山と溪谷 編集部ブログ

辻まこととオオカミ信仰

こんにちは。

編集部の辻です。

発売中の10月号では、特集コラム「辻まことが旅した静かな秋の山」というコラムで辻まことの画文を紹介しています。

IMG-5886.jpg

IMG-5887.jpg

辻まことのことは3年ほど前に知りましたが、その画文には衝撃を受けました。

その影響で自分も山の絵を描き始めました。

彼の画文で印象に残っている話があります。

簡単なあらすじはこんなものです。

辻まことが残雪の残る大菩薩を登っているとき、木彫りの仏像の掌を灌木の中から拾った。

それを持ち帰って家の玄関に飾りとして置いていると、家を訪れた幼い女の子がその掌を見て、

「わんわんコワイ、わんわんコワイ」

と泣き出した。

その幼女は後日、御嶽神社の狼が書かれた御札を見たときも、同様に怯えており、話を聞くと、掌の木片とまったく同じものに見えたという。

掌の木片を拾った大菩薩は、オオカミ信仰が盛んだった地域である。

オオカミ信仰によって念じられたかたちが作品に結晶し、幼女の目にそれが映ったのか……。

画文集『山の声』に載っている「山の声」というお話です。

IMG-5877.jpg

この話の挿絵がこの版画です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最近ある本を読み、この話を思い出しました。

その本が遠藤公男著『ニホンオオカミの最後』です。

IMG-5844.jpg

ニホンオオカミはどんな生き物で、人間にとってどんな存在だったのか。

なぜ、どのようにして絶滅していったのかを、主に岩手県での丹念な取材から明らかにしています。

農作物を荒らす鹿や猿を捕食し、犬神として崇められる一方、馬やときには人間を襲うことから恐れられていました。秩父の三峯神社をはじめ、オオカミ信仰の痕跡はいまも各所に残っています。

また、シカの食害による山の裸地化や高山植物の個体数減少などがよく山のニュースとなりますが、これもオオカミが絶滅したことが一つの要因かもしれません。

オオカミがシカを捕食することで、シカの個体数を押さえていましたが、人や人間を襲うオオカミを鉄砲や毒で大量に狩っていったことで、オオカミは減り、今度はシカが増えた。

その後も猟師がシカを獲っていたが、猟師の数が減り、シカが増えた。

こんな単純な話ではないとは思いますが、オオカミの絶滅はその一因になっていたのでしょう。

ちなみにオオカミの語源は『万葉集』の「大口の真神」が転じて「オオカミ」となったようです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

空気はすっかり秋ですが、明日からは久しぶりに登山日和の週末になりそうですね。

よい週末を。

山と渓谷

  • ブログ
  • バックナンバー
  • 定期購読
  • 山と溪谷 2024年4月号
  • 山と溪谷 2024年3月号
  • 山と溪谷 2024年2月号
  • 山と溪谷 2024年1月号
  • 山と溪谷 2023年12月号
  • 山と溪谷 2023年11月号
  • 山と溪谷 2023年10月号
  • 山と溪谷 2023年9月号
  • 山と溪谷 2023年8月号
  • 山と溪谷 2023年7月号
  • 山と溪谷 2023年6月号
  • 山と溪谷 2023年5月号