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おかげさまで300号

2012年9月に産声をあげた週刊ヤマケイが、おかげさまで通巻300号を迎えることができました。

およそ6年にわたり続けることができましたのも、寄稿者の皆様、また読者の皆様の暖かいご支援の賜物です。

今回、創刊当時からご寄稿いただいている7名の方に「300号に寄せて」メッセージをいただきました。

九州の山の最新情報を美しい写真とともにお送りいただく、登山ガイドの池田浩伸さん。

東北の山の美しさを素晴らしい写真で伝えてくれる福井美津江さん。

関東周辺の山のみならず、みちのく潮風トレイルなど各地の魅力を伝えてくれる中村重明さん。

山のリスクや、山岳書籍の面白さを伝える連載を担当していただく、登山ガイドの木元康晴さん。

ため息が出るほど美しい高山植物の貴重な写真をお送りいただく奥谷晶さん。

雄大な北海道の山の魅力を美しい写真とともに伝えてくれる谷水亨さん。

そして首都圏近郊の山の魅力を多彩なレポートで伝えてくれる、山岳ライターの石丸哲也さん。

今週は池田さん、福井さん、中村さん、木元さんのメッセージを、来週号で奥谷さん、谷水さん、石丸さんのメッセージをご紹介します。

(佐々木 惣/週刊ヤマケイ編集部)

300号に寄せて 池田浩伸

週刊ヤマケイが300号を迎えるとのことで連絡を頂き、創刊当時を思い出してみました。

週刊ヤマケイとのお付き合いは、当時の週刊ヤマケイ編集長久保田さんから頂いた電話でした。

「山と溪谷社」と表示された携帯電話にでてみると久保田さんでした。週刊ヤマケイの趣旨について詳しい説明をうかがい、お役に立てればとお引き受けしたものの、原稿の書き方などにも不安がありましたが、創刊準備号02には佐賀長崎の多良岳、創刊準備号04には九重・大船山の原稿を送り、そのたびに久保田さんからお礼のメールを頂いていました。

そして、2012年9月20日創刊号が配信されました。

以来、全国のライターさんや読者の皆さんから発信される登山地情報を楽しみにしながら、これからも九州の登山地情報を発信していきたいと思っています。

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創刊準備号01創刊にあたって

『週刊ヤマケイ創刊準備号01』をお届けいたします。各地の登山道情報や開花、積雪の状況、注意が必要な点などをいち早くお伝えすることで、少しでもみなさまのお役に立てましたら幸いです。

山登りの魅力のひとつに、人と人との心のふれあいがあります。山道ですれ違うとき「こんにちは」と声をかけあうことが、山人の美しい習慣としてよく語られます。下山する人は、これから登る人に道を譲りながら、「あそこに綺麗な花が咲いていましたよ」、「頂上は寒いから気をつけて」などと、自然とあいさつの言葉も出てきます。

私たちが知らず知らずに受け継いできたそんな気風を、新しいメディアを通じてさらに深めていきたい。想いの交流や情報交換の場をもっと増やしたい。そんな気持ちから『週刊ヤマケイ』は企画されました。

「山や自然を愛するすべての人にご登録いただき、安全、確実に山登りを楽しんでほしい」。それが私たちの願いです。

ぜひ、お知り合いの山好きのみなさまにもお伝えいただき、稜線を吹く風の心地よさを知る人々、樹々の葉を透かして降り注ぐ光の温もりを感じる仲間の輪を広げていきませんか。今後ともご支援、ご愛読よろしくお願いいたします。(週刊ヤマケイ編集長 久保田賢次)

300号に寄せて 福井美津江

創刊300号おめでとうございます! 2012年からスタートし、6年も経過していたことにあらためて驚きました。はじめてご依頼をいただいた時は、あまりにも嬉しくて執筆要領が届く前に原稿と写真をお送りしてしまったほどです。

実際に現地で目にした季節の風景、気になった危険箇所のお知らせ、時には女性目線で原稿と写真をお送りさせていただいております。そして、週刊ヤマケイさんの愛読者でもあります。みなさまの新鮮な情報を参考にし、内容だけでなく本文中の表現方法を学ぶことも多くありました。遠方のために行けない山でも、美しい写真を拝見するのが楽しみです。お馴染みの寄稿者さんは親近感が湧き、お名前を見かけない週があると「今週はお休みかな」と勝手に思ったりすることも。

2015年2月、寄稿100回目ということで取り上げていただいた巻頭インタビュー「人と山」。北アルプスを訪れた時にそのインタビュー記事を覚えていてくださった方がいらっしゃいました。所属する山岳写真集団仙台の写真展の会場などでは「週刊ヤマケイを拝見しています」と度々お声掛けをいただき、励みになります。

訪れてみたい山は途切れることなく、ひとつ歩いてみるとその素晴らしさゆえに、また違う季節、他のコースもと夢は広がり、行きたい山がますます増えていくばかりです。これからも山で交わすご挨拶のような親しみやすい週刊ヤマケイさんでありながら、新企画も楽しみにしております。

引き続き山情報もお送りさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

300号に寄せて 中村重明

週刊ヤマケイ300号、おめでとうございます。本誌「創刊準備号01」(2012年7月19日)からの愛読者の一人として、この無料での質の高い情報提供の継続に大変感謝し、また敬意を表しております。

山の情報や登山レポートはネット上に文字通り“山”のようにあふれていて、登山計画に際しては、雑誌やガイドブックの情報だけではなく、ネットで最新の詳しい情報を得ることはとても重要です。が一方でネット上の情報は多過ぎるうえに質のバラつきが大きいのが難点で、参考にならない情報や自分にとっては冗長すぎる情報などの方が多いくらいです。

その点本誌は、「創刊にあたって」に掲げられている「各地の登山道情報や開花、積雪の状況、注意が必要な点などをいち早くお伝えすることで、少しでもみなさまのお役に立てましたら幸いです」という理念・狙いのもとにプロの手で編集され、週一回という適度な頻度で配信されるため、いろんな登山地の最近の状況を手軽に概観し、「開花、積雪の状況」等を知り、次に行く山を考えるのにとても参考になります。登山地情報以外にも参考になる情報が多く、毎週木曜の配信を楽しみにしています。

私の投稿は、創刊直後に始まった「読者の登山レポート」の募集に応じてレポートを投稿してみたところ、ほぼ全て掲載いただき、そのうちに読者のコーナーではなく、プロの登山ガイド、山岳ライター、山岳写真家などの方々のレポートの中に混ぜて掲載いただくようになってしまいました。しかしなにせ一介の登山愛好者のレポートで専門性や正確性に欠ける部分があると思いますが、「各地の登山道情報や開花、積雪の状況、注意が必要な点など」を発信する本誌に多少でもお役に立てればと今後も投稿を続けたいと思っています。

