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『ふたりのアキラ』(平塚晶人)

連載第22回(著者=小林千穂/山岳ライター・編集者)

『氷壁』ヒロインのモデルとなった女性の物語

「我々ガ死ンデ 死ガイハ水二トケ、ヤガテ海ニ入リ、魚ヲ肥ヤシ、又人ノ身体ヲ作ル 個人ハカリノ姿 グルグルマワル」。

この凄絶な遺書を残したことで知られる『風雪のビヴァーク』の松濤明。不朽の名作である井上靖の小説『氷壁』のモデルともなった稀代のアルピニストである。

その松濤明にクライマーとして憧れ、同時に淡い恋心を寄せたのが芳田美枝子さんだ。冬の北鎌尾根で命を落とした松濤明を上高地で待ち続けたという美枝子さんの実際の出来事が、やはり『氷壁』のなかに描かれ、小説終盤の重要な構成要素となっている。そのことから、ヒロインのモデルとして注目を集めた。

美枝子さんは新穂高温泉で言わば運命的に松濤明に出会い、山の世界へ深く引き込まれていく。それによってもうひとりのアキラである奥山章と出会い、結婚。戦後日本の登山界を見続けた。

『ふたりのアキラ』はそんな美枝子さんの人生、そして松濤明と奥山章の知られざる一面を往復書簡という形で描いたノンフィクションである。

激しく輝いていた奥山章との生活

本書前半では純粋に松濤明に憧れる美枝子さんの乙女心と、著者の平塚晶人氏があぶり出す松濤の素の姿の対比がとても読み応えある。

後半に登場する奥山章は、『風雪のビヴァーク』であまりにも有名になった松濤に比べて、登山者には馴染みが薄いかもしれない。しかし、当時不可能とされていた北岳バットレス中央稜の冬季初登攀に成功するなど、名の知られたクライマーだった(偶然か必然か、中央稜無積雪期の初登攀者は松濤明)。

第Ⅱ次RCCを創立し、国内初のプロの山岳ガイド団体である「日本アルパインガイド協会」を発足させるなど、日本のアルピニズム発展に大きく貢献したほか、山岳映画やテレビ番組の制作でも活躍している。

美枝子さんが奥山章と結婚したころは、六畳と台所しかない狭い自宅アパートに、山岳雑誌に名前が載るようなクライマーが大勢集まってはお酒を飲みながら、アルピニズムについて議論していたという。奥さんとして迎えるのはたいへんだったとは思うが、自身もクライマーであった美枝子さんにとっては、刺激的で楽しかったに違いない。

一方で、奥山氏は外で飲んでいてお金が足りなくなって届けさせたり、タクシーがつかまらないからタクシーに乗って迎えに来いと言うなど、はちゃめちゃな部分もあった。奥山氏の海外遠征費を、美枝子さんがひとりで映画のどさ回りをすることで工面したこともあったという。

強烈なエネルギーを持った人に振り回される日々。たとえそれが浮世離れしていて、ジェットコースターに乗っているような毎日であったとしても、そんな夫と共に生きた7年間は、美枝子さんにとって、人生最大の輝きの時であったのではないかと思う。

当時手に入れるのが困難だったというチョコレートを登山靴と共に美枝子さんに送り、女心をくすぐる松濤明は『風雪のビヴァーク』では感じられないし、「人に甘いのはもちろん、誰よりも自分自身が甘えん坊だった」という奥山章は『ザイルを結ぶとき』には見ることができない。『氷壁』や『風雪のビヴァーク』のファンにも、奥山章を通じて戦後アルピニズムを振り返りたい人にも必読の本である。

信州の山岳遭難現場より

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信しています。

8月20日に第122号が配信され、8月6日から12日にかけて発生した18件の遭難事例を紹介しています。

この8月第2週では下山中に転倒して負傷する事案が6件発生しました。登山道は好天続きで乾燥して滑りやすくなり、また下山時は疲労がたまり、集中力がきれやすくなります。余裕のある行動計画と、こまめな休息や水分補給を心がけてください。

***

・8月6日、南アルプス三峰岳から仙丈ヶ岳へ向けて縦走していた19歳女性が登山道から滑落、右足脱臼骨折などの重傷を負い、県警ヘリで救助されました。

・8月6日、唐松岳八方尾根第2ケルン付近で下山中の60歳女性が転倒して足を負傷、大町署員及び遭対協隊員が救助しました。

・8月6日、八ヶ岳連峰蓼科山山頂付近で下山中の45歳男性が転倒、右足骨折の重傷を負い、県警ヘリで救助されました。

・8月7日、燕岳の燕山荘内の階段で74歳男性が足を踏み外して頭部を負傷し、県警ヘリで救助されました。

奥穂高岳コブ尾根ノ頭付近で55歳女性が遭難した現場の状況(写真提供=長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月14日付より)

・8月6日、奥穂高岳コブ尾根ノ頭付近で、捜索中の岐阜県警山岳警備隊員が、長野県側に転落している心肺停止状態の55歳女性を発見し、長野県警山岳救助隊及び遭対協隊員が救助に向かいました。奥穂高岳からジャンダルムへ向けて縦走中、何らかの原因により滑落したものと見られます。

・8月7日、長野市戸隠豊岡の山林にキノコとりのために入山した76歳男性が、入山中に体調不良のため行動不能となり、長野市消防局救助隊員により救助され、病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。

・8月7日、西穂高岳から奥穂高岳へ向けて縦走していた73歳女性が天狗の頭天狗沢付近で道に迷い、捜索中の遭対協隊員が発見し、付近の山小屋に収容されました。

・8月7日、槍ヶ岳槍沢で横尾に向けて下山中の80歳男性が転倒して足首骨折の重傷を負い、翌8日に県警ヘリで救助されました。

・8月8日、涸沢から横尾に向けて下山中の63歳女性が転倒し、足首骨折の重傷を負い、県警ヘリで救助されました。

・8月8日、餓鬼岳から白沢登山口へ向けて下山中の71歳男性がハシゴを踏み外して転落、胸などを負傷し、県警ヘリで救助されました。

・8月6日から2泊3日の予定で単独で中房温泉口から入山した60歳男性が下山予定日を過ぎても下山せず、行方不明となっています。

・8月10日、南佐久郡川上村の金峰山で24歳の女性がロッククライミング中にバランスを崩して滑落、負傷して静岡県防災ヘリで救助されました。

・8月10日、白馬乗鞍岳から栂池登山口に向けて下山中の61歳女性が転倒して負傷し、県警山岳救助隊、長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐隊員が搬送して救助しました。

