。ご回答いただいた方の中から5名様に山と溪谷社のカレンダーをプレゼント! 簡単なアンケートですので、よろしくお願いします。

https://goo.gl/forms/cIqqhIoF3AvzOyPK2

株式会社山と溪谷社
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1丁目105番地
編集
佐々木 惣
アートディレクター
松澤政昭
SSデザイン
塚本由紀(T&Co.)
技術サポート
福浦一広、金沢克彦
プロデューサー
萩原浩司

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