本誌が500号、1000号と続き、読者の安全で楽しい登山のための情報発信を継続されることに期待しています。

300号に寄せて 木元康晴

『週刊ヤマケイ』がとうとう300号を迎えたとのこと、おめでとうございます。300号といえば、6年に達しようという長い期間です。今では知り合った登山者の多くが、『週刊ヤマケイ』について口にするようになりました。こうやって認知度が高まってきているのを、まるで自分のことのように嬉しく感じています。

思い返すと、私と『週刊ヤマケイ』の最初の接点は2011年の暮れでした。新宿の居酒屋で知人の編集者やイラストレーターと飲んでいたときに、山と溪谷社の人も同席していて、いろいろお話しをしたのです。間もなくスタート予定の新しいウェブメディアの担当者だというその人のお名前は、佐々木惣さん。そしてそのウェブメディアが『週刊ヤマケイ』のことで、佐々木さんはその後、『週刊ヤマケイ』を切り盛りしていくことになったのです。

それでも私が初めて記事(登山地情報)を書いたのは、2013年4月4日配信の通巻29号とやや遅め。でも一度書いてからは、多くの山仲間やお客様に読んだと言ってもらえるのが楽しくて、どんどん書き続けることに。

さらに2016年4月から2017年3月までの『山岳遭難防止術』や、現在も継続中の『登山者のブックシェルフ』といった、連載記事も担当させていただいて、この5年あまりは正に『週刊ヤマケイ』と共に過ごしてきたという思いを強く感じています。

『週刊ヤマケイ』の良さの一つは、やはり執筆者が内容に責任を持って記事を書き、それをまとめる編集者・佐々木さんの目が行き届いていることでしょう。これは類似のウェブサービスとはひと味違う、山と溪谷社ならではの強みではないかと思います。今後もこの方針を継続しつつ、本当に登山者に役立つ情報を伝え続けてほしいと思います。

『八月の六日間』(北村 薫)

連載第18回(著者=小林千穂/山岳ライター・編集者)

『八月の六日間』北村 薫 著/角川文庫/640円+税

山へ行きたくなる小説

いっしょに暮らしていた恋人と別れ、幼なじみを亡くし、忙しい職場では「出来る男」だと思い込む上司の下で自分を抑える日々。どんよりした不調が重なる38歳の女性編集者・わたしが心を開きに行く場所、それが山だ。

主人公のわたしが行く山として小説内に描かれているのは、燕岳~大天井岳~槍ヶ岳~上高地の表銀座ルート、裏磐梯スノーシュートレッキングのツアー、上高地~蝶ヶ岳~常念岳~燕岳の常念山脈縦走、残雪期の北八ツ・麦草峠~白駒池~高見石~渋ノ湯、そして折立~薬師沢~雲ノ平~高天原温泉~三俣蓮華岳~双六岳~新穂高温泉の黒部源流域と、なかなかハードな場所ばかり。この5つは主人公にとっても特別な山行で、これらの山やさまざまな人との出会いを通じて、心のバランスを保ち、過去のとある出来事を受け入れられるようになっていく--。

小説の中では絶景の稜線を歩く時のお酒に酔ったような酩酊感、長い縦走を終え現実世界へ戻る憂鬱さ、不安にさせるほどの静寂さを持つ雪の山など、山が好きな人がどこかで感じるものが、見事に表現されていて、読んでいるうちに山へ行きたい衝動が湧いてくる。

主人公が山を歩くところは、まるで雑誌のルポを読んでいるようだ。槍ヶ岳で山小屋に着くのが遅くなったり、連休直後の山行で帰りのバスが運行していなかったりと、主人公が失敗しているところもリアル。実際に山を知らなければ書けないことだと思うが、ミステリー作家として名高い北村さんが山を歩くという話は聞いたことがない。

その種明かしは巻末の解説にあった。やはり著者は山には登らずに、これを書いたそうだ。登山をする人に取材をしたり、さまざまな資料を参考にしたという。私など、実際に目にして体験したことでも文字にするのに苦労しているというのに、自分すら行ったことのない世界に多くの人を引き込めるのだから、まったく、小説家はすごい。

主人公の本選びに注目

さて、主人公の「わたし」は山へ行く時に必ず文庫本を数冊持っていく。常備薬と同じで、本を持っていないと不安になるそうだ。山行の直前、持っていく山道具を揃え、甘味と塩味のバランスを考えながらお菓子を袋に詰める。そしてそれらをパッキングし終わり、いつも山行準備の最後にするのが本選びだ。主人公は数あるであろう本の山のなかから、その山行に合わせて本を選ぶ。

実はこれ、私もよくする。文庫が並ぶ書棚の右上から左へ背表紙のタイトルをざっと目で追い、家を出る直前に持っていく本を決めるのだ。これから行く山への期待と不安に胸を膨らませながら、ともに山旅をする「友」を選ぶわずかな時間。これが、とても楽しいひとときだったりする。といっても、いろいろ考えながら選んだわりに、結局はこの小説の主人公と同じように、山ではあまり開くことなく、カバーだけがくたびれた本を家に持って帰ることも多いのだけれど……。

この小説の主人公がどんな本を選ぶのかも見どころなので、お楽しみに。

信州の山岳遭難現場より

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。

6月11日に第114号が配信され、5月31日から6月3日にかけて発生した4件の遭難事例を紹介しています。

6月に入り、各地の山では開山祭が行なわれ、本格的な登山シーズンが始まりました。近年は体調不良からくる行動不能による遭難が増えています。トレーニングや体調管理に努め、登山中は水分やカロリーを補給し、日程・時間に余裕をもって行動するようにしましょう。

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・5月31日、北安曇郡池田町の山林に、タケノコ採りで入山した91歳の女性が同行者とはぐれ、行方不明となりました。警察、消防団などで捜索し、翌1日、通行人により発見され病院に収容されました。ケガはない模様です。

・6月3日、八ヶ岳の硫黄岳から天狗岳へ縦走中の58歳女性が夏沢峠付近の登山道で転倒し、右足骨折の重傷を負い、県警ヘリが救助して病院に収容しました。

・6月3日、下高井郡の岩菅山山頂付近で、61歳男性が疲労のため行動不能となり、県警ヘリが救助して病院に収容しました。

6月3日、岩菅山で発生した遭難現場の状況(写真提供=長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)6月7日付)

・6月3日、下高井郡の大高山付近の小燕沢で、64歳男性が渓流釣りの途中に岩場で足を滑らせ滑落、負傷しましたが、群馬県防災ヘリが救助して病院に収容しました。

(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)