・8月11日、八ヶ岳連峰天狗岳で、東天狗岳から本沢温泉方面に向けて下山していた39歳女性が転倒して負傷し、諏訪地区遭対協会員が救助し、山荘に収容しました。その後、茅野署山岳救助隊及び諏訪地区遭対協隊員が背負い搬送して救助しました。

・8月11日、中央アルプス空木岳で58歳の女性が沢登り中に転倒して負傷、駒ヶ根署員などが救助に向かい、13日、県警ヘリで救助しました。なお、同行者の男性についても疲労により行動不能となったことから、県警ヘリで救助しました。

・8月12日、八ヶ岳連峰硫黄岳で45歳女性が何らかの原因により倒れてきたコンクリート製の道標に当たり負傷し、茅野署山岳救助隊及び諏訪地区遭対協隊員が背負い搬送して救助しました。

・8月12日、前穂高岳に向けて北尾根を登山中の47歳男性が滑落して負傷し、県警ヘリで救助されました。

・8月12日、鹿島槍ヶ岳から五竜岳へ向けて縦走していた25歳女性が滑落しました。大町署山岳救助隊等が救助に向かいましたが、安否が確認されていません。

(内容は長野県警察本部の発表時点のものです)

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下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

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長野県警察公式チャンネル(YouTube)では、北安曇郡小谷村における道迷い遭難の救助状況の動画を7月5日から配信しております。遭難者らはトレッキング目的で山に入り、途中で道に迷い、滝の上部に出て行動不能となり救助要請をしました。現場は通称「V字谷」と呼ばれる狭隘(きょうあい)な沢で、遭難者は不安定な場所にいるため、ヘリによる吹き下ろしの風が現場に当たらないよう注意してすすめられました。リアルな救助活動の様子をご覧ください。

https://youtu.be/C5_VL8D9oyA

(文=週刊ヤマケイ編集部)

2018全日本山岳写真展「未来に残そう美しい山河」

9月4日(火)~9日(日)、東京・池袋の東京芸術劇場で開催

出展作品より:朝焼けの輝き/ベアンテ・ボーマン

昭和22年(1947年)に設立された全日本山岳写真協会はプロ・アマ合同の全国組織の団体で、山岳写真を通して会員相互の親睦と写真表現技術の向上を目的に活動しています。

毎年恒例の写真展が9月4日から9日まで、東京・池袋の東京芸術劇場にて開催されます。

展示される会員の力作は約238点。一般公募の部では約69点の作品が展示され、特別コーナー「小・中・高生の目で見た自然」と「登山道で出会う花たち」と合わせて約400点となります。

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2018全日本山岳写真展

会期:9月4日(火)~9日(日)10:00~19:00

ただし8日(土)は10:00~18:00、9日(日)は10:00~17:00

会場:東京芸術劇場・5階ギャラリー1

池袋駅西口より徒歩2分

入場無料

『山岳王 望月将悟』

究極の山岳レースを4連覇した山男の素顔

『山岳王 望月将悟』著者=松田珠子/7月16日発売/1300円+税/四六判/224ページ/ISBN=978-4-635-17196-0

2年に一度開催される、日本一過酷な山岳レース「トランスジャパンアルプスレース(TJAR)」を、2010年、12年、14年、16年と4連覇した望月将悟さんを取り上げる初の書籍が刊行されました。

TJARとは日本海(富山湾)から太平洋(駿河湾)までおよそ415kmを、北アルプスから中央アルプス、南アルプスを自分の足のみで8日間以内に踏破する山岳レース。415kmの内訳は登山道が198km、車道が217km。制限時間は8日間(192時間)で登山道のコースタイムは合計137時間30分。車道区間は1kmを12分ペース(時速5km。一般的な歩行速度は時速4km)で歩けば43時間24分で踏破できます。登山道をコースタイムどおり、車道を時速5kmで歩き続ければ180時間4分で踏破できる計算となりますが、人間は180時間も不眠不休で歩くことはできません。睡眠を1日3時間、8日間に7回寝ると計算すると180+21=201時間。つまり制限時間の192時間をオーバーしてしまう、といえば、このレースの過酷さをご理解いただけるでしょうか。補給についても厳しい制限があります。

2016年にはTJAR史上初となる、5日以内ゴールを達成した望月さんは静岡市消防局の山岳救助隊員。山でめっぽう強いのに、気はやさしくて謙虚。登山者からもトレイルランナーからも、誰もが好きになり応援したくなる山男、それが望月将悟さんです。

本人や家族、周辺を取材し、望月さんの山での強さの秘密を解き明かし、遭難救助の現場から登山界に訴えたいことまで、望月さんの人となりがわかる一冊になりました。TJAR創設者・岩瀬幹生さんとの対談も収録されています。

東大雪・石狩岳

ウラシマツツジが赤く色づき始めていました

急斜面が続くシュナイダーコース(写真=谷水 亨)

ウラシマツツジが紅葉し始めた石狩岳山頂(写真=谷水 亨)

8月18日、晴れ

日本二百名山に選定されている石狩岳は、石狩連峰の主峰でその稜線上に音更山、ユニ石狩岳、三国山と続いており、日本海側と太平洋側の分水嶺もなしています。

2016年の台風による林道の被災で、従来の十六の沢林道、音更川本流林道が通行止めとなっているため、4本の林道をつなぎあわせた迂回ルートから、石狩岳シュナイダーコース登山口に車を走らせます。

音更川沿いにあった登山道は流失しており二つの高巻き道が作られていました(最初の高巻きは、水量が少ない時は川原を歩くことができます)。唯一の徒渉は細い流木を渡ります。登山靴を脱いで川を渡る登山者もいるくらいに不安定な流木ですので気をつける必要があります。

シュナイダーコースの取付からは標高差820mの急斜面が続きます。大雪山系では珍しい急登でまるで日高山脈のようです。木々や笹をつかんで登ることもあるので手袋があれば便利です。

8月17日、1974年観測以来最速の初冠雪が大雪山系で観測されましたが、この日も登山口の気温は8度。稜線に立つと強風もあいまって5度以下。同行者はミドルウエアと手袋、冬帽子で防寒対策をしました。

最初にたどり着くピークは山名盤のある1966m峰で、ウラシマツツジも赤く色づき始めていました。多くの登山者がここで引き返しますが、私たちはさらに進んで1967m南峰まで進みます。ここからはさえぎるものはなく、大雪山縦走路につなげる登山道やニペソツ山が見られました。また、北西からの冷たい風をさえぎるスペースもあって、1時間ほどのんびりと休憩をしてから下山しました。