・・・

下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

なお、6月6日NHK「視点・論点」(Eテレ13:50~14:00)で静岡大学の村越真教授による「アウトドアを安全に楽しむには」が放送されました。山岳遭難の現状・分析、遭難リスクのハザード要因、リスク特定能力についてわかりやすく解説されており、ハザード要因回避のために「信州 山のグレーディング」が取り上げられております。番組ホームページからご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/

(文=週刊ヤマケイ編集部)

北アルプス安全登山アピール

6月30日(土)、東京・神田神保町で開催

北アルプスを取り巻く富山県・長野県・岐阜県の山岳救助関係者が、遭難事例紹介やトークセッションを行い、安全登山を呼びかける「北アルプス安全登山アピールin東京」を今年も実施します。6月30日(土)、東京・神田神保町に各県の山岳救助隊の精鋭が一堂に会し、山岳遭難防止のためにリアルで役に立つイベントです。

山と溪谷社と日本山岳遺産基金では、このイベント企画・運営に協力します。参加希望の方は、下記のヤマケイオンラインにある申し込みフォームよりお申し込みください。

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「北アルプス安全登山アピール in 東京 2018」

開催日:2018年6月30日(土)15:00~17:00

※開催30分前から開場、受付開始

会場:インプレスグループセミナールーム

東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビルディング(地下鉄神保町駅下車徒歩3分)

内容:

2017年の北アルプスの遭難事例から ~長野県、富山県、岐阜県の山岳遭難救助隊員からの山岳遭難 事例報告

Part1「遭難の実態を知ろう」と題して、各県の北アルプスの遭難の事例を発表

Part2トークセッション「遭難救助現場から見えてくるもの」

質疑応答

※各回とも内容は同じ

定員:80名(先着順。定員になり次第受付を終了)

参加費:無料(要事前申し込み)

主催:北アルプス三県合同山岳遭難防止対策連絡会議

協力:株式会社山と溪谷社・日本山岳遺産基金

申し込み方法:下記リンク先の申し込みフォームから、お申し込みください。

https://www.yamakei-online.com/secure/kita_a_anzenn_18.php


ヤマケイ文庫『白き嶺の男』

新田次郎文学賞受賞作がヤマケイ文庫で復刊!

『白き嶺の男』著者=谷 甲州/6月18日発売/800円+税/文庫判/352ページ/ISBN=978-4-635-04851-4

山岳会の新人山行として冬の八ヶ岳縦走に参加した加藤武郎。山岳会の常識にとらわれない彼の行動に、リーダーは戸惑い、怒りを覚えるが、その夜、猛吹雪がふたりを襲う--(白き嶺の男)

週刊ヤマケイ読者の皆様ならご存知、不世出の登山家、加藤文太郎。彼をモデルにした小説といえば、新田次郎の『孤高の人』が有名ですが、本作品はヒマラヤ登山の経験もあるSF・冒険小説作家の谷 甲州が加藤文太郎をモチーフにして1995年に執筆、1996年度の新田次郎文学賞を受賞した本格山岳小説です。

主人公は加藤武郎。上述のように、彼が山岳会の新人として冬の八ヶ岳縦走に挑むところから物語は始まります。そして舞台は南アルプスの渓谷、冬の北アルプス・滝谷、さらにヒマラヤの高峰へと移っていきます。

物語はほとんど登山の場面のみで進んでいきます。登山以外の描写は一切なし。山岳会の背景説明などが最小限あるものの、登場人物たちのふだんの生活などはまったく描かれていません。だからこそ1シーン、1シーンの迫力、濃度が違います。

たとえば冬の八ヶ岳で猛吹雪に襲われ、ツエルトのまわりで強引に除雪する場面。

たとえば南アルプスの沢で、夜中に増水し、命からがら退避する場面。

そして「不死身の加藤」を髣髴とさせる、ヒマラヤ高峰でのラッセルシーンなどなど。

さらに登場人物の心理描写にも目を見張るものがあります。山中での煩悶や葛藤など、登山家の深奥を突く描写に、ページをめくる手が止まらないことでしょう。

小説が好きな方はもちろん、「小説は苦手かも・・・・・・」という方でも、山が好きであればきっと満足していただける短編集です。

北アルプス・白馬乗鞍岳

解氷進む白馬大池

解氷進む白馬大池にて(写真=増村多賀司)

左上:船越ノ頭から小蓮華山を望む、右上:雷鳥坂から振り返り見る白馬大池、左下:白馬乗鞍からの下りから見る天狗原、右下:船越ノ頭を縄張りとするライチョウ(写真=増村多賀司)

6月9日、晴れ

栂池高原から始発ゴンドラ(8:00)とロープウェイに乗りました。

登山道は残雪に埋まっているのでルートファインディングは慎重に。天狗原までは部分的に夏道が出ていますが、ほとんど残雪に覆われています。天狗原は去年新しく設置された木道が出ていますが、面倒でもアイゼンを外しましょう。

白馬乗鞍岳への取り付きからは再び分厚い雪に覆われています。ここは徐々に斜度が増していきますのでアイゼンとピッケルがほしい所です。山頂への一角へ出る夏道への入り口には赤布があるので見落とさないように。

白馬乗鞍岳山頂部はすっかり雪が消えて夏道を進みます。黄色いミヤマキンバイが咲き始めていて夏山シーズンが近い事を実感しました。先週梅雨入りしたばかりですが頭上には青空が出て眼下には雲海が広がっています。下界は予報通り曇りですが、山の上は晴れています。白馬大池はまだ残雪が多いのですが一部解氷が進んでおり、夏の日差しを受けてエメラルドグリーンになっている所がありました。

雷鳥坂へ進むと二羽のオスライチョウが縄張り争いをして活発に飛び回っていました。船越ノ頭には縄張りを確保したのかじっと動かないライチョウがいます。振り返ると、まるで何かの目のような白馬大池が見下ろせました。

稜線は小蓮華山の手前まで夏道が出ていますが船越ノ頭を今日の山頂として引き返します。山頂の一角にはもうハクサンイチゲが咲き出していました。

なお、この時期の栂池ゴンドラ、ロープウェイは8:00始発、下りは16:40が最終になります。下山に間に合うように、余裕のある計画が必要です。

また、残雪が多く登山道が寸断されているのでルートファインディングが必要です。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

北アルプス・栂池自然園

花が咲き始めた栂池自然園

ミズバショウ咲く朝の栂池自然園(写真=増村多賀司)

左上から時計回りにリュウキンカ、ゴゼンタチバナ、シラネアオイ、ミツバオウレン、オオサクラソウ、シナノキンバイ、サンカヨウ、イワカガミ(写真=増村多賀司)

6月10日、晴れ

栂池自然園はまだ70%ほど残雪に覆われていますが、竹竿でルートが誘導されています。一部夏とは違う、残雪期ならではのルートを楽しみました。

入口からすぐの水芭蕉湿原ではミズバショウとリュウキンカが咲き始めています。楠川から先はしばらく雪の上ですが、浮島湿原はリュウキンカが見頃でシナノキンバイも咲いています。ヤセ尾根だけは花が満開でオオサクラソウ、シラネアオイ、サンカヨウイワカガミ、マイヅルソウ、ミツバオウレン、ゴゼンタチバナ、ムラサキヤシオツツジ、オオカメノキなどが咲き、ここだけ季節が先行している様子です。

まだ雪が多い栂池自然園ですが、雪解けとともに順次登山道も開通して花の季節を迎えます。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

南アルプス前衛・甘利山、千頭星山

満開の小梨とレンゲツツジを満喫

甘利山夜景。雲海が現れ幻想的な景色となった(写真=伊藤哲哉)

レンゲツツジ咲く甘利山。日の出後に再び現れた雲海の向こうに富士山も見える(写真=伊藤哲哉)

5月26日、6月8日

満開の小梨(ズミ)とレンゲツツジの撮影に甘利山を訪れ、千頭星山まで足を伸ばしました。

5/26の天気は高曇り、時々陽がさすこともある初夏の陽気です。早朝に甘利山駐車場を出発し、あずまやでは満開の小梨の花が出迎えてくれました。芳しい香りも漂っています。

あずまやで富士山を眺めた後、甘利山山頂を目指します。山頂のレンゲツツジはまだツボミでした。甘利山山頂から30分ほどで奥甘利山山頂です。奥甘利山から1時間強で御所山の分岐を千頭星山方面に折れ、さらに30分ほど進むと千頭星山山頂です。千頭星山山頂までの登山道はクマザサなどの下草が刈られ、よく整備されています。登山道の途中で、満開の小梨やヤマツツジの花、ダケカンバやカラマツの新緑を楽しむことができました。千頭星山山頂では眺めはありませんが、カラマツの間から漏れてくる陽光を浴びながらしばし休憩し、甘利山まで戻りました。

6/8は梅雨の合間の晴れで、夜間から星空撮影をしました。空には二十三夜の月が昇り始め、気温はそれほど低くはなく、上着を1枚足して過ごします。真夜中ですが甘利山駐車場は満車状態です。甘利山の撮影ポイントから見た甲府盆地は、雲海で満たされていて幻想的な風景が広がっています。南の方角に目を向けると、うっすらと天の川が見え、夏の大三角形や南斗六星も観察することができました。夏の訪れが近いことを実感できます。

早朝になると次々に登山者とカメラマンが甘利山山頂に向かっていきます。黎明の富士山遠景写真を撮影し、レンゲツツジ咲く甘利山の撮影に勤しみました。

登山道ではシカよけの柵や、シカに樹皮をむしられないよう網が張られている木々を見かけました。シカによる植物への被害が大きいことを感じます。山を守る方々のおかげで、私たちは景色や花を楽しむことができることを忘れてはいけません。

(文=伊藤哲哉/『改訂新版 千葉県の山』共著者)

南アルプス前衛・日向山

白砂の山頂で奇岩のオブジェと雄大な眺めを楽しむ

雁ヶ原付近にて。八ヶ岳を眺める登山者(写真=伊藤哲哉)

急斜面にある奇岩。新緑とのコントラストが美しい(写真=伊藤哲哉)

6月8日、晴れ

尾白川渓谷駐車場は、甲斐駒ヶ岳を目指す黒戸尾根コースだけでなく日向山の登山口でもあります。準備体操をしながら空を見上げると、南アルプス方面から厚い雲が流れているのがわかります。9時すぎには蒸し暑くなってきて、真夏のような陽気に。登山口で登山届を提出し、矢立石駐車場を目指します。

しばらく歩いていると尾白川キャンプ場から楽しそうな声が聞こえてきました。標識を日向山方面に折れ、急な坂を1時間ほど登ると矢立石駐車場に到着。矢立石で小休止して登山道を登っていきます。

登山道では眺めはありませんが、ハルゼミの合唱と小鳥たちの鳴き声が心地よい音のシャワーになります。1時間30分強登っていくと日向山の三角点に着きました。さらに少し進むと目的地である雁ヶ原に到着です。

雁ヶ原には白い砂地が広がっていて、まるで海岸にいるような気分になります。三角点まで展望もなくひたすら急坂を登っていくので、雁ヶ原の展望はとても新鮮で、思わず歓声をあげたくなります。北東方面には、名峰八ヶ岳を眺めることができ、西側にも南アルプスの峰々を見ることができます。雁ヶ原には、数多くの奇岩があって、南アルプスの薬師岳、地蔵岳や甲斐駒ヶ岳の山頂を彷彿させる景色が広がっています。これら奇岩のオブジェを捉えながら撮影に専念します。

帰りは登ってきた道を戻り、2時間ほどで尾白川渓谷駐車場に到着しました。尾白の湯に立ち寄り、疲れを癒して帰宅の途に着きました。

なお、尾白川林道の一部が崩落し、2017年10月23日より矢立石駐車場まで通行止めとなっています。矢立石では錦滝方面への通行が禁止されています。現在、日向山山頂から錦滝に向かうコースも崩落のため通行禁止となっています。

(文=伊藤哲哉/『改訂新版 千葉県の山』共著者)

会津・蒲生岳

会津のマッターホルンと称される尖峰

只見市街地側より仰ぐ蒲生岳。惚れぼれするような尖峰です(写真=平田謙一)

南尾根コース上から只見駅周辺の市街地を隔てて浅草岳(右)や毛猛山塊(左)(写真=平田謙一)

6月2日、快晴

新潟県境をなす福島県西端部にして、豪雪の地で知られるのが、豊かな自然に包まれた只見町です。この地を代表する浅草岳や会津朝日岳、要害山とともに「只見四名山」のひとつに数えられるのが、天を突く山姿により会津のマッターホルンとも呼ばれる蒲生岳(がもうだけ)828m。山開きを翌日に控えた晴天の一日、一般的な南尾根コース(久保登山口コース)から上級コースである北壁コースを周回しました。

「一般的な」とはいうものの、南尾根といえども山姿通りの急峻さで、眺めのよい露岩の尾根や手足を使ってよじるような段差も現れ、ちょっぴりスリル感と変化のある登山内容であなどれません。初級者の場合には、中級者やよきリーダーのもとで余裕をもって楽しむといいでしょう。