(文=谷水 亨/北海道アウトドア夏山ガイド認定者)

大雪山・旭岳~トムラウシ山

山上はもう秋です。十分な装備を

広い尾根を白雲岳に向かう(写真=大津洋介)

ヒサゴ沼へお花畑の道を進む(写真=大津洋介)

8月12日~14日、霧時々晴れ~雨

当初、大雪山の旭岳からトムラウシ山、そして十勝連峰の富良野岳まで縦走する計画でしたが、4日目より荒天が予想されたためトムラウシ山までの縦走としました。

関西の仲間と千歳空港で合流、旭岳温泉に前泊しロープウェイ姿見駅よりスタート。旭岳までは霧と小雨の中でしたが、山頂に立つと霧が晴れ周囲の展望を得ることができました。間宮岳、北海岳付近はなだらかな広い稜線の道、はるか遠くにトムラウシ山、両側には昔氷河の影響を受けた構造土が広大に発達して本州の山とはちょっと違う風景が広がります。ところどころに咲くコマクサや秋の色濃くなった高山植物を楽しみつつ、早い時間に白雲岳避難小屋のサイトにテントを設営しました。

翌日は霧で明けました。東側が断崖の台地状の広い高根ヶ原を南下します。霧で周囲の景色は見えませんが、点々と咲くコマクサを楽しみながら歩きました。忠別岳、五色岳を緩い登りで越えると天気も回復し、ハイマツ下に小さくかわいいリンネソウを見つけました。化雲岳直下ではキタキツネとすれ違い、ヒサゴ沼に下る斜面にはチングルマのお花畑を楽しむことができました。夕方より天候が崩れることが予測されたので避難小屋に入りました。

予測どおり夜中から強雨となりトムラウシ温泉へ下山することとして歩き始めました。雨の中の歩きでしたが日本庭園、ロックガーデンを越えトムラウシ山の登りで一時的に展望が開け旭岳方面が望めたのはラッキーでした。ガスに囲まれた山頂を早々に長い下りのはじまりです。コマドリ沢分岐からの樹林帯は予測どおりどろんこ道を歩き、短縮道分岐でしばしば休憩しました。今回は車がないのでさらに1.5時間歩いて、無事トムラウシ温泉に降り立つことができました。

縦走はできなかったのですが、大雪山独特の山岳地形や高山植物を見ながらの縦走は良き思い出となりました。

なお、17日未明には黒岳で初雪が観測されました。山上はもう秋です。十分な装備での登山が必要です。

(文=大津洋介/無名山塾・こぐま自然クラブ)

鳥海山

東北の山を訪ねて

岩稜帯の山頂部(写真=大島隆義)

左上:まるで天空の楽園 右上:山頂越しの赤焼けした残照 左下:雲をまとう山々 右下:影鳥海(写真=大島隆義)

8月12日~13日、晴れ

台風の接近により、当初予定していた計画を変更。ほぼ唯一晴れ予報になっていた東北の山・鳥海山へ足を運ぶことにしました。

麓から見える鳥海山は堂々たる山容、天候も快晴で心が躍ります。入山口である鉾立はすでに登山者の車がぎっしりで、他県ナンバーもたくさん。皆思うことは同じかなと思いながら支度をしたのち登山計画書を提出して、頂上山荘までいざ出発。

賽の河原からはたくさんの種類の高山植物が出迎えてくれました。標高はさほど高いわけでもありませんが、私の地元(愛知県)ではすでに散ってしまった花たちがまだ咲いており、東北の山にいることを実感しました。

撮影しながらの山行のため、御浜小屋に到着したのが12時ごろ。昼食をとり、やや足早に先を進むことにします。七五三掛の分岐先、山頂ルートでは一度大きく下り、そして登り返します。思いのほか登り返しが大変でしたが、なんとか受付締め切り時間前に到着。

ゆっくりする時間もなく夕景撮影のロケハンに出発し、頂上ではなく七高山付近で撮影することにします。日本海がとても近く感じる新鮮な感覚のなか、稜線に出ると強風が体の体温を奪い始めました。稜線にはこの強風を耐え凌ぐチョウカイフスマがあちこちに咲き、夕陽に照らされた白い小さな花たちが輝き始めます。やがて太陽は日本海の水平線に沈み、真っ赤に空を染め一日の締めくくりとなりました。夜も好天が続き満天の星空で、この日はまだペルセウス座流星群が見られ、多くの流れ星が夜空を演出してくれました。

翌朝の撮影も七高山へ。鳥海山を囲うように一面の大雲海です。素晴らしい景色に出会うことができました。ひと通り撮影を済ませたあとは山頂へ向かいます。山頂付近は今までの山容とはまったく異なる岩稜帯で、山頂の眺めを満喫しました。

帰りは外輪山経由で景色を眺めながらゆっくりと下山することができました。

(文=大島隆義/山岳風景写真家)

飯豊連峰・石転び沢雪渓、北股岳

雪渓歩きとイイデリンドウ(前編)

石転び沢雪渓(写真=増村多賀司)

左から時計回りに石転びの出合、徒渉点、イイデリンドウ、シナノキンバイ(写真=増村多賀司)

8月18日~19日、晴れ

飯豊(いいで)連峰の山形県側の起点である天狗平に車を置き、登山届に記入して出発。

登山道が始まる前の温身平(ぬくみだいら)付近はブナなどの巨木が多く、圧倒されます。登山道が始まる前の左へ100mほど行くと清潔な水洗トイレがありますので利用されるといいでしょう。

大きな砂防ダムがある所からいよいよ登山道が始まります。石転び雪渓までは沢沿いの道を進みますが高巻きや崩落地の通過もあり、気が抜けません。石転び沢出合では雪渓が割れているので門内沢側の雪渓を少し登ってからその上を渡り、石転び沢左岸を100mほど歩いてから流れが浅い部分を徒渉しました。そこから雪渓までは右岸の踏み跡を上がります。この部分の状況は日々刻々と変化していますので的確な判断を要求されます。

石転び雪渓に取り付くと前方にまっすぐ伸びる雪渓の上に北股岳がそびえていて素晴らしい景観でした。登山者は我々以外には誰もいません。アイゼンを装着し、上部からの落石に注意しながら進みます。

黒滝付近で雪渓が終わるので左岸にある目印の旗の上部でアイゼンを外します。浮き石が多く不安定なので間隔を開けて慎重に登りますが、草付きの斜面になると踏み跡も明瞭になり、花も多くなってきて一息つけました。ここはシナノキンバイが満開です。