山頂直下の分岐からは、左手に分かれる西側岩壁コースをたどり(より一般的なのは右<東>に分かれる鼻毛通し経由)、高度感あふれる眺望が待つ山頂に立ちました。

下山にとった北面側、北壁コースは、いきなり鎖場の連続から始まります。只見川側に切れ落ちた高度感あるバンド状の長い鎖場や、やや傾斜の強い鎖箇所も現れます。一般的には「鼻毛通し」経由の南尾根下山としたほうが無難ですが、この場合でも岩の段差や濡れた岩道でのスリップには注意したいものです。

なお「北壁コース」とは、従来からの小蒲生コース下部の「付け替え道」的な新道です。山頂から鎖場連続をへてブナ交流広場~風穴までは、従来の小蒲生コース通り。小蒲生コースは、ここから白糸清水をへて小蒲生沢沿いの作業道に降り立つものでしたが、地震や雪崩の影響により道が荒れたゆえに小蒲生コースを閉鎖。風穴から急な山腹を長々と横切って進み、久保登山口へ至る新道をしたものです。2016年頃より整備をはじめ、いまだその途上にあるといいます。危険度は低いものの、片斜面で足場がわるい所も多々あります。短い登り下りなどもあって、思った以上に歩きにくく疲れる道でした。

(文=平田謙一/アルパインオフィス・てく&てく むさしの山岳biz 山岳ガイド)

谷川連峰・谷川岳

シラネアオイが優美に咲いています

雪渓が蛇行しながら一ノ倉沢最深部まで続いています(写真=板橋 励)

シラネアオイが紫色の優美な花を咲かせています(写真=板橋 励)

6月2日、快晴

谷川岳の融雪期登山禁止期間が終わったことから、一ノ倉沢衝立岩中央稜テールリッジ末端まで写真撮影に向かいました。

午前5時、谷川岳登山指導センターに登山計画書を提出し出発。日本三大急登の一つ、西黒尾根登山口に着いた時には、土曜日ということもあり多くの登山者が林道を登り始めていました。マチガ沢出合を過ぎ、春蝉が鳴くブナの森をしばらく進むと、道が開け一ノ倉沢出合に到着。しばしの休憩の後、本谷の雪渓に入りました。

雪渓は蛇行しながら一ノ倉沢最深部まで続き、雪面には積もった枯草が黒い斑点模様を作っていました。雪渓は踏み跡が残らないほど固く締まっていましたが、沢の両側は新緑の木々に覆われ朝日に輝いています。さらに雪渓を進むと、岩壁際に口を開けたラントクルフト(隙間・亀裂)の奥からは雪解け水が轟音を立てて流れ、雪渓上にはブロック雪崩の痕でしょうか、雪の塊がいくつか見受けられました。

7時半過ぎ、テールリッジ末端に到着。すでに中央稜には幾筋かのザイルが架かり、クライマーの掛け声が谷に響いていました。雪どけした繁みにはシラネアオイが紫色の優美な花を咲かせ、風もなく抜けるような青空の下、急勾配で谷奥へと続く雪渓とそびえ立つ衝立岩を時の経つのも忘れてカメラに収めてきました。

(文=板橋 励/山岳写真同人四季会員)

谷川連峰・平標山、仙ノ倉山

ハクサンイチゲとハクサコザクラ咲く花の稜線

ハクサンイチゲの大群落(写真=小瀬村 茂)

シャクナゲ(背後は仙ノ倉山)(写真=小瀬村 茂)

6月8日、晴れ

平標(たいらっぴょう)山はハクサンイチゲが咲く山として知られていますが、今年はシャクナゲが数年ぶりの当たり年と知り、梅雨入り直後の晴れ間に登ることにしました。

コースは平標山登山口駐車場から松手山、平標山を経て仙ノ倉山までの往復です。階段が続く松手山までの急登をのぼりきると視界が広がり、振り返ると背後に苗場山が見えてきます。松手山が平標山へのほぼ中間点で、ここからは見晴らしのよい展望尾根の登山道に変わります。

夜明け前に登り始め3時間ほどで平標山に到着しました。山頂では越後駒ヶ岳や中ノ岳、八海山など越後の山々の稜線が展望できます。

ここから仙ノ倉山へ向かって少し下った鞍部付近が平標山いちばんの花畑です。白いハクサンイチゲの大群落の中に赤いハクサコザクラや黄色のミヤマキンバイが点在して咲き誇っていました。花が見頃になるこの時期は多くの登山者が訪れて混雑するところですが、日が昇り始めたばかりの早朝のため今はわずか数人だけで、静かな木道歩きが楽しめました。

ハクサンイチゲの花畑の中に大きなベンチがあるので、花の咲く時季には平標山の山頂よりもこちらでの休憩がいいでしょう。

鞍部を登り返した小高い尾根沿いに今回目当てのシャクナゲが咲いていました。しかしこちらはすでに花は終盤でした。それでも山腹の至るところにシャクナゲが咲いていて、花の盛りを逸してはいたもののきれいな遅咲きの花を選んで写真に収めました。

(文=小瀬村茂/山岳写真工房)

群馬県・玉原湿原、鹿俣山

関東一といわれるブナ林へ

玉原湿原に咲くコバイケイソウ、ヒオウギアヤメとワタスゲ(写真=中村重明)

「ブナ平」左:ブナ地蔵、右:ブナの古木(写真=中村重明)

6月9日、曇り

上州武尊(じょうしゅうほたか)山の西側の標高約1200mにあり「小尾瀬(こおぜ)」とも呼ばれる玉原(たんばら)湿原を訪ねました。

昨年から今年10月末(予定)まで木道の全面改良工事中で通行可能なのはごく一部ですが、湿原は一面ワタスゲに覆われ、コバイケイソウやヒオウギアヤメがきれいに咲いていてとても見応えがありました。

湿原散策後は、通行止め区間を迂回し、玉原越入口から鹿俣山(かのまたやま)に登りました。関東一と言われる見事なブナ林を巡る行程です。立派なブナの木々の他、ギンリョウソウやマイヅルソウ、ベニサラサドウダンなどが目を楽しませてくれました。また山頂からは、谷川岳方面の展望は得られなかったものの、武尊山の雄姿は望むことができました。

(文=中村重明)

日光白根山

シラネアオイ咲き乱れるロックガーデン

弥陀ヶ池に向け下山。この先落石注意です(写真=小山貴之)

シラネアオイと日光白根山。ロックガーデンより(写真=小山貴之)

6月9日、曇りのち晴れ

ロックガーデンのシラネアオイが見頃との知らせを受け、梅雨の貴重な晴れ間を活かし日光白根山に行ってきました。じつは、冬に訪れた時から登山の機会を伺っていたのです。

日光白根山ロープウェイを利用し登山開始。今回は反時計回りに山頂を経由し周回するルート(登り:白根山ルート~下り:弥陀ヶ池ルート)をとりました。開花はまだ先ですが、登山道脇にはイワカガミ、ハクサンシャクナゲの大群生地があります。早咲きのイワカガミが出迎えてくれました。山頂を通過後は弥陀ヶ池方面に下ります。このルートは浮石が多いため落石に注意して通過しましょう。弥陀ヶ池分岐を左に行き七色平を経由しロープウェイ駅まで戻りました。午前中はあいにくのガスで展望はほとんどありませんでしたので早々に下山し、ロックガーデンの花々を楽しみました。

ロックガーデンではシラネアオイは咲き乱れ、他にもチングルマ、エゾノツガザクラが彩りを加えてくれます。コマクサも咲き始めていたのは思わぬ収穫でした。登山道上の開花はまだまだこれからといったところです。下山後には天気も回復し、花の色が際立っていました。

日光白根山には散策路、登山道があります。危険箇所などはありませんが、白根山山頂を目指すのであれば普段着ではなく登山ができる服装と靴がいいでしょう。森林限界以降はダイナミックな山容を体験できます。ロープウェイ山頂駅前のロックガーデンまでであれば、登山をしない方でも高山植物を身近に感じる良い機会になると思います。

(文=小山貴之/長野県自然保護レンジャー)

日光・裏男体林道、金精峠

日光国立公園でプチハイク&プチ登山

左上:ようやく観察することができたオオバミネカエデ(雄花序がついていました)。右上:岩の上で咲いていた、正にイワカガミ。左下:うっかりつまづいた先にはミツバオウレンの群落が広がっていました。下中央:大きなアミガサタケ。右下:きれいな甲虫ばかりを食したのはどんな動物でしょうか(写真=林 由季子)

左上:裏男体林道は舗装された車道なので快適に歩けます。右上:志津峠の交差路。男体山に行くにはここからさらに右へ進みます。左下:湯ノ湖を一周できる遊歩道。右下:金精峠登山道は火山土質の滑りやすい急坂が続きます(写真=林 由季子)

6月8日、晴れのち曇り(霧)

地元の山域ではいまだ見る機会のないカエデ属を探したくなり、隣県まで足を延ばしました。山と高原地図に記載されている登山道を利用し、日帰りなので目的の植物が見つかったら次の場所へ移動というルールを設けました。

まず初めに歩いたのは梵字飯場跡駐車場から志津峠までの裏男体林道です。カラマツ植林と広葉樹が織りなす中、シウリザクラやサラサドウダンをはじめ、念願だったオオバミネカエデの花を観察することができました。

続いてレンゲツツジが満開の湯ノ湖を散策後、金精峠方面まで足を延ばしてみましたが、金精峠登山道は火山岩質の滑りやすい急坂が続くので、足もとが明るいうちに引返しました。ミネカエデの花は見つけることができませんでしたが、ミツバオウレンやイワカガミなどのお花と出あうことができました。

(文=林 由季子)

東京都・高幡不動と高尾山

アジサイをたずねるハイキング

左:見ごろに入った高幡不動のアジサイ、右上:高幡不動の五重塔、右下:五重塔にまつられた観音像。お姿を撮るのははばかられたが、アジサイを飾る寺院の方の心を伝えたくて(写真=石丸哲也)

上から時計回りに、アジサイ咲く薬王院飯縄権現堂、金比羅台から都心方面の展望、新設された登山届のポスト、4号路に自生していたヤマアジサイ(写真=石丸哲也)

6月9日、晴れ

嫌いなわけではないけれど、特に好きではなかったアジサイ。なぜ、好きな花のひとつになったのか、心の中を探ってみると、「また季節はめぐりきて/うすむらさきのほほえみはよみがえる」で始まる金井直氏の詩「あじさい」に出会ったことがきっかけのようです。以前、この詩の感想を書いたことがあります。「深く愛した人が非業の死によって失われた喪失感…。透徹した、はかない抒情に結晶させ…、あなたと私、私と花などが渾然となって宇宙に溶け合っていくような感覚と、それを離れて自分と向き合う自身の確かさにも惹かれる」。詩の全文を紹介したいところですが、引用は憚られます。全文をブログなどに掲載している方が複数いらっしゃるので、興味をもたれたら「金井直 あじさい」で検索してみてください。

私事ですが、姉が病没し、先週は葬儀が行われました。ごく内輪のつつましい式でしたが、棺のかたわらにアジサイが活けられていて、義兄が「アジサイが好きで、庭で丹精していたのが咲き出したので供えた」と教えてくれました。姉もいつのころからかアジサイが好きになったようで、DNAに仕込まれたものがあったのかもしれません。

週末はもともとアジサイをたずねるハイキングを考えていたので、5月27日に引き続いて高幡不動へ。暑い日が続いてアジサイがくたびれているのでは、と心配していましたが、前夜、雨が降ってくれました。前回、見ごろだったヤマアジサイ系の品種がピークを過ぎ、ガクアジサイ系など色鮮やかで花も大きいものが多い品種が咲き始めから見ごろになっていました。姉がことさら好きだったというコバルトブルーのガクアジサイもあちこちに咲いていて、ところどころに残る雨のしずくが涙のようにきらめいていました。

アジサイを観賞した後は、こちらも前回に引き続いて高尾山へ。コースはアジサイの植栽が多そうな1号路を選びました。杉並木の参道などに植えられたアジサイは標高がやや高いことと、木陰になっているせいか、見ごろの花は一部で、まだ咲き始めのものが多かったです。帰りは小仏城山か景信山まで足をのばそうかと考えていたのですが、寝不足で疲れ気味だったので、山頂でゆっくりした後、野生のヤマアジサイが咲き始めた4号路を下り、金比羅台から金比羅道を下って、住宅地をアジサイも眺めながら帰りました。

高幡不動のアジサイはしばらく見ごろが続きそうですが、例年より早く咲き進んでいるようです。高幡不動尊あじさいまつりは7月7日(土)まで、例年の見ごろが7月上旬までとされていますが、早めに出かけるほうがよさそうです。

高尾山は花が少ない時期ですが、テイカカズラ、ニガナがあちこちに咲いていました。テイカカズラは高いところに咲いていることが多く、姿は見えないものの、漂ってくる香りでも咲いていることがわかります。そのほか、オオバギボウシが咲き始め、ヤマボウシはピークを過ぎたようですが、まだ見ごろが続いていました。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