傾斜が緩くなると頭上に今日の宿、梅皮花(かいらぎ)避難小屋が突然見えます。前日から小屋の管理で入山している地元小国山岳会の齋藤さんが暖かく出迎えてくださいました。小屋から徒歩1分の水場(治二清水)は水量豊富で冷たく美味しいです。この付近には飯豊連峰の特産種であるイイデリンドウがまだ咲いています。今年は花の時期が早かったのですが見られて良かったです。他にはタカネマツムシソウやヒナウスユキソウが目立っています。

この日は時間があるので梅皮花岳まで往復。ここから見る北股岳は非対称山稜で形もよくスッキリしています。夜は快晴で西に傾く天の川が夏の終わりを物語っていました。

(後編へ続く)

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

飯豊連峰・石転び沢雪渓、北股岳

雪渓歩きとイイデリンドウ(後編)

左上:梅皮花避難小屋と北股岳 右上:蔵王連峰 左下:頼母木小屋、杁差岳、遠く粟島が日本海に浮かぶ 右下:稜線に咲くタカネマツムシソウ(写真=増村多賀司)

北股岳を後に稜線散歩(写真=増村多賀司)

8月18日~19日、晴れ

(承前)2日目の気温は10℃を下回り、寒さを感じながら稜線を進みます。北股岳山頂では展望が開け、飯豊本山や連峰最高峰の大日岳も見えました。北にはこれから進む門内岳方面への稜線が緩やかに続きます。眼下には昨日登った石転び沢の雪渓が見え、上に目を転ずると朝日連峰やその向こうに月山や鳥海山、さらに蔵王連峰も見えます。北には日本海や新潟平野、佐渡島、粟島も見えました。

北股岳からは緩やかなアップダウンの稜線散歩が門内岳、扇ノ地紙、地神山へと続きます。花はハクサントリカブトとタカネマツムシソウが目立ちますがよく探せばイイデリンドウもまだ見つけられました。

快適な稜線歩きも地神北峰までで、ここからは丸森尾根を急下降します。段差の大きな箇所や岩場もあります。丸森峰から下はブナを主体とした樹林帯になり日差しをさえぎってくれますので、休憩時には風が心地よかったです。途中にある夫婦清水は細いながらも出ていましたが、涸れることもあるので注意が必要です。

急な登山道は最後まで続きました。下山後は飯豊温泉にて汗を流し帰路につきました。

(文=増村多賀司/長野県自然保護レンジャー、写真家)

北アルプス・黒部川源流赤木沢

明るく輝く美溪へ

赤木沢四段の滝(写真=上田幸雄)

赤木沢大滝(写真=上田幸雄)

8月17日~19日、晴れ

思い焦がれていた黒部源流部の美溪・赤木沢に仲間四人で出かけてきました。ご案内は立山ガイド協会の上田幸雄ガイド・佐伯岩雄ガイドです。

一日目は折立から太郎平を経由して薬師沢小屋まで。太郎平までの登山道はたくさんの登山者でにぎわっていました。薬師平への道は、標高差で400mほどを下ります。いくつかの木の橋で川を渡り、草原地帯を抜けると眼下に小屋が見えます。小屋着後、沢靴の感覚の練習もかねて黒部川本流でテンカラ釣りを教えてもらいました。なお、釣れた魚はリリースがルールです。次の日の晴天を願いながらゆっくりと休みます。

翌朝は朝食後6:15に小屋を出発。朝の気温は6℃、小屋前のテラスには霜が降りていました。ハシゴを使って黒部川本流に降りてしばらくは河原のゴロ石地帯を遡ります。赤木沢出合に着くころには陽ものぼり、東向きに開けた沢はキラキラと輝いていて、長かったアプローチの苦労が実ります。そして次々に出てくる階段状の滝をガイドのサポートをいただきながら一つずつ越えていく達成感は大変うれしいものです。落差30mの「赤木沢大滝」で大きめの休憩、この滝は左岸のブッシュのある岩峰で巻きます。ガイドのしっかりとした工作がありがたいです。二股で左に進み、水流が途切れ石がなくなり灌木地帯の中をさらに進むと草原地帯に出て、赤木岳と黒部五郎岳の鞍部「中俣乗越」で一般登山道と合流します。沢を詰めて稜線にたどり着く爽快感は格別です。ガイドや仲間と握手して喜びを分かち合いました。ここで沢支度を解き、靴を履きかえてこの日の宿泊地、太郎平小屋を目指します。

赤木岳の山頂を巻き、北ノ俣岳のピークを超えると正面に目指す太郎平小屋が見えホッとします。足元にはチングルマの綿毛が揺れ、目の前には雲の向こうに薬師岳から黒部五郎岳に連なる黒部源流域の山並み、遠くには槍ヶ岳、常念、さらに眼下には遡行してきた赤木沢の河原が見え、脚の疲れはあるものの、心は晴れやかに16:00に小屋に到着し、翌日折立に下山しました。

立山・剱のエキスパートであるお二人のガイドにご案内いただき、安全に配慮した行程を進めることができました。

平蔵ほか、山案内人から連なる立山ガイドの歴史や黒部川の電源開発の歩みなど、地元のガイドならではのお話をうかがいながらじっくりと山の時間を味わえて貴重な機会でした。

なお、赤木沢遡行は沢登りです。ルートファインディング、水量の判断などが必要です。経験のある方、または信頼できるガイドの同行をお勧めします。

(文=都築香純)

北アルプス・大天井岳

風は冷たく、初秋を感じました

好展望の表銀座縦走路(写真=小山貴之)

移り変わる空の色(写真=小山貴之)

8月18日~19日、両日とも快晴

秋の気配ただよう中、大天井岳に行ってきました。夜明け前の中房温泉登山口より登山開始です。

まずは燕山荘に向けて合戦尾根を登ります。合戦尾根は北アルプス三大急登の一つとして有名です。名前だけ聞くと尻込みしてしまいますが、全般に整備の行き届いたルートです。定期的にベンチが設けられていますので、休みながら登ることができます。

合戦小屋を過ぎると徐々に展望がきき始め、本日の目的地である大天井岳を捉えることができました。槍ヶ岳の穂先も見え、稜線上の大展望に期待を膨らませながら歩を進めます。燕山荘に到着すると眼前には期待以上の大パノラマが広がりました。空は高く、風は冷たく、初秋を感じました。