丹沢・大室山

日の長い時期に最適な西丹沢の大きな山へ

破風口を過ぎたところで振り返って見た、加入道山から続く稜線(写真=木元康晴)

大室山頂上手前の木道区間。周囲にはオオバイケイソウが生え広がっていました(写真=木元康晴)

6月8日、晴れのち曇り

西丹沢ビジターセンターを起点に、大室(おおむろ)山を登る周回コースを歩いてきました。コースタイムが8時間以上と長いため、日の長い今の時期に適したコースです。

出だしは車道をしばらく歩いて、用木沢出合へ。犬越路(いぬこえじ)に向かう道を右に見て直進し、車止めゲートを過ぎると、堰堤の連続する沢沿いの道に変わります。間もなく道は左へ向かい、小尾根を越えると「白石の滝」の標識が現れますが、生い茂った木々の葉っぱに隠されて、その姿はチラリとしか見えませんでした。

その先、沢の中の道が不明瞭な区間を通過し、鎖場から階段を登って白石峠へ。そこからひと登りで、きれいな避難小屋が立つ加入道(かにゅうどう)山の頂上に着きました。

加入道山からは稜線を東へ向かい、前大室の小ピークを越えて破風口と呼ばれる鞍部へ。登り返す途中で右背後を振り返ると、西丹沢の山並みの向こうに、うっすらと富士山を望むことができました。

やがて山頂が近づき、木道の上をしばらく歩くとベンチの設置された稜線分岐へ。そこから北東に向かうと、5分足らずで大室山頂上です。やや遅い時刻の到着だったためか、他の登山者の気配はなく、ひっそりとした雰囲気でした。

下山は分岐まで引き返し、犬越路方向へ。しばらくは単調な下りですが、枝ぶりが見事なブナの木が多く、飽きることなく歩きます。避難小屋の立つ犬越路からは一気に下り、最後は立派な橋を渡って用木沢出合へ。あとは車道を引き返し、西丹沢ビジターセンターに戻りました。

(文=木元康晴/登山ガイド)

御坂山地・釈迦ヶ岳、黒岳

カモメランと富士の絶景を楽しむ

ミズナラの木陰にひっそりと咲くカモメラン(写真=奥谷 晶)

ヤマツツジ咲く樹間から見る富士の雄姿(写真=奥谷 晶)

6月8日、晴れのち曇り

梅雨の合間の晴れの1日、御坂山地の釈迦ヶ岳・黒岳に登ってきました。カモメランの群落がお目当てで、昨年あたり数が激減したと聞いていて心配していました。それでも黒岳山頂付近の網で保護された区画に、わずか数株だけでしたが、ひそやかに咲くカモメランを見る事ができました。

釈迦ヶ岳から黒岳へはミズナラなどの木立を縫うように気持ちの良い尾根道がつづき、快適でした。黒岳の山頂先の展望台からは、河口湖をはさんで快晴の富士の絶景を堪能できました。

午後には早くも山麓と山頂が雲に覆われていき、天候悪化を暗示しているようでした。

(文=奥谷 晶)

鈴鹿・石水渓谷鬼ヶ牙

夏のアルプスバリエーショルートに備えた岩トレ

山頂に繋がる岩尾根P2の登攀(写真=金丸ふく子)

登攀終了後に鬼ケ牙南峰のピークで展望を楽しむ(写真=金丸ふく子)

6月9日、晴れ時々曇り

東海地方が梅雨入りし、山行プランの変更に悩まされる季節になりました。今回は梅雨の合間の晴れの日を狙って鈴鹿山系石水渓谷にある鬼ヶ牙の岩場に入りました。

鬼ヶ牙は標高が500mに満たない山で、入山者もそれほど多くはありません。しかし岩場の多い山で、山名からは険悪なイメージを抱かされます。また、2011年5月にエベレストで急逝したアルピニストで冒険家の尾崎隆さん(三重県亀山市出身)が登山の練習でよく登った山だそうです。

南面の岩場には何本かのルートが引かれています。ほとんどがスラブ、フェイス系であまり変化はなく、グレードも入門者レベルですが、山頂に繋がる2ピッチ以降はそれなりに楽しめると思います。クラックがなくカムが使えないので、支点はボルトが整備されています。

実質的な登攀は最初の4ピッチで、次の2ピッチがブッシュ帯に入り、その先は再び岩場P2になります。展望が大変良い岩稜ルートで、最後のピークP1は巻くこともできます。ここで登攀終了となります。後は歩きになり、尾根をたどっていくと鬼ヶ牙南峰に到着します。山頂は岩場のピークで展望が大変良く、仙ヶ岳、野登山、臼杵岳など鈴鹿山系南端の山が一望できます。

帰路は一般登山道で下りますが、傾斜がきつく谷筋の岩場は濡れていることが多いので注意を要します。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

奈良県・矢田山

アジサイを愛でる里山ハイキング

木漏れ日の森を散策する矢田の道(写真=山口敬二)

矢田寺の境内にあふれる色とりどりのアジサイ(写真=山口敬二)

6月9日、晴れ時々曇り

大阪平野と奈良盆地を分け隔てる生駒山地の東側には、南北に矢田丘陵(矢田山 332m)が横たわっています。ここ矢田丘陵では、6月に矢田寺のアジサイを愛でる矢田山ハイキングがお薦めです。山中には「矢田の道」というハイキングコースが整備されており、気軽に都市近郊の里山を楽しむことができます。

アクセスとしては近鉄・東生駒駅から住宅街を抜け帝塚山大学のある椚峠(くぬぎとうげ)を目指し、校門脇から矢田丘陵遊歩道へ入って椋ノ木峠(むろのきとうげ)を経て合流します。なだらかな丘陵は、コナラやスギやヒノキなどに囲まれた自然豊かな森で気持ちよく歩けます。

矢田寺へは矢田峠から東へ下りていきますが、全行程の随所にしっかりとした道標があるので迷うことはありません。矢田寺では60種1万株のアジサイが境内を埋め、その見事な景観にはたくさんの見物客から感嘆の声が漏れていました。

「矢田の道」は松尾山で近畿自然歩道と合流して法隆寺まで歩けますが、アジサイを愛でてから最寄り駅へ下りてもちょうどいい里山ハイキングコースとなるでしょう。

(文=山口敬二)

熊本県・阿蘇山

荒涼とした山肌を飾るミヤマキリシマ

阿蘇山の火口と烏帽子岳の展望(写真=池田浩伸)

阿蘇東峰付近。満開のミヤマキリシマ(写真=池田浩伸)