槍ヶ岳の穂先を眼前に、好展望の表銀座縦走路を大天井岳に向けて進みます。とても心地の良い稜線歩きとなりました。本日の目的地である大天荘に正午過ぎに到着。この小屋は大天井岳の山頂まで約10分と好立地にあり、テント場からは槍ヶ岳~穂高連峰の峰々を目の前にすることができます。テントを張り、大天井岳登頂後は散策をして、のんびりとした時間を過ごすことができました。日暮れ時には美しい夕焼けを見ることができ、刻々と移り変わる空の色はとても鮮やかで心を打たれました。

翌日は来た道を戻り中房温泉登山口に下山しました。両日とも天候に恵まれ充実した2日間を過ごすことができました。

今回、下山時にすれ違った登山者からうかがった話ですが、合戦尾根の第1ベンチから第2ベンチのつづら折りに登る区間で落石があったとのことです。どうやら上の道を歩いている登山者が意図せず落としてしまったようです。石を落とさない歩き方を心がけることはもちろんですが、万が一落としてしまった場合は即座に下の道を歩いている登山者に声をかけることも必要です。今回は大事に至ることはなかったのが幸いです。お互い声を掛け合い、事故なく安全に登山を楽しみましょう。

ナナカマドの実が赤く色づき始め季節は秋へと移り変わってきています。寒暖の差も大きくなっていますので防寒対策が必要です。

(文=小山貴之/長野県自然保護レンジャー)

北アルプス・槍ヶ岳西稜

小槍から大槍まで快適なクライミング

槍ヶ岳西稜。左端が小槍、右端が大槍(写真=畠山茂信)

小槍を懸垂下降中。登りは右端のカンテを伝いました(写真=畠山茂信)

8月14日、晴れ時々霧のち雨

小槍と曾孫槍のコルにつながるルンゼから取り付きます。前日は夕方から夜にかけて結構な量の雨が降りましたが、岩肌はすでに乾いていました。小槍はコルから右端のカンテをたどって頂上に達しました。この日は大気が不安定で時々霧で視界がさえぎられますが、幸い頂上では遠くまで見渡すことができました。

懸垂下降でコルに戻り、次は曾孫槍に登ります。小槍と比べてスタンスとホールドが豊富で、難しくはありません。クライムダウンで次のコルに降り、立ち続けて孫槍に取り付きます。右のフェースを快適に登り、てっぺんの小さなカニの鋏状の岩の間を抜けると頂上です。頂上はナイフの刃先状で立てません。左脇を抜け同じくナイフの刃のような岩壁を慎重に下ってコルに降り立ち、いよいよ大槍のクライミングです。

短いルンゼを抜け、左のフェースを頂上にいる登山者の注目を浴びながら快適に登り切るとクライミングも終了。祠にお参りし記念写真を撮って一般ルートを下山しました。

この日はお盆の期間中で朝から多数の方々が頂上を目指し渋滞していましたが、我々が下るころには解消され、さほど待つこともありませんでした。

(文=畠山茂信)

※編集部注:ここで紹介したルートは一般登山道ではありません。登攀技術や装備が必要なバリエーションルートです。

北アルプス・千丈沢

旧道を湯俣温泉に下りました

遠くの下に見える沢が千丈沢で、そこまでは六ノ沢です(写真=畠山茂信)

途中の小滝と白糸状の滝。一ヶ所、温泉が湧いてたところがありました(写真=畠山茂信)

8月15日~16日、晴れのち雨

槍ヶ岳北鎌尾根の西側を流れる千丈沢には廃道となった宮田新道がありました。高瀬渓谷の湯俣温泉と槍ヶ岳を結ぶ道です。

まず千丈沢乗越で一般道を離れて六ノ沢を下ります。千丈沢との出合までは水は無くガレ場でした。そこから中山沢出合の先までは河原歩きと岩伝いの徒渉で行けましたが、水量が増えてきたので沢装備に転換。以降、ヒザ上の徒渉多数、股下程度のへつり数回、高巻き2回、内懸垂下降1回でした。

千天出合で、北鎌尾根の東側を流れ北鎌尾根へのアプローチとして現在も利用されている天井沢と合流し、水俣川と名を変えてからは川幅が広がります。河原歩きは楽になりましたが、徒渉の回数が増えました。ところどころに現れる小滝や白糸状の滝に目を癒しながら歩き、湯俣川出合に架かる吊り橋に着いて沢歩きも終了。ここから先は高瀬川になります。

湯俣川を少し遡って噴湯丘と球状石灰岩を見物してから吊り橋を渡って宿泊予定の湯俣温泉晴嵐荘に向かいましたが、途中の道が崩壊し、新たに高巻きの道が開かれていました。晴嵐荘の前に架かる吊り橋は先月の台風で崩壊しましたが、高瀬川の水量が少ないので徒渉は楽と聞いていました。しかし、この日は上流の取水堰の水門を開いたとかで轟々たる濁流で渉れません。晴嵐荘の方のすすめで名無し避難小屋で一泊し、翌日高瀬ダムに下山しました。

ダムまでの道もところどころ崩壊していましたが、修復が進み迂回路もきちんと整備されているので問題なく歩けました。

(文=畠山茂信)

※編集部注:ここで紹介したルートは一般登山道ではありません。ルートファインディング能力や、沢登りの装備など高度な技術と専門の装備が必要です。

北アルプス・常念岳~大滝山

パノラマ景観を楽しむ夏山縦走

蝶ヶ岳の二重山稜(写真=平野裕也)

朝にはうっすら霜も(写真=平野裕也)

8月17日~19日、快晴

常念山脈は屏風のように屹立する槍、穂高連峰の景観を満喫できる北アルプス第一級のパノラマロードです。11時に一の沢登山口を出発、合計229歳の三人組は飛ぶように登る子供たちに励まされながら3時過ぎ、超満員の常念小屋に到着しました。

18日も快晴。5時半に出発、あえぎながら常念岳の急坂を登り360度の景観を楽しみます。蝶槍を過ぎ、蝶ヶ岳ヒュッテに着くとテント場は色とりどりのテントでにぎやかです。ハイマツと白砂の緩やかな縦走路を大滝山に向かい1時半過ぎに大滝山荘に到着しましたが、小屋番は蝶が岳ヒュッテに食料調達に出張中。他の5名の宿泊者といっしょに30分ほど戻ってくるのを待っておりました。大滝山荘は昔ながらの山小屋のたたずまいといい、小屋番の素朴な人柄といい、北アルプスの有名な山小屋の雰囲気とは一線を画しており、いたって心地よく感じられました。

19日も快晴。6時に出発して針葉樹林帯に入り、槍見櫓で槍・穂高連峰をバックに巻雲の出始めた青空を見上げ深呼吸。徳本峠を経由して1時に小梨平へ下山しました。

(文=平野裕也/森林インストラクター東京会・東京スキー山岳会・日本山岳会)

北アルプス・明神岳主稜縦走

岩稜縦走を満喫しました

4峰からの展望。右端が明神岳主峰(写真=金丸勝実)

2峰の懸垂下降(写真=金丸勝実)

8月18日~19日、晴れ

上高地に入るとまず目に飛び込んでくるのが明神岳で、横尾までの林道歩きでは常に梓川越しに見えています。ところがこの山への一般登山道はなく、山頂を踏むにはバリエーションルートをたどるしかありません。

よく登られているのが東稜からのルートで、登頂後は、主稜を5峰まで縦走し、前明神沢左岸尾根を下るか、前穂まで縦走し重太郎新道で下ります。今回は岩稜縦走に主眼を置いたため、前明神沢左岸尾根を登り、主稜を明神岳5峰から前穂高岳まで縦走し重太郎新道で下りました。

明神岳主稜ですが、ピークが5つあり南から順に5峰から2峰、そして2931mの主峰と続きます。ハイマツ帯も少しありますがほぼ岩稜で、展望のよい岩稜歩きができます。

5、4峰はピークを踏んで行きますが、3峰周辺は岩が不安定で岳沢側を巻きます。2峰は断崖になっているため懸垂で下ります。今回はフィックスロープもありましたが、下降はやはり懸垂が安全だと思います。

コルから登り返したところが明神岳主峰です。正面にはこれから向かう前穂高岳がどっしりと構えていました。明神岳~前穂高間は歩きで行けます。しかし一箇所だけギャップがあり、クライムダウンもできますが、安全のため懸垂したほうがいいと思います。

ここで紹介したルートは一般登山道ではなく、踏み跡が不明瞭なところもあり、もちろん道標などはありません。浮き石や岩のぐらつきも所々にあります。また、懸垂する箇所もあるため、ロープやハーネスなどの登攀具も必要です。行程が長いため途中でビバークの必要もあります。その場合、途中で給水できないため、二日分の水を担ぎ上げることになります。パーティーで役割を分担し、しっかりとした準備が必要です。

(文=金丸勝実/『三重県の山』著者)

日光・白根山

何度来ても楽しめるお気に入りのコース

日光白根山山頂2578mより。五色沼、男体山、中禅寺湖(写真=中村重明)

大勢の登山者でにぎわう日光白根山山頂2578m(写真=中村重明)

8月18日、晴れ一時曇り

丸沼高原スキー場の日光白根山ロープウェイ山頂駅から奥白根山に登り、さらに五色沼、弥陀ヶ池と反時計回りに周回するコースを歩いてきました。山頂駅(標高約2000m)から山頂(標高2578m)まで約600m登った後、五色沼まで約400m下り、弥陀ヶ池まで再度約100mの登り返し、そして山頂駅まで約300mの下る、というコースタイム約6時間の行程です。

丸沼高原スキー場の駐車場(標高約1400m)に8時前に着いた時点で気温は約12℃で、数日前までの猛暑が嘘のような、肌寒いほどの気温でした。

山頂駅からはしばらくは苔むして鬱蒼とした樹林帯です。カニコウモリが多く見られました。森林限界を超えると少々歩きにくい砂礫の登りとなりますが、遠くには浅間山~八ヶ岳~富士山の大展望が広がり、また足下にはハクサンフウロ、イワギキョウ、リンドウなどの高山植物が咲いていました。

山頂部は、これまで何度か訪ねた中でも最も多い登山者でにぎわっていて、山頂の標識前は写真撮影の順番待ちとなるほどでした。

山頂で五色沼~男体山~中禅寺湖の素晴らしい眺めを楽しんだ後、避難小屋経由、五色沼に向かいます。途中、ハクサンフウロやリンドウに加え、トリカブトも多く見られました。避難小屋の先では一頭のシカと出会いました。その先、弥陀ヶ池を経て、再度苔むした樹林帯に入り、「血の池地獄」を経て、ロープウェイ山頂駅に戻りました。

とても変化に富んだ行程で、また季節によって咲く花や景観が大きく異なり、何度来ても楽しめるお気に入りのコースです。今回ここを初めて歩いた同行者も大満足の行程でした。

(文=中村重明)

奥多摩・三頭山

「三頭山の日」の充実したイベント

左:ブナの大木、右:三頭沢の清らかな流れに沿って登る(写真=石丸哲也)

左から時計回りに「三頭大滝」「三頭山西峰の山頂から雲取山方面を眺める」「ソバナ」「タマガワホトトギス」「花が四裂したホツツジ」(写真=石丸哲也)

8月16日、曇り

中高年の登山サークルの案内で三頭山へ行ってきました。檜原都民の森からの回遊コースとしたので、標高1000mあまりの都民の森バス停からスタートでき、体力的に有利であるとともに、猛暑を避けられる利点もあります。

都民の森から三頭山へのメインルートは鞘口(さいぐち)峠経由の尾根道か、三頭沢沿いの2ルート。尾根から登って沢を下る行程で紹介されることも多いようですが、今の時期、真夏は涼しい沢から登るのがおすすめです。

都民の森の森林館で展示を見学し、パンフレットなどをいただいた後、大滝の路に入ります。ウッドチップを敷き詰めた平坦な遊歩道で森林セラピーロードにも指定されています。

このところ雨が多かったためか、吊り橋から眺める落差33mの三頭大滝は通常より水量が多く、迫力があるように思われました。三頭大滝の先で三頭沢に沿う登山道に入ります。

三頭山の魅力のひとつが東京都の水源林として保全された原生林。ブナが主体ですが、沢沿いでは、異なった樹種を見られます。とくにシオジとカツラは大木があり、それぞれ都民の森の第2、第3の巨木です。森林館下にある第1位のトチノキを見ればベスト3をコンプリートできます。

ムシカリ峠で尾根に出て、ひと登りしたところが三頭山西峰。名前のとおり3つあるピークの最も西にありますが、広く、富士山や雲取山も眺められて、ここでランチ休憩する登山者が多いです。私たちもここで昼食をとった後、中央峰、東峰を経て、鞘口峠へ下りました。途中、原生林ではブナとともにミズナラの大木も印象的でした。

山行中、それほど汗をかくことはありませんでしたが、帰りのバスを途中下車して数馬の湯でさっぱりして帰宅しました。

当日、咲いていた花はタマアジサイ、ノリウツギ、ソバナ、タマガワホトトギス、ダイコンソウ、ツリフネソウ、ホツツジ、ヤマホタルブクロなど。ホツツジの花はツツジの仲間には珍しく三裂しているのが特徴的ですが、四裂して十字型になっている花を見つけました。