6月3日、晴れ

約3年半ぶりに立ち入り規制が解除された阿蘇山に登りました。

阿蘇山上からスタートし、植物さえ見えない赤茶けた荒々しい稜線を眺めながら砂千里ヶ浜を歩きます。溶岩が流れ出したあとのような浅い谷の急坂を登りきると、大展望が広がりました。中岳から高岳までの美しいスカイラインと、東峰付近の天狗ノ舞台はミヤマキリシマで赤く飾られていました。長い間の活発な火山活動にもかかわらず、阿蘇山は美しい花で登山者を迎えてくれました。光を遮るもののない稜線からは、太陽の動きとともにミヤマキリシマの色が変わっていくのがわかり、時間を忘れるほどでした。

下山は、広い大鍋と呼ばれる火口跡に下りて、今度はミヤマキリシマを見上げて楽しみました。

なお、入山の際は、阿蘇火山火口規制情報のサイトで規制情報を確認のうえ入山しましょう。阿蘇仙酔峡方面は、熊本地震により阿蘇少年自然の家より先は車も人も進入禁止です。

阿蘇火山火口規制情報サイト

http://www.aso.ne.jp/~volcano/

(文=池田浩伸/登山ガイド)

京都福井府県境・青葉山

若狭富士と呼ばれる山に登りました

青葉山西峰(692m)山頂にて。かわいいアジサイと日本海の絶景(写真=山田芳生)

高浜港から見た青葉山(若狭冨士693m)(写真=山田芳生)

6月2日、晴れ

松尾寺口バス停から西国29番札所の松尾寺まで歩き、お参りをしてから登山道に入りました。最初は緩やかな道でしたが次第に傾斜がきつくなり、鎖やロープ、ハシゴが数箇所設置され緊張する場面が増えてきます。

西峰の社の裏にある岩山に登ると内浦湾を見下ろせます。岩山にはツルアジサイがしがみつくように白く咲いており、海のブルーと岩の赤茶色とのコントラストを非常に美しく感じました。また、地元の小中学生の皆さんが育てているオオキンレイカの苗がすくすく育っていて、夏には黄色い花を楽しませていただけるでしょう。

西峰から東峰までは岩や洞窟や馬の背など興味深い道が続きますが、鎖やロープなどがよく整備されていて、慎重に進めば不安はありません。このような整備は20年前にはなかったと、すれ違った人が教えてくれました。

東峰を少し下ったところに展望台があり、そこからは高浜海岸を一望できます。下りきる手前に北陸三十三か所観音霊場第一番の中山寺にお参りして山歩きは終了です。

1時間半くらいかけてゆっくりと高浜海岸を歩き、高浜港から今登った青葉山を振り返ると、さすが若狭冨士と言うにふさわしい、端正なピラミッド状の山容を見ることができました。

(山田芳生/兵庫県/64歳/よく行く山:六甲山、日本アルプス)

京都府・由良ヶ岳

丹後富士と呼ばれる山に登りました

丹後由良駅方面から見た由良ヶ岳全容、東峰と西峰が見えます(写真=山田芳生)

由良ヶ岳(丹後富士640m)から、遠くに見える青葉山(若狭冨士693m)(写真=山田芳生)

6月4日、晴れ

丹後鉄道・丹後由良駅から少し山側に入った国民宿舎丹後由良荘の横に登山道入口があります。入口には登山案内所の小屋があり、登山証明書や案内書が置かれ、また登山届を出すようにという注意書きがありました。登山アプリで登山届を提出して登山開始。

道は整備されていて、迷うところはありません。高度を上げると自然林から植林に変わり、炭焼き窯跡や材木を運ぶためと思われる林道跡と一杯水場を過ぎて尾根筋に出ます。鞍部の広場では、よく見られる動植物の案内板が多数あり、参考になりました。

西峰までの展望岩場では由良浜あたりが見えます。西峰では天橋立から伊根の方まで絶好の展望が開けています。ガマズミやエゴノキの白い花が満開で、多くの虫が飛び交っていました。

鞍部まで引き返し東峰まで少し登り返すと、虚空蔵菩薩の祠があり360度の展望が楽しめます。遠くには2日前に登った青葉山(若狭冨士693m)がこちらからは双耳峰の形でみることができました。下方を見ると由良川を渡る丹後鉄道の1両電車がおもちゃのように、かわいく動いていました。全7.6km、約4時間の行程でした。

(山田芳生/兵庫県/64歳/よく行く山:六甲山、日本アルプス)

2012年9月の思い出

5月24日配信号で「週刊ヤマケイ創刊時の2012年9月、あなたは何をしていましたか?」というアンケートを行ないました。多くの方にご回答いただき、ありがとうございます! 代表して6名の方の思い出をご紹介させていただきましょう。

「東日本大震災支援活動をきっかけに災害ボランティア団体を結成。4月から始めた山仕事も含め、新たな挑戦に身はボロボロになりながらも、心が充実する毎日を過ごしていた」(ペンネーム・ケツ)

「当時は山登りを再開して1年ほど経った頃。六甲山に生駒山にダイヤモンドトレールと、近場の山を多いときは週に2回登りに行ってました。今は仕事や子供の関係もあり、月に1回も登ることができず、山恋しやの日々を送ってます」(ペンネーム・mashi)

「当時、秩父ミューズパーク内にあった埼玉県立の薬用植物園で、薬草の管理やイベントの企画運営のボランティアをしていました。毎週土曜、片道100km、2時間以上かけて、汗だくで朝から夕方まで作業していました。懐かしい思い出です」(林 由季子)

「会社の都合で所属する部署丸ごと系列会社へ出向(事業移管という名の売却)させられ、揚句、移管業務とはまったく関係ない業務で、勤務地と全く違う事業所に出張!! 依って全く山に行けず、悶々としていた・・・・・・この週刊ヤマケイ情報で溜飲を下げたことを強く覚えています」(池田富雄)

「表銀座縦走して初めての槍ヶ岳登頂。天気も良く素晴らしい眺めが堪能でき、ここが槍の穂先かぁという感慨は覚えています。あれから二度、槍には行ってるが、悪天候だったりして穂先には登っていない。いつかまた行って見たいかな?」(ペンネーム・はらちゃん)

「単独行に目覚めた頃で12年夏は常念岳~燕岳縦走ソロデビュー、その後毎週末山登りをするようになりました。9月と言えば台風シーズン、その合間を縫い1日は麦草峠から茶臼山、15日は高尾山から景信山、29日は倉岳山へ10回目の記念山行をしています。改めて6年前を振り返り、山域や行動パターンは変わっていませんが、この頃から始めた山トレーニングにより得られた筋力で、日本各地の山を登り、目にした景色や経験は私の宝物となりました」(葉山美和)

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編集
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