(文=石丸哲也/山岳ライター)

秩父・熊倉山地獄谷

ハチの洗礼を受けました

地獄谷の一コマです。落差3~4mくらいの小滝も足がかりは割としっかりありました(写真=林 由季子)

写真上段は溯行中に出遭った一例です。キツリフネ、マタタビ、お茶碗の形をしたキノコ、岩陰にあったミソサザイの空き巣。写真下段は登山道で出遭った一例です。ピンクがかわいいミヤマママコナ、とんがり帽子のキイボカサタケ、イグチ各種出始め、チチタケなど(写真=林 由季子)

8月19日、晴れのち曇り

今回は、谷津川本渓と地獄谷を溯行後、谷津川林道(廃道)で下山という予定でスタート。入渓地点までは廃道となっている谷津川林道をたどりました。入渓して早々、岩壁のシダ観察をしようとしたらいきなり自分も含めて2人がハチに刺されました。速やかにハチ毒を吸い出し手当をして、ことなきを得ましたが、今年はやはりハチが多いようです。

本渓や地獄谷の溯行では、流木やゴーロで若干荒れていたものの、滝の足がかりも良く、割とスムーズに進めました。しかし地獄谷や本渓から廃道に出るはずだった地点に道はなく、ルートファインディングを強いられました。そこで廃道の状況を鑑み、復路は予定を変更して山頂経由で城山コースへ下山しました。

秋は山から・・・・・・。沢も山道も、秋色に染まり始めた一日でした。

(文=林 由季子)

福岡県・福智山

秋の雰囲気を感じさせてくれました

福智山頂付近から北側の皿倉山へ続く縦走路と北九州市街地を望む(写真=松本高志)

左上から時計回りに、鱒淵ダム湖から見る福智山頂部(右奥)、七重の滝の中で最大の七の滝、ツチアケビ、ナベナ(写真=松本高志)

8月18日、晴れ

北九州国定公園である福智山は四方から登山道がのび、山頂からの展望も抜群であることから四季を通じて人気の山です。今回、涼を求めて、鱒淵ダムから七重の滝コースで登り、ホッテ谷新道を下る周回をとりました。

ダム近くの路肩駐車スペースには車がビッシリでしたので、少し離れた駐車場から出発。ダム湖最奥部から七重の滝コースへ入ります。しばらく行くと滝が連続して現われ、一の滝から次々と続く大小の滝を巡りながら滝横の登山道を登りました。最大の七の滝の下でしばらく休憩。響き渡る滝音と涼気が暑さときつさを忘れさせてくれました。この時期、沢登りで人気の滝ですが、この日は入渓者を見ませんでした。

滝を過ぎて縦走路へ出て豊前越から山頂へ向かいます。登山道の脇には夏と秋の混じった花が見られました。

山頂は360度の大展望。子供連れなど多くの登山者でにぎやかでした。山頂周辺に木々はなく、標高901mとは思えない高度感と開放感がある気持ちの良い山頂です。眼下に鱒淵ダムと間近に平尾台の貫山地、北には皿倉山へ続く長い縦走路と北九州市街地、南には嘉穂アルプスから英彦山、犬ケ岳へ続く山並みと、見飽きることがありません。日差しは暑いものの、風は涼しく秋の雰囲気を感じさせてくれました。

(文=松本高志)

北アルプス・大キレット

早出早着の重要性をあらためて感じました

北穂高岳から望む大キレット(写真=石川和重)

天狗池の「逆さ槍ヶ岳」(写真=石川和重)

8月13日~15日、小雨のち晴れ

6年前に初めて大キレットを縦走した時は南岳から北穂高岳方向でしたが、今回は逆ルートです。

初日は小雨降るなか上高地から涸沢小屋まで。到着後に雨脚が強くなり翌日を案じながら就寝。翌朝は晴れ、5時登山開始。8時に北穂高岳到着。休憩後8時半にいよいよ大キレットへ。6年前を思い出しながら進みます。まずは急勾配の北穂高岳の下りを慎重に進み、ルンゼから飛騨泣きへ。今回一番警戒したのは下り方向になる飛騨泣きでしたが特に苦労なく通過できました。逆に長谷川ピークへの上りで高度感を感じましたが無事に通過。このあたりからガスが増え始めましたが、雨に降られることなく順調に通過し、13時には南岳小屋に到着。到着後に雨が降り始め、あらためて早出早着の重要性を感じました。

3日目も晴れで4時30分に下山開始。もうひとつの目的地、天狗池では風もなく最高の「逆さ槍ヶ岳」が撮れました。その後も順調に下山。徳沢を通過後に雷雨になりましたが、無事上高地に下山できました。

(石川和重/埼玉県/46歳/よく行く山:北アルプス)

岐阜県・冠山

山頂からは360度のパノラマが楽しめます

冠山峠(左端)と冠山(写真=中川喜久)

冠山山頂と白山(中央奥)(写真=中川喜久)

8月17日、晴れ

冠山は、木曽三川のひとつである揖斐川の源流になっている標高1257mの山で、日本三百名山、ぎふ百山にも選定されています。登山道は過去には数ルートあったようですが、今は林道冠山線の冠山峠からのルートが一般的になっています。

冠山峠の標高は約1040mあり、尾根伝いにアップダウンを繰り返しながら歩くと山頂北側直下の冠平(かんむりだいら)に着き、ここから岩壁の急登を70mほど登ると山頂に取り付きます。ゆっくり歩いて上り1時間強、下り1時間弱で、山頂からは360度のパノラマが楽しめます。

前日までは猛暑日が続いていましたが、当日は北からの高気圧に覆われ、山頂はすっかり秋の風が吹いていました。

登山道は雨の影響で部分的に荒れているところがありますが、山頂直下の急登を含め、気をつけて歩けば特に問題となる箇所はありません。

峠には十数台分の駐車スペースがありますが、紅葉シーズンの休日などには林道にずらっと縦列駐車の列ができるようです。林道は舗装されていますが、見通しが悪く、また、対向が困難なところも少なからずありますので、気をつけましょう。

(中川喜久/岐阜県/56歳/よく行く山:日本アルプス、岐阜市近郊の山)

愛知県・宮路山

三河の人気のハイキングコースへ

左上:宮路山山頂 左下・右上・右中:下りの登山道の様子 右下:雨乞い祭りの山車(写真=葉山美和)

山頂より三河湾越しに渥美半島の蔵王山(右奥)の景色(写真=葉山美和)

8月19日、曇り

旧東海道「赤坂宿」の西方に位置する標高362mの宮路山は「秋来てぞ 見るべかりけり赤坂の 紅葉の色も 月の光も」(藤原盛忠)と詠まれているように、古より「もみじ」の名所として名高い山です。この「もみじ」は「ドウダン」と呼ばれている「コアブラツツジ」のことで、新緑の季節は可憐な白い花、晩秋は深紅の紅葉で山を彩るそうです。

無人駅の名電赤坂駅から宮天道神社を通り、獣除けゲートがある中級者コースで奥の院本宮を目指します。登山マップにあった通り急勾配を登ること30分、奥の院に到着です。その先3分、急に明るく開けると三河湾が一望できる宮路山山頂。猛暑の蒸し暑さはなく、爽やかな秋の空気を感じます。山頂から五井山へピストンで縦走もできますが、駅まで往復するので今回はこのまま下山しました。

下りは階段が整備されたドウダン展望コースで、駐車場まであっという間です。ここから三河湾国定公園の森の中の道を赤坂宿まで、のんびり歩いて下りました。

赤坂宿では、年に一度の雨乞い祭りの山車が蔵出しされ、出番を待っていました。

(葉山美和/千葉県/よく行く山:中央線沿線の山、奥高尾)

鈴鹿・雨乞岳

谷を上って尾根を下る周回ルートをとりました

東雨乞岳から雨乞岳を望む(写真=小林昭生)

雨乞岳の名の由来となった小さな池(写真=小林昭生)

8月19日、曇り

御在所岳の西に位置する雨乞岳に行ってきました。往路は一般的なクラ谷分岐を経由する「谷ルート」を、帰路は東雨乞岳から三人山を経由する「尾根ルート」を歩いて出発点の武平峠に戻りました。

最初は植林帯の中を歩きますが、沢谷峠を越え、やがて緑豊かな自然林に包まれるようになると、ほどなくクラ谷分岐です。ここはコクイ谷から杉峠を経て雨乞岳に至るルートの分岐点にあたります。小さなアップダウンを繰り返しながら、クラ谷の広い谷に沿って進んでいくと、やがて七人山と雨乞岳のコルに出ます。ここを左に折れ、まずは東雨乞岳をめざしますが、ササの道は山頂まで急登が続きます。大汗をかき、ようやく空が広くなったころ東雨乞岳に到着です。山頂は小広い台地になっていて、御在所岳、鎌ヶ岳を思うがままに望める展望が開けていました。

雨乞岳にはササ尾根をいったん下って上り返します。山頂横の小さな池は、ここで昔雨乞いの神事が行われたため、山名の由来になったといわれています。東雨乞岳まで戻り、ここから胸突く急登を逆に下るような急坂を下ります。三人山から先は大小四つ五つのコブを越え、最後の急坂を下ると自動車道に飛び出します。15分ほど歩けば武平峠です。

スタートは9時20分、戻ったのが16時40分だったので、7時間余り(休憩時間含む)の行程になりました。

(小林昭生/奈良県/77歳/よく行く山:金剛山系はじめ関西一円の山々)

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2018年度の日本山岳遺産候補地および助成団体を8月末まで募集中

2017年度日本山岳遺産認定地 霧ヶ峰草原再生協議会:外来種の駆除作業

2017年度日本山岳遺産認定地 三ツ峠ネットワーク:防鹿柵の設置

日本山岳遺産基金では、未来に残したい日本の豊かな自然環境や、人と自然の関わりを有する山岳地域を「日本山岳遺産」として認定し、登山道整備や環境保全活動を行う団体に対して助成金を拠出し、支援しています。

今年度も当基金の目的に則した活動を行っている組織・団体からの申請を、8月31日まで受け付けています。詳しくは日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。

***

■日本山岳遺産 申請概要

支援対象となる団体:

・特定の山もしくは山岳エリアにおいて、山岳環境保全や登山道整備などの活動を3年以上行っている団体。

・支援対象事業の実施状況および予算・決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。

・法人格を有する団体。または、これと同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。

対象となる活動の期間:2019年4月1日~2020年3月31日

助成金額:総額250万円(予定)

助成対象となる活動費の用途:

・2019年度の活動に使用するもの。

・資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。

・専門家への謝金等。

・旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費等の経費。

・資料の翻訳、印刷、出版等に係る経費。

助成金の送金:2019年3月末日までにご指定の振込口座に振り込みます。

申請方法:日本山岳遺産基金のウェブサイトの応募フォームに必要事項を記入のうえ、当基金事務局まで申請してください。

申請締切日:2018年8月31日まで

審査期間:2018年9月1日~9月30日

発表:2018年10月上旬(予定)

***

問い合わせ先=日本山岳遺産基金事務局(山と溪谷社内)☎03-6744-1900(代)

メール:kikin_info@yamakei.co.jp

http://sangakuisan.yamakei.co.jp/index.html

週刊ヤマケイ「表紙写真」「読者の登山レポート」「山の川柳」「よもやまばなし」応募要項

週刊ヤマケイでは、読者の皆さんから表紙写真、登山レポート、山の川柳を募集しています。また新たに「よもやまばなし」も募集します。ぜひあなたの作品をお送りください。

【表紙写真について】

●タテ位置で撮影した写真に限ります。

●横幅1200ピクセル以上のjpeg画像。

●写真に簡単な説明も添えてください。


【読者の登山レポートについて】

●本文200字~300字。1ヶ月以内の山行に限ります。できれば2週間以内の情報をお寄せください。国内・海外は問いません。山名・日程・天気を明記。登山道の様子や開花状況などもできるだけ盛り込んでください。

●写真キャプション(写真の解説を簡単なもので結構ですので付けてください)

●お名前(ふりがなもお願いします。匿名、ペンネームでの掲載は不可です)

●メールアドレス

●年齢

●郵便番号と住所

●登山歴

●よく行く山名、山域

※文字数を大幅に超えたものは対象外となります。掲載の目安は、投稿から約2週間です。掲載、不掲載についての事前連絡はしておりませんので、あらかじめご了承ください。


【山の川柳】

「夏休み 孫と一緒に 百名山」

「お父さん 登山道具を 片付けて」

「登れども登れども ぴくりとも動かぬ 体重計」など、山に関する川柳を募集します。どうぞ気軽にお送りください(川柳の投稿はペンネームでも可)。編集部が審査して、段位を授与します!


【よもやまばなし】